戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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誰にでも苦手な物の1つや2つあるものです。それは勇者だって例外じゃありません。もしかしたら、本能が嫌がってるかも。まるで未来を暗示しているかの様に。




思い出のアルバム〜恐怖の予防接種〜

 

 

勇者部部室--

 

ゆり「--という訳で、明日の予防接種は小学生から順番に体育館で……。」

 

風邪が流行る季節になってきた。今勇者部では、明日から行われる一斉予防接種についての説明がされている最中である。

 

りみ・小たえ・花音「「「はぁ〜〜〜〜ぁ。」」」

 

しかし部室内には重苦しい空気が流れていた。

 

美咲「溜息が深い!どうしたんですか?」

 

花音「どうもこうも……はぁ……。」

 

りみ「憂鬱ですね……。」

 

イヴ「はぁ………。」

 

日菜「イヴちゃんまで?珍しいね。」

 

イヴ「痛いのは……苦手です。」

 

中沙綾「注射が怖くて気が沈んでたんだね。」

 

モカ「まぁ、好きな人はいないから仕方ないけど、病気の予防の為だし我慢我慢。」

 

千聖「そうよ。身体を壊してしまったら辛い状態が長く続くのだから、一瞬で済む注射は耐えるべきよ。」

 

花音「千聖ちゃんの言う事も一理あるんだけど………。」

 

有咲「どう考えても病気で何日も寝込むより、一瞬の痛みの方が楽だろ。」

 

花音「人っていうのは非合理な物なんだよぉ?一理なんかじゃ納得出来ない人もいるんだよぉ………。」

 

蘭「何だか大袈裟ですね。もっと気を強く持った方が良いんじゃないですか?」

 

ゆり「はいはい。それで、明日はお風呂に入れないから、気になる人は朝にシャワーを浴びてきてね。」

 

香澄・高嶋・赤嶺「「「分かりました!」」」

 

注意事項を言い終わった時、あこが真剣な表情で手を挙げる。

 

あこ「はいはーい!」

 

ゆり「どうしたの?あこちゃん。」

 

あこ「あこ達はいつ襲撃を受けるか分からないです!だから激しい運動が禁止になっちゃう予防接種は無理だと思います!」

 

あこの言う事にも一理あった。予防接種後に激しい運動をすると、熱を出す危険性があるからだ。ましてや世界を守る為に命をかけて戦う勇者達はその危険性が一般の人より高いのは明白である。

 

あこ「それに注射の後で戦ったら、汗まみれになっちゃいます!なのにお風呂に入れないのはばっちいです!」

 

友希那「確かに、あこの言う事は筋が通っているわね……。」

 

あこ「だから………大赦に言って、勇者部は予防接種免除って事に……。」

 

ゆり「ダメだよ。」

 

珍しく最もらしい理由を振りかざすあこ。しかし、ゆりは食い気味で意見を却下する。

 

あこ「どうしてですかぁ!」

 

ゆり「病気が蔓延して勇者部全員が倒れちゃったら、それこそ大問題なんだから。」

 

小沙綾「あこさん、何だか様子が変ですね。」

 

中たえ「もしかして、注射が怖いの?」

 

あこ「………………………。」

 

徐々にあこの顔が青くなり、小刻みに身体が震えだす。どうやら図星だったようだ。

 

彩「あこちゃん、顔が真っ青だよ!?」

 

六花「あこちゃんも注射が苦手なんですか?」

 

赤嶺「何かちょっと意外。」

 

あこ「あこはこう見えても結構繊細なんだよ!」

 

小たえ「うぅ……分かります。注射って、痛いのと怖いのがミックスされてて、凄く嫌なんです。」

 

中たえ「成る程ねぇ。」

 

美咲「…………あれ?」

 

ここで美咲がある事に気がつく。同じたえでも、小学生のたえは注射を怖がっているのに、中学生のたえは怖がっていないのである。

 

美咲「同一人物なのに、どうしてなんだろう。」

 

中たえ「私は…………もう慣れちゃったから。」

 

高嶋「慣れかぁ……。うん!怖いのは慣れでカバー出来るかも!」

 

つぐみ「明日の本番に向けて、注射の練習をするって事?」

 

あこ・花音・イヴ「「「絶対イヤ!」」」

 

 

--

 

 

千聖「そもそも注射の練習ってどうやるの?腕にコンパスでも刺すとかかしら?」

 

りみ・小たえ「「ひえっ!?」」

 

モカ「それは……誰だって嫌ですよ。」

 

香澄「気は心って言いますからね。だったらまず軽いところからこうして………チックン。」

 

香澄は花音の腕を軽く突いた。

 

花音「香澄ちゃんの指注射?………うん、これなら全然平気だよ!」

 

香澄「りみりんにチックン!たえちゃんにチックン!」

 

りみ「痛くない!」

 

小たえ「これなら怖くないです!」

 

紗夜「はぁ……。こんな緩い練習で痛みと恐怖が克服出来るとは到底思えません。」

 

高嶋「紗夜ちゃんには私がチックン!」

 

紗夜「あ………ぁぁああ………はぁ……。」

 

有咲「滅茶苦茶効果的面じゃねーか!!」

 

友希那「この際、あこも受けてみたらどう?」

 

あこ「違うんです、そうじゃないんです!痛いのより、怖さの方が問題なんです!」

 

首を横に大きく振りながら、あこはみんなに怖さを力説する。

 

日菜「痛いのが怖いんじゃないの?」

 

小沙綾「先端恐怖症とかですか?」

 

あこ「怖いのは………注射オバさんなんです!消毒液を塗る看護師の人がすっごくおっかないんです!」

 

りみ「分かるよ。マスクで顔を隠してて、鋭い目が光って……。」

 

小たえ「腕を掴まれたかと思ったら、次の瞬間にグリグリって冷たい何かを塗り込まれる……。」

 

花音「ふえぇ〜〜〜っ!これはもう怪異だよぉ!」

 

ゆり「こらこら、看護師さんはお仕事でやってるんだよ。何百人も捌くのは大変なんだから。」

 

リサ「そうだよ。それに怪異だなんて……。」

 

夏希「なら、消毒液を塗る練習をしたらどうですか?」

 

あこ「ひぃ〜〜〜っ!ヤダヤダヤダーー!」

 

中沙綾「最初は平気な人が手本を見せたらどうかな。」

 

彩「じゃあ、私がやるよ!」

 

千聖「彩ちゃん、大丈夫?」

 

燐子「なら……私が看護師の役をしますね…。」

 

 

--

 

 

彩「お仕事お疲れ様です。よろしくお願いします。1年、丸山彩。今朝の体温は36度5分で平熱でした。」

 

燐子「そ…そうですか……。」

 

余りの手際の良さに若干燐子は狼狽えてしまう。

 

彩「お手間だと思うので、血管は自分で浮かせますね。えぃ、えぃ!」

 

蘭「流れがスムーズ過ぎる……。」

 

紗夜「丸山さんの背中に、白い羽根が見えます……。」

 

あこ「これは真似出来ないよぉーーー!」

 

薫「注射は、子供の頃は誰だって怖いものさ。」

 

友希那「そうね。私も昔はそうだったわ。」

 

リサ「懐かしいなぁ……。私が友希那の手を握ってたっけ。」

 

友希那「り、リサ!?それは内緒って話しでしょ!?」

 

ゆり「小さい頃は仕方がないけど、もう中学生なんだから。」

 

有咲「まさか泣いたりするのか?」

 

あこ「あこは泣かないよ!暴れるくらいだよ!」

 

燐子「それはダメだよ…あこちゃん……。」

 

次の瞬間、あこは自身の身に起こった衝撃の事実を口にする。

 

あこ「だって………前に歯を食いしばって我慢したら……力みすぎちゃって、注射の針が折れた事があって………。」

 

一同「「「えーーーーっ!?」」」

 

美咲「そんな事ってある!?」

 

あこ「あるある!痛みに耐える為に腕に力を入れたら、バキッて!それで折れた瞬間に針から血がピューって迸って、お医者さん達がみんな絶叫したんだから!」

 

想像の斜め上をいく事実に、今まで平気だった人達までも顔色が真っ青になってしまう。

 

千聖「確か蚊が血を吸い上げている最中に、力を込めると、口が抜けなくなって死んでしまうと聞いた事があるわ。」

 

中沙綾「じ、じゃあ……これは本当の話なの……?」

 

あこ「本当だよ!あの時は血で針がヌルヌル滑って中々抜けなくて………。痛いし、怖いし、床が血塗れで大変だったんだもん!」

 

りみ・小たえ・花音「「「う…あ……ぁぁ…。」」」

 

六花「な、何だか私も怖くなってきました………。」

 

香澄「わ、私も……。どうしよう…もしもそんな事になっちゃったら………。」

 

有咲「あ、あのさ………なんて言うか…その……明日の予防接種は…先送りに…とか。」

 

殆どの人の目から光が消え、身体の震えが止まらなくなる。

 

ゆり「うぅ……今そう言おうと思った…けど、ダメだよ………やるしかないんだよ。」

 

燐子「最初は…怖くなかった人達まで顔面蒼白になってます……。」

 

彩「だ、大丈夫。大丈夫だよ!一瞬で終わるんだから!」

 

あこ「その一瞬が大惨事に繋がっちゃうんです!血みどろの衝撃映像なんですから!」

 

夏希「ヤダヤダヤダヤダーーー!注射反対!!」

 

紗夜「掘り下げなければ良かったわね……。」

 

日菜「見事に藪を突いて、蛇がうじゃうじゃ出てきちゃったって感じだね。」

 

この後、リサが1時間半かけて全員を説得し無事に全員予防接種を受けましたとさ。

 

 

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