---年前である。--の時代の資料によると、ずっと友達でいたい時は、ズッ友だよと言うらしい。何だか面白い言葉で気に入った。私達3人は、ずっと友達。今だって近くに感じてる。
勇者御記298年7月10日
学校--
沙綾「ありがとうね。黒板係の仕事手伝ってもらって。」
夏希「良いって。保健係は普段楽してるし。」
たえ「沙綾の並ばせ係はビシバシだけど……。」
沙綾「御役目には常に全力投球だからね。」
3人はたわいも無い会話をしていた。
たえ「そう言えば、4体目のバーテックス来ないね。」
夏希「もうすぐ遠足なんだけどなー。その時は来ないで欲しいね。」
もうすぐ6年生は遠足なのである。
沙綾「その遠足なんだけど。」
たえ・夏希「「?」」
沙綾「街を離れて大丈夫なのかな?」
たえ「勇者になれば大橋まであっという間だから大丈夫だよ。来て欲しくは無いけどねー。」
夏希「考えすぎちゃ何も出来なくなるぞー沙綾。」
沙綾「ん〜一理あるね。」
夏希「まぁ、何かあってもこの勇者様が何とかするから。」
たえ「わーお、夏希カッコイイー。」
沙綾「そうだね、私達3人なら大丈夫だよね。分かった、ありがとう。」
3人は気持ちを確かめ合う。
次の日--
たえ「はぁ〜〜〜。手の豆がチクチク痛いー…。今日の鍛錬は大変だなー。」
たえの手には豆が沢山あった。
夏希「槍の握り方を変えてみるとかは?」
たえ「先生が変えてもどうにもならないって。」
夏希「よしよし。痛いの飛んでけー。」
たえ「えへへへへー。」
その時、
沙綾「よいしょっと。」
沙綾がたえの机に分厚い何かを置いた。
沙綾「2人にはこれを渡しておくね。」
夏希「なっ、なんじゃこりゃー!」
沙綾「見ての通り遠足のしおりだよ。データ版は2人の端末に送っておいたからね。」
夏希「こ、これわざわざ作ったのかよ。」
沙綾「張り切って夜更かししちゃったから予定より分量が増えちゃった。」
たえ「広辞苑より分厚いよこれ。」
沙綾「さ、このしおりを活用してさっさと遠足の準備を済ませちゃおう。」
夜、海野宅--
夏希「これで準備オッケー。2人に連絡しておこうっと。」
(夏希)「遠足の用意が終わりましたわ。」
(たえ)「まぁ奥様、私もですわ。」
(沙綾)「ビニールも要りましてよ。」
夏希「ああ、何か汚れたもん入れたりか…。ビニールとか…。」
夏希「ん?」
夏希は弟の寝顔を見る。
夏希「ふふーん。何度見ても可愛いやつ。」
その時もう1人の弟、冬樹がやって来た。
冬樹「なぁ、姉ちゃん。お土産頼むよ。」
夏希「そんな事ばっか覚えて、こいつはー。良いだろう。」
冬樹「やったー!」
夏希「その代わり、ちゃんと弟の面倒見ろよ。」
冬樹「うん!そろそろハイハイするかな?」
夏希「かもね。楽しみだよ。」
遠足当日--
たえ「すぴー。」
案の定たえはバスの中で寝息を立てていた。
夏希「あはは……。」
公園--
アスレチックコースにて、3人はタイヤの中を進んでいた。
夏希「勇者としてはアスレチックコースで遊ばないと。」
沙綾「こういうのも面白いね。」
たえ「2人とも早いよー。ちょっと待ってー。」
たえは2人に遅れてタイヤの中を進んでいた。
たえ「わわわっ!揺れる、揺れるよー。」
クラスメイト「花園さん、そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。」
クラスメイトがたえを励ます。
たえ「落ちたら奈落の底って考えると結構なスリルがあるんだよ。」
クラスメイト「良い想像力だね…。」
その時、沙綾が、
沙綾「おたえ、5本目のタイヤは絶対に踏んじゃいけないよ…。」
たえ「えぇーー!?」
沙綾「触ったが最後。落ち武者の霊が夜な夜な枕元に立って、パンを寄越せ〜、と……。」
たえ「ひぃやぁぁぁぁぁ!!!」
夏希「沙綾。おたえを怖がらせてどうすんだ?」
沙綾「せっかくスリルを求めてるなら提供しようかなって…。」
夏希「ほら、おたえ。もうちょい!勇者は気合と根性!」
夏希がたえを励ます。
たえ「勇者は!気合と!根性ー!」
たえは勢いよくタイヤから飛び出し一回転。
夏希「よっと。」
夏希がたえをお姫様抱っこでキャッチし、
夏希「よしよし、お疲れさん。」
たえを降ろして頭を撫でる。
たえ「慣れたから次はもっとスムーズに行くよ。」
沙綾「む〜〜〜〜。」
たえと夏希の間に沙綾が入って来た。
夏希「何してんだ、沙綾。」
沙綾「仲良くしてるから私もと思って…。」
夏希「犬か、お前は。」
たえ「きっと沙綾も夏希に頭撫でられたいんだよ。上手いもんね、夏希は。」
夏希「何だ沙綾も案外甘えん坊さんだな。よしよーし。」
夏希は沙綾の頭も撫でる。
クラスメイト「夏希ちゃん、私達も受け止めてー。」
夏希「よし、任せとけー。」
沙綾「人気だね、夏希って。」
たえ「元から夏希は人気だよ。」
うんてい--
クラスメイト「ねぇ、夏希ちゃん。」
クラスメイトが夏希に呼びかける。
夏希「どしたー。」
クラスメイト「実は、夏希ちゃんのサインが欲しいって妹に頼まれちゃって…。」
夏希「えっ!?」
クラスメイト「大きな御役目についてるって聞いて憧れてるんだと思う。」
夏希「はっ!?そうか!私はもうサインする側の人間だったのか!」
うんていから一回転して飛び降りる夏希。クラスメイトから拍手が巻き起こる。
縄を伝って登るアスレチック--
たえ「これ登ったらお昼だね。」
夏希「よーし。よっと…。いやー、ちょっと簡単過ぎてなー。片手で登れるよこんなの。」
夏希は片手で登りだした。
沙綾「あっ、こら夏希。ふざけないの。」
夏希「へーきへーき。」
登っていく夏希だが、
夏希「っ!豆が…。っ!?」
豆が痛み、夏希は手を離してしまう。
夏希「おわっ!?」
沙綾「危ない!!」
辛うじて沙綾とたえがキャッチする。
沙綾「大丈夫!?夏希。」
夏希「うん…びっくりした……。」
沙綾は注意する。
沙綾「夏希、楽しいのは分かるけど浮ついちゃダメだよ。御役目の重さよく考えて。」
夏希「うん…借りは返すよ。そして反省します。後、口数減らします。」
お昼の時間--
クラスのみんなは焼きそばを作っている。
安芸「そうそう。上手ね、海野さん。」
夏希「時々手伝ってますからね。」
安芸先生が夏希を褒める。
夏希「はぁー!良い匂いだ!これ絶対美味いやつだ!何たって私が作ったんだもん!」
沙綾「夏希、口数減らすとかって言ってなかったっけ?」
たえ「わんぱくだよね。」
沙綾「おたえも充分わんぱくだと思うけど…。」
たえ「えぇ〜〜。」
沙綾とたえが話しているうちに、夏希の焼きそばが完成した。
沙綾「あーん。美味い!最高!」
たえ「美味しいねー。」
夏希「おたえはもっと良い肉を食べてるんじゃないの?」
たえ「この肉の方が美味しいよ。」
沙綾「みんなで食べてるからじゃないかな?」
たえ「おぉー!沙綾いい事言うー。沙綾も夏希も料理が出来て私は出来ないから、何だか自分が恥ずかしくなってきたよ。」
夏希「そんな事ないって。焼きそばぐらいたえにも作れるって。」
たえ「じゃあ、次の日曜日に沙綾と教えて?」
沙綾・夏希「「良いけど。」」
夏希「おっ、ハモった(笑)。」
全員「「「あはははっ!!!」」」
午後、再びアスレチック--
沙綾「ベルは3人で鳴らそうか。」
夏希「そうだな。」
たえ「アスレチック全面クリア!」
3人はアスレチックのてっぺんにあるベルを鳴らした。アスレチック制覇後、3人は公園の高台に登る。
たえ「沙綾、私達の街ってあっち?」
沙綾「そうだね。」
夏希「大橋やイネスは流石に見えないな。」
たえ「夏希って本当にイネスが好きだね。」
夏希「イネスは良いよ!なんたって…。」
沙綾・たえ「「公民館があるから!」」
沙綾とたえは声を揃えて言った。
夏希「何だよー。パターン読まれてきたかー。」
たえ「ねぇねぇ、私も読まれてる?」
沙綾「おたえは読めない。」
たえ「え?」
夏希「だな。きっといつまでも読めない。」
たえ「ふぁ!?それはそれで寂しい。」
沙綾「大丈夫。今の反応くらいまでは分かるから。」
たえ「ホント!?やったぁーーー!」
たえは飛び上がるほど喜んだ。
夏希「こっからの跳ね具合が予測不可能だ…。」
沙綾「さすがおたえ…。」
夏希「ちなみに、沙綾については取扱説明書が書けるくらいに詳しくなったぞ。」
沙綾「じゃあ、最初のページにはなんて書いてあるの?」
夏希「結構大変な代物ですので、くれぐれもご注意下さい。」
沙綾「面倒くさい人みたいな言われ方…。」
夏希「良いじゃん、奥行きがあって。私なんか多分新聞紙並みに薄っぺらいと思うぞ。」
沙綾「そんな事無いよ。分かりやすくなるけど、書く事はいっぱいあるよ。」
夏希「そ、そうかな…。」
沙綾「これからも色々な一面を暴いていこうと思う。」
夏希「うへー、お手柔らかに頼むよ。」
そんな中、突然たえが心の内を話し出した。
たえ「実は私、最初夏希が苦手だったんだよね。」
夏希「いきなり何だよー。」
沙綾「私も同じ。」
夏希「なぬー!?」
たえ「ほら、夏希ってスポーツ出来て明るくて、何だか種族が違う気がして。でも話してみたらこんなに良い人なんだもん。沙綾も良いキャラだしね。」
沙綾「私はキャラなの!?」
夏希「あはははは!!なるほどね。確かに話してみないと分からないよな、こう言うのは。気に入ってもらえたなら良かった。」
夏希は豆だらけの手を前に差し出した。
夏希「これからもダチ公として宜しく!」
たえも自分の手を夏希の手の上に重ねる。
たえ「こちらこそ!」
そして、沙綾も手を重ねた。
沙綾「宜しく!」
帰りのバスの中--
3人は疲れて眠っている。
その時、大橋の鈴の音が鳴り響いた--
3人はバスを降りて夕焼けの小道を歩いている。街には夕焼け小焼けのBGMが響いていた。
たえ「ふんふーん。楽しかったな。」
沙綾「おたえ、そんなにはしゃぐと転んじゃうよ。」
夏希「毎日が遠足だったら良いのにな。」
たえ「それ賛成!!」
その時、夕焼け小焼けが止まり、鳥も動きを止める--
沙綾「っ!?」
大橋の向こうから世界が割れる--
夏希「敵だ!」
3人は勇者システムを起動させる。
夏希「せっかく楽しい遠足だったのにー。」
夏希がボヤく。
たえ「最後の最後でこれなんて、意地悪だよ。」
たえもボヤく。
沙綾「家に帰るまでが遠足だよ、2人とも。」
沙綾が2人に注意した。
夏希「沙綾は先生か!さっさと終わらせてお土産、持っていかないとな。」
樹海--
夏希「段々この景色も見慣れてきたな。」
夏希が先行する。
沙綾「気をつけて、夏希。こういう時が…。」
夏希「1番危ない、でしょ。大丈夫。私の服は接近戦用で丈夫に作られてるから。」
沙綾「だからって油断したらダメだよ。アスレチックでも怪我しそうになったんだから。」
夏希「うっ……。」
たえ「夏希、最近沙綾に注意される様な事をわざと言っているみたいだね。」
夏希「あはははっ!何だか癖になってさ。沙綾に怒られるの。」
沙綾「勘弁してよ…。」
全員「「「っ!?」」」
その時、3人が気付く。樹海の奥からバーテックスがやってくるのを。
沙綾「2体!?」
現れたバーテックスは"蟹型"と"蠍型"。
夏希「そう来たか…。」
たえ「力を合わせれば2体だろうと大丈夫だよ!」
夏希「だな。早く倒して、遠足を終わらせよう!」