戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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全てが終わったその後のお話です。
これまで"戸山香澄は勇者である"を読んで頂いて本当にありがとうございました。




未来、その先に

 

 

神世紀316年、かつて滅亡の危機に瀕していた世界も平穏な時を取り戻し、無垢な少女が犠牲になる事がない、いつも通りの日常が戻っている。

 

戸山香澄が花咲川中学校に赴任してから3ヶ月の時が経った。かつての勇者達はそれぞれが自分で決めた生活に戻り、少し遅めの青春を謳歌している。

 

顧問を担当している勇者部も香澄がいた時と変わらず、日々のボランティア活動や幼稚園で演劇を行う毎日が続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「みんな今日もお疲れ様!」

 

香澄が部員達に労いの言葉をかける。

 

友奈「はい!香澄先生もお疲れ様でした!」

 

風「すみません、休日なのにわざわざ来ていただいて。」

 

香澄「気にしないで、私は勇者部の顧問!そして元勇者部なんだよ!悩んでる人には手を差し伸べなきゃ。」

 

銀「う〜っ、先生カッケー!」

 

今日は休日なのだが、こうしてみんなが集まっていたのには訳があった。なんでも、友奈が大赦について詳しく学びたいと言うのだ。

 

15年前の神世紀301年、神樹が消え、人が自らの足で歩いていかなければならなくなった時、大赦はこれまで人類に秘匿していた情報を全て開示、隠蔽を全て無くした上で、また一からみんなで世界を作っていこうと世界に発信した。

 

だから当然、友奈達は香澄が元勇者である事を知っているし、バーテックスという存在がいた事も記録から知っている。

 

夏凛「と、いうより、ぶっちゃけ大赦ってより勇者が知りたいのよね、友奈は。」

 

友奈「えへへ……この部活に入部した時から気になってたんだ。」

 

美森「でも、勇者という御役目は私達の想像を絶するものだというわ。」

 

園子「うん。自らの命を賭して世界を守る……。」

 

樹「しかも私達と同じ中学生で……今考えてみても背筋が凍りそうです…。」

 

友奈「うん……。だけど、香澄先生はやり遂げた。今私達がこうして生きているのは、香澄先生達のお陰って言っても良いくらい。だから私は知りたいんです。この四国の事を、勇者の事を、そして香澄先生の事を。」

 

香澄「ふふっ……そう言われると何だか照れるなぁ。分かった、今度の週末に大赦にみんなで行こう。社会科見学だ!」

 

友奈「先生……ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

週末、大赦へ訪れる日、香澄達は大赦入り口に集合していた。

 

沙綾「やあ、みんな。待ってたよ。」

 

入り口で待っていたのは香澄と同じ元勇者部であり、現在は花咲川中学の校長先生でもある山吹沙綾。

 

香澄「ごめんね、さーや。急に連絡しちゃって。」

 

沙綾「全然。我が校の生徒の為だからね!」

 

友奈「ありがとうございます、校長先生。」

 

夏凛「ここが大赦か……。」

 

銀「なんか空気が違う気がするよ。」

 

荘厳な神社のような見た目の外観から、中に入ればこの世からは隔絶された雰囲気に全身が包まれる思いとなる友奈達。

 

樹「ここがかつての世界の中心だったんだよね。」

 

沙綾「そうだね。とは言っても、私達が勇者だった頃はここに来たことは数えるくらいしか無かったんだけど。」

 

友奈「そうなんですか?」

 

香澄「うん。ここはゆり先輩や有咲の様な大赦に所属してる人とか、おたえのような名のある家系、巫女ぐらいかな。」

 

二人は話しながら歩き出す。

 

沙綾「おたえには話し通してあるから、まずはそこに向かおう。」

 

園子「"花園家"のたえさんかぁ。私初めて会うよ。」

 

香澄「ふふっ、案外園子ちゃんと気が合うかもね。」

 

 

 

 

 

 

大赦三階の貴賓室へやってきた一同。中に入ると、既に花園たえがいた。現大赦のトップであり、初代勇者である湊友希那の子孫。

 

たえ「やあ、君達が花咲川中学勇者部だね。こんにちは、私は花園たえ。おたえって呼んでね。」

 

一見無防備な佇まいだが、そこから発せられるオーラのようなものは歴戦の猛者を漂わせている。

 

たえ「あまり時間は取れなかったけど、どうぞ座って。」

 

沙綾「私はちょっと寄る所があるから、また後でね。」

 

たえ「うん、ありがと沙綾。」

 

香澄達は着席し、早速友奈がたえに質問をする。

 

友奈「おたえさんは、どうして勇者になったんですか?」

 

夏凛(待って待って、いきなり直球過ぎるでしょ!)

 

友奈の問いに、たえは少し考え話す。

 

 

 

 

 

 

 

たえ「私の場合は、"なった"って言うより"なるしかなかった"って感じかな。」

 

風「初めから選択肢が無かったってことですか?」

 

たえ「そうだね。なんたって私は"花園家"。"花園家"は元を辿れば"湊家"だから。」

 

美森「授業で習いました。"湊家"の初代勇者、湊友希那様………聡明な方だったと。」

 

たえ「うん。だから18年前にバーテックスが襲来した時、私には勇者になるのが運命付けられてた。」

 

たえは淡々と話し続ける。友奈達はそれを静かに聞いていた。

 

園子「怖くなかったんですか?」

 

たえ「怖くなかった……って言えば嘘になるかな。だけど、私には一緒に戦ってくれる友達がいた。」

 

香澄「さーや……。」

 

たえ「バーテックスの大侵攻の時、私は大切な友達と世界を守るため、"満開"を繰り返して守りきった……自分の体を犠牲にして。」

 

樹「どうして……どうしてそこまで出来たんですか?」

 

たえ「うーん………。」

 

少し考え、たえは言う。

 

たえ「御役目だから………って言ってもみんなは多分納得しないよね。…………私は、ただ大切な友達が傷付く姿を見たくなかっただけだよ。そこに理由なんていらない。助けたい人を助けるのに理由なんかいらないでしょ?」

 

たえが言う言葉に友奈達は呆然としていた。すると、誰がの啜り泣く声が聞こえる。

 

香澄「うぅ………おたえぇ…流石はおたえだよぉ………うぅ…。」

 

香澄が大粒の涙を流していたのだ。

 

夏凛「どうして先生が泣いてるんですか!!」

 

たえ「あはは、流石は香澄だねー。うん、私の話しはこれくらいかな。そうだ、今日は防人のみんなが練習してる筈だから、そっちにも行ってみると良いよ。」

 

友奈「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

たえ「気にしないで。それじゃあ香澄、後はよろしくねー。」

 

香澄「うん。時間作ってくれてありがと、おたえ。」

 

たえは貴賓室から出るや否やどこかへ電話をかけ始めた。世界が平和になっても、大赦のトップは忙しいのだろう。

 

たえから聞いた話を友奈達はメモに書き留め、一行は訓練場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「おりゃあっ!!」

 

千聖「甘いわよっ!!」

 

訓練場では、市ヶ谷有咲と白鷺千聖が模擬戦を行なっている。バーテックスは消え、人類の脅威は無くなったが、防人達は日夜の訓練を欠かしていない。

 

中でもこの二人は実力が拮抗しており、模擬戦になると一進一退の攻防が毎回繰り広げられ、その長さはどんなに短くても1時間は続いている。

 

園子「ほぇー……。」

 

友奈「凄い……手が見えないよ。」

 

友奈達が二人に見入っていると、香澄に気が付いたのか何者かが声をかけてきた。

 

日菜「あっ、やっぱり香澄ちゃんだ!ヤッホー。」

 

香澄「あっ、日菜さん。お疲れ様です。それに花音さんにイヴちゃんも。」

 

花音「久しぶりだね、香澄ちゃん。」

 

イヴ「たえさんから聞いてました…。そちらが香澄さんの教え子ですか…?」

 

声をかけてきたのは二人の模擬戦を見ていた防人の面々だった。

 

香澄「彩さんは一緒じゃないんですか?」

 

花音「彩ちゃんは今"英霊之碑"じゃないかな。毎日の日課だよ。」

 

日菜「私達の話しを聞きにきたんだよね?ちょっと待っててね。おーい!」

 

日菜が模擬戦を中断させ、全員は訓練場の隅にあるベンチへと腰掛けた。

 

有咲「いやー、わりーわりー。つい夢中になってたよ。」

 

千聖「有咲ちゃんとの模擬戦は毎回良い刺激になるわ。」

 

二人はあれだけ激しく動いていたにも関わらず、全く息を乱していない。これも日々の賜物なのだろう。

 

千聖「で、何を聞きたいのかしら?」

 

風「はい、私達は今勇者について調べているんです。そうしたらたえさんから防人の話も聞いてみると良いよって。」

 

 

千聖は最初に防人についての情報を友奈達に教える。

 

千聖「ーーつまり、私達防人は所謂勇者になれなかった者の集まりなの。みんなも知っているだろうけど。」

 

美森「ですが、有咲さんは勇者だったんですよね?」

 

有咲「ああ。当時は私の方が適正が高かった。だから勇者に選ばれた。それだけだな。もしかしたら千聖が勇者になってた可能性だってあったかもしれない。」

 

銀「千聖さんは、勇者になれなかった時、悔しくなかったんですか?」

 

千聖「それは悔しかったわよ。あの頃の私は勇者になる事だけが全てだった。自分の人生を全て捧げたの。」

 

その結果、千聖に残ったものは、空っぽの自分だった。

 

千聖「だけど、今はそんなものどうでも良くなってしまったわ。」

 

風「何が千聖さんを変えたんですか?」

 

千聖「それは……。」

 

千聖は照れ臭そうに周りを見つめる。

 

千聖「仲間よ。」

 

香澄「ふふっ……。」

 

千聖「昔の私はずっと一人で何でもやろうと思ってたの。勇者の下請けみたいな仕事ばかりやる防人も最初は嫌っていたわ。」

 

少し笑いながら、千聖は続ける。

 

千聖「でもね、イヴちゃんが。日菜ちゃんが。花音が。そして有咲ちゃんが私を変えたくれたのよ。そして私も思うようになった。一人じゃ出来ない事もあるってね。後もう一つ、自分がやってきた事に無駄な事なんか一つも無かったって分かったことかしらね。だから、これだけは覚えておいて欲しい。仲間を信じるのも大切だけれど、自分を信じることも大切だということをね。」

 

夏凛「仲間を……自分を信じること…か……。」

 

何か思い当たる節があるかのように夏凛は呟いた。

 

有咲「そうだな。私も今なら千聖の言うことが分かる気がするよ。」

 

夏凛「有咲さんはどうして勇者に?」

 

有咲「ん?あぁ……そうだな…最初は自分のため…だったかな。完成型勇者。それになるために最初は頑張ってたんだけど……。」

 

話している途中で、有咲の顔が若干赤くなる。

 

有咲「御役目をこなしていく途中で変わったんだ。自分がいる居場所を守ろうって。"勇者部"、それが私の居場所だったからな。」

 

香澄「んもぅーー!あーりーさーー!」

 

急に香澄が有咲に抱きついてくる。

 

有咲「んがっ!?だから毎回言ってるだろ!急に抱きついてくるなって!」

 

香澄「だって、有咲が勇者部の事をそう思っててくれたことが嬉しくてーー!」

 

園子「あはは!香澄先生、子供みたい。」

 

するとそこへ沙綾が戻ってきた。

 

沙綾「香澄は全然変わらないね。」

 

香澄「あっ、さーや!」

 

美森「どうしたんですか、校長先生?」

 

沙綾「ゆり先輩とりみりんがこっちに戻ってきてるみたいなんだ。だからさっき連絡して話が聞けないかスケジュール合わせてたんだよ。」

 

風「ゆりさんと言ったら……勇者部を作った偉大なる先輩ですよね!」

 

沙綾「そうそう。"英霊之碑"で待ってるって言ってたから、みんなで行こうか。見学も兼ねて。」

 

花音「それじゃあすぐにーー」

 

有咲「私達はまだ訓練の途中だからここでさよならだ。」

 

千聖「そうね。まだ模擬戦の途中だもの。次は私とやるわよ、花音。」

 

黒い笑みを浮かべながら、千聖は花音を連れて行ってしまう。

 

花音「ふぇえええっ!!」

 

日菜「あはははっ!るんっ♪って来るよね!待ってよ千聖ちゃーん!」

 

イヴ「"英霊之碑"には彩さんもいると思います。彩さんに宜しくお伝えください。」

 

香澄「みんなー!またねー!!」

 

風「なんだか賑やかな人達だったわね。」

 

銀「でも、すっごくカッケーって思いました!」

 

目を輝かせながら銀は言う。

 

夏凛「そうね。」

 

防人達に別れを告げ、香澄達は"英霊之碑"へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

英霊之碑ーー

 

ここは歴代の勇者や巫女達が祀られている場所。広場からは壊されてしまった瀬戸大橋が今もそのまま残っている。

 

友奈達は、各石碑に書かれている家名を見ながら、それぞれ思いを馳せていた。

 

石碑は円形状に並べられており、一番手前には、"湊家"、"花園家"、"今井家"、"高嶋家"、"宇田川家"、"白金家"、"美竹家'、そして"氷川家"の家名が刻まれた石碑が立っている。

 

友奈達が中央広場へ進んでいくと、一人の巫女が祈りを捧げていた。防人の巫女であった丸山彩である。彩は足音に気が付いたのか、祈りを止め後ろを振り返った。

 

彩「あっ、香澄ちゃん、沙綾ちゃん。」

 

香澄「彩さん、お久しぶりです。」

 

彩「久しぶり。後ろにいる子達は……香澄ちゃんの生徒さん?」

 

香澄「はい。"勇者部"のみんなです。」

 

友奈達は彩に自己紹介をした。最後である銀が自己紹介を終えた時、ゆりとりみがやって来る。

 

ゆり「ごめんごめん、香澄ちゃん!道路が混んでてさ…。」

 

りみ「時間大丈夫だった?」

 

沙綾「タイミングバッチリだよ、りみりん。」

 

香澄「丁度彩さんに自己紹介してたところです。」

 

風「初めまして、私は"勇者部"の部長をやっています、犬吠埼風です。ゆりさんの事は香澄先生から色々伺っていました。会えてとても嬉しいです!」

 

目を光らせながら、風はゆりに挨拶をした。

 

ゆり「あなたが今の部長なんだね。ちゃんと引っ張ってくれてるらしいじゃん。」

 

風「みんなのお陰です。」

 

ゆり「うんうん、青春だねぇ。」

 

園子「あはは、風先輩が借りてきた猫みたいだ。」

 

美森「こら。からかわないの、園っち。」

 

主役が到着したところで、友奈達は早速ゆりとりみにインタビューをするのだった。

 

風「お忙しいところ時間をいただきすみません。」

 

りみ「気にしないで。内容は沙綾ちゃんから聞いてるよ。可愛い後輩のためだもん。」

 

風「では……ゆりさんはどうして勇者になったんですか?」

 

ゆりは少し考え、一瞬りみを見た後答える。

 

ゆり「最初は凄く単純な理由だったんだ。両親の仇をとる。それだけだった。私の両親はバーテックスの侵攻による事故で亡くなったから。」

 

そう言いながら、ゆりは壊れた瀬戸大橋を見る。"瀬戸大橋の戦い"。その戦いに牛込夫妻は巻き込まれて命を落としたのだ。

 

美森「それならりみさんはどうして勇者に?危険な御役目で命を落とす事だって…。」

 

ゆり「勇者の候補生は各地の学校にいたんだ。花音ちゃんには会った?あの子も最初は候補生だったんだよ。だけど、私達が勇者として選ばれて、結果的にりみを巻き込む形になっちゃった。」

 

りみ「うん。だけど、私は勇者になった事後悔しなかったよ、お姉ちゃん。」

 

ゆり「そうだね。りみは誰よりも強かった。"散華"で指が動かなくなっても、自分の夢を諦めずに、今こうやって自分の夢を叶えたんだから。」

 

樹「………私もりみさんみたいになれるかな…。」

 

りみ「樹ちゃんの夢は何?」

 

樹「私の夢は………歌手になる事です。」

 

少し震えながら言う樹に、りみは自分の姿を重ねる。

 

りみ「…………うん、なれるよ、樹ちゃんなら!だって、勇者部五箇条ーー」

 

樹「"成せば大抵何とかなる"……ですもんね!」

 

りみ「うん!」

 

風「樹が……樹が自分で夢を語る時が来るなんてぇ……お姉ちゃん嬉しい!」

 

泣きながら、風は樹に抱きついた。

 

樹「お姉ちゃん…苦しいよぉ……!」

 

香澄達「「「あはははっ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が落ちかけてきた頃、友奈は部室で一人、今日見聞きした事についてをまとめていた。いつも賑やかな部室だが、こうして一人でまじまじと作業をしていると静けさが一層際立っていくのが感じられた。

 

友奈(今日話を聞いてみて、勇者になるってことへの思いにも色々あるんだって感じだったな…。)

 

勇者になるのが決まっていた人、憧れた人、なれなかった人、躊躇った人。

 

色んな感情が混ざり合い、勇者として世界を守り続けてきた人達。だが、一貫して同じだった事は、勇者だった人達は、勇者になったことに対して後悔していないということである。

 

経緯はどうあれ、結果として世界を守り抜いた少女達。そこまでの覚悟が果たして自分にはあるだろうか。

 

動かしていた手を止め考え耽っていると、部室のドアが開き、美森がやって来た。

 

美森「やっぱりここにいたんだね、友奈ちゃん。家に行ってもまだ帰ってないって聞いたから心配したよ。」

 

友奈「東郷さん。ごめんね、心配させちゃったね。」

 

美森「まだ今日の事をまとめてたの?風先輩がまた明日やろうって言ってたのに。」

 

友奈「うん。どうしても、今日の事は今日まとめておきたかったんだ。」

 

美森「………友奈ちゃんはどう思った?勇者のこと。」

 

その質問に友奈はすぐ答えることが出来なかった。まだ自分でもまとまっていないから。それを考える為に、友奈は部室に戻ってきたのだから。

 

友奈「……まだちゃんとした答えはまとまってないかな。もし自分が勇者になって世界を守る為に、自分を犠牲に出来るかって考えるとさ……。」

 

美森「私もそう。きっと怖くて足がすくんで動けなくなっちゃうかも。」

 

そんな風に二人で話していると、再び部室のドアが開いた。やって来たのは香澄と沙綾だった。

 

香澄「あれ?二人ともまだいたの?てっきり続きは明日やるんだって思ってたよ。」

 

友奈「すみません。何だか考えがブワーって溢れてきちゃって…。」

 

美森「香澄先生、校長先生、もう少しだけこの部室を使わせて頂いても良いでしょうか?」

 

沙綾「うん、構わないよ。帰りは私達が送ってくから。」

 

香澄「いっぱい考えて、納得する答え見つければいいよ!」

 

友奈・美森「「ありがとうございます!」」

 

 

 

 

 

 

 

友奈「………そうだ。まだ、香澄先生と校長先生には聞いてなかったです。」

 

沙綾「どうして勇者になったか?」

 

友奈「はい。」

 

美森「確か校長先生もたえさんと同じで二回勇者になったんですよね……。」

 

沙綾「…………少し酷な話になると思うよ?」

 

沙綾は二人にそう忠告し、勇者だった時の出来事を話した。大切な友達の事、その友達が命をかけて世界を守った事、記憶を失った事、再び勇者になった事、そして消せない罪を犯した事。口にするだけでも凄惨だった過去を二人は、そして香澄は何も言わずにただ聞いていた。

 

美森「死と隣り合わせなのに…どうして校長先生は勇者になって戦ったんですか…?」

 

沙綾「………大切な人の隣にいたかったから…かな。」

 

美森「大切な人……ですか?」

 

沙綾「美森ちゃんにもいない?そんな人。」

 

そう言われ、美森は横目で友奈を見る。

 

沙綾「ふふ……。私の大切な人はね、みんなを守る為なら、身を挺して手を差し伸べてくれる。包容力があって、いつも笑顔で、私達を引っ張ってくれるんだ。だから私は守るって決めたの。その人が傷付いて周りを守るなら、私がその人を守ろうって。確かに最初は怖かった。だけど、そう思ったら……怖さなんていつの間にか消えちゃったんだ。」

 

友奈「校長先生も、やっぱり勇者になって後悔はしてないですか?」

 

沙綾「最初はあったと思う。理不尽だって何度も思ったよ。だけど、得てきたものと比べたら、すっごくちっぽけなものだって……今は思えるかな。」

 

友奈「香澄先生もそうですか?」

 

香澄「勿論。勇者部に出会ってなければ、私達はこうして出会うことも無かっただろうし。でも、私が勇者になるのは決まってた運命なんだろうけど。」

 

友奈「え?」

 

香澄「友奈ちゃんは知ってるでしょ?私の"香澄"って名前がどんな意味を持つのか。」

 

"香澄"の名は神を討ち倒す勇者の名。西暦の勇者である高嶋香澄に肖り、逆手を打って産まれた子に付けられる特別な名前。友奈達も授業で習っているので、当然この事についても知っている。

 

香澄「私も戦いが終わってから大赦にこの話を聞いて、びっくりしたんだ。」

 

美森「香澄先生は大赦に対して怒りは無いんですか?勇者にされて、命を危険に晒したのに。もし私が……。」

 

香澄「二人に聞きたいんだけど、もし道で困ってる人がいたらどうする?」

 

友奈「それは勿論声をかけて助けますよ。」

 

美森「私もです。」

 

香澄「うん。そういう事なんだよ。」

 

香澄の言葉に、二人は困った顔をする。

 

香澄「困っている人がいたら、手を差し伸べてあげる。勇者っていうのはそういう事なんだ。勇んで何かを進んで行う者。それが勇者。世界が危険に晒されて、私達にはそれを防げる力があった。だから私達は戦ったんだよ。そこに理由なんていらない。おたえだって言ってたでしょ?助けるのに理由なんかいらないって。」

 

純粋な心を持ち、手を差し伸べ助けてあげられる。そんな優しい少女だったから、香澄達は神樹から世界を守る力を与えられたのだ。香澄達はその事を不幸だとは思わないし、自分達にしか出来ないから、自ら進んで戦ってきたのである。

 

香澄「どんな事だって良い。悩んでる人がいたら、勇気を出して声をかけてあげる。そうすれば、その人の悩みを解決出来るかもしれない。勇者部六箇条、"成せば大抵何とかなる"。私はずっとそう信じてきたんだ。あ、勿論一人じゃダメだよ。友奈ちゃんに美森ちゃん、風ちゃん、樹ちゃん、夏凛ちゃん、園子ちゃんに銀ちゃん。助けてくれる友達と一緒にね。大丈夫。もう誰かが命をかける事は無いんだから。」

 

そう言って香澄は友奈の頭を優しく撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の放課後、友奈達七人は部室で昨日の事についてまとめていた。まとめると言っても、学校で発表する訳でも無いし、新聞にして掲載する訳でも無い。完全なる自己満足だ。

 

銀「やっぱり有咲さんカッケーよなぁ!私大きくなったら、有咲さんみたいになりたい!」

 

夏凛「そうか?私は千聖さんの方が格好良かったと思うわ。"防人"になるのも良いかもね。園子は?」

 

園子「私はたえさんみたいになりたいかも。」

 

風「乃木なら本当に大赦のトップになりそうよね。」

 

園子「それほどでもー。」

 

樹「私はりみさんみたいになって、お姉ちゃんをもっと支えていきたいな。」

 

風「樹ぃ……!そう言ってもらえて、お姉ちゃんは嬉しいよぉ!!」

 

美森「ふふ。今日もみんな賑やかだね、友奈ちゃん。はいこれ、ぼた餅。」

 

友奈「ありがとう東郷さん!……う〜ん!今日のぼた餅もすっごく美味しいよ!」

 

美森「友奈ちゃんへの愛が沢山詰まってるからよ。」

 

 

勇者とは何か。香澄は言った。勇者とは勇んで何かを進んでやる者だと。

 

それはどういう事か。何でも良い。例えば、困っている人に手を差し伸べる事。ボランティアでも良いだろう。

 

つまりは友奈達も一概に言えば勇者なのだ。特別な力があるから勇者なのでは無い。元からそういう勇んだ事を行っていた少女達に、特別な力が宿っただけのこと。友奈は昨日の体験で、実際に勇者だった人達の話を聞いてそうだという考えに至った。

 

勿論それは一個人の考えに過ぎない。人の数だけ、考え方は変わるだろう。

 

ふと友奈は書いている手を止め、顔を上にあげた。目に留まったのは勇者部六箇条の"無理せず自分も幸せになること"の項目。

 

美森「?どうしたの、友奈ちゃん?六箇条に何かあった?」

 

友奈「沢山の人を助ける為には、自分も大切にしなきゃなって思ったんだ。勇者も体が一番だから。」

 

美森「そうだね。体は資本よ、友奈ちゃん。」

 

友奈「うん!」

 

部室の扉が開き、香澄が入ってくる。手には今日やる予定の商店街でのゴミ拾いの資料が。

 

香澄「全員いるね。じゃあ今日やるゴミ拾いについての説明をしていくよ。」

 

友奈「はい!結城友奈、今日はゴミ拾いの勇者になーーる!!」

 

全員「「「あははははっ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

神世紀316年。新たな勇者達は今日も四国を守る活動を続けていくーー

 

 

 





これまで303話も読んで頂いて本当にありがとうございました。

この話をもちまして"戸山香澄は勇者である"の執筆は最後になります。

約2年半に渡り、拙い小説にここまでついて来てくださり感謝しかありません。

間も無く本家も3期が始まりますので、興味が有れば是非ご覧になってくださいね。



気が向けば、"大満開の章"も書くかもしれません(笑)






最後になりますが、本当にありがとうございました!

楽しんでいただけたのなら幸いです。
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