基本は神樹の記憶編同様に最終章中に入りきれなかったお話です。
思い出のアルバム〜カッコ良い御先祖様〜
勇者部部室--
中たえ「……………はぁ。」
リサに召集され、部室に集まった勇者部一同。しかし、たえは曇った表情を浮かべながら端末を操作していた。
中沙綾「……?」
リサ「みんな注目だよ、注目!!友希那に注目だよーー!」
日菜「いきなりみんなを呼んでどうしたの、リサちー?」
蘭「湊さんに何かあったんですか?」
友希那「ええ。実は昨日大赦から書状が来たのよ。祭事で流鏑馬をやって欲しいとね。」
小沙綾「それは凄いですね!」
モカ「来週の祭事は厄除けと平和祈願の為のもので、流鏑馬を神樹様に奉納するんだって。」
昔から神に祈りや踊りを捧げる事で、神樹が持つ力は大きくなると信じられてきた。神樹の力が強くなると言う事は、相対的に勇者達の力も強くなると言う事である。
有咲「成る程なぁ。確かにそれは伝説の初代勇者に相応しい御役目だな。大赦が頼んでくるのも納得だ。」
リサ「そうでしょう、そうだよね!!はぁ〜……友希那の流鏑馬!異世界でも見られるなんて、感激しかないよ!」
夏希「流石風雲児様カッコいい!!ところで………やぶさめ?……って何?」
薫「やぶさめ………。とんでもない大きさのサメだろうね…。」
赤嶺「違いますよ、お姉様。走る馬上から的を鏑矢で射る儀式です。」
彩「私達も当日は巫女舞を奉納するんだ。だからみんなも見に来てね。」
花音「勿論!彩ちゃんの晴れ舞台だもん。千聖ちゃんも行くでしょ?」
千聖「ええ。防人組は全員で観に行くわ。」
あこ「あこ達も行くよ!友希那さん、頑張ってくださいね!」
高嶋「盛り上がってきたね!私達にも何か手伝える事ある?何でもするよ!」
ゆり「勇者部の依頼じゃないけど、平和の為なら全員で協力しよう。」
祭事の事で盛り上がる勇者達。ところがそれを他所にたえは相変わらず時々ため息をつきながら端末と睨めっこをしていた。さっきからそれが気になっていた沙綾はたえに話しかける。
中沙綾「おたえ?さっきからどうしたの?何かあった………?」
中たえ「え?う、ううん……何でもないよ。」
中沙綾「隠さないで話して。何があったの?」
真っ直ぐ自分の目を見つめる沙綾にたえは口を開く。
中たえ「………実はね。」
中沙綾「えっ!?お見合い!?」
中たえ「しーっ。正式なものじゃないんだよ。ただ、将来のお相手候補と1度顔合わせを………ってさっき連絡が来たんだ。」
中沙綾「でも、正式なものじゃないとしたって……ゆくゆくは…って意味じゃないの?」
中たえ「多分ね………。でも、友希那さんには言わないで。水を差したくないから…。」
中沙綾「そんな……。」
2人が話している最中、リサと友希那は祭事の打ち合わせの為に部室を後にする。祭事は来週の日曜日。その日まで部室は慌ただしくなるだろう。
香澄「あれ?2人ともどうしたの?」
中沙綾・中たえ「「………………。」」
香澄「?」
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2人は香澄に今までの出来事を話す。
香澄「え……?それって本当の話?冗談じゃなくて……?」
中たえ「残念ながら本当の話だよ。」
有咲「ちょっと、何こそこそ話してんだ………って何だこの重い空気は!?」
中沙綾「おたえ、友希那さんにはともかく、みんなには話しておいた方が良いんじゃないかな。」
中たえ「………………うん。」
たえは包み隠さず全員にお見合いの事について話し始めるのだった。
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一同「「「お、お見合いーーー!?」」」
紗夜「まだ中学生ですよ!?縁談なんて……。」
日菜「おたえちゃんは"花園家"だよ。由緒正しき大赦の中で最高位の名家だもん。そんな話があったって不思議じゃないよ。」
小たえ「私……に…?」
中たえ「ごめんね、まだ知らなくていい話だったのに。」
暗い雰囲気が広がる中、美咲は不思議そうに話す。
美咲「みんな暗くない?ここは異世界なんだし、あんまり問題ないっていうか…。」
燐子「そ…そうですよ…。元の世界に戻れば、ここでの出来事は無かった事になる筈です…。」
赤嶺「でも、だからって現実では有り得ない事だって言い切れないよ。」
イヴ「ここで起きた事は、元の世界でも起こるかもしれないって事ですか…?」
赤嶺「全く同じじゃないと思うけど、可能性は高いね。ましてやそれが"花園家"の伝統なら、尚更だと思うよ。」
千聖「じゃあ、これは現実のたえちゃんにも起こり得るかもしれないって事?」
高嶋「友希那ちゃんはこの事知ってるの?」
中たえ「言う事無いよ……だって、これは神世紀の…私の問題だし、それに…それに……ね。今までそんな事、全く思ってなかったんだけど私………友希那さんに会って感じたんだ…。この人の血を絶やしちゃいけないって。だから…………これで良いんだよ。」
薫「……好きでもない人と結ばれる事が本当に良い事なのかい?」
あこ「そうだよ!!もうちょっと良く考えた方が良いよ!」
夏希「まだ子供なんだから、別に恋愛結婚でだって……。」
小たえ「…………………。」
中たえ「本当にごめんね。でも…でもね、会ってみたら意外と好きなタイプで一目惚れするかもよ?」
蘭「それで、そのお見合いはいつあるの?」
中たえ「それが……来週の日曜なんだ。」
香澄「その日って…友希那さんの流鏑馬の日!」
中たえ「うん…だから、この事は友希那さんには内緒。余計な心配かけたくないから……。」
中沙綾「おたえ……。」
りみ「お、お姉ちゃん…どうするの……?」
ゆり「そうは言っても……当事者がそう言うんじゃ、私達が勝手な事する訳にはいかないよ…。」
小たえ「私……どうなっちゃうの?」
中たえ「さぁ……どうなるんだろうね。それは、私にも分からないよ…。」
様々な思いが駆け巡る中、時間だけが過ぎていき、祭事当日がやって来る。
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祭事当日、大赦--
広場には沢山の仮面を被った神官が並んでおり、若干の不気味さを感じてしまう。そして見物客もいつにも増して集まっており、一際賑わいをみせていた。
日菜「伝説の勇者を一目見ようと今日は人がすっごいね〜。」
赤嶺「無理もないよ。だって現実の世界じゃ絶対に会えない人なんだから。」
リサ「はぁ〜!白馬に跨る友希那……素敵すぎて動悸が…!」
馬とのコミュニケーションを終え、降りた友希那に神官が声をかける。
神官「友希那様、恐れながら間もなく祭事が始まりますので、お召し替えの方を…。」
友希那「分かったわ……。」
準備に移ろうとする友希那だったが、ふと周りを見回すとたえの姿がない事に気が付いた。
友希那「あら?花園さんの姿が見えないようだけれど……。」
有咲「ちゃえ!?た、たえは…アレだ!アレで急に……ね!ゆり!」
ゆり「あっ………たえちゃんはアレだよね!アレに違いないよ!そうだよね、りみ!」
りみ「ひゃいっ!え、えっと……おたえちゃんは………あの……。」
挙動不審な3人を見て、友希那はたえがまた何か企んでるのではないかと勘繰り出した。必死で部員全員で取り繕うも、我慢出来なくなった高嶋は口を開く。
高嶋「ごめん、みんな………。私、友希那ちゃんには知る権利があると思う。私達よりもずっと…。」
リサ「え?たえの身に何かあったの?」
中沙綾「ここまで隠してきたから、せめて祭事が終わってからと思ってたんですが……。」
友希那「…………?構わないわ。聞かせて頂戴。」
沙綾は今までに起こった事を全て友希那とリサに話し出したのだった。
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友希那「お見合い!?」
リサ「どうしてそんな大事な事を内緒にしてたの!?」
香澄「おたえの意志なんです…。友希那さんには心配かけたくないからって。」
友希那「それでその……結婚候補というのは…一体誰なのかしら?」
薫「相手とは今日初めて会うそうだ。」
友希那「初対面!?」
燐子「かなり歳上だと言ってました……。」
小たえ「…………御先祖様…私、怖いです。たえさん、私じゃないみたいだった…。」
友希那「一体どうして花園さんは急にお見合いなんて……。」
紗夜「あなたの為です。"花園家"……いや、"湊家"の血を絶やさない為ですよ。」
友希那「……っ!?」
そうこうしている間に流鏑馬開始の時間はもうすぐそこまで迫っていた。
神官「友希那様。間も無く神官長の祝詞が終わります。そろそろお召し替えを…何卒!」
友希那「…………。」
困惑する友希那。だが、その背中をリサは優しく押した。
リサ「友希那、後の事は任せて。自分の気持ちに正直にね。」
友希那「…………ごめんなさい、リサ。全く……!」
友希那は馬に跨り、その足で会場を背に駆け出して行った。たえがいる場所に向かって。
神官「友希那様!どちらへ!?」
リサ「予定は変更です。先に私達の巫女舞を今日はサービスでたっぷり踊っちゃうよ。」
神官「い、今井様!?そのような御冗談を仰っている場合では……。」
リサ「………良い?」
リサの目からハイライトが消える。これには神官も従わざるを得ない。何故ならば相手は"花園家"と双璧を成す"今井家"なのだから。
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とあるホテルのテラス--
同時刻、ここでは今まさにお見合いが始まろうとしていた。
仲人「しきたりの下に両本人と私、仲介人の初顔合わせを行います。どうぞごゆるりと御対話のほどを。」
中たえ「花園たえです。宜しくお願いします。」
西園寺「お初にお目にかかります。西園寺薫子と申します。お会いできるのを楽しみにしておりました。私は来年には父の会社を継ぐ予定ですが、家庭も大切にしたいと考えております。」
中たえ(堅実そうな人だなぁ……。寝室にオッちゃんは持ち込めなさそう。)
仲人「見れば見るほどお似合いのお2人。お世継ぎはさぞや美形になる事でございましょう。」
西園寺「神樹様と大赦の御期待に沿えるよう、精一杯の努力を惜しまぬ所存でございます。」
中たえ「左様ですね……。」
話していると、ふとたえは相手の様子がどこか変な事に気がつく。その時だった。やけにホテルの外が騒がしくなり、人の悲鳴も聞こえだす。
仲人「何やら外が………って、えぇーーーっ!馬ぁーーーーっ!?」
友希那「花園さんはいないの!?」
たえを探しに友希那が祭事会場からやって来たのである。
中たえ「友希那さん!?」
友希那「はぁ…はぁ……その見合い、ちょっと待ってくれないかしら…!」
友希那がテラスに降り立ったと同時に、反対側から更に騒がしい声が聞こえ出した。ウェイターが必死で止めるも、その静止を跳ね除けもう1人、見合いの席に乱入する。
?「薫子!薫子はどこ!?」
その人はどうやら薫子の知り合いのようで--
薫子「麗華!?どうしてここに…!」
彼女の名は本令院麗華。彼女もまた友希那と同じで、薫子の見合いを中止せんとするべく乱入してきたのである。
麗華「薫子が誰かの物になるなんて耐えられない!私と一緒に逃げましょう!」
薫子「そ、そんな……私だって気持ちは同じ。でも…だけど………。」
中たえ「あっ、良いんです、行ってください。そういう事ならお気になさらずに。」
友希那「行くわよ!」
中たえ「……はい!友希那さん!」
友希那は強引にたえの手を引っ張り、馬に跨りその場を後にするのだった。
薫子「あぁ……たえ様…あなたにも愛する方が。もう迷わない、麗華!私もあなたと共に!」
仲人・ウェイター「「…………………えぇ…?」」
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山道--
ホテルから飛び出した2人は再び祭事会場へと馬を走らせていた。
中たえ「友希那さん……どうして?流鏑馬は…?」
友希那は馬を止め、たえに話しかける。
友希那「よく聞いて、たえ。望まない婚姻でしか繋げない血の繋がりに、何の意味があるのかしら。あなたが愛せない相手と無理に結ばれるくらいなら、"湊家"の…"花園家"の家名なんて絶えて構わないわ!」
中たえ「ゆ、友希那さん………。」
中たえ(やっぱり友希那さんはカッコ良いな……。今ならリサさんの気持ち、分かるかも。)
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祭事会場--
中沙綾「おたえ!友希那さん!」
香澄「おたえーーー!心配したよぉー!」
ゆり「大赦の方!大赦の方ーー!風雲児様がやっと戻りましたよー!」
2人が戻ってきた事に安堵しつつ、今の状況を説明しだす勇者部一同。
蘭「モカ達が、延々と巫女舞を踊って時間を稼いでますから湊さん、早く!」
友希那「ええ。すぐに行くわ!」
小たえ「大丈夫でしたか……?」
中たえ「うん。少なくとも、今回の話は無かった事になると思うよ。」
あこ「あこ達も一安心だよ!」
そこへ時間を稼いでいた巫女達が戻ってくる。
モカ・彩「「「はぁ……はぁ…はぁ。」」」
六花「て、でら……しんどい……。」
リサ「お帰り、たえ!無事で何よりだよ。」
中たえ「リサさん……みんなもありがとう。友希那さんに助けて貰っちゃったよ。」
燐子「流石は友希那さんです……!決める時にはしっかり決めるその姿……まるで…。」
紗夜「白馬の王子様って事でしょうかね……。」
中たえ「その気持ち、すっごく分かります!カッコ良かったですから。」
有咲「珍しいな。顔が真っ赤じゃねーか。」
夏希「もしかして、自分の御先祖様にグッと来ちゃったんですか?」
中たえ「子孫のハートを鷲掴みにするなんて友希那は流石だなぁ。」
一同「「「あははっ!!!」」」
こうして、てんやわんやの1日が幕を閉じる。今日を通じて、結婚するなら友希那さんみたいな人が良いなと思うたえなのだった。