久々に描きたくなったので、丁度良い感じのものを挟んでみました。
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花咲川中学勇者部。主な部活内容は困っている人たちを助ける仕事。だが、その裏で彼女たちは今日も人知れず襲い来るバーテックスから四国を守る為、戦いを続けている。
今日も今日とて突如樹海化警報が鳴り響き、勇者たちは樹海へと消えていった。
彩「神樹様……今日も勇者たちをお守りください。」
モカ・リサ・六花「「「戦闘中に怪我しないように、どうかお願いします…。」」」
残された巫女たちは、命をかけて戦う勇者たちの無事を神樹に祈っていた。
彩「巫女の人数も増えてきて、少し賑やかになったね。」
数分の祈りの後、彩がそうこぼす。
リサ「うんうん。何よりも心強いし神樹様に感謝だね。」
樹海ーー
一方の樹海では、"防御特化型"のバーテックスに勇者たちは苦戦していた。
千聖「くっ……中々に硬いわね!」
友希那「陣形が崩れているわね。前衛は一旦下がって体制を立て直すわよ!」
燐子「前衛が下がります…!後衛は左右に分かれて援護射撃を……!」
前衛と後衛、2人の指揮のもと勇者たちはバーテックスから距離をとる。
中沙綾「撃ちます!!」
追撃してくる星屑を後衛が蹴散らしながら前衛は後退するが、逃しまいと今度は"大型"が攻め込んできた。
高嶋「"大型"がっ!?誰か手を貸して!」
中たえ「私が上がる!この先へは行かせないから!」
たえが殿を務め、勇者たちはなんとか体制を立て直すことに成功。そしてトドメの一撃が入る。
友希那「全員総攻撃!これでトドメよ!!」
勇者部部室ーー
なんとかバーテックスを打ち倒した勇者たちは部室へと帰還。巫女たちがそれを出迎えていた。
リサ「みんな、今日もお疲れ。」
友希那「ええ。リサたちもありがとう。……ふぅ。」
ここまで苦戦したのは久しぶりだったのか、勇者たち全員が大きく息を吐き出した。中には床に腰を下ろす人までいる。
モカ「大変だったんだね。今お茶持ってくるから。」
有咲「………みんな、ここ数日何か変じゃないか?」
ゆり「そうだね…敵が強くなってきてる。」
2人が感じている通り、ここ数日バーテックスの襲ってくる頻度が増し、更にその度に敵が強くなってきているのだ。今までは何とか退けられているが、これが続けば流石の勇者たちもタダでは済まなくなってしまうだろう。
彩「そうなの?私はてっきり人数も増えて、みんなの戦いがスムーズになるかと思ってたのに……。」
六花「……原因はそのせいなんだと思います。」
彩「え!?」
六花「私達羽丘中の3人が増えました。巫女も増えて祈りの力も上がった筈です。祈りの力は神樹様と勇者の力に直結します。だけど、それ故に敵もまた……。」
当然そうなれば自然と中立神側も戦力を上げて対抗してくる。勇者たちが苦戦するのも当然だった。
つぐみ「私達の増援が敵の強化になってしまうのは癪ですけどね……。」
リサ「だけど、3人が来てくれなかったら中立神が本気を出した時に一瞬でやられてたかもしれないよ。」
紗夜「そうですね。言い換えれば、敵の思惑通りのタイミングで本気を出されなくて良かったと思っておきましょう。」
日菜「だけどこれからどうやって戦っていこうか。今日は何とか勝てたけど、連戦になったらどうなるか…。」
花音「連戦!?ふえぇ〜連戦は無理だよぉ…。」
みんなが今後の対策を考える中、1人浮かない顔をしている人物がいた。
彩「…………………。」
千聖「……?」
リサの部屋ーー
その日はこれ以上の戦闘は無く、無事に1日が終わろうとしていた。日も落ちかけた頃、リサの部屋を誰かがノックする。
リサ「ん?どうぞー。」
彩「……。」
入ってきたのは彩だった。彩は未だに浮かない顔をしていた。
リサ「彩?」
彩「ごめんね……今日の事でリサちゃんに相談したい事があるんだけど、良いかな?」
リサ「勿論。どうかした?」
彩「あれからみんなは、戦力強化の特訓をするって言ってたんだけど、今でもみんなは沢山頑張ってる。だけどすぐにこれ以上強くなるなんて事は………。」
リサ「確かにね。ここまでレベルを上げてきた結果が今日の事だから……すぐには無理だろうね。」
勇者たちはこれまでに満開の力を手にし、模擬戦を経て"凶攻型"を打ち倒しここまでやって来た。その結果が今日の苦戦だったのだ。
彩「そうだよね……。でも、それなら巫女がもっと頑張らないとだよね?あっ、だけど私たちが祈れば敵も強くなるし…。」
徐々に彩の顔から焦りの色が見え始める。
彩「リサちゃん……私はどうしたら良いんだろう?」
リサ「…………彩はどうしたいの?」
彩「私は……千聖ちゃんの…勇者たちの力になりたい。少しでもみんなが傷付かずに済むように、もっともっと力をつけて、役に立ちたい…!」
リサ「巫女の強化は、恐らくこの戦いにおいて一つの分岐点になると思う。アタシたちの強さが敵より勝ってれば、自然と戦況は優位になると思う。」
彩「…………っ!そ、それって…もし……巫女の力が少しでも弱かった場合は……。」
リサ「彩…弱気は禁物だよ。」
彩「そう…だよね……。だけど、私……あれからずっと頭に…。」
彩の声が震え出す。
リサ「え?」
突然彩はリサの腕を掴み、急くような声色で訴えかけた。
彩「リ、リサちゃん!私、強くならないと。強くなるにはどうしたらいいの!?」
リサ「そうは言っても、巫女の力も勇者の力と同じですぐに磨き上げる事は……。」
彩「………………そう、だよね……。」
掴んでいた手を離し、彩は俯いてしまった。それを見たリサは1つの事を提案する。
リサ「でも、このままだと不安だろうからアタシがやってる修行を試してみる?」
彩「えっ…うん!リサちゃんと同じの……是非やらせて!」
さっきまで暗かった彩の表情が一気に明るくなった。
リサ(力の増強はともかく、彩には明るく前向きでいてもらわなきゃ……。それは巫女の力よりも、勇者にとって何よりも大切で必要な事なんだから。)
彩「私頑張る!一生懸命修行して、神樹様と勇者たちを助けるために!」
次の日、大赦修練場ーー
ここは大赦にある巫女たちの修練場。巨大な滝があり、大赦の巫女たちは毎日滝に打たれながら祝詞を唱え修行に励んでいる場所である。そこに彩の姿があった。
彩(頑張らないと………頑張らないと…。)
冷たい滝に打たれながら、彩は精神を集中させる。すると突如辺りが静かになり、何処からか声が聞こえてくるのだった。
?『何をそんなに頑張るの……?』
彩(修行をして魂を綺麗にしないと、みんなの役に立てないから……!)
?『でも、そんな事で役に立てるのかな…?本当に私で大丈夫なの?』
彩(そ、それは……え!?)
段々と辺りが鮮明になっていく。そして彩の目の前に自分と同じ姿をした"何か"が立っていたのだ。声はその何かーー"丸山彩"から発せられていたのだ。
彩?『ちょっと考えたんだけど、私の力ってそれ程高いわけじゃ無いと思うんだ。潜在能力じゃモカちゃんには敵わないし、リサちゃんみたいに物事を深く考えるのも苦手だもんね。』
彩(……うん。)
彩?『だったら、急に修行してもあんまり意味無いんじゃないかな?』
彩(そんな事無いよ。ちょっとだけでも底上げ出来れば、何か良くなる筈だよ。)
彩?『もし、それが誰かの迷惑になったら?』
彩(えっ……迷惑に…?)
そこでもう1人の彩の声は途切れ、同時に彩の意識も途切れてしまった。
千聖「……ちゃん。彩………ん。……………して、彩ちゃん。」
彩「…………千…聖ちゃ……ん?」
目が覚めた彩は千聖に担がれているところだった。
千聖「良かった、気が付いたのね。」
彩「どうして、千聖ちゃんにおんぶなんて…?」
どうやら修練場で気を失っていたところを千聖が見つけ、運んでいるようだった。
千聖「良いから大人しくしてて。寮まで連れて行くから。」
彩「私………どうしたんだろう。」
千聖「水垢離の最中に気を失ってたのよ。きっと体が冷えてしまったのね。」
彩「あ…………。」
千聖「リサちゃんの修行を実践してるって聞いて様子を見に来たんだけど、良かったわ。」
彩「ごめんね………千聖ちゃん。」
千聖「謝ること無いわ。気分はどう?どこか痛みは?」
謝る彩に千聖は攻めるでも問い詰めるでも無く、優しい声をかけた。
彩「大丈夫だよ…。」
千聖「そう、良かった。」
その時、彩の内にあの言葉が蘇る。
ーーー
ーー
ー
彩?『もし、それが誰かの迷惑になったら?』
ー
ーー
ーーー
彩「っ!?」
千聖「彩ちゃん?」
彩「な、何?」
千聖「体調が悪い時は、水をかぶっちゃいけないわね。修行は自分のペースでしないと。」
彩「うん………頑張る…よ。」
千聖「少し眠ってなさい。」
そう言って千聖は眠った彩を寮まで送り届けるのだった。
彩の部屋ーー
ベッドに彩を寝かせた後、千聖はリンゴを彩のために剥いていた。すると彩が目を覚ます。
彩「ごめんね…………千聖ちゃん。」
千聖「良いのよ、彩ちゃん。これくらいなら私でも出来るから。」
彩(本当だったら、巫女である私が千聖ちゃんの世話をしないといけないのに…。)
彩「いつも逆にお世話してもらっちゃって…こんな事じゃダメだよね………。」
千聖「出来たわ。中々上手いものでしょ?寝たままで良いわ。はい。」
千聖は寝ている彩の口にウサギの形に切ったリンゴを運んだ。
彩「もぐもぐ……リンゴのウサギ…。冷たくて美味しい……。」
千聖「そう。調子が悪くても、出来るだけ食べないとね。」
リンゴを食べると、彩は段々とうとうとしていき目をつぶってしまうが、寝まいと頑張って起き続けようとしていた。
千聖「大丈夫よ。眠くなったらそのまま眠っても。」
彩「そ、そんなのダメだよ……。こんなにしてもらってるのに。」
千聖「良いから気にしないの。手を握っててあげるから、安心して休んで。」
彩「で、でも……。」
中々寝ようとしない彩に対し、千聖は少し昔話をするのだった。
千聖「……内緒なんだけど、私、小さい頃は熱を出すのが少し楽しみだったのよ。」
彩「え?どうして?」
千聖「いつもは寡黙で口数の少ないパパが……その時だけは頭を撫でたり手を握っててくれて…心配してくれてるんだって、実感できたの。今思うと、何だか恥ずかしいんだけれど。硬くてゴツゴツとした職人の手。だけど、とっても優しくて温かい手……。それが、凄く安心できたの。」
彩「千聖ちゃんの手も、いつも私を凄く安心させてくれる………いつだって。」
千聖「でも、彩ちゃんは申し訳なく思ってるんでしょ?」
彩「うん……でも、それは私が不甲斐なくて……情けないせいで…。」
千聖「具合が悪いと、誰だってそう思ってしまうものよ。でもね、"そんな事もある"って、大きな手でリンゴを剥きながらパパは言ってくれたわ。」
彩「このウサギのリンゴはお父さんから?」
千聖「そう。それが私なんかよりもずっと上手でね。やっぱりパパは凄いって思ったものよ。」
彩「千聖ちゃんだって……とっても凄い…よ。誰よりもずっと……だから私…。千聖ちゃんの力にもっとなれるように…早く強くならなくちゃ………。」
千聖「私も熱を出した時は、迷惑をかけたと感じて謝ってたわ。だけど、パパは黙ってそんな私を抱きしめてくれたわ。お互い照れ臭くて、顔も目も見れないのに体温だけが妙に心地良くて………本当にまいったわ。」
彩「ふふっ。お父さんには会った事ないけど、なんだか目に浮かぶ気がするよ。」
千聖「パパがした事はたったそれだけなのに、私にとってはそれが物凄い活力になった。パパにとっても、私が生きて元気でいる事がきっとエネルギーその物だったのかもしれないわね。」
彩「エネルギーその物……。」
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そんな話をしている最中、また樹海化警報が鳴り響き、彩の表情が一気に緊張してしまう。
千聖「連日の戦闘ね……。彩ちゃんはここで休んでて。約束よ。」
そう言いながら、千聖は彩に小指を差し出した。
彩「千聖ちゃん……。」
千聖「また起きて倒れたら、今度はいくら彩ちゃんでも容赦無く雷を落とすわ。じゃあ、行ってくるわね。」
彩「気を付けて………。」
彩も小指を出し、2人は指切りを交わし千聖は戦いへと赴くのだった。
彩「千聖ちゃんにもそんな頃が……。お父さんにとっての千聖ちゃん…。」
樹海ーー
つぐみ「案の定、畳み掛けるような連戦だね。このままなら安心だよ。」
安堵するつぐみとは正反対に赤嶺は慌てていた。
赤嶺「なんで!?このままどんどん来られたら、押し負けちゃうよ!」
美咲「いや、時間を空けずに来たのはここで私たちを仕留めたいって焦りの現れだよ。」
中たえ「そうだね。つまり現状、敵にはこれ以上激しい戦略や隠し球が無いってこと。」
あこ「それなら、この戦闘で敵を一気に片付ければ決着がつくんだね!」
それを聞いた勇者たちの士気が一気に上がり始める。
友希那「みんな、行くわよ!!」
勇者たち「「「おーー!!!」」」
彩の部屋ーー
一方、彩は夢の中で再び自分の幻影に会っていた。
彩?『私が成長していないせいで、みんなが負けちゃったらどうしよう………。誰かが怪我でもしたら私は…。』
彩(大丈夫……きっと大丈夫…。あの暗いビジョンは、私の弱さが見せた幻なんだから…。)
彩?『どうしてそんな事が言えるの?何の根拠があるの?どんな自信があるの?』
彩(私には無いよ…何も無い………だけどね、千聖ちゃんの手………私を撫でてくれるあの手……何度もマメを作っちゃって硬くなった手が言ってた。絶対負けたりしないって。だから信じてって。だから私は信じる。信じられるんだ。私なんかに出来る事は、千聖ちゃんを……これまで頑張り続けてきたみんなの歩いてきた道を信じて、一生懸命祈り続ける事。迷ったり悩んだりする事も大切だけど、それが祈りの邪魔になったら意味ないと思うから。)
絶対帰る。大切な人がそう言ってくれたから。自分の力をまだ信じる事は出来ない。だけど、大切な人が言ったその言葉は信じられる。だから彩は信じてただ祈り続ける。
すると幻影の彩の様子に変化が現れた。
彩?『あぁ……本当だね。本当にそうだ。私、どうしてこんなに焦っちゃったんだろう……?』
さっきまでそこにいた暗く哀しい顔をした彩は居らず、代わりに目に光を宿し、明るく微笑む彩が立っていた。
彩(それは…多分私が自分を他の人と比べちゃったから。でも、それをさせてくれて……ありがとう。)
彩?『え?あなたをいっぱい悩ませちゃった私にどうしてお礼なんて?』
彩(あなたと向き合えなかったら、私はいつまでもみんなに迷惑かけてばっかりだったから。)
彩?『そっか。私も、あなたの心に私みたいな気持ちがあるんだって、知ってもらえて良かったよ。』
彩(自分のやり方、考え方じゃないと、私の力は出せない。千聖ちゃんが私にしてくれるように……私のやり方で。)
彩?『うん………そうだね。』
そうしてもう1人の彩の幻影は消えていった。そして彩の意識もそこで途切れしまうーー
彩の部屋ーー
千聖「………ちゃ…ん。彩…………ちゃ…ん。」
日菜「彩ちゃん、しっかりしてーー!!」
彩「はぅあ!?」
日菜の声に驚き、彩は言葉にならない声を上げ起き上がった。
イヴ「氷河テメー声がデカすぎんだ!!病人の耳元で何してんだよ!」
花音「ふえぇ〜、良かったよ彩ちゃん!!寝てる顔が安らか過ぎるから心配しちゃったよぉ!」
千聖「お早う、具合はどう?」
熱も下がり、体調はすっかり良くなっていた。
彩「うん、良くなったよ。それで、私少し考えたんだけど……。私に出来る事はやっぱり、祈る事。みんなを信じて…信じて。信じる事なんだって。」
千聖「そう……ふふっ。彩ちゃんにそう思ってもらえれば、私はどんな敵にも絶対負けないわ。」
イヴ「まぁ、巫女って奴はよ、どっしり構えてっから心強いんだが、丸山にはそのまんまいてほしいもんだぜ。」
イヴ「彩さんは私たちみんなの天使なんですから。」
日菜「さて、彩ちゃん。少しは食べれそう?私たち防人特製の出汁粥の準備が出来てるよ!」
彩「ありがとう、日菜ちゃん。実は……お腹ペコペコなんだ♪」
千聖「沢山食べて、早く元気になってね。そうすればきっと、思うように修行も出来るから。」
彩「うん!千聖ちゃん、これからもお父さんみたいに私を優しく見守っててね。」
千聖「………勿論よ。」
そう言って、千聖は彩を抱きしめた。
彩「………温ったかい…。それにとても安心する…。」
千聖「彩ちゃんは、貴重な安らぎをくれる巫女。あなたこそ、私たちの大切なエネルギーよ。だから……。」
彩「うん、もう絶対に無理はしない。みんなの為に元気でいるって約束する。」
彩(焦らずに……それでも頑張る。私もやっと、みんなの気持ちに追いつけた気がするな…。丸山彩。防人の巫女として、これからもきっと成長していくよ。だから見守っててね、千聖ちゃん……。)