戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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思い出の章、最終回前編です。

中立神の試練も無事乗り越えた勇者達。イヴの提案により、最後に全員での合同ライブを行う事となるのだった。





思い出のアルバム〜想い伝える時間〈前編〉〜

 

牛込宅--

 

時刻は間も無く夕飯時。今日もゆりは腕によりをかけて晩御飯を作っていた。

 

ゆり「お肉は焼けたし、後は……サラダにうどん……っと。」

 

間も無く完成というところで、誰かの来訪を知らせる呼び鈴が鳴る。

 

ゆり「ん?誰かな?りみーー!ちょっと出てくれるーー?」

 

手が離せない為りみを呼ぶも返事が返ってこない。仕方なく、料理の手を止めゆりが玄関を開けると、そこにはイヴがいた。

 

ゆり「お待たせしました……って、あれ?イヴちゃん?」

 

イヴ「……ただいまです。」

 

ゆり「……お帰り。イヴちゃん1人?お腹空いたの?」

 

イヴ「違うんです……少し相談があって来ました。」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

香澄「と言うわけで、今回もやって来たよドジャーーーン!!」

 

中立神の試練を無事乗り越えた勇者達。残された時間は僅かしか残っていないが、以前と同じ様に最後の思い出を作ろうとみんなで部室に集まっていた。

 

美咲「造反神の試練の時は、確かそれぞれの組に分かれて思い出を作っていったんだよね。」

 

リサ「今回も同じ様に出来れば良かったんだけど、前より残された時間は少ないみたいなんだ。」

 

千聖「本来であれば、羽丘組の3人も個別で時間を取りたかったのだけれど、仕方ないわね。」

 

赤嶺「あはは、気にしないで良いよ。」

 

つぐみ「そうだね。楽しい思い出はもう充分に堪能させてもらったから。」

 

六花「はい。後は皆さんで楽しみましょう!」

 

薫「それで、今回は何をするんだい?」

 

ゆり「それはね………イヴちゃんから発表するよ!」

 

彩「イヴちゃんが?」

 

ゆりに促され、イヴが黒板の前に立つ。そしてガサゴソとしまっておいた原稿用紙を取り出し、内容を読み始めた。

 

イヴ「……無人島で行ったバレンタイン企画や各所にお礼参りをした際、私には分かった事があります。それは、気持ちを伝えるには勇気がいりますが、伝えた方が絶対に良いという事です。ですから、私はずっと考えていました……。最後には大切な友人に………勇者部の皆さんにちゃんとありがとうを言いたいと。」

 

日菜「イヴちゃん……成長したね!」

 

イヴ「ですので、今回も以前と同じ……いや、それ以上の勇者部による勇者部の為の"勇者部バンドライブ"を提案したいと思っています。」

 

香澄「バンド!?」

 

薫「それは……以前にやった"Glitter*Party"や"Roselia"、"Pastel✽Palettes"の事かい?」

 

イヴ「はい、それの事です!」

 

ゆり「補足するとね、今まではパレードやお礼参りで街の人達を楽しませてたけど、私達自身が仲間への感謝を表す為に、お互いを楽しませようって話。」

 

高嶋「それは凄く良いですね!」

 

友希那「そうね。仲間への感謝の気持ちは、中々面と向かって言えないものね。」

 

千聖「そのアイデアは本当にイヴちゃんが?」

 

イヴ「違うんです。本当はゆりさんとりみさんが……。」

 

ゆり「違うでしょ。イヴちゃんがね、前にやったライブの事が忘れられなくてね。ステージに立つ人も、それを見ている人も両方がすっごく楽しそうだって感じたんだって。」

 

りみ「だから、全員が持ち回りでバンドと裏方とお客さんを全部やったらどうかって結論に。」

 

千聖「イベントの時にそんな事を思ってたなんて知らなかったわね。でも、そういう熱い気持ちを持っていたのは仲間として嬉しいわ。」

 

中沙綾「全員が全員を支えて動く。勇者部の集大成に相応しいね。」

 

燐子「ですが…全員でとなると衣装や小道具も大変な事になりそうですね…。」

 

美咲「衣装に関してなら、一口にバンドと言っても色々ありますし、バンド別にコンセプトを分けてくれれば大丈夫です。同じ衣装を全員分作るとなればモチベーション保たないですけどね。」

 

蘭「流石美咲だね。」

 

美咲「あはは。褒めてくれるのは嬉しいけど、みんなにも手伝ってもらうからね。」

 

ゆり「それじゃ、チーム分けを行なっていくよ。」

 

 

---

 

 

香澄「うーーん……私達"Glitter*Party"や友希那さん達の"Roselia"、千聖さん達"Pastel✽Palettes"は良いとして…。」

 

小沙綾「私達神樹館組も"CHiSPA"ってバンドを組んでます。」

 

この中で残ったメンバーは蘭、モカ、薫、美咲、赤嶺、つぐみ、六花の地方組と羽丘組。

 

蘭「人数的に丁度良いから、地方組でやりませんか?薫さん、美咲、モカ。」

 

モカ「私は蘭と一緒なら全然オッケー。」

 

薫「私も構わないよ。」

 

美咲「いっちょ頑張りますか。」

 

赤嶺「なら私達は羽丘組でやるよ。」

 

つぐみ「そうだね。」

 

六花「頑張ります!」

 

筒がなく組み分けも決まり、香澄達はそれぞれの作業に移るのだった。

 

友希那「このリストの中で得意・不得意はあるかしら?あるのなら予め教えてちょうだい。」

 

赤嶺「私は衣装作りより工作の方が得意かな。」

 

つぐみ「私はどちらでも大丈夫です。」

 

それぞれが自分の得意な事を生かし、作業は順調に進んでいく。そしていよいよ本番当日を迎えるのだった。

 

 

---

 

 

パーティ会場--

 

会場は毎度御用達、大赦が用意したパーティ会場。

 

花音「何度来てもこの会場って凄いよね。」

 

千聖「そうね。大赦っていう組織の大きさを改めて思い知るわ。」

 

会場に入り、少しの歓談時間の後会場の明かりが消え司会者席が照らされた。

 

あこ「ジャジャーーーン!みんな楽しんでる!?司会は勿論この魔界の大魔姫あこだよ!そして今回はもう1人進行を手伝ってくれる人がいます!どぅるるるるるる………バーーーン!」

 

イヴ「一生懸命頑張りますので宜しくお願いします。」

 

あこ「さてさて、いきなりトップバッターの演奏……から行きたいんですけど、今回は趣向を変えて勇者宣誓から行きましょー!」

 

あこに促され、壇上に上がったのは3人の香澄達。

 

香澄「せんせーーーー!我々はぁーー!今回の演奏会でーーー!」

 

高嶋「勇者シップにのっとりー!もてる限りの全力を尽くしー!」

 

赤嶺「自分とみんなを楽しませる事を誓います!勇者部代表!トリプル香澄!」

 

香澄・高嶋・赤嶺「「「ウィーアー!!!」」」

 

あこ「さてさて、皆様に…おかれましては……暫しのご歓談を。最初のバンドはスタンバイをお願いしまーす!」

 

リサ「あはは…あこってばお堅い言葉詰まっちゃってる。」

 

紗夜「それも宇田川さんらしいですね…。」

 

 

--

 

 

数分後--

 

あこ「さあ!さあさあ!只今からメーンイベントの始まりだよ!!トップバッターのバンドはこちらだ!!"Glitter*Party"ーー!!」

 

香澄「みんなーー!まずは私達からだよ!」

 

ゆり「大半の人達がトリだって思ったでしょ?」

 

中たえ「私達の音で震わせてあげる。」

 

りみ「めーっちゃ頑張ったので聴いてください!」

 

有咲「まさかまた演奏するなんて思ってなかったよ。」

 

中沙綾「飛ばしていくから、ハードル上がっちゃったらごめんね。」

 

ゆり「まずはこの曲から行くよ!"Don't be afraid!"」

 

 

〜〜〜〜♪

 

 

一曲目はゆりがメインボーカルとなり、会場を大いに盛り上げる。

 

高嶋「ゆりさんも歌えるんだぁ!」

 

紗夜「前回の対バンの際は歌っていたのが戸山さんだったので、これもまた新鮮ですね。」

 

蘭「"恐れないで"…………か。良いじゃん。」

 

 

--

 

 

ゆり「聴いてくれてありがとう!次は香澄ちゃんが歌うよ!」

 

香澄「はい!次の曲は……私がこの異世界にやって来てから書いた曲です。勇者になって、辛い事や苦しい事沢山ありました。だけど私達は乗り越える事が出来ました。それは1人じゃなかったから。支えてくれる友達がいたから。この世界に来て、私はもっと沢山の友達に出会えました。生きてきた時代は違うけど、手を取り合って………それはいつしか大きな輪になって………私達の大きな力になっていきました。だからこれから先、どんなに辛く苦しい事があっても…下を向かないで周りを見てください。そこにはきっと大切な人がいるはずです!それでは聞いてください!"CiRCLING"!!」

 

 

〜〜〜〜♪

 

 

 

()!心繋がれば

どんなに遠く離れても

夢は(きっと)巡り(回る)

五人(みんな)の中

CiRCLING!

明日(みらい)を待ってる

 

 

--

 

 

パーティ会場--

 

あこ「うぅ……あこ感動しちゃったよ…!」

 

イヴ「"Glitter*Party"の皆さんありがとうございました…!」

 

彩「凄かった…!まだ始まったばっかなのに、写真いっぱい撮っちゃった!」

 

リサ「だね。その写真もまた部室のアルバムに入れよ。」

 

"Glitter*Party"の出番が終了し、興奮も冷めやらぬ中、次のバンドがステージに姿を表した。

 

あこ「次のグループは新進気鋭の小学生バンド!"CHiSPA"だぁーーー!」

 

イヴ「神樹館小学校のオリエンテーションでの演奏も大変好評だったとの話題ですね…。」

 

あこ「そうなの?」

 

イヴ「はい…!実は私もこっそり観てました。」

 

あこ「そうだったんだ!……おっと、準備が出来たようなので、それではお願いしまーす!」

 

夏希「皆さん、初めまして!私達は……せーのっ!」

 

小沙綾・小たえ・夏希「「「"CHiSPA"です!!!」」」

 

夏希「えっと……私達は小学校のオリエンテーションで一回やったきりだし、また曲も1つしかないので楽しませられるか分からないですが…。」

 

小沙綾「精一杯頑張りますので、応援宜しくお願いします!」

 

小たえ「御先祖様ー!中学生の私ー!観てるー?」

 

ステージ上でたえが友希那と中学生のたえに向かって飛び跳ねながら手を振っている。

 

友希那「ええ。しっかり観ているわ。」

 

中たえ「うん……まさかまた"CHiSPA"が観れるなんて思ってもみなかったよ。ね、沙綾。」

 

中沙綾「そうだね………。」

 

夏希「それでは聞いてください。"Be shine, shining!"」

 

 

〜〜〜〜♪

 

 

雨粒が頬を濡らしても

最初の一歩を諦めたくない

今こそ出来る全て

さあ、魅せよう 輝きを

 

 

--

 

 

パーティ会場--

 

今ステージ上では全力のパフォーマンスをしながら、笑顔の3人が輝いている。普段は妹の様に可愛がられてきた3人も、このステージ上では誰よりも大きく、頼もしく見えるのだった。

 

あこ「"CHiSPA"のみんなに盛大な拍手を!!」

 

イヴ「とても素晴らしい演奏でした…!」

 

あこ「それではここで、今回勇者部に届いた祝電の披露に移るよー!代読は各組のリーダーです!」

 

有咲「祝電!?パーティでもないのにそんなのが来てるのか!?」

 

美咲「勇者部の影響力恐るべし…。」

 

友希那「……こほん…いつも本当にありがとうございます。勇者部の皆様による、定期的な清掃活動。地域の環境のみならず、児童や老人、動物への御配慮等には日々頭の下がる思いであります。今後の活躍と皆様の益々の御健勝を祈念致します。讃州市福祉課一同より。」

 

紗夜「福祉課の皆様には毎回お世話になっていますね。」

 

ゆり「私達がいつも困った時1番に浮かぶのは皆さんのお顔です。大人が子供に頼るなんて、情けないとお思いでしょうが、それだけ勇者部が頼れる存在という事。これからも皆さんが、この街を盛り上げてくれると信じ期待しています。讃州市商工会一同より。」

 

有咲「最早お馴染みの商工会だな。」

 

リサ「お祭りや市の行事じゃ、私達の方こそお世話になってるのにね。」

 

薫「あぁ。この儚く熱い気持ちが嬉しいよ。」

 

千聖「勇者部ちゃん、いつも買い物に来てくれてありがとう。みんなの笑顔に、こっちも元気をいっぱい貰ってるよ。これからも健康で頑張っておくれ。八百屋のおばちゃんより。追伸、蘭ちゃん。今度は小洒落た野菜にも挑戦してみないかい?」

 

モカ「八百屋のおばちゃん、いつも顔を合わせてるのにわざわざねぇ……嬉しいね、蘭。」

 

蘭「そうだね。でも、小洒落た野菜って何?」

 

日菜「ロマネスコとか?」

 

中沙綾「ホースラディッシュにスイスチャード、アーティチョークとか。」

 

蘭「あぁ……洋食とかに使う野菜か。有りかも。私もまだまだ精進しないとな…。」

 

友希那「その粋よ、美竹さん。」

 

祝電が終わったところで、会場の明かりが消え次のバンドの準備が完了する。

 

イヴ「皆さん、お待たせ致しました……。次のバンドは羽丘組によるスリーピースバンドです。」

 

あこ「ちょっと前に組んだばかりだけど、どんな演奏を見せてくれるんだろう?あこ、ワクワクするよ!それではどうぞーー!!」

 

赤嶺達3人が壇上に上がる。3人はロックな衣装を身に纏い自己紹介を始めた。

 

赤嶺「みんな、盛り上がってる?私達--」

 

赤嶺・つぐみ・六花「「「"THE THIRD(仮)"です!!!」」」

 

あこ「ざ・さーど?」

 

イヴ「かっこかり……ですか?」

 

香澄「どういう意味なのかな?」

 

赤嶺「私が"3番目の香澄"って事。」

 

香澄「え?3番目って私じゃないの?」

 

赤嶺「戸山ちゃんは4番目……だね。高嶋先輩が1番、私が3番。その間にもう1人"いた"んだ。…………私も詳しくは知らないけど。」

 

中沙綾「(仮)っていうのは?」

 

六花「そこは何となくです。」

 

つぐみ「バンドなんて最初で最後かも知れないからね。」

 

赤嶺「私達もあまり時間がなかったから一曲だけ披露させて貰うね。みんな、準備は良い?」

 

つぐみ「うん!」

 

六花「はい!」

 

赤嶺「それじゃあ………火色舞うよ…"R・I・O・T"!!」

 

 

〜〜〜〜♪

 

 

--

 

 

パーティ会場--

 

千聖「これは……。」

 

日菜「凄いね……。」

 

香澄「ロックが……ロックだ…!」

 

キーボードとギターのみながらも、打ち込みも駆使し、曲名通り暴動の様なロックな音楽を奏でる羽丘組の3人。会場のボルテージは最高潮となり、ライブは後半へと続いていく--

 




「いつも見ててね」

戸山宅、香澄の部屋--

中沙綾(…7月13日……23時55分……。香澄の誕生日まで後5分………。)

香澄「ん?さーや、どうしたの?さっきから時計ばっかり見て。」

中沙綾「はっ!ごめんね、香澄。えっと……学校に入ってきた犬の話だったっけ?」

香澄「違うよー。今話してたのは、商店街に出来た新しいパン屋さんの事。」

中沙綾「そ、そうだったね。」

香澄「それでね、そこのクリームパンがね……。」

中沙綾「うん。美味しいよね、クリームパン。」

香澄「さーや?っ!」

香澄(そっか……。日付が変わったら7月14日……!でも、さーやがこっちを見てくれないのは、ちょっと寂しいな。……よーし!)

香澄「さーや。時計じゃなくて、目の前の私を見てほしいな。」

中沙綾「香澄!?」

香澄「0時丁度にお祝いしようと思ってたんだよね?でも、誕生日でもそうじゃなくても、さーやには、いつも私の事を見ていて欲しいんだ。……………なーんて、ちょっと我儘過ぎたかな?」

中沙綾「そんな事ないよ!そうだね、365日いつだって香澄は私の傍にいるもんね。」

香澄「さーや!嬉しいよ!」

中沙綾「私もだよ。」

香澄「あっ、私のスマホにみんなからお祝いのメッセージが来てる!」

中沙綾「いつの間にか、0時になってたんだね。」

香澄「なっちゃったね。」

中沙綾「改めて。香澄、誕生日おめでとう!」

香澄「どうもありがとう!これからもいーっぱい仲良くしようね。」
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