戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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これは、その先の話の少し先のお話ーー




思い出のアルバム

 

 

神世紀316年。暑かった夏が過ぎ、間も無く秋の足音が聞こえてくる頃。勇者部顧問である戸山香澄は花咲川中学校の校門近くの花壇に水を撒いていた。

 

側から見れば、何の変哲もない日常の一コマ。その行動に疑問を覚える者は誰一人いないだろう。

 

友奈「香澄せんせーーーい!!」

 

そこへ一人の少女がやって来る。明朗活発に駆け寄って来る少女は部員である結城友奈。声に気付いた香澄が振り返ると、友奈は急に駆け寄る足を止めた。

 

香澄「ん?どうしたの、友奈ちゃん?」

 

友奈「うーーーーん………。」

 

突如唸りを上げたかと思いきや、友奈はまじまじと香澄の顔を観察し始める。

 

友奈「香澄先生……なんか嬉しそう。」

 

友奈は見逃さなかった。香澄の口角が少し、ほんの少し上がっている事に。

 

香澄「よく分かったねぇ。」

 

友奈「分かりますよ!香澄先生は私の尊敬する勇者だったんですから!」

 

自慢気に語る友奈。すると友奈は香澄の左手にある本のような物に目が留まる。メモ帳やノートよりは分厚く、教科書というには少し小さいサイズ。更に少しこんもりと膨らんでいるようにも見えた。

 

香澄「これはね、私の"思い出のアルバム"なんだ。」

 

友奈「思い出のアルバム?」

 

疑問に思う友奈に、香澄は水やりの手を止め、友奈にそのアルバムの1ページを見せた。

 

友奈「これは………押し花ですか?」

 

香澄「そう。これは桜でしょ……こっちは朝顔でしょ……。」

 

そう言って香澄はパラパラとページを捲っていった。

 

友奈「綺麗な花ですね!でも……花しか無いんですね。」

 

1ページ毎に1つの押し花。周りの余白にはこれがどんな押し花なのかの説明も書かれておらず、ただページの真ん中に押し花が並べられているだけの、"思い出のアルバム"にしては少し簡素な作りだった。

 

香澄「仕方なかったんだよね。"記憶を残すのには出来るだけ少ない情報にしないとダメだったから"…。」

 

友奈「………………記憶を残す…?」

 

香澄「うん。ややこしい話だから、友奈ちゃん達には言ってなかったんだけどねーー」

 

香澄は友奈にこことは異なる世界、神樹の中の世界に行った事、そこで何があったのかを掻い摘んで説明するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈「ほえー…………。」

 

あまりの壮大な話でぼーっとしてしまう友奈。それもそうだろう。西暦時代や神世紀初期の勇者達との邂逅、現実世界に戻ったらその世界での出来事は全て忘れてしまう等の話など、話したところで絵空事だといって笑われるのがオチだからだ。

 

友奈「でも、香澄先生はどうしてそこの世界の出来事を覚えてるんですか?」

 

香澄「覚えてたって言うよりは、思い出したって言うのかな。」

 

友奈「っ!そのきっかけになったのが、このアルバムなんですね!」

 

香澄「そう!このアルバムはね、向こうの世界にいた時に、みんなでタイムカプセルを作ってこの花壇に埋めたんだ。なるべく神樹様にとってはくだらない物を入れて………だけど私達にとっては大切な思い出の品。戻って花壇の手入れをしてた時に見つけて中身を見た時に全部思い出したんだよ。」

 

そして香澄は再び友奈に語り始める。その時の思い出をーー

 

 

 

 

ーーー

ーー

 

神樹の世界ーー

 

時期は赤嶺香澄との一騎打ちが行われる少し前。防人組との友情も深まりつつあった、とある日の事。

 

 

 

香澄「タイムカプセル埋めてみたい!」

 

勇者部「「「えっ!?」」」

 

放課後に香澄は何の脈絡もなくその言葉を口にした。その発言に大抵の者は条件反射で口を開いたが、沙綾だけは賛成していた。

 

あこ「タイムカプセルって何?」

 

燐子「タイムカプセルはね…思い出の物を入れた容器を地面に埋めて…何十年か後にまた掘り出して昔を懐かしむって物だよ……。」

 

高嶋「それ聞いた事ある。卒業記念とかでやるやつだよね?」

 

香澄「そうそう!それそれ!」

 

ゆり「それは分かったけど…どうして急に?」

 

香澄「昨日、テレビで観たんです!」

 

ゆり「そ、そうなんだ……。」

 

満面の笑みで返され、それ以上の理由が無い事を察し、みんなが苦笑を浮かべていた。だが、

 

夏希「私もその番組観ました!」

 

薫「私もだ。」

 

その後も何人か、同様の番組を観たと言い出す人がおり、その番組について話し始めるのだった。

 

花音「結構感動的な話だったよね。」

 

香澄「勇者部でもやらない?みんなで埋めたらきっと楽しいと思っ…………あれ?」

 

勇者部「「「…………………。」」」

 

ウキウキと語る香澄に反し、みんなの反応が思っていたものと違っていた為、香澄はキョトンとしてしまう。数秒の後、有咲が口を開く。

 

有咲「はぁ………ちょっとは考えろよ、香澄。私達がタイムカプセルを埋めたとして、いつ掘り出せるってんだ?」

 

香澄「え?だからそれは、十年とか二十年とか経ってか………あぁーーーーーーっ!!」

 

ここで漸く香澄は気が付いたのか、他のみんなが芳しくない表情を浮かべていた理由を理解する。

 

そう、例え今、タイムカプセルを埋めたとしても、次に掘り出すのは十年数年後。再びタイムカプセルをこの勇者部で開けられる未来は存在しない。何故なら、造反神との決着後は、全員が元の時代へ返されるという運命が確定しているからだ。

 

香澄「そうだった………ごめん、みんな。」

 

みんなと過ごす毎日が自然で、あまりにも楽しすぎて、香澄は自分の身にもはめられている枷をすっかり忘れてしまっていたのかもしれない。

 

蘭「別に謝る事じゃないよ。」

 

モカ「蘭?」

 

友希那「ええ、そうね。戦いが終わって戸山さん達が元の世界に戻った時には、神世紀という同じ時間を生きている花咲川中学勇者部と防人のみんなで集まって欲しいわね。私達に気兼ねなく……ね。」

 

風雲児である友希那がそう口にするが、ただ一人、美咲だけがそれに異を唱える。

 

美咲「それは…出来ないですよ。」

 

あこ「どうして?」

 

美咲「そもそも埋めたところで、誰一人覚えてないでしょ。忘れちゃうんだから。」

 

勇者部「「「あ……。」」」

 

香澄「忘れる事も忘れてたーーーーー!!」

 

2回目の悲鳴が部室にこだまする。この世界から元の時代に戻る時、ここで過ごしてきた記憶は全て消去されてしまう。それは、出会うはずのなかった勇者達に突きつけられた、神樹からの無慈悲な勅命。その前提がある以上ら未来に戻る者にも、タイムカプセルを埋めたという記憶は残らないのだ。

 

香澄「うぅ………本当にごめんね、みんな…。」

 

中沙綾「元気を出して、香澄。」

 

肩を落とした香澄を、沙綾は慰める。だが、そこに更に追い討ちがかかる。

 

小沙綾「それに…記憶を失うのもそうなんですけど、元の時代に戻る時、タイムカプセルも神樹様に消されてしまうんじゃ…。」

 

千聖「そうよね………。この世界の物を残すのは、神樹の思惑に則してない筈よ。」

 

日菜「えーー!それって私がここで買った物も!?」

 

高嶋「リサちゃん、どう?沙綾ちゃんや千聖ちゃんが言ってた事って本当?」

 

リサは勇者部の中で神樹や大赦と最も多くやり取りを重ねている巫女だ。それ故、リサの返答に勇者部全員が黙って注目していた。

 

リサ「そうだなぁ……。多分だけど、日菜の買った物とかは、そのまま残る可能性がある…かな。」

 

日菜「そうなの!?」

 

リサ「それは記憶が消える妨げにならないから。未来への驚異にならない物は、元の世界で買ったとか、元々持ってた物って記憶に置き換えられる可能性があるね。これも個人的な希望が入った意見だけどね。」

 

とどのつまり、仲間達の存在を示唆する物ーー例えば写真や手記は消えてしまうが、あり得ない邂逅の記憶を揺さぶらない微々たる日用品等は元の世界に残る可能性が無きにしも非ずという事になる。

 

イヴ「でしたら…タイムカプセルはありですか?」

 

イヴの問いかけに、みんなはまた互いに、視線を合わせる。

 

あこ「なら、あこはこのお菓子にします!」

 

いの一番であこが高らかに宣言し、それに続いて夏希も叫ぶ。

 

夏希「流石はあこさん!なら私はこのお菓子です!」

 

ゆり「いや、待ってーーー!」

 

即座に駆け出した二人の襟足をゆりは掴み叱る。

 

ゆり「食べ物はダメだよ!」

 

りみ「そこなの!?」

 

ゆり「あはは……でも、どうでも良い物でも意味ないよね?だってタイムカプセルって、思い出を懐かしむものだし…。」

 

香澄「でも、思い出のある物だと、消されちゃうんですよね……。」

 

ゆり「残念だけど……。」

 

そこへたえが初めて口を開いた。

 

中たえ「なら、神樹様にとってだけ、くだらない物を入れるっていうのは?」

 

彩「神樹様にとってだけ?」

 

中たえ「例えば、このお菓子は、神樹様から見れば単なるお菓子だけど、あこや夏希にとってはそうじゃないと思うんだよね。」

 

その言葉に香澄の顔が明るくなる。

 

香澄「それだよ!私達とか戦いとかと直接関係は無いけど、少しの思い出っていう物だったら、もしかすると………!」

 

友希那「そうね……神樹の目溢しがどれだけのものかは不明だけれど。」

 

高嶋「やろうよ!未来に残せる可能性がゼロじゃ無いんだから!」

 

紗夜「そうですね……。」

 

たえの言葉がきっかけとなり、満場一致でタイムカプセルを埋めようという結論に至ったのである。

 

 

 

 

さて、決まったは良いが、今度はあれを入れたい、それはダメだ等で大騒ぎになってしまう。みんながワイワイと話し相談している時、沙綾は香澄に尋ねた。

 

中沙綾「香澄は何を入れたいの?」

 

香澄「私はね……これだよ!」

 

そう言って取り出したのは、押し花のアルバムだった。

 

香澄「これには文字とか書いちゃったから、また新しく作り直さないといけないんだけどね。名前とか書いてあったら消されちゃうかもだし。」

 

中沙綾「見ても良い?」

 

香澄「勿論!」

 

何気なく開いたページを見た沙綾は、驚いた様子で固まってしまう。その様子に気付いた他のみんなもアルバムの中を覗き込んだ。

 

有咲「押し花ねぇ………ってなぁっ!?」

 

唐突に有咲の顔が真っ赤になる。そこにはサツキの押し花があり、その側にはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

『有咲♪照れ屋だけど、すっごく優しいんだ。』

 

 

 

 

 

このアルバムにはどうやら、1ページにつき一輪の押し花と、勇者部メンバーの名前、そしてその人の特徴や長所が書かれているようだった。

 

千聖「これ……まさか全員分?」

 

千聖は口にせずにはいられなかった。長い時間を共にした勇者達のみならず、途中から合流した防人達のページもあったからだ。

 

香澄「そうですよ?」

 

季節によっては手に入らない花もあるだろう。それを考えれば、恐らく香澄はタイムカプセルの件を思い付くずっと前からこれをつくっており、ここに記されている通りの目で、勇者部のみんなを見詰め続けてきたのだろう。

 

香澄「あ、そうだ。後、カプセルは花壇に埋めれば完璧だと思うんだ!」

 

有咲「何がどう完璧なんだよ!」

 

まだ耳まで赤い有咲が叫ぶと、香澄は自分の周りに集まっていた一人一人の顔を見ながら言う。

 

香澄「だって花壇なら、カプセルがもし埋まってれば、手入れをしてた時に見つかるかもしれないし。そしたら、このアルバムを見た私は、きっといっぱい考えると思う。まるで私が作ったみたい。ひょっとしたら私が作ったのかな?って。それできっと、もしかしたら…………ううん!絶対に思い出すと思うんだ。この花は誰で、こっちは誰で………それで、みんなが……大勢の友達が、私の側にいたんだって事を。絶対に!!」

 

香澄の言葉に、勇者達はただただ耳を傾けていた。香澄の一人一人に寄せた、厚く深い想いに胸を打たれたからである。香澄がそれほどまでに考えて、未来への希望をタイムカプセルに籠めようとしている。生半可な物を入れる事は出来ないと、勇者部全員が考えるのだった。

 

 

ーー

ーーー

 

 

 

友奈「そんな事が……。」

 

香澄「うん。ずっと忘れちゃってた記憶……。だけどもう二度と忘れたりなんかしない。ここに載せた花はね、全部が私達勇者の衣装のモチーフになった花なんだ。このアルバムのお陰で私達は最後までやり遂げて、今こうして幸せに過ごす事が出来てるんだ。」

 

香澄からアルバムの事を聞いた友奈。だがここでまた一つ疑問が浮かぶ。

 

友奈「あれ?ならなんで今香澄先生はそのアルバムを持ってるんですか?」

 

香澄「ん?ちょっと待ち合わせしてるんだ。多分もうそろそろ………あ、来た来た。おーーーい!」

 

香澄が手を振る方を見ると、そこへゆりがやって来る。

 

ゆり「ごめんね、香澄ちゃん。待った?」

 

香澄「大丈夫ですよ。丁度友奈ちゃんとこのアルバムについて話してたところでしたから。」

 

ゆり「話し……あぁ、友奈ちゃん。英霊之碑以来だね。元気してた?」

 

友奈「お久しぶりです、ゆりさん。勿論!勇者部としてバリバリ活動してます!」

 

待ち人が来たにも関わらず、香澄はまだ周りを見回していた。どうやら待っていたのはゆりだけでは無いようだ。

 

香澄「あれ?有咲は?」

 

ゆり「有咲ちゃんはちょっと遅れてくるって。連れがどうたら……って言ってたっけ。なら丁度良いし、私もそのアルバム…ってよりタイムカプセルについての話しでも友奈ちゃんにしようかな。」

 

友奈「本当ですか!?是非聞きたいです!」

 

こうして有咲達が来るまでの間、ゆりはタイムカプセルについてのとある出来事について話し始めるのだった。

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

タイムカプセルを埋めると決まった放課後、ゆりは夕飯の買い物を済ませて家路に着いていた。商店街を通り、公園を抜けた時、ゆりはため息を吐きながら歩いているイヴを見かける。

 

ゆり(あれは……イヴちゃん?)

 

トボトボ歩いているイヴ。イヴには、初めからタイムカプセルに何を入れようかアイデアがあった訳ではない上、香澄の話を聞いて、尚更どうして良いか分からなくなってしまったのだ。

 

イヴ「どうしましょう……。」

 

ゆりがイヴに駆け寄ろうとした時、ゆりより先にイヴに声をかける人がいた。

 

紗夜「かなりの難題ですよね。」

 

イヴ「え……。」

 

紗夜「ごめんなさい。驚かせてしまったかしら。」

 

背後から声をかけられ振り向くイヴ。そこには少し苦笑いをした紗夜が立っていた。

 

その姿を見たゆりは、出かかった足を戻し、距離を置きながら二人の様子を見守る事にする。

 

イヴ「どうかしましたか?」

 

紗夜「私も、何も思いつかないんです。」

 

そう言って、紗夜はイヴの隣に並んで、二人は歩き始めた。

 

紗夜「慣れてないんですよ……。」

 

イヴ「アイデアを出す事がですか?」

 

紗夜「思い出を残そうとする行為にです。」

 

紗夜の視線はひたすら自分の靴の先でも見ているかのように下ばかり向いていた。

 

紗夜「忘れたい事しかしなかったんです…私は。」

 

イヴ「そうですね……。」

 

二人の境遇は似ていた。イヴは、かつてイヴともう一人の自分しかいなかった時の事を思い出す。そこには、明日に繰り越したいような記憶は存在せず、ただただ今日という辛いだけの、苦痛でしかない一日が早く過ぎ去る事だけを願って膝を抱える自分しかいなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「…………綺麗ですね。」

 

イヴ「え……?」

 

いつの間に上を向いていたのか、紗夜が空を見て言ったのだと気がつく。真っ赤な夕陽が一面の景色を染めていたから。

 

ゆり(本当に綺麗……。)

 

紗夜「私は………元の世界では、夕焼けなんか嫌いでした。今日が終わるよ、明日が来るよ、って言われているみたいで。いつも私は、明日なんか来なければ良いって、ずっと思ってたんです。」

 

忌々しげな言葉とは裏腹に、穏やかな表情の浮かんだ横顔をイヴは黙って見ていた。

 

紗夜「ですが………今は、早く明日が来ないかしらって…毎日そう思っているんです。」

 

イヴ「はい…私もです。」

 

その想いはイヴも同じだった。

 

 

 

明日になったら何をしよう?ーー

 

 

明日は何処へ行こう?ーー

 

 

明日は誰と何を話そう?ーー

 

 

 

戦いを強いられ、この世界が怖くて嫌で仕方がない筈なのに、昔と違って明日が楽しみで仕方がない。何故なら、明日も明後日も、苦しい事や嫌な事より、楽しくて嬉しい事のほうがずっと沢山あるんだと、勇者部のみんなが教えてくれたから。

 

紗夜「勝手なものですよね、人間って。」

 

その時、夕焼け小焼けのメロディが鳴り響き、そのメロディに合わせて、幼い子供達が歌を歌いながら二人の横を駆け抜けていった。

 

その笑顔は眩しい夕陽に照らされ、素敵な明日が来る事を信じて疑わない、幸福の色に輝いている。

 

イヴ「………見つけられるでしょうか。未来へ送る物。」

 

紗夜「ええ。見つけられるでしょう。多分他の人より時間はかかってしまいますけど。」

 

子供達の歌声が遠ざかっていく。街を包む旋律が夕焼けをなぞり行くのを聞きながら、イヴと紗夜は小さく笑い合った。

 

紗夜「帰りましょうか、私達も。」

 

イヴ「はい!」

 

先程の子供に習ったのか、イヴははにかみながら紗夜の指先を自分の指で引っ掛け軽く揺らした。

 

紗夜「えっ……?」

 

少しだけ驚いた紗夜だったが、それを嫌がるでもなく自然と歩き出す。

 

ゆり(もう……二人は大丈夫だね…。流石私の名誉姉妹だよ。)

 

 

手を繋ぎ歩く二人の姿を、ゆりは何も言わず姿が見えなくなるまで見続けていたのだった。

 

 

ーー

ーーー

 

 

 

 

香澄「ふふっ……イヴちゃんと紗夜さんらしいな。」

 

ゆりが話し終わった丁度すぐ、遠くから有咲の声が聞こえた。

 

有咲「わりーー!遅くなったー!!」

 

香澄「遅いよ、有咲ーー!」

 

集合時間より遅れたのにも関わらず、のんびりやって来た有咲に向かい、頬を膨らませてぶーぶーと詰め寄る香澄。

 

有咲「ごめんって。お詫びにシュークリーム買ってきたからさ……って、友奈もいたのか。」

 

友奈「こんにちは!たまたま香澄先生と会ったので、アルバムについての話を聞いてたんです。」

 

有咲「そっか…。なら付き合わせたお詫びに一個やるよ。………って早く入って来いって!」

 

箱からシュークリームを一つ友奈に手渡しながら、有咲は言った。どうやら有咲の後ろにいる人物に声をかけているようだ。その声の後、その人物が校門の影から姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「あはは………いざってなったらちょっと緊張しちゃってさ…。」

 

香澄「まさかまた会えるなんて思ってなかったよ…………美咲ちゃん!!」

 

友奈「ええ!?あなたは確か西暦の勇者だった奥沢美咲さん!?どうして!?」

 

その人物はかつて西暦時代に北海道の旭川で孤軍奮闘していた勇者、奥沢美咲その人だった。美咲の姿を見つけるや否や、香澄は駆け寄り美咲に抱きついた。

 

美咲「うわっ……!自分でもまさか神世紀に生きてるなんて夢にも思わなかったよ。英霊之碑?だっけ、あまさか自分の家名が書かれた石碑を見るなんて思わなかったよ……。炎に包まれて死んだと思ってたんだから。」

 

ゆり「まさか地面に穴を掘ってたお陰で、理が再度書き変わった時に戻ってくるなんてね。」

 

香澄「確か有咲は防人のみんなと北海道に行ってたよね。」

 

有咲「ああ。それより積もる話もあるだろうけど後にしよーぜ。」

 

香澄「うん!美咲ちゃんには話したい事や見せたいものがいっぱいあるんだ!今日は長い一日になるよ!さぁ、行こう行こう!!勿論友奈ちゃんもね!」

 

友奈「はい!」

 

美咲「戸山さん!そんなに引っ張らないでよー!」

 

香澄「成せば大抵何とかなーーる!!先ずは今の勇者部を案内するから!」

 

 

神樹の世界でみんなが埋めたタイムカプセル。それは神樹の意志を越え、元の世界へ送られて平和な未来へと紡がれていったのである。奇跡の再会という思いがけない宝物を加えて。

 

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