戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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面と向かっては言えない本当の心。
だけど、それをちゃんと言えたなら、また一歩、心の距離は縮まるだろう。




思い出のアルバム〜ホント ノ ココロ〜

 

 

勇者部部室--

 

それはある晴れた日の事だった。突然ゆりが深刻そうな顔をして部室のドアを開け入ってきた。

 

ゆり「鈴木さん家の九官鳥が逃げちゃった……。」

 

香澄・中沙綾「「え?」」

 

ゆり「と、言うわけで、今日の依頼は九官鳥探しだよ!捜索対象の名前はキューちゃん!」

 

開口一番依頼の説明をすると、みんな準備に取り掛かる。

 

美咲「九官鳥飼ってる人って、何でみんなキューちゃんって名付けるんだろう?」

 

彩「情報は名前だけなんですか?」

 

ゆり「後は、何種類か言葉を喋る事かな。鈴木さん、かなりのご高齢で、凄く気落ちしてなさったから、あんまり色々聞けなくて…。」

 

赤嶺「それは可哀想ですね……。きっと、可愛がっていたペットがいなくなって、寂しい思いされてますね…。」

 

友希那「そうね。ここは、何としてでも探し出さないと。」

 

紗夜「ですが……逃げてしまったのは、飼われたくなかったという事なのでは…。」

 

リサ「ともかく、お年寄りの方が悲しんでるんだから、見捨てておけないよ。探しに行こう。」

 

とは言うものの、探す相手は小さな動物。更には空を飛んで移動するのだ。勇者部は少数でいくつかの班を作り、広範囲を探す事にするのだった。

 

ゆり「じゃあ……日菜ちゃん、六花ちゃん、美咲ちゃん、彩ちゃんがA班。そして、友希那ちゃん、紗夜ちゃん……。」

 

班分けをしている時だった。友希那と紗夜が同じ班に入れられる瞬間。

 

紗夜「……私は湊さんとは別の班にしてください。」

 

友希那「え?」

 

小たえ「紗夜さん、どうしたんだろう?」

 

モカ「いつになくハッキリ言いましたねー。」

 

高嶋「紗夜ちゃん、鳥を探すの反対なの?」

 

紗夜「そうではありません…。ですが……湊さんとは別の班にして頂きたいだけです。」

 

異世界での御役目を通していく中で、段々と軟化した態度をとっていた紗夜だったのだが、今日はまるで異世界に来る前と同じ様なサバサバとした態度に戻ってしまっていた。

 

日菜「友希那ちゃんと何かあったの?」

 

蘭「最初の頃はこのやり取りも多かったし…すぐに仲直りするんじゃないんですか?」

 

薫「あぁ。2人とも、本当は仲が良い事は皆が知っているさ。」

 

紗夜「ソレとコレとは話が別です!兎に角……湊さんとは同じ班にはなりたくないんです!」

 

友希那「紗夜、その言い方はないと思うわよ。」

 

一触即発の中、高嶋が間に入り紗夜からこうなってしまった経緯を聞き出す。

 

高嶋「紗夜ちゃん、何かあったの?良かったら、私に話して…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「湊さんが………私の…私の……!大切なセーブデータを消してしまったんです!!」

 

あこ「な…何ですってーーーー!?つまりどういう事なんですか?」

 

それは昨日の事だった。紗夜が充電の為に、コンセントに繋いであったゲーム機を、偶然通りかかった友希那が蹴飛ばしてしまった。その衝撃が原因で、ゲームのデータが全て消えてしまったのである。

 

紗夜「そうなんです!」

 

友希那「それは何度も謝ったわ!それ程大事な物を、床に置いておくのも悪いんじゃないかしら?」

 

紗夜「くっ……開き直りましたね…!いつも神経を研ぎ澄ましている湊さんが、自分の足下も見えていないなんて…。」

 

友希那「ぐっ………。」

 

美咲「君子危うきに近寄らず……。」

 

香澄「で、でも!そのデータって、ゲームを進めていけば取り戻せるんじゃないですか!?」

 

高嶋「そうだよ、紗夜ちゃん!私も手伝うから、最初からプレイし直そう!」

 

紗夜「……もう、取り戻せません。」

 

高嶋「へ?」

 

通常ならば、やり直せばまた取り戻せるだろう。しかし、今回のデータは違った。そのデータの中には、全キャラクターのレベルカンストデータ。そして、西暦の時代に期間限定で入手した、特別コンテンツまで入っていたのだ。だから、例えやり直したとしても、元の時代に戻ったとしても、もう同じデータは手に入らないのである。

 

あこ「あ、あちゃー……。」

 

薫「大体理由は分かったよ。それで、紗夜ちゃんはその事で、友希那をずっと恨み続けるのかい?」

 

小沙綾「薫さん!?」

 

薫「謝っても許さないと言うのは、そういう事なのさ。」

 

紗夜「べ…別に過失その物は許します。ただ、遺恨が残ってるだけです……。」

 

りみ「そ、それは許してるって言うんですか……?」

 

蘭「だけど、もう二度と戻ってこないっていうのは……中々重いね。」

 

ゆり「………2人の事は分かった。だけど、これこそソレとコレとは話が別。まずは依頼が先決なんだから。」

 

有咲「そうだな。九官鳥探し……中々難しい依頼だし。」

 

千聖「そうね。相手は空を飛ぶ鳥なのだから。」

 

中沙綾「取り敢えず、鈴木さんの家から全方位へ広がって捜索しましよう。」

 

 

ゆり「それらしい鳥が見つかったら、各自連絡を取り合って、なるべく早く捕獲する事。いい?」

 

香澄「了解です!!」

 

友希那・紗夜「「……………。」」

 

2人の遺恨は残ったまま、勇者部の九官鳥探しの依頼が始まるのだった。

 

 

---

 

 

海岸沿いの道--

 

美咲「うーん……。犬とかだったら、下だけ見てれば良いけど、相手は鳥。上も見ないとだから大変ですよ。」

 

彩「それに、飛んでたら捕まえるのも難しいよね…。」

 

日菜「パンでも撒いてみる?」

 

六花「鳩と雀しか来なそうです…。」

 

そんなやり取りをしながら、暫く歩いていた。そんな時だった。

 

日菜「ねえ、彩ちゃん。九官鳥って何色だっけ?」

 

彩「黒じゃないかな。」

 

日菜「そっかぁ。じゃあ、あれは?」

 

彩「あれは……………カラスだね。」

 

美咲「よく見る筈なのに、どうして間違えるんですか……。」

 

日菜「だってー。九官鳥なんて普段見ないし。」

 

イヴ「ですが、カラスは良く見ます。」

 

日菜「ちょっとしたうっかりだってばー。でも、この辺りって結構カラスいるんだね。ほら、あそこにもいるし。」

 

日菜が指差した方向を美咲達は見る。すると--

 

カラス?「チョーテン ヘ クルイザケ!」

 

日菜「ええっ!?カラスが喋ったよ!」

 

六花「あ、あれはキューちゃんです!早く捕まえましょう!」

 

日菜「オッケー!すぐに変身して……!」

 

六花「だ、ダメですダメです!!奥沢さん、お願いします!」

 

美咲「なら、私の槍で……!」

 

六花「もっとダメですーーー!!」

 

すると、六花の大声に驚いたのか、九官鳥は何処へと飛び去ってしまった。

 

日菜・美咲「「あ。」」

 

六花「あ、じゃないです!早く他の班に連絡しないと!」

 

すぐに日菜はキューちゃんが飛んで行った方向付近を探している友希那達の班に連絡を入れる。

 

日菜「もしもし、友希那ちゃん!?キューちゃんがそっちの方向に飛んでいったよ!」

 

友希那『分かったわ。』

 

 

---

 

 

住宅街--

 

一方の友希那達B班は、住宅街を必死に走り回ってキューちゃんを探していた。

 

友希那「はぁ…はぁ……。キューちゃんは何処?」

 

キューちゃん「キューチャン!」

 

すると、友希那へキューちゃんの鳴き声が耳に入る。

 

友希那「この鳴き声は…!」

 

声の聞こえた方向を頼りに、友希那は公園へと入るのだった。

 

 

---

 

 

公園--

 

その頃、友希那が向かった公園では、先に紗夜が来ており、既にキューちゃんと相対している所だった。

 

キューちゃん「チョーテン ヘ クルイザケ!」

 

紗夜「えっ?………早く逃げなさい。逃げないのなら、捕まえるしかないですよ?」

 

紗夜は捕まえるか否か、未だに悩んでいた。その時、キューちゃんが再び言葉を叫ぶ。

 

キューちゃん「ヤサシイココロ!」

 

紗夜「え?」

 

キューちゃん「ヤサシイココロ ハ イイココロ!」

 

そんな事を叫ぶキューちゃんに対し、紗夜は自分の思いを吐露する。

 

紗夜「…………私の心は、狭いんです。狭くて、捻くれていて、他人に優しくする事が出来ない。そんなダメな心なんです…。」

 

キューちゃん「ゴメンネ!ゴメンネ!」

 

紗夜「ふっ………あなたが謝ってどうするんですか…フフフッ。」

 

そんな時、キューちゃんを探していた友希那がやって来る。

 

友希那「紗夜………あなた、笑っているの…?」

 

紗夜「み、湊さん!?立ち聞きですか!?」

 

友希那「あなたが勝手に喋っていただけでしょ?私はキューちゃんを探しに来ただけ…っ!」

 

再び一触即発の雰囲気が漂う最中、キューちゃんが口を開いた。

 

キューちゃん「ナカヨクシヨーネ!」

 

友希那・紗夜「「え…?」」

 

偶然なのか、キューちゃんが2人を仲裁したのである。

 

キューちゃん「キューチャン タカラモノ!ナカヨクシヨーネ!」

 

友希那「……飼い主にいつも言われていたのかしらね。あなたは宝物、仲良くしようね……と。」

 

紗夜「……………どうやら私の意見は完全に言いがかりだったようです。あの……湊さん……。」

 

キューちゃん「ゴメンネ!」

 

紗夜「っ!?……私はあなたに、いつまでも腹を立てて申し訳ありませんでした…。」

 

友希那「私こそ、売り言葉に買い言葉で突っかかってしまって、ごめんなさい…。」

 

キューちゃんに促される様に、2人は自分の非を認め、謝った。

 

友希那「だけど、私はあなたが、心の狭い人間だとは思っていないわ。きっと他のみんなだって…。」

 

紗夜「や、やっぱり聞いていたんですね!?」

 

友希那「紗夜は日頃から自己評価が低すぎるわ。」

 

紗夜「それは本当の事です。取り立てて秀でたところもない……。暗くて、頑固で、つまらない人間なんです……私は。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「私の仲間を、そんな風に言わないでちょうだい。」

 

紗夜「えっ……?」

 

友希那「氷川紗夜は勇者よ。それを悪く言う事は、仲間の私が許さないわ。例えそれが、あなた自身の言葉でもね。」

 

紗夜「湊さん……………。」

 

友希那「さぁ、早くキューちゃんを捕まえて、依頼を完了しましょう。」

 

紗夜「……そうですね。」

 

キューちゃん「ヒカワサヨ ハ ユーシャダ!」

 

友希那「フフッ……一度聞いただけなのに、言葉を覚えてしまったのね。」

 

紗夜「みたいですね。宇田川さんより頭が良いんじゃありませんか?」

 

友希那「だけど、勝手に新しい言葉を覚えさせてしまったわね……。どう謝ればいいかしら…。」

 

紗夜「私にも責任はあります。一緒に謝りに行きましょう。」

 

友希那「ありがとう、紗夜。」

 

キューちゃんを預かっていた籠に入れ、公園を後にする2人。

 

キューちゃん「ヒカワサヨ ハ ユーシャダ!ヒカワサヨ ハ ユーシャダ!」

 

2人が鈴木さんの家に行くまで、キューちゃんはこの言葉をずっと叫んでいたのだった。

 

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