戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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りみは悩んでいた。姉であり、大所帯の勇者部をまとめる部長でもあるゆりは毎日忙しなくしているという事に。

そんなりみを見た有咲は、りみの為に一肌脱ぐのだった。




思い出のアルバム〜部長を支えるのは〜

 

勇者部部室--

 

りみ「う〜ん………。」

 

スマホと睨めっこをしながら唸っているのはりみ。何やら真剣な表情で調べ物をしている。そこへ有咲がやって来た。

 

有咲「何やってるんだ、りみ?」

 

りみ「あ、有咲ちゃん。……内緒。」

 

有咲「何でだ?……どうせゆりの事だろ?」

 

どうやら図星らしく、りみは急に慌て出した。

 

りみ「ど、どうして分かったの!?」

 

有咲「勘だ。言ってみるもんだな。」

 

りみ「あっ………。」

 

有咲「で、何をしてたんだ?」

 

りみ「それは…………薫さんとの友好度について調べてたんだ。」

 

有咲「ふーん…………はぁ!?何でそんな事急に?」

 

りみ「お姉ちゃんは勇者部の全員と満遍なく仲が良いでしょ?部長って立場もあるけど。だけど、お姉ちゃんにも香澄ちゃんと沙綾ちゃんみたいな親友がいた方が良いなって思ったんだ。私は妹だけど未熟だし……出来たら同年代でお姉ちゃんを支えてくれる人が欲しいなって。」

 

有咲「だからって、どうしてピンポイントで薫なんだ?3年生なら他にもいるだろ?」

 

そう言った有咲は頭の中で他の3年生を思い浮かべた。紗夜、日菜、六花……。

 

有咲「あー……ゆりがテンパる様子しか想像出来ねー…。」

 

りみ「………だから薫さんがお姉ちゃんの親友として、部長補佐になってくれたら…。お姉ちゃんだって、みんなに言えない気持ちや私に見せたくない弱さだってある筈だし…。」

 

有咲「りみ………。」

 

りみ「って思ってみたんだけど、どうやってそんな関係になったらいいか分からないから調べてたんだ。」

 

そんなりみの言葉に何かを思ったのか、有咲は机を叩き、りみに近付いた。

 

りみ「有咲ちゃん!?」

 

有咲「りみの気持ちは良く分かった!でも、一つ言わせて欲しい。歳なんか関係ない!」

 

りみ「え?」

 

有咲「ゆり………いや、勇者部部長補佐ならこの完成型勇者に任せろ!」

 

りみ「有咲ちゃんに?」

 

有咲「ああ!他ならぬりみの頼みだ。しょーがねーから、私が大親友になってやる!」

 

りみ「え……でも……。有咲ちゃん、お姉ちゃんの事好きなの?」

 

有咲「ああ!」

 

りみ「えっ!?」

 

有咲「ええっ!?あっ!いやっ、ちょまっ……!す、好きなんかじゃねーー!!」

 

りみ「嫌いなの?」

 

有咲「いやっ、じゃなくて……っうわああああ!兎に角私に任せておけーーーー!!」

 

そう言い残し、有咲は部室を飛び出していくのだった。

 

 

---

 

 

樹海--

 

ゆり「前衛は中央を開けて左右に展開!後衛は"爆発型"に一斉攻撃!」

 

中沙綾「分かりました!」

 

沙綾達後衛の一斉射撃により、"爆発型"は爆発四散。その爆発の余波に他のバーテックスが巻き込まれ道が開く。

 

友希那「今のうちに斬り込むわよ!!」

 

夏希「了解です!!」

 

開かれた道から友希那達前衛が"超大型"目掛けて突っ込む。しかし、"爆発型"の爆発で吹き飛ばされた星屑達が、勇者達の射線上から外れ、外側からゆり目掛けて突っ込んできたのだ。

 

美咲「ゆりさん!狙われてます!」

 

ゆり「しまっ……!」

 

薫「させない!」

 

しかし、寸前のところで薫が間に入り星屑をヌンチャクで吹き飛ばした。

 

ゆり「ありがとう薫。危ないところだった。」

 

薫「安心して指揮を続けてくれ。ゆりの背中は私が守る。」

 

ゆり「あ……う、うん。ありがとう…。」

 

そこへ有咲もやって来る。

 

有咲「待って!」

 

ゆり「有咲ちゃん?」

 

有咲「だったら、私はゆりのお腹を守る!」

 

ゆり「お腹って……。」

 

 

--

 

 

樹海、ゆり達から少し離れた所--

 

あこ「薫達は何やってるんだろう?」

 

紗夜「分かりません。市ヶ谷さんと瀬田さんがゆりさんにくっついてるように見えますが…。」

 

りみ「はぁ……なんだかおかしな方向に進んでる気がするなぁ…。」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

戦闘が終わっても勇者部は忙しなく動いている。ここ最近は依頼が沢山あったり、色々と立て込んでいるのだ。

 

中沙綾「ゆり先輩。先日来ていた問い合わせの件はどうしましょう?」

 

ゆり「そうだった。私がやっておくよ。」

 

リサ「ゆりさん、大赦が先月の会計報告を提出してくれって言ってきてます。」

 

ゆり「あ〜忘れてた。後でメールしておくよ。」

 

有咲「…………………。」

 

モカ「ゆりさーん、蘭の野菜は何処に置いておけば良いですか?」

 

ゆり「おっと、家庭科室の冷蔵庫いっぱいだったね。ちょっと待って、今考えるから。」

 

彩「ゆりさん、あこちゃんのつまみ食いで今日のおやつが足りないんです。どうしたら……。」

 

この様に、ゆりは何かとみんなから相談される事が多く、常に忙しく駆け回っている。

 

有咲「……………ちょっとなぁ!」

 

薫「ゆり、何か手伝おう。」

 

有咲「…あっ。」

 

ゆり「ん?あー……うん、ありがとう。でも一人の方が早いから大丈夫。」

 

薫「そうかい…。」

 

ゆり「ごめん、ちょっと職員室行ってくるね。予定表のコピーを提出しておかないと。」

 

有咲「…………くっ。」

 

ゆりが部室を出た直後に、有咲もその後を追って部室を飛び出したのだった。

 

 

---

 

 

廊下--

 

有咲「ちょっと待って!」

 

ゆり「どうしたの?ちょっと忙しいから出来れば後にして欲しいんだけど。」

 

有咲「そんなに忙しいんなら、何で手伝いを断るんだよ。全部一人でやるような事じゃないだろ?」

 

ゆり「そうだけど、今日は朝から戦闘もあったし、みんな疲れてるでしょ?」

 

有咲「それはゆりだって同じだろ。そんなだからりみが……。」

 

思わず有咲は口を滑らせてしまう。

 

ゆり「え?りみがどうかしたの?」

 

有咲「あっ……いや、何でもない。」

 

ゆり「りみに何かあったの!?有咲ちゃん、話して!」

 

有咲「うわぁ!?……り、りみがゆりの為に補佐役を探してるんだよ。」

 

ゆり「補佐?どうして?」

 

有咲「部長だからって、何でも一人で背負い過ぎなんだよ。りみが心配してたんだ。3年で、周りは歳下ばっかりだから同年代が良いって……。りみのオススメは薫だってさ。薫にゆりの親友になって欲しいんだと。」

 

ゆり「親友?」

 

有咲「考えてみれば、ゆりは無駄に忙しいから補佐役は必要だよな。なのに、黙って見てれば、折角手伝うって言うのを断るって、何なんだよ!」

 

ゆり「何なのって言われても……。」

 

有咲は気付いていた。ゆりが明らかに他所優しい事に。特に薫の事に関すると、それが顕著に現れている。

 

有咲「もしかして、ワザと避けてるのか?特に薫に関して。」

 

ゆり「え……。」

 

有咲「一定以上に仲良くなる事、無意識に避けてるだろ。」

 

ゆり「………………。」

 

ゆりは黙ってしまう。どうやら図星のようだった。

 

有咲「りみも心配してる。な、なれば良いんじゃねーか?薫と親友にさ。」

 

それとなく促す有咲だったが、ゆりは小さく首を横に振るのだった。

 

ゆり「…………嫌だよ。」

 

有咲「え?」

 

ゆり「………………西暦の人でしょ。」

 

有咲「…………ぁ。」

 

その言葉には悲しみが詰まっていた。

 

 

---

 

 

花咲川中学、屋上--

 

有咲「馬鹿野郎!!」

 

ゆり「わざわざ大声で怒る為に屋上に来るなんて……。」

 

有咲「西暦の人間だからって友達になれないって何だよ!?ゆりがそんな狭い了見だったのにはがっかりだ!!」

 

ゆり「有咲ちゃんに私の考えなんて分からないでしょ!」

 

有咲「そんな事ぐらい分かる!!いつか来る別れが怖いんだろ!?」

 

ゆり「…………っ。」

 

有咲「いくら仲良くなっても、西暦の勇者達は元いた時代に必ず帰っていく。だからって、仲良くなるのを我慢するとか……ワザと距離を取るなんて、そんなの………そんなのただ逃げてるだけだろ!臆病者!!」

 

ゆり「…………それは認めるよ。自分が弱い事はあの時から知ってるから……。だけど、失う事で傷付く事は……もう、嫌なんだよ。」

 

有咲「そんなの分かってる!だけど……だからこそ支えが必要なんだろ!?孤独を気取って最後まで踏ん張れるつもりか?誰もそんな事ゆりに望んでない!」

 

ゆり「……………。」

 

有咲「一人上等だった私を勇者部に巻き込んだくせにゆりが…………ゆりが仲間を拒むなよ!!」

 

掴みかかり、叫ぶ有咲の目には涙が溜まっていた。元々有咲は一人だった。勇者部に入った事だって、大赦からの指示で、自分の意思じゃなかった。

 

御役目を通してゆり達と触れ合って、仲間と思える存在を有咲は生まれて初めて手に入れる事が出来た。だから有咲は誰よりも知っている。一人で生きるより誰かと手を取り合って、助け合って生きていく事の大切さを。

 

ゆり「有咲ちゃん……泣いて…。」

 

有咲「泣いてない!これは……花粉症!完成型花粉症だ!」

 

ゆり「はい……ハンカチ。」

 

有咲「……そんなに言うなら使ってやるよ。」

 

ゆり「ははっ……確かに情けないや。臆病風に吹かれて人と向き合わないのは、誠実な態度とは言えないしね。」

 

有咲「あんたは勇者部のトップなんだから……。」

 

ゆり「……じゃあ、有咲ちゃんは…さ……。私が薫ともっと親密になって守ってもらった方が良いと思う?」

 

有咲「え……それは………。」

 

ゆり「りみだけじゃなくて、有咲ちゃんもそう思ってるならきっと、その方が良いんだろうね……。」

 

有咲「薫は……悪い人じゃないし、ゆりの事……多分嫌いじゃないし……だから…。」

 

ゆり「………そっか。じゃあ、これからは遠慮無く、薫には私の背中を守ってもらおうかな。」

 

有咲「…………好きにすればいいだろ。」

 

ゆり「だから……お腹の方は宜しくね、有咲ちゃん。」

 

有咲「ああ、任せろ……って、ちょまっ!?それどう言う意味だよ!?」

 

ゆり「だって、樹海でお腹担当に立候補したじゃん。」

 

有咲「そ、それは……その場の勢いって言うか……。」

 

ゆり「あははっ!そうそう、有咲ちゃんはそうでなくっちゃ。変にシリアスだと調子狂っちゃうから。」

 

有咲「く、くぁあ〜〜〜!!ああ、そうだよ!どうせ私はゆりの事が大好きだよ悪いか!?」

 

ゆり「えっ……ちょっ……え!?」

 

有咲「うぇっ!?わ、私今何て言った!?ち、違う違う!買い言葉でつい……!」

 

ゆり「なにこれなにこれおかしいって!?有咲ちゃん完成型でしょ!なんとかしてよーーー!!」

 

有咲「し、知らねーーーー!今日の記憶まるまる消滅しろーーー!!」

 

真昼の花咲川中学、2人の狂乱する叫び声が校内に響き渡ったのだった。

 

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