戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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終わりが近いと実感した小学生組主導の下、タイムカプセルを埋める計画が始まろうとしていた。

例え生きてきた時代がーー場所が違っても、思いはきっと時を越え、届くだろう。




思い出のアルバム〜いつか届く花束〜

 

 

花咲川中学、花壇前ーー

 

 

ゆり「何日か前に計画の事を言われた時ね、私ちょっとドキッとしちゃったんだ。忘れてた訳じゃないけど、心のどこかでまだ時間はあるって思い込んでた。」

 

リサ「誰かが言い出すかも、いつかやるかもって。いつの間にか甘えが出てたのかもね。」

 

以前に香澄が提案したタイムカプセルを埋める計画。直後に中立神からの試練が始まり、御役目が激化する最中で次第に忘れ去られようとしていた。

 

香澄「3人ともありがとう!お陰で今日こうして実行出来るよ!」

 

小沙綾・小たえ・夏希「「「そんな事ないですよ。」」」

 

しかし小学生組、中でもたえが隠れながら色々な事をメモしていく中で美咲がぽろっと口に出したことでこの異世界での日々が間も無く終わりを告げるのを痛感し、一騒動あった後3人はみんなに声をかけたのである。

 

中沙綾「じゃあ早速タイムカプセルに思い出の物を入れていこうか。」

 

香澄「最初は言い出しっぺの私から!何も書いてない……ただの押し花の冊子だよ。」

 

六花「次は冊子繋がりで私が。私はこの方言冊子を。美濃地方の言葉が沢山載ってるんです!託しましたよ、花咲川の皆さん。」

 

花音「そっか、このタイムカプセルを開けるとしたら香澄ちゃん達だもんね。私はこれを入れておくから、お願いします。」

 

有咲「これって………野菜?」

 

蘭「珍しいですね、花音さんが野菜だなんて。」

 

花音「この野菜はね、あの幼稚園の畑で採れたものなんだ。」

 

イノシシが突っ込んでくるという事件があった幼稚園での出来事。花音の頭の片隅には今でもその時の思い出が残っていたのだ。

 

イヴ「花音さんらしいです。私は……もう一人の私提案のお茶碗にこれを入れる事にしました。」

 

イヴが袋から取り出した物は大きな紙。そこには紙の殆どを埋め尽くした魚拓が。

 

薫「これは……クエだね。初めてゆりの家で鍋を囲んだ時、みんなで食べたのが思い出されるよ。」

 

イヴ「はい。お茶碗だけだと弱いですが、これと一緒なら私だと解る筈です。未来でもまた一緒に………ぁ。」

 

薫「良いんだ。イヴはまた、未来でゆりに"ただいま"と言ってくれるかい?………約束だ。」

 

イヴ「…………はい!」

 

薫「しかし魚拓とはまた……儚いね。私も海の物が良いと思って、海水を瓶に詰めてきたよ。」

 

ゆり「次は私の番。私はこれを入れるよ。」

 

取り出したのはイヴと同じ紙。だけどイヴが持ってきた魚拓よりかは小さかった。どうやら書き初めのようであり、大きく二桁の数字である"34"が書かれていた。

 

モカ「これは何です?」

 

ゆり「前に香澄ちゃんが言った様に、私も断言出来る。この数字を見れば、未来の私はきっと思い出すって!」

 

美咲「この数字………あっ!」

 

ゆり「そう!この数字はこの世界での私の最高うどん杯数。未来の私には、この記録を超えて欲しいんだよ!」

 

高嶋「じゃあ次は私!私が入れるのは……このぬいぐるみだよ!」

 

紗夜「それは…以前私がクレーンゲームで取った物ですね。小さいサイズのぬいぐるみで良かったんですか?」

 

高嶋「うん♫大きいのはずっと一緒に寝てるから。ここに入れちゃうと、今夜から私が寂しいもん。未来の戸山ちゃん達に、いっぱい私と紗夜ちゃんの事伝えてね。」

 

紗夜「高嶋さん……ありがとうございます。それに比べて私の物は何の変哲もないお箸で、恥ずかしいのですが……。」

 

この世界に来て多くの人の優しさに触れて過ごしてきた紗夜。中でもみんなで囲んで食事を摂ることに温かさを感じていたのだった。

 

紗夜「元の世界ではインスタントばかり食べていた私は、特に食器等に拘りもせずお箸もずっと割り箸でした。ですが、この世界で食事の楽しさ、大切さを知り……どうしても自分だけのお箸が欲しくなってしまいましてね。思えば、その時の衝動買いが、今の氷川紗夜になれた最初の一歩だったのかもしれません。」

 

友希那「次は私達が入れて良いかしら?」

 

蘭「友希那さんはうどんのどんぶりとかですか?」

 

友希那「違うわ。私はみんなで演奏した音楽の楽譜よ。」

 

リサ「私は、今日まで此処で過ごしてきた時間分のカレンダーだよ。」

 

中たえ・小たえ「「やっぱり仲が良い二人だね。」」

 

2人の話を聞きながら、2人のたえは脱兎の如き速さでタイムカプセルに何かを入れる。だが、友希那はこれを見逃さなかった。

 

友希那「またそんな事を言って………どさくさに紛れてメモを楽譜の下に入れるなんて全く……ふふっ。」

 

あこ「次はあこだよ!!あこが持ってきたのはコレ!」

 

あこがタイムカプセルに入れたのは傷が付いたマイク。勇者部は異世界に来てたら沢山のイベントをやって来た。中でも商店街を交えたイベントであこは多くの司会をやってきた。このマイクはその度に使っていた物である。

 

美咲「そのマイク……確かにあこちゃん、ずっと使ってたもんね。」

 

あこ「このマイクで沢山のイベントの司会をしてきたなぁって今になってしみじみ思ったんだ!」

 

小沙綾「次は私です。私はこのハロウィンの衣装を。」

 

りみ「あっ、その衣装は確か……。」

 

それはジャック・オー・ランタンを模った衣装。この衣装を作る前、沙綾はハロウィンの衣装をバーテックスを参考にしようとしていた。観察する為に樹海へりみと赴き、そこで沙綾はりみから仲間の大切さを教わったのである。

 

小沙綾「そうです。あの時はりみさんに本当にお世話になりました。りみさんのその芯の強さ、絶対に忘れないです!」

 

りみ「うん!」

 

美咲「じゃあ、そろそろ私行かせてもらいます。何人かにはネタバレですけど、今までに作ってきた衣装の切れ端です。これだけ見ても、ただの布の切れ端。私達には思い出だけど、神樹にとってはゴミみたいなものだよね。」

 

彩「そうかな?私も同じような物を入れるけど、神樹様にもキレイだって思ってもらいたいな。」

 

美咲「彩さんが持ってるものは……ウサギ?」

 

彩「うん。これは私の頑張りが空回りして熱を出した時に千聖ちゃんが作ってくれた物なんだ。」

 

自分に出来ることはないかと必死にもがいた彩。その中で再び思い返した自分に出来ること。このウサギを見ればきっと彩は思い出すだろう。みんなの為に一生懸命祈り続けてきた自分自身のことを。

 

赤嶺「あっ、彩さんそれだと蓋が空いちゃうよ。私が持ってきたダンベルを重し代わりに使って。」

 

燐子「ダ…ダンベルですか…!?5kgって書いてある上に…それが2つも……!」

 

有咲「1個で充分だろ!箱が壊れる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「私が入れるのはコレー。運動会でみんなで繋いだリレーのバトン。この未来へのバトン、託したからね花咲川勇者部の皆々様方。」

 

夏希「次は私です!私が入れるはこのヘラです!!おたえ、未来でも美味しい焼きそば作っていっぱい食べてよ?」

 

中たえ「うん!私いっぱい作って料理上手くなるよ!」

 

燐子「私は…本が人生の教科書みたいなものなので……目を閉じて本棚から選んだ1冊を持ってきました…。未来にも同じ物があるかもしれないですし…これで私を思い出してもらえるもと限りませんが……。」

 

香澄「それで選ばれたのはどんな本なんですか?」

 

燐子「"嵐が丘"です。」

 

りみ「えっと……私は思い出というか、未来の自分に気合を入れたいからこのエプロンを入れます。ポケットに入れた絆創膏は、念の為って言うのと、お姉ちゃんみたいになるって覚悟の証です。」

 

日菜「なら是非このレシピ本も一緒に入れて!御先祖様と一緒に考案したんだ!」

 

つぐみ「はい!是非お役に立てて。」

 

ゆり「凄い……和洋折衷古今東西の料理について事細かに書かれてる……!」

 

つぐみ「日菜さん、氷河家の再興……任せましたよ。」

 

日菜「勿論!」

 

みんなが思い思いの品を一通り入れ終わった中、有咲はまだ入れていなかった千聖に声をかけた。

 

有咲「さ、次は千聖の番だぞ?」

 

千聖「私は何も入れないから、有咲ちゃんどうぞ。」

 

有咲「はぁ!?何も入れないってどういう事だ!?まさか思い出が無いって言うの?」

 

流れを断ち切る千聖の一言に驚く有咲だったが、千聖はすぐさま言葉を続けた。

 

千聖「違うわ。私はね、元の世界でカプセルの開封に立ち会うつもりでいるのよ。失った記憶は自力で取り戻して、カプセルが発見される前に、有咲ちゃん達を訪ねてみせるわ。勿論、その時は防人組を率いてね。だから、私に思い出の品は必要無いわ。」

 

千聖は神様を信じていない。いつだって進む道は自分の手で切り拓いてきた。だからこそ千聖は自分自身の力でコレまでの出来事を思い出し、みんなを連れて花咲川中学までやってくると言い放ったのである。

 

千聖「有咲ちゃんは遠慮しないで、その握ってる木刀の破片を早く入れたらどうかしら?」

 

有咲「わ、私だって、こんな物必要無い!っていうか……寧ろ私なんて絶対忘れる…訳……無いし……な。」

 

中沙綾「それなら2人とも私と一緒に入れない?」

 

有咲「何を?」

千聖「何をかしら?」

 

中沙綾「念だよ♪このタイムカプセルが中身ごと消されず残るよう、強く念を込めて封印するんだ。」

 

だが、その前にまだ入れていなかった蘭が声をかけた。

 

蘭「待って沙綾。実は、私がまだなんだ。」

 

友希那「神世紀の勇者部達と防人組に少し聞いて欲しい事があるの。」

 

2人は目配せをし、香澄にある物を見せる。

 

蘭「今、私の手の中にあるこの植物の種。これをタイムカプセルに入れるよ。」

 

香澄「見た事無い種……これは何の種なの?」

 

蘭「それが分からないんだ。だけど、もしもこのタイムカプセルが現実世界に残って、香澄が手にしたなら……きっと何の種が分からなくても、記憶があっても無くても、必ず土に埋めて世話をしてくれる。そうだよね?」

 

香澄「…………うん!」

 

蘭「種は、土に埋めればいつかきっと芽を出す。そしたら、確かめて欲しい。どんな花が咲くのか。どんな実をつけるのか。出来れば、神世紀のみんなで。」

 

友希那「私達は今、過去の人として未来の勇者達に重荷を課すわ。種を残すのだから、必ず咲かせて欲しいと。此処で過ごしてきた思い出を糧に、発芽し、育ち、強く逞しく、美しく咲き誇り、生き抜いて欲しい。」

 

蘭「信じてる。此処で私達が生きた事に、意味はあったのかって。みんなが、この花を咲かせる事をもっていつの日か証明してくれるのをね。」

 

2人の言葉は今未来の勇者達に託される。思い出せなかったらどうしよう、等という不安は勇者達からは微塵も感じられない。必ず見つけ出し、育て、花を咲かせると香澄達は今此処で固く誓うのだった。

 

友希那「頼んだわよ。未来の勇者と防人達。」

 

香澄達「「「はいっ!!!」」」

 

蘭「うん、悪くない返事。さぁ、言いたい事も言ったし、カプセル埋めちゃわないと。」

 

中沙綾「よし、有咲に千聖さん、こっちに来て手を前に!」

 

千聖「えっと………私はカプセルを溶接する仕事が残ってるから、有咲ちゃんに任せるわ。」

 

有咲「カプセルの蓋って溶接するのか!?」

 

その時だった。久しく聞かなかった音が校庭に鳴り響いた。

 

花音「ふえぇぇぇっ!?何でこのタイミングでぇ!?」

 

香澄「だけど、大事な思いを託された後だから、どんな敵にも負ける気がしないよ!」

 

あこ「あはははっ!結局どんだけしんみりした雰囲気でも、こういうノリが一番しっくりくるね。」

 

リサ「どんな時でもアタシ達らしく、だね。さぁ、ゆりさん。号令お願い!」

 

ゆり「みんな、久々だけど、身も心も準備はオッケーだね?」

 

全員「「「はいっ!!」」」

 

ゆり「本日もいつも通りに…………勇者部出動ーーー!!!」

 

全員「「「おおーーーーーーっ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

花咲川中学の花壇に埋められた、勇者部の記憶が詰まったタイムカプセル。

 

 

 

 

 

そのタイムカプセルは未来に届いたのかーー

 

 

 

 

 

 

 

思いは叶えられたのかーー

 

 

 

 

 

 

 

その時はーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつかの未来ーー

 

?「ーーーあれ?花壇の下に何か埋まってる?何だろうーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「ーーコレって……タイムカプセル?」

 

 

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