"またね"
この言葉がとても切なく感じますね。
主題歌も相まって、涙無しには見られないです。
樹海に現れたるは"蟹型""蠍型"2体のバーテックス。静かにゆっくりとその巨体は神樹を目指していた。
たえ「私と夏希がそれぞれ1体ずつ相手するから、沙綾は遊撃で援護してね。」
たえは2人に指示しバーテックスに向かっていった。
たえ「行くよ、夏希!」
夏希「おうよ!」
バーテックスは樹海を枯らしながら進んでくる。"蠍型"が尻尾を伸ばして攻撃してくるが、たえは槍を傘に変化させ、その攻撃を防いでいく。
夏希「よし、私は気持ち悪い方と戦うぜー!」
たえ「どっちも気持ち悪いんだけどなー。」
夏希は"蟹型"に向かっていった。
夏希「そおぉぉぉりゃぁぁぁ!!」
"蟹型"のハサミと夏希の斧がぶつかり合い火花を散らす。
夏希「分かりやすい!私向きだ!」
その間に沙綾はチャージした矢を"蟹型"に向かって放つ。矢は命中し、爆発してダメージを与えた。
夏希「ナイス、沙綾!はあぁぁぁぁ!!」
斧を力一杯ぶつけ、"蟹型"の体制を崩す。
夏希「よし、もういっちょ…うぁ!?」
夏希が追撃を入れるする前に"蠍型"が夏希に向かって尻尾で攻撃してきた。
たえ「夏希はやらせないよ!」
が、たえが間に入り、尻尾の攻撃を受け止める。
夏希「うひゃー、当たると痛そうだなー。」
2人が近接で相手をしている間に沙綾は力を溜める。矢を"蠍型"に放ち、当たった部分をたえが間髪入れずに槍で突き刺す。
たえ「そこっ!」
2体のバーテックスには確実にダメージは入っていた。
沙綾(今のままなら優勢。このまま押し切る!)
しかし、2体も黙ってやられているだけでは終わらず暴れているが、的が小さい為に中々当たっていない。
夏希「訓練の成果が出てる!このまま押し切ろう!」
その時だった。
全員「「「なっ!?」」」
遠方から無数の針が降ってこようとしていたのだ。
たえ「まずい!」
たえは走り出し、
たえ「沙綾!夏希!私の所まで!」
2人もたえの意図を察して側に駆け込む。次の瞬間、針の雨あられが3人を襲う。
たえ「間一髪……。」
夏希「まさかもう1体いるのか!?」
3人が周りを見渡すが、周りには"蟹型"と"蠍型"しか見えない。
沙綾「くっ!こちらの視覚の範囲外から打ってきている。」
夏希「これじゃあ、迂闊に攻めれないよ!」
沙綾「落ち着いて、夏希。何か手はあるはず……。」
そうは言っても敵は待ってはくれない。針の雨の2撃目が飛んできた。
たえ(くっ、これじゃあ2人を守りきれない。もっと…もっと大きな傘が必要だよ……。)
たえは防ぎながら必死で考えているが、答えが見つからない。幸いな事に針の雨が降っている間は他の2体のバーテックスが動きを止めているのは不幸中の幸いであった。
たえ(沙綾の矢じゃとても防ぎきれないし、夏希は接近戦向きだから相性が悪すぎる………そうだ!)
たえは閃いた。
たえ(沙綾の矢が思いを込めて威力を増すなら、私の槍だって…。)
たえの槍を握る手に力が入る。
たえ(守るんだ……絶対守るんだ!)
次の瞬間、3人を守る傘が大きくなっていった。
沙綾「おたえの盾が…。」
夏希「デッカくなった…!?」
たえ「そうだよ。沙綾の矢が思いを込めるほどに威力を増すなら、私の槍だって思いを込めれば強くなるはず!」
針の雨が再び止む。そして"蟹型"と"蠍型"も再び動き出す。
夏希「よし、今の内に!」
3人が突撃する。
沙綾(針の雨は連続しては来ないはず、ここは今の内に1体だけでも…。)
3人はそう思っていた。相手はバーテックス、あれだけ訓練した3人のチームワークには敵わないだろうと。だが、相手はバーテックス。生物の頂点に君臨するバーテックスなのだ。そこに三度針の雨が降ってくる。
たえ「みんな、固まって!」
3人は固まって防ぐが、その時"蠍型"が尻尾を針の雨へと伸ばして来たのだ。
夏希「あいつ、自滅してるぞ。」
沙綾「バーテックスが仲間に危害を加えるなんて…。」
沙綾と夏希はそう口にしたが、たえだけはこの敵の行動を怪しんでいた。
たえ(何で、あいつは自分の尻尾を?)
"蠍型"の尻尾は針が貫通し、棘上になっている。
たえ(はっ!?まさか!)
たえが気付いた時には既に遅く、"蠍型"は針が刺さったままの尻尾を3人に叩きつけて来たのだ。
たえ「まずい!みんな逃げて!!」
たえが叫ぶも3人は吹き飛ばされてしまう。
たえ「くっ!」
夏希「がはっ!」
沙綾「あっ!」
"蠍型"は空中に飛ばされた沙綾とたえに追撃で、尻尾を叩きつける。
沙綾・たえ「「きゃあああああっ!!」」
2人は更に吹き飛ばされてしまった。
夏希「沙綾!おたえ!」
ダメージが少なくて済んだ夏希は飛ばされた2人の元へと駆け寄る。
夏希「大丈夫か!?」
何故今までは単独で来ていたバーテックスが今回複数で来たのか。バーテックスは学習したのである。勇者の力を。チームワークを。バーテックスは連携するという事を覚え、実践して来たのである。沙綾とたえの身体からは血が流れ、とても戦闘を続けられる状態ではなかった。
夏希「沙綾!おたえ!」
沙綾・たえ「「うっ………。」」
その時、奥から姿を現さなかった3体目がゆっくりと姿を見せた。
夏希「あれが、3体目…。」
3体目のバーテックス、"射手型"が上口から巨大な針を発射する。夏希は斧をクロスに合わせて防御体制を取り何とか耐えた。夏希は2人を抱え、樹海を滑り降り地面に下ろす。
沙綾「夏希……。」
沙綾が目を覚ました。この間にも3体のバーテックスはゆっくりと神樹の方へ進んでいる。
夏希「動けるのは私の1人…。ここは怖くても頑張りどころだろ。」
夏希は覚悟を決めた。
たえ「夏希…1人じゃ……。」
夏希「私に任せて沙綾とたえは休んでて。」
夏希は駆け出し、一旦止まって何かを思い出したかの様にもう一度沙綾とたえの方を向いた。
夏希「またね。」
そう言うと夏希はバーテックスを追いかけていった。
沙綾「な、夏希………。」
そこで沙綾は気を失ってしまった。
たった1人でバーテックスを追いかけて行く夏希。
夏希「あいつら…。」
少しづつ進行して行くバーテックスを夏希は樹海の根を伝って追いかけて行く。そして夏希は先回りし、3体のバーテックスの前に立ちはだかったのだ。
夏希「随分前に進んでくれたけどなぁ…。」
夏希が両斧を構える。バーテックスを見据えて、足元に1本線を引いた。
夏希「こっから先は…!通さないっ!!」
夏希はたった1人で"蟹型""蠍型"そして"射手型"を相手に飛びかかって行った。"射手型"が無数の針を飛ばしてくる。
夏希「おおおおおおっ!!」
太ももや頬を針がかすめ、流血するも夏希は怯まず向かって行く。次に"蟹型"が反射板を飛ばし攻撃してきたが、避けて攻撃を加え吹っ飛ばす。
夏希「その攻撃は覚えた!!」
間髪入れずに"蠍型"が尻尾で攻撃してくるも、夏希はバク転してこれを避けて身体の一部を斧でぶった切った。
夏希「それで襲ってくるのも!見たよ、さっき!!」
"射手型"が針を発射するが、夏希は斧を投げ、針を跳ね返し斧は"射手型"に刺さる。再び"蠍型"の尻尾攻撃。避けて尻尾を伝っていき、
夏希「何上から見てんだ!!」
左手の斧を"射手型"へ振り下ろす。そして、投げた斧を掴み引き抜いた。
夏希「っ!?」
"蟹型"は反射板を使い夏希を押し潰そうとするが、飛んで避ける。しかし、着地した瞬間に"蠍型"の尻尾攻撃が炸裂し、間に合わず斧で防御するも、腕をかすめ血が流れる。
夏希「ぐあっ!!」
何とか堪え、
夏希「や、やったなぁ!!」
"射手型"の針の発射と同時に走り出す夏希。
夏希「痛かったんだぞ!!」
"蟹型"の下を走り抜ける。この時"蟹型"に"射手型"が発射した針が突き刺さる。
夏希「自分達で受けてみろ!!」
夏希は"蠍型"の尻尾を斧ではじき返し、尻尾の針が"蠍型"に刺さる。
夏希「お前達はここから…。」
斧が炎を纏う。
夏希「出て行けぇぇぇぇぇっ!!!」
それで"蠍型"を滅多斬りにする。
しかしその時、"射手型"の針が夏希の左の脇腹を貫いた。
夏希「ぐっ!!」
"射手型"が放った針を"蟹型"が反射板で跳ね返し、針の軌道を変えたのだ。脇腹に刺さった針が消え、そこから血が吹き出す。と同時に"蠍型"の尻尾に叩きつけられ吹き飛ばされる。
夏希「がっ!ぐはぁ!!」
血を流し倒れる夏希。目の前には"蟹型""蠍型"そして"射手型"の3体のバーテックスが体制を整え見下ろしていた。
夏希(こいつらが神樹様を壊せば……。)
夏希の頭に浮かんでくるのは沙綾やたえ、安芸先生、クラスメイトに両親。そして幼い弟達ーー
夏希(させるもんか…絶対………!)
血を流しながら、それでも前に進んで行く夏希ーー
夏希「させるもんか…!絶対!!!」
"射手型"が針を飛ばしてくるのを右手の斧で塞ぎながら前へ走り出す。
夏希「くっ!」
針が足をかすめよろけそうになるも、踏ん張り斧を構える。
夏希「帰るんだ!守るんだ!!」
斧を振りかぶり、"蠍型"の攻撃に合わせる。尻尾に斧を当て、尻尾をぶった斬る夏希。続けざまに"蟹型"のハサミが迫るが、屈んで躱す。
夏希「化け物には分からないでしょ、この力が!!」
後ろから"射手型"の針が迫り、背中から腹部を貫かれ、血が吹き出す。
夏希「ぐふっ!!」
夏希「これが…これこそが、人間の!」
針が足を貫く。
夏希「くっ!」
夏希「気合と!!」
夏希「ぐっ……!」
斧を振り上げるが、腕に針が刺さり血が溢れる。
夏希「根性と!!」
背中にも針が刺さるーー
血が吹き出すーー
それでも夏希は戦い続けるーー
夏希「魂ってやつだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
樹海ーー
目を覚まし、傷付いた身体で歩く沙綾とたえ。
沙綾「敵は……。」
辺りは静かさに包まれていた。
たえ「っ!?」
たえは地面に着いた血の跡を発見する。
たえ「沙綾、あっち!」
その血の色はかなりの時間が経ったのか、赤黒く変色していた。血の跡を辿る2人。
沙綾「夏希……。」
たえ「すぐ行くからね……。」
地面に落ちた血の色が段々と増えていく。
たえ「っ…………!っ!?」
たえが夏希を見つけた。2人に笑顔が戻る。
沙綾・夏希「「夏希ー!」」
2人は夏希の名を呼びながら近付いていくが、夏希から返事が聞こえてこない。
たえ「夏希が本当に追い払ってくれたんだね!」
沙綾「凄い…凄いよ、夏希!本当に…………?」
沙綾・たえ「「……………?」」
夏希からの返事は一向に帰ってこない。
沙綾「夏希……。もうすぐ樹海化が解けるよ。そしたら一緒に病院へ行こう。ね………?」
たえ「そ、そうだよ……。お土産だって弟くんに渡さなくちゃ…。」
地面に刺さったままの斧ーー
夏希の右腕が無かったーー
沙綾「あっ……………。」
たえ「うっ……………。」
2人の目から涙が溢れる。夏希から返事はないーー
たえ「私、お料理教えてもらうって…。」
沙綾「そうだよ…。っ…次の日曜日に3人でって…。ねぇ、夏希…。」
沙綾「夏希…………。」
たえ「っ……!」
沙綾・たえ「「うあああああああああああっ!!!!!」」
樹海に2人の慟哭が響き渡ったーー