戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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まさかアプリの方でも刀使達が本当にやって来るとは……。

ショートアニメも始まりましたし、まだまだゆゆゆいは続きそうですね。




思い出のアルバム〜たとえ散ったとしても〜

 

 

勇者部部室ーー

 

香澄「とぉりゃあーーー!」

 

あこ「むむむ…悪の手先め!死んじゃえーーー!」

 

イヴ「るせーー!死ぬのはテメーだぁーー!」

 

休日でも勇者部は騒がしい。午前の依頼が終わり疲れているのにも関わらず、香澄達3人が部室でプロレスごっこをしていて暴れていた。これには流石のゆりも堪忍袋の尾が切れる。

 

ゆり「やめなさーーーい!静かにしろーー!!」

 

最年長の怒号が響き、流石に3人は大人しくなる。

 

香澄・あこ・イヴ「「「ご、ごめんなさい………。」」」

 

花音「叱られる時にイヴちゃんが出るなんて、もう1人のイヴちゃんの意味無いような……。」

 

夏希「…………………。」

 

そんな中、3人の姿を夏希は何か思う所があるかの様に見つめていた。

 

彩「みんなー、そろそろ3時だからおやつの時間だよ♪」

 

あこ「はぁー、遊んだ遊んだ。夏希、おやつの鯛焼き買いに行こー。」

 

あこは夏希を呼ぶが、夏希からは返事が無い。

 

あこ「おーい、夏希。夏希………?夏希!」

 

夏希「……………えっ。あ、ハイ!何ですか、あこさん。」

 

あこ「鯛焼きだよ鯛焼き!買いに行くから一緒に行こ?」

 

いつもであれば食いつく様について行く夏希だったが、今日の夏希はいつもと様子が違っていた。

 

夏希「あ………えっと、私今日は止めておきます。あんまりお腹減ってないんで。」

 

あこ「そうなの?でも鯛焼きの1つや2つペロって食べられるでしょ?」

 

夏希「いえ………あ、今日は寄りたい所があるので、先に失礼します。」

 

あこの誘いを断り夏希は部室を後にするのだった。あこの誘いを断ったのは後にも先にもこれが初めてだ。

 

小沙綾「どうしたんだろう、夏希。おやつの誘いを断るなんて。」

 

小たえ「多分今日発売の本でも買いに行くんじゃないかな。前から楽しみにしてたみたいだし。」

 

小沙綾「そうなの?なら心配する事ないかな…。」

 

ゆり「……………。」

 

夏希が出て行った後のドアを見つめ考え事をしているゆり。

 

リサ「ゆりさんどうかしました?もうすぐおやつが来ますよ。」

 

ゆり「………私、ちょっと行ってくるね。」

 

千聖「行くって何処へです?」

 

ゆりが部室を後にしようとしたその時、薫がゆりを引き止めた。

 

薫「ゆり、私が行こう……。」

 

ゆり「えっ、でも……。」

 

薫「私も少し思うところがあってね。行かせてくれないか?」

 

ゆり「そう………それじゃあ、任せたよ。」

 

薫「あぁ。」

 

薫の気持ちを汲み、ゆりは薫に任せる事にし、薫は部室を出て行く。

 

燐子「どうかしましたか…?瀬田さんはどちらへ……?」

 

小沙綾「あの……もしかして、やっぱり夏希が何か。」

 

小たえ「夏希に何かあったんですか?」

 

ゆり「うーん……まだ何とも言えないけどね。私達は、私達の出来る事をしよう。」

 

小沙綾・小たえ「「…………?」」

 

深みを持たせて答えるゆり。沙綾とたえにはゆりの考えている事が分からなかった。

 

 

ーーー

 

 

海岸ーー

 

部室を後にした夏希は海に来ていた。浜辺に腰を下ろし、水平線をじっと見つめている。そこへ薫がやって来た。

 

夏希「……………薫さん?」

 

薫「やぁ。隣良いかい?」

 

夏希「あ……はい。」

 

2人は無言のまま風に揺れる波を眺めている。日は落ちかけ、夕暮れが辺りを包み込んでいた。

 

薫「波の音は……落ち着く。」

 

夏希「ですね……。」

 

薫「何かあったのなら、私に話して欲しい。夏希の気持ちを聞かせてくれないかい?」

 

薫に言われ、夏希は口を開く。

 

夏希「……………何かその…急に自分が嫌になっちゃって…。」

 

薫「嫌に?」

 

夏希「その………私達、一度は元の時代に戻るところまで行ったじゃないですか…。」

 

薫「あぁ。」

 

夏希「私………みんなには"運命変えてみせる"なんてカッコつけて言ったくせに………帰されなくて実は……安心してた事に気付いちゃったんです……。」

 

 

ーー

 

 

河原ーー

 

夏希「たとえ頭が覚えてなくたって……心が覚えてる!!確かに私だって2人と離れたくはない!だけど、2人には笑ってこれから生きて行って欲しい!!未来はどうなるか分からない。私は最後まで抗ってみせるよ!!」

 

中沙綾「はっ!?」

 

夏希「どうよ!」

 

中沙綾「頭で覚えてなくても、心が覚えてる……か。」

 

夏希「2人も私を信じて!!笑って現実に送り出せってね!運命変えてみせるから!」

 

 

ーー

 

 

それは造反神との決戦直前、勇者達同士で河原で戦った時、夏希が元の時代に帰る事を拒んだ沙綾とたえに向かって言い放った言葉。

 

元の時代に戻れば夏希は死んでしまう未来が待っている。だけど夏希は世界を、友達を守る為に敢えて戻る事を選択したのだった。

 

しかし今、再び異世界に戻った事で夏希の気持ちは揺らいでしまっていた。

 

夏希「そしたら…………。」

 

何故揺らいでしまったのか。薫にはそれが分かっていた。だからゆりの代わりに夏希を追いかける役目を買って出たのだ。

 

薫「遊びで"死ね"や"死ぬ"という言葉を聞いて…………辛くなったんだろう?」

 

夏希「……………………すいません。私もずっと普通に言っていたのに、勝手ですよね…。」

 

薫「そんな事ないさ。」

 

夏希「"死ぬ"とか"死ね"って言うのが、不謹慎だって思ってる訳じゃないんです。けど……みんなもいつ傷付くか、この世界でだって死んじゃうかもしれないのに………私を含めて、そういうの……口に出して大丈夫なのかな……って。」

 

自分の本音を薫にぶつける夏希。薫はそれをすぐに肯定も否定もせず、突然自分が元の時代にいた時の出来事を話し始める。

 

薫「……………こうして静かな海を見ていると、いつもこころを思い出すんだ。」

 

夏希「こころさんって………薫さんが以前話してくれたあのこころさんですか?」

 

薫「あぁ。こころと私は、丁度こんな夕焼けの海で出会ったんだ。」

 

薫は思い出す。初めてこころと出会ったあの日の事をーー

 

 

ーーー

 

 

沖縄、南城市外れの海岸ーー

 

薫「はぁ………。」

 

それはまだ薫が小学生だった頃だった。幼い頃の薫は内気で、話す事が苦手だった。その為友達と呼べる存在もおらず、いつも1人で過ごしていた。

 

何かあると薫はいつも海に入り、潜ったり漂ったりしていた。海は優しく、身も心も包んで自分を癒してくれる。薫はそんな海が小さい頃から大好きだった。

 

しかし、海にずっといる事は出来ない。海から上がると、再びやり切れない、空っぽになった喪失感を抱えてしまう。そんな時だったーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「あら?どうしてあなたはそんなに悲しい顔をしてるのかしら?」

 

薫「え……?」

 

薫が顔を上げると、そこには太陽の様に明るい笑顔をした少女が立っていたのだ。

 

こころ「悲しい顔なんかしないで、あなたも笑いましょう!私は弦巻こころ!世界中を笑顔をする事が私の夢!だからあなたも笑って頂戴!」

 

それがこころと初めて出会った瞬間だった。薫とは正反対の少女に薫は何も言えず、思わずどもってしまう。

 

薫「えっと……。」

 

こころ「あなたの名前を教えて!」

 

薫「薫……瀬田薫…。」

 

こころ「薫!とっても良い名前ね!友達になりましょ!」

 

薫「……………うん!」

 

そう言ってこころは手を差し出す。そして薫もその手を握り握手を交わした。こうして薫に初めての友達が出来たのだ。

 

そこから薫の人生は大きく変わった。こころを通じ笑顔が増えたからなのか、以前とは違う明るい性格になり友達も増えた。

 

薫「あぁ。海は良い。誰も拒まず、全てを包み込んでくれる母なる恵だからね。」

 

こころ「そうね!この海で獲れる魚を食べるとみーんなが笑顔になるものね!」

 

何処へ行くにも2人は一緒だった。薫とこころ、2人はいつも一緒に遊び、笑って過ごしてきたのだ。

 

 

ーーー

 

 

海岸ーー

 

夏希「薫さんの話だけで伝わってきます。そのこころさんはとっても素敵な人だったって事が。」

 

薫「私とこころはいつも一緒だった。私が勇者になってからもね。私はこころに何度も助けられたんだ。勇敢さや優しさ……大切な事は全てこころから教えてもらったよ。」

 

夏希「だからこそ……亡くなってしまった時は寂しかったですよね…。」

 

薫「こころは私を庇って亡くなってしまった。だが、こころは私の中で生きている。」

 

そう言いながら薫は胸に手を当てる。

 

薫「"世界中を笑顔に"というこころの意思は私が受け継いでいるんだ。そしてこころも私の傍でずっと見守ってくれている……そう私は思っている。」

 

夏希「え……?」

 

薫「たとえ死が訪れたとしても、気持ちは誰かに受け継がれ残っていく。絶対にね。」

 

夏希「死んでも………気持ちは残る?」

 

薫「あぁ。肉体は消えてしまう。だが、こころは自分の想いが私に残る事を解っていた……。だからこそ、私の傍でずっと一緒に居続けてきたんだ。」

 

薫は笑顔で話し続ける。しかし、その瞳はうっすらと潤んでいる様にも見えた。

 

薫「私達もいつか何処かで散ってしまうかもしれない。だが、その魂はと共に戦った仲間達の中で生き続ける。リレーの様に、想いのバトンは受け継がれていく。だから恐れる事は無いよ、夏希ちゃん。死は……終わりではない。」

 

夏希「薫……さん…。」

 

薫「それに、私は思うんだ。"死ぬ"や"死ね"と口に出す事は……そんなに悪い事では無いのではないかとね。」

 

夏希「どうしてですか?」

 

薫「死が近くにあればある程、どんな楽天家でもそんな言葉は怖くて口に出せなくなる。だけど、今はそれを感じていないからこそ……死を笑い飛ばしていられる。この日常は、誰から不謹慎と言われようが…誰から咎められようが…私達勇者にとっては良い状況なんだからね。死など………遊びだと笑っていられる方が良い。私達にはまだまだ来ないと、そう思ってれば良いんだ。その気持ちの強さと笑顔がきっと………死を遠ざけるに違いない。私はそう思うよ。」

 

その言葉は薫自身に訴えている様な気もした。だけど、夏希の不安はその言葉で何処かへと消えてしまった。緊張が解けたのか、夏希は肩の荷が降りたかの様に大きく笑う。

 

夏希「は………はは、は。あははははは!凄いなぁ、薫さんは。モヤモヤしてた私の気持ち、今ので吹き飛んじゃいました。」

 

薫「力になれて幸いだ。」

 

夏希「ありがとうございました!もう、あんまり怖くない。死んでも、絶対みんなにくっついて行ってやります!」

 

薫「その意気だ。さぁ、みんなが待ってーー」

 

?「「おーーーーーい!!」」

 

戻ろうとした時、彼方から2人を呼ぶ声が。沙綾とたえだった。2人の後ろからゆりもやって来る。

 

小たえ「おーーーい、夏希ーーー!」

 

小沙綾「ご飯の時間だから帰って来てーーー!」

 

ゆり「薫もねー!今日は寮でお鍋だよーーー!」

 

夏希「はーーーーい!今行きまーーーす!行きましょっか、薫さん。」

 

薫「そうだね。」

 

夏希は駆け出し、少しした所で立ち止まり振り返る。

 

夏希「薫さん。」

 

薫「ん?なんだい?」

 

夏希「話してくれてありがとうございました!私も頑張ってみます。"世界を笑顔に"する事!」

 

夏希は笑顔で言った。薫にはその笑顔が一瞬こころに重なって見えたのだった。

 

 

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