チョコを渡し想いを伝え合う勇者部達。それぞれの感情が絡み合いバレンタインは続いていく。
そしてその中で、とある計画も水面下で着実に進んでいるのだった。
無人島、キャンプ場--
日菜「むーーーん……。ぬーーーん……。」
他の人がチョコを渡したり、作ったりしている中、日菜は未だにチョコのアイデアが浮かばないでいた。
友希那「花園さん達を他の所に移す事は出来ないかしら?」
リサ「下手に動かしたら、その隙に逃げられちゃうかもよ?」
紗夜「成る程……。私と高嶋さんを調理場で目覚めさせたのは、既に自分が捕まる事を織り込み済みだったからですか。」
高嶋「でも、別に作るところを見るくらいなら許しても良いんじゃないかな。」
紗夜は溜め息を吐きながら、高嶋は苦笑いをしながらチョコを作っている。
友希那「香澄はともかく、紗夜も手作りなの?」
紗夜「な、何なんですかその顔は……悪いですか?」
友希那「いいえ…つくづく私は紗夜にとって力不足なリーダーだなと思ったのよ。あなたはこの世界に来て、ここで出会った仲間達に、良い意味で…変えてもらったのね。」
紗夜「…………余計なお世話です。」
照れ臭そうに紗夜は答えた。
友希那「そうね……ごめんなさい。」
高嶋「…………ねぇ、友希那ちゃん。チョコの中に何を入れたら良いと思う?」
友希那「………そうね…私はアーモンドが好きよ。」
紗夜「…………。」
リサ「香澄、フォローありがとね。こーれ、私からのお礼。衝突を回避させる香澄の気遣いには、いつも本当に助けられてるよ。」
コソコソと高嶋に話しながら、リサはチョコを高嶋に手渡した。
高嶋「私は何もしてないから、お礼なんて……。でも、チョコはいただきまーす!」
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一方で日菜はまだ悩んでいる。
日菜「あーーー!カツオも柚子も無いよー!どうやって作ろう…。」
小たえ「足りないものがありました?だったら……沙綾さん!」
中沙綾『こちら山吹。りょーかい、カツオと柚子を迅速にお願いします。』
たえに言われ、沙綾はトランシーバーで何処かに連絡をいれる。
日菜「沙綾ちゃん、何処に連絡してたの?」
中沙綾「大赦です。すぐに材料が来ると思いますよ。」
そしてものの数分で、空から大きな段ボールが落ちてくるのだった。
日菜「早い!もう来たよ!?」
香澄「凄い!これでチョコが作れますね、日菜さん。」
ーーー
無人島、海岸--
有咲「何で海なんだ……。」
薫「見知らぬ場所へ来たのなら、まずは海に行かないとね…。」
有咲「海は何処だって海だろ………って、入って行くなーーっ!」
薫「おや?だが、ワカメを……。」
有咲「ワカメは良いだろ!」
薫「いや、私は考えたんだ。今年はチョコフォンデュを……そして具材は海の物はどうかと……。」
有咲「それ、絶対美味しくないと思う。………思えば、この世界で随分長く過ごしてきたな。」
薫「そうだね。………有咲ちゃん、チョコ渡すんだろ?」
有咲「なっ!?だ、誰に!」
薫「………誰にだろうね。」
有咲「………私はまだ迷ってる所かな。薫は…今年もゆりか?」
薫「そうだね…。」
有咲「ブレないな。全く、ゆりの何処が良いんだ?」
薫「何処が…か……。」
有咲「まっ、どうせ海っぽい所とか言うんだろ?」
薫「いや…。」
有咲「違うのか?」
薫「ゆりの良いところは、有咲ちゃんの方が沢山知ってるんじゃないかい?」
その言葉で、有咲の顔が真っ赤になった。
有咲「ちょまっ!?そ、そんなの知るわけないだろ!?」
薫「そうかい?」
有咲「そ、そうだ!大体幽霊のユの字で気絶するし、うどんなんか34杯食べるし!すぐ泣くし、スピーチ長いし!お節介だし!依頼受けすぎだし!兎に角……ゆりはとんでもなく……!」
そんな時だった。
ゆり「…………とんでもなく…何?」
有咲の背後にはにこやかな笑顔のゆりが立っていた。
有咲「と……とととと飛んでも10分歩いて100分……ってなっ!?」
赤嶺「お姉様!やっと見ーつけた!」
ゆり「有咲ちゃーん………有咲ちゃんが私をどう思ってるか…よーく分かったよ。」
有咲「こ……これは…あはは……。」
薫「なんて仲の良い2人なんだ…。」
ゆり・有咲「「何処がだー!!」」
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それから数分、2人は足元の悪い砂浜を走り回りヘトヘトになってしまっていた。
イヴ「薫さん……コレをどうぞ。」
薫「おや?私にくれるのかい?」
イヴ「はい。……家族と言ってくれて、ありがとうございました。」
薫「気にする事ないさ。こちらこそ、家族になってくれてありがとう。」
"お帰り"と"家族"。この2つの言葉は今でもイヴの心の中に残っている大切な言葉。
赤嶺「お姉様……あのぉ…一緒に調理場に行ってくれませんか?」
そこにさっきまで口論していた有咲が戻ってくる。
有咲「はースッキリした。それじゃ赤嶺、イヴ、行くぞ。」
赤嶺「えっ…まだ私お姉様に用が…!」
有咲「良いから行くぞ!」
そう言いながら、有咲は赤嶺の服を引っ張り、薫とゆりを残して去ってしまった。
ゆり「ちょ……っ!はぁ…行っちゃった…全く元気だよね、みんな。」
薫「………そうだね。」
照れを隠す為に、ワザとらしい演技をするゆり。
薫「すまない、ゆり。」
ゆり「どうしたの?」
薫「まだ何も捕れていないんだ。」
ゆり「捕れてないって何が?」
薫「魚や貝、海藻さ。」
ゆり「それ捕る必要ある?もしかして、夜ご飯の心配してる?」
薫「いや……それでチョコフォンデュを、とね。」
ゆり「なんで全部海の幸なの!それ、絶対美味しくないから!」
周りには誰一人いない、2人だけの時間が流れている。
薫「ふふ…有咲ちゃんも同じ事を言っていたよ。」
ゆり「そうなんだ……。ねぇ、薫。私ね…勇者部のみんなが本当に好きなんだ。みんなは私の大切な宝物。だから誰にも後悔なんかさせたくない。」
薫「そうだね。ゆりは、思っている事を全力でやればいい。みんなも、勿論私も、全力で支えついて行くさ。そうすれば、後悔なんてする筈ない。絶対にさせない……戦いでも、日常でも。」
ゆり「うん。ふふっ……誰かにそう言ってもらえると、力が湧いてくる。いつもありがとう、薫。あなたに出会えて、本当に良かった。はい、これは私の気持ち。」
ゆりは薫にチョコの箱を手渡した。箱を開けると、中には三つ叉の槍を模したチョコが。
薫「ありがとう。……これはフォークかい?」
ゆり「三つ叉の矛だよ。ほら、街の皆さんに恩返しに行く時、薫はポセイドンの仮装してたでしょ?あれがさ……なんて言うか…か、カッコ良かったから。」
薫「それは嬉しいね。」
ゆり「やっぱり薫は海が似合うし、何か海関係の物あげたかったしさ。それで、今チョコフォンデュの材料探してるんでしょ?さっき通って来た山道に果物沢山成ってたから、それを使えば良いんじゃない?」
薫「本当かい?それは儚い知らせだ。」
ゆり「さて、それじゃあ早速準備に取り掛かろっか。」
薫「それも良いが……。」
ゆり「どうしたの?」
薫「もう少し、このまま海を見ていたい。ゆりと2人で。」
ゆり「っ!?………しょうがないなぁ…じゃあ、後少しだけね。」
薫は手を差し出し、ゆりはその手を取る。そうして2人は暫くの間海を見続けていたのだった。
赤嶺「………っ!?何あれ何あれ!どうしよどうしよ…何とかしなきゃ……。でないと………!」
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無人島、キャンプ場ーー
キャンプ場の調理場では小学生組がチョコのバラエティパックを開けパーティを始めていた。
リサ「楽しそうで良いね。」
夏希「はい、去年六花さんがバラエティパックを使ったって聞いて、天才だって思ったんです。」
六花「参考になって何よりです。」
その一方で、日菜は今度は送られてきたカツオの活用方法に悩んでいた。
日菜「うーーーーーん!!カツオを送ってもらったのは良いんだけど、丸々1匹のカツオをどうすれば良いのー!?」
つぐみ「日菜さん、氷河家に弱気は禁物です!作りましょう!最高のオリジナルチョコを!」
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無人島、公園ーー
ここはキャンプ場から離れた小さな公園。千聖と彩は散策の途中、休憩の為にこの公園に寄っていた。
千聖「無人島なのにこんな公園があるなんて……驚いたわ。」
彩「さっき案内板を見たんだけど、他にも色んな施設があるみたいだよ。」
千聖「騙された感はあったけど、これは案外普通に旅行も楽しめそうです良かったわ。」
彩「千聖ちゃん……騙してごめんね。」
千聖「気にして無いわ。今日はバレンタイン。楽しみましょ。」
千聖はバツが悪そうにしている彩にチョコを渡す。
彩「ありがとう、千聖ちゃん。私からもどうぞ。」
千聖「ありがとう。実を言うと、彩ちゃんのチョコ、楽しみにしてたの。一緒に食べましょうか。」
2人は包みを開け、チョコを口に運んだ。
彩「う〜〜〜ん!!千聖ちゃんのチョコ、イチゴ味で美味しい!!」
千聖「彩ちゃんが作ってくれたチョコも美味しいわ。そのチョコは色とカタチを工夫してみたの。種に見立てて細かく砕いたピーナッツを混ぜてあるわ。」
彩「凄い!私のチョコはミルクティーを混ぜたんだ。」
千聖「ふふっ、彩ちゃんも随分と料理が上手くなったわね。」
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無人島、キャンプ場ーー
日菜「でろ〜〜アイデアでろ〜〜〜。」
つぐみ「友希那さん、これ私からのチョコです。どうぞ。」
友希那「私に?ありがとう。でも、どうして私に?」
つぐみ「なんたって伝説の勇者ですから。尊敬する人に塩を贈るつもりで、塩チョコです。」
友希那「頂くわ。もぐもぐ………確かにチョコの甘さと塩のしょっぱさが…絶妙に混ざっているわね。」
つぐみ「伝説の勇者である友希那さんに、そう言ってもらえて嬉しいです。」
つぐみの友希那を尊敬する姿勢は、何処となく夏希に似ていた。
友希那「氷河さん……伝説というのは、後世の人が創り上げた物語に過ぎないんじゃないかしら?あなたの信念とその剣の腕なら、すぐに私なんかを超えてしまうわ。」
つぐみ「え?」
友希那「氷河さんが私を越え…その後輩が氷河さんを越える……。その繰り返しで未来はより良く平和になるのだから。」
リサ「はぁ〜〜〜〜友希那……カッコいい!カッコ良過ぎてもう無敵!」
夏希「器が大きいなぁ、友希那さんは。やっぱ憧れちゃいます。」
小たえ「流石は御先祖様。」
つぐみ「その言葉、胸に刻んでおきます。ところで……さっきから赤嶺ちゃんの姿が見えないんだけど?」
夏希「赤嶺さんなら、さっき川辺で見ましたよ。多分もうすぐこっちに来ると思います。」
つぐみ「そっか。じゃあもうちょっと待っててみようかな。」
ーー
数分後、キャンプ場に赤嶺と有咲、そしてイヴの3人が戻って来る。
赤嶺「離してよぉ!私、まだお姉様に用事がーーー!」
リサ「ちょっとちょっと、これは何の騒ぎ?」
イヴ「赤嶺が瀬田とゆりの邪魔をすっから、拉致ってきたんだ。」
有咲「お姉様お姉様って、薫の事となると人が変わりすぎだ!」
赤嶺「フンっだ。有咲とイヴが強引過ぎるんだもん!」
つぐみ「でも丁度良かった。赤嶺ちゃん、そろそろ甘い物が欲しくなってくる頃でしょ?はい、私からのチョレート。」
チョコを渡そうとするつぐみ。しかし、赤嶺は何故か中々つぐみからのチョコを受け取ろうとはしなかった。
赤嶺「え?あー……後でも良いかな?私、忙しいし。」
つぐみ「…………受け取ってくれないの?」
赤嶺「だって何で今なの!?少しは空気読んでよぉ……。」
つぐみ「どうしてもチョコ受け取ってくれないの?」
赤嶺「そこまでは言ってないよ!?受け取る!受け取るよ!どうもありがとう!」
何故か焦る赤嶺はつぐみからチョコを受け取った。しかし、今度は中々食べようとはしなかった。
つぐみ「食べてくれないの?」
赤嶺「え?」
高嶋「こ、こういうのって人前だと食べにくいよね、赤嶺ちゃん。」
赤嶺「う、うん……すっごく見られてるし。恥ずかしい……。」
つぐみ「…………………そっか。」
するとつぐみは踵を返し、キャンプ場を後にしてしまう。
赤嶺「あっ、つぐちん!?」
六花「つぐみさん!待ってください!」
つぐみの後を追いかけるように、六花もその場を後にする。
中たえ「あーあ……赤嶺さん、この落とし前はちゃんとつけないと、後が怖いよ?」
赤嶺「わ、分かってるよ!」
日菜「る…………るるるん………るん…?」
イヴ「おいおいおい……氷河、大丈夫かよ!?」
日菜「大丈夫大丈夫。ただ、すこーしだけ悩んでるだけだから。」
イヴ「ちっとは休憩しろよ?これでも食って休め!」
イヴは照れ臭そうに、チョコの箱を日菜に向かって投げる。
日菜「うわっ!?イヴちゃん…これって…。」
イヴ「前にお前、俺に説教しただろ。それがよ……割りかし何つーかよぉ……その…。」
まごまごしながらイヴは思い出す。それは以前日菜がイヴに話してくれた事ーー
ーー
日菜「もう1人のイヴちゃんは何も解ってない!」
イヴ「なっ…………!?な、何しやがる!離しやがれ!」
日菜「もう1人のイヴちゃんは、イヴちゃんを通してずっと私達を見てきたんでしょ?だったら……解って当然だと思うよ。」
イヴ「何をだよ……。」
日菜「千聖ちゃんをはじめ、防人のみんな。共に戦ってくれる勇者や、巫女のみんなが、イヴちゃんだけじゃなく………もう1人のイヴちゃんの事も大好きなんだって事。」
イヴ「…………っ!!」
日菜「私は許さないよ。簡単に消えた方が良いなんて口走る事は絶対に。」
イヴ「けどよ………俺がいる限りイヴは本当に強くなれーんじゃねえか……。」
日菜「だから、そうやって割り切ったふりで誤魔化そうって?勝手に消えるなんて絶対にダメだからね。もう1人のイヴちゃんも、勇者部の仲間なんだから。」
ーー
イヴ(頑張ってください…もう1人の私……。)
イヴ「あぁ……。何つーか、刺さってよぉ……。だからアレだ…あ……あんがと…な…。」
日菜「イヴちゃん……。」
イヴ「おめーのそんな真っ直ぐなところ…俺、嫌いじゃねーからさ……。」
日菜「ありが………っ!?」
その時、日菜に電流が走る。
日菜「るるるるんっ♪てきたぁぁぁー!!」
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無人島、森の中--
あこと燐子と別れた蘭とモカは、途中やって来た美咲と共に森の中である物を探していた。
蘭「無いなぁ……。」
モカ「探してはいるけど、カカオってどんな木なの?」
美咲「私も。それに、カカオの木なんてそこら辺に生えてるもの?」
蘭「分からないけど、チャンスだから。たえの島なら取り放題だし。カカオがあればチョコ作れるじゃん。」
蘭はこの無人島でカカオを見つけ、それを自分の畑で育てようと画策していたのだ。するとさっきキャンプ場を飛び出したつぐみと六花に出会う。
つぐみ「仮にカカオがあっても、そこからチョコを作るのに38時間はかかるよ、蘭ちゃん。」
蘭「つぐみ……そうなんだ…。まぁ、カカオを探して育てれば来年は自家製チョコが出来るかも。」
モカ「蘭はもう次の事考えてるの?来年もここにいるか分からないのにさー。」
蘭「未来の事を考えてれば、絶対に死ぬ訳にはいかないって思えるでしょ。種を撒けば芽が出て、実を結ぶのが見たくなる。だから私は、畑に種を撒き続けるのかもしれないね。」
モカ「もー蘭らしいなぁ。私も一緒に見るからね。いつも蘭と一緒に、沢山実のなった畑を。」
六花「………何て感動的なんでしょうか…!」
モカ「およよ?ところで、つぐ達は赤嶺さんとは別行動なの?」
つぐみ「……………赤嶺ちゃんなんて知らない!」
赤嶺の事を聞かれ、つぐみは頬を膨らませそっぽを向く。
美咲「一体何があったの?」
六花「それが……。」
つぐみに代わって六花が事の経緯を説明した。
ーー
蘭「赤嶺がチョコの受け取りを渋った?」
六花「そうなんです。それでつぐみさんは怒って飛び出して…。」
つぐみ「私はそれで怒った訳じゃないし、そもそも怒ってない!」
美咲「それにしても、赤嶺はどうしたんだろう?ダイエット中とか?」
つぐみ「それは無いよ。赤嶺ちゃん、この日の為に1ヶ月前から体を絞ってたから。」
モカ「虫歯とかー?」
つぐみ「それも無いよ。赤嶺ちゃんには毎日仕上げの歯磨きをしてるから。」
蘭「嘘……湊さんとリサさんを越えかねないよその行動………。」
つぐみ「でも、私が気になってるのは赤嶺ちゃんの態度じゃないよ。どうしてふーー」
薫「おや?こんな所で子猫ちゃん達に会うなんて奇遇じゃないか。」
つぐみが何か言いかけたところに、海からキャンプ場へ向かっていた薫とゆりがやって来る。
つぐみ「薫さん……。」
六花「そうです!赤嶺さんは、薫さんのチョコを1番に食べたかったからじゃないですか?」
美咲「ちょ……っ!仮にそうだとしても、氷河さんの前でそれ言っちゃう!?」
薫「私のチョコかい?私のチョコなら……美咲、君に。」
美咲「ええっ!?私に?しかも今!?」
薫「私は、美咲には覚えていておいて欲しいんだ。ここに仲間がいた事。共に戦った事を、私も美咲も故郷に持ち帰り、最後まで戦い抜こう………美咲。」
美咲「この想いを…持ち帰る。まぁ忘れたら後悔してもしきれないですからね……刻みつけておきますよ。」
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無人島、キャンプ場ーー
ゆり「ただいまー。誰か果物使いたい人いる?いっぱい採ってきたよ。」
薫「子猫ちゃんにここへ来てくれと言われたのだが……。」
両手に果物を抱えたゆりと薫がキャンプ場へと戻って来た。早速赤嶺が薫にすり寄って来る。
赤嶺「ねぇ、お姉様。友希那さん1人じゃ大変そうなので、たえをがっちり抱き締めておいてくれませんか?」
中たえ「えっ!?」
友希那「確かに何を仕出かすか分からないけれど………今のところは私が見ているし、そこまでは…。」
紗夜「いいえ。しておいて頂けると助かります。是非強めに拘束しておいてください。」
薫「………これで良いかい?」
薫はたえを後ろから羽交い締めにする。
中たえ「え………っ、な…何かイメージと違う……っ!?」
紗夜「これで安心ですね。さて、高嶋さん、行きましょう。」
高嶋「う、うん……。」
邪魔者が動けなくなり、2人は森の方へ行ってしまう。
赤嶺「良し……頑張ってね、たえちゃん…。」
キャンプ場にいる全員がたえ達に気を取られている中、赤嶺もこっそりキャンプ場から抜け出し姿を消すのだった。
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無人島、森の中ーー
紗夜「ふぅ……やっと花園さん達を気にする事のないバレンタインがやってきました。」
高嶋「今年は一緒にチョコ作りが出来て、もう私は充分楽しかったけど。」
紗夜「私もです。ですが、高嶋さんの為に作ったので、驚きはしなくても受け取って欲しいです。」
高嶋「勿論受け取るよ!それに私、ビックリより安心の方が好き。穏やかな時間って良いよね。」
2人は互いに作ったチョコを渡し合った。紗夜からすれば、去年は邪魔され想いを伝えられなかったバレンタインだったが、今年は無人島。周りに2人の邪魔をする者はいない。今年こそ紗夜は高嶋に思いの丈を伝えようと意を決する。
紗夜「そうですね。高嶋さん……私は…毎年後悔していたんです。いつも肝心な事をあなたに伝える事が出来なくて。だから今年こそはと、ずっとそう思っていました。」
高嶋「紗夜ちゃん?」
紗夜「聞いてください………。私はこの世界に来る前も、ここに来てからはもっと、ずっとずっと………高嶋さん…あなたの事が……っ!」
高嶋「あっ、チョコ溶けてきてる、大変だ!紗夜ちゃん、あーん♪」
紗夜「ぁむ……もぐもぐ………ほ、ほうじゃらくて……。」
高嶋「ねぇ、紗夜ちゃん………………幸せだね!」
紗夜「ほ、ほぅれふね……たかひまひゃん……♪」
高嶋「私にも食べさせてくれる?」
高嶋の行動はワザとなのか故意なのかは分からない。咄嗟の事で有耶無耶になりそうだったが、紗夜は引き下がらない。今年こそはと決めたのだ。
紗夜「喜んで!あっ………違います……今年こそは言うと決めたんです…どうか聞いてください、高嶋香澄さん!」
意を決した紗夜は高嶋を木に押し倒す。壁ドンならぬ木ドンの構えだ。
高嶋「はっ………紗夜ちゃんが…壁ドン……。っていうより……木ドン……。」
紗夜「は、初めて出会った時から、ずっと……ずっと…!私はあなたの事が大好ーー」
その時、思いも寄らない光景が2人の視界に入る。木の上から人が落ちてきたのだ。
高嶋「何!?」紗夜「何ですか!?」
?「痛たたた………。」
落ちてきたのはなんと赤嶺だった。
高嶋「赤嶺ちゃん!?どこから落ちてきたの!?」
赤嶺「ご、ごめん……邪魔しないように木の上を通ろうとしてたら、木ドンの衝撃で……痛い。」
高嶋「大丈夫!?すぐ手当しなきゃ!」
またしても邪魔され、想いを伝える事が出来なかった紗夜。その目は光を失い虚ろになっていたのだった。
紗夜「呪いです……私はバレンタインに呪われているんです…………!」