戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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第2章も終わりが近づいていました。

毎回拙い文章読んでいただきありがとうございます。




えがおのきみへ

 

 

神樹様は神様そのもの。

だから、願った。

友達と別れたくないと。

それは、ある意味叶えられていく事になる。

私達は、友の犠牲と引き換えに、

---の---を手に入れた。

 

勇者御記 298年7月12日

 

 

 

 

 

神樹館小学校--

 

教室では沙綾とたえを含め生徒達全員のすすり泣く声が響いている。外はそんな生徒達の心を写したかの様に雨が降っていた。夏希の机には花が供えられている。重苦しい雰囲気の中、安芸先生が口を開く。

 

安芸「海野夏希さんは神樹様の御役目の最中に亡くなりました。お友達とお別れするのは悲しい事ですが、どうか誇らしい気持ちでお見送りしましょう。明日、告別式が行われます。授業をお休みしてみんなで参加します。」

 

ただ雨の音だけが虚しく音を立てた。

 

 

 

 

 

 

告別式--

 

神官「本日ここに哀悼の意を捧げます。今、私共は深い悲しみのうちに……。勇者様にお別れを告げようとしております。海野夏希様の天性の才能、剛毅不屈の精神。それに、人間味豊かな性格をもって神樹様の重大な任務に務められていました。その輝かしい偉業は永久に我々の指針として残る事でしょう。」

 

大赦の神官が話している中、夏希の家族はただ悲しみに暮れていた。

 

神官「どうか神樹様の元で安らかに。そして末永く、私共の行く手をお見守りください。」

 

たえは沙綾を見た。沙綾は唇を固く結んで神官の言葉に耳を傾けていた。

 

 

 

 

 

 

控室--

 

沙綾達は控室の様子を伺っていた。

 

市民A「夏希ちゃん、お務めなさってたんですね。」

 

市民B「我々市井の者には見当もつきませんが、大変だったんでしょうね。」

 

残された家族を気遣う声や、

 

市民C「神樹様の御役目で逝かれるとは、大変名誉な事じゃないか。」

 

誇らしいと言う声、

 

市民D「そうは言ってもね…。うちの子がもしそうだったらと思うと……。」

 

恐怖する声、

 

市民E「夏希ちゃん、よく頑張ったわね。」

 

市民F「夏希ちゃんはね、英雄になられたの。羨ましいわ。」

 

市民G「今後、海野家の者は法外な援助が受けられるんだ。むしろ夏希も孝行が出来て誇らしい事だろう。」

 

素晴らしい事だと説く声、様々な人の思いが声に出ていた。2人はそんな声を黙って聞いている事しか出来なかった。

 

神官「勇者様。」

 

大赦神官に声を掛けられその場から2人は離れる。

 

 

 

 

 

 

再び告別式場--

 

神官「えー。御役目とは言え、子供たちの尊い命が失われる事は…ご親族、ご友人にとっては耐え難い悲しみです。ご遺族のご心痛、いかほどのばかりかと案じております。海野夏希様の……。」

 

その後も男性の話は続いていく。

 

 

 

 

 

 

式は進み、

 

神官「献花。」

 

2人は立ち上がり、沙綾が神官から花を受け取り、棺に向かって歩き出す。棺の中には夏希が眠っている。

 

沙綾「夏希……。」

 

花を捧げようとした沙綾の手が震える。

 

沙綾「っ……。」

 

夏希は静かに目を閉じている。沙綾は手が震えて動かせない。そこへ安芸先生がやって来て沙綾の献花を手伝った。

 

沙綾「っ!っ……。」

 

眠る夏希を見つめる沙綾。たえも花を捧げて一緒に見つめている。

 

夏希はもう目を開かない--

 

その時だった。

 

 

冬樹「うあぁぁぁっ!」

 

上の弟、冬樹が泣き出し、みんなが振り向いた。

 

冬樹「神様だったら何で守ってくれなかったんだよ!!姉ちゃんはずっと頑張ってたんだろ!」

 

夏希父「やめなさい、冬樹。」

 

夏希の父が必死でなだめる。

 

冬樹「それなのに!何で姉ちゃんなんだよ!!姉ちゃんを連れてかないでくれよ!!」

 

沙綾・たえ「「………。」」

 

2人には冬樹に掛けられる言葉が見つからなかった。

 

冬樹「こんなの、神様なんかじゃない!姉ちゃーーーーーん!!」

 

冬樹は父に会場の外へ連れられてしまった。沙綾は拳を握って歯を食いしばり、項垂れていた。

 

沙綾「っ!?」

 

その時、神官の動きが止まり、鈴の音が聞こえてくる--

 

たえ「こんな時に…。」

 

夏希の方を見る2人。

 

沙綾「くっ……。」

 

たえ「沙綾?」

 

沙綾「うっ……うあああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

沙綾は言葉に出来ないほどの叫びを上げながら変身する--

 

 

 

 

 

 

樹海--

 

沙綾「うあああああ!!」

 

沙綾は一度に5本の矢をバーテックスに向かって放ち"乙女型"が放った爆弾を撃ち落とす。

 

たえ「じゃあ、夏希の為に戦おう!夏希だったら敵をやっつけようって言うはずだよ。」

 

沙綾「うん!」

 

たえが沙綾を鼓舞する。

 

"乙女型"が爆弾をばら撒き広範囲が爆発、たえが爆風を傘で防ぐ。

 

たえ「こんなの、夏希なら…!」

 

沙綾「夏希なら突破する!」

 

2人は夏希の思いを胸に立ち上がった。沙綾はたえを飛び越え、そのまま突撃。"乙女型"に接近しようとするが、攻撃を食らってしまう。

 

沙綾「きゃあ!!」

 

空中に打ち上げられて、落ちる沙綾。"乙女型"はそこを追撃する。

 

沙綾「はっ!!」

 

が、沙綾は紙一重でそれを躱す。

 

沙綾「これが、夏希仕込みの根性ってやつだよ!!」

 

沙綾は矢を手で直接"乙女型"に突き刺し、突き刺した箇所が爆発する。

 

沙綾「おたえ!!」

 

たえ「気合いだあぁぁ!」

 

たえが槍を構え突撃し、"乙女型"を貫通した。沙綾は着地し、すぐさま弓を構えるが、たえは着地に失敗してしまう。

 

たえ「くっ……まだまだだよ!」

 

それでも、もう一度たえは突撃し、沙綾は矢を放つ。たえが再び"乙女型"を貫通、沙綾の矢も当たり、大爆発を起こす--

 

たえ「これで!」

 

沙綾「どうだ!!」

 

"乙女型"の動きが止まり、鎮花の儀が始まった。

 

沙綾・たえ「「はあ、はあ、はあ………。」」

 

樹海に花びらが降り注ぎ、"乙女型"が消滅する。

 

沙綾「やったよ、夏希…。」

 

たえ「夏希、見てくれてたかな…?」

 

沙綾「見てたよ、きっと。」

 

世界が元に戻る--

 

 

 

 

 

 

元の世界、公園--

 

雨が降りしきる公園の広場に沙綾とたえは倒れていた。そこへ、安芸先生が傘を差して迎えに来る。

 

沙綾「先生……。」

 

 

 

 

 

 

安芸先生が運転する車の中--

 

静まりきる車内の中、安芸先生が話し出す。

 

安芸「2人とも。」

 

沙綾・たえ「「?」」

 

安芸「辛い中、御役目ありがとう。」

 

沙綾「いえ……。」

 

たえ「今、何も出来なかったら、それこそ夏希に怒られちゃうから。」

 

安芸「あのね…。」

 

沙綾・たえ「「?」」

 

安芸「いえ…怖い思いを沢山して、悲しい事もあったのに……あなた達は大変な御役目としっかり向き合っている。2人はまさしく勇者だわ。」

 

安芸先生が2人にそう話した。

 

沙綾「っ……。」

 

たえ「あはは…先生にこんなに褒められたのは初めてかも…。」

 

たえは精一杯の笑顔を作りながら話す。

 

たえ「でもね、先生。」

 

安芸「?」

 

たえ「一番偉いのは、夏希なんだよ。」

 

安芸「………。」

 

安芸先生は黙ってたえの話を聞いている。

 

たえ「たった1人で3体ものバーテックスを追い返したんだよ。」

 

 

ーーー

ーー

 

 

夏希「これが…これこそが、人間の!」

 

夏希「気合と!!」

 

夏希「根性と!!」

 

夏希「魂ってやつだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 

ーー

ーーー

 

 

たえは涙を流しながら話し続ける。

 

たえ「だから…夏希の事…忘れないであげて、先生……。」

 

安芸「……。」

 

たえ「強かったから…。っ……。凄かったから…。私達2人じゃなくて、3人勇者なんだからっ!!」

 

たえは涙ながらに安芸先生に訴えた。

 

安芸「えぇ……。」

 

沙綾「うっ……うああああああん!」

 

安芸「ごめんね。訂正する。3人とも勇者よ。」

 

2人の泣く声が車内にこだました--

 

 

 

 

 

 

外は燃え盛る炎--

 

 

そこには大きな樹--

 

 

そこに迫ってくる3つの炎--

 

 

 

 

 

 

沙綾(不気味な夢だった……。)

 

沙綾は水垢離をしながら今朝見た夢を思い返していた。

 

沙綾(大きな敵が来る。あの夢は、きっとその知らせ…。戦いはもっと激しくなる。私も、もっと強くならないと。)

 

 

 

 

 

 

教室--

 

たえ「おはよー…?」

 

たえが登校してきた時、クラスのみんながたえを見ていた。

 

クラスメイト「……。」

 

クラスメイト「あ、あの、花園さん…。」

 

1人の女子がたえに話しかけてきた。

 

クラスメイト「私、ずっと聞きたかったんだけど…。」

 

たえ「う、うん。」

 

クラスメイト「だけど、神樹様の御役目の事は聞いちゃいけないって言われて…。」

 

たえ「えっ?」

 

もう1人話しかけてきた。

 

クラスメイト「花園さん、昨日の告別式の時も御役目があったんだよね?」

 

クラスメイト「消えてたものね。」

 

次々とクラスメイトがたえに話しかけてきた。

 

クラスメイト「大丈夫なの?怖くないの?」

 

たえ「え?あっ、うん…。」

 

クラスメイト「花園さん、御役目って一体どんな事をしてるの?」

 

クラスメイト「夏希ちゃん、教科書に載るんだって。お母さんが言ってた。凄いね!」

 

たえ「うん……。」

 

たえは呆気にとられていたが、

 

クラスメイト「花園さんも山吹さんも頑張ってね。」

 

クラスメイト「神樹様に選ばれる人はやっぱり凄いんだね。」

 

クラスメイト「神樹館のヒーローだよ。応援してる。」

 

たえは困った様な顔で、

 

たえ「あのね…。そうなりたかった訳じゃないんだ。」

 

クラスメイト達「「………。」」

 

そこへ沙綾が登校してきた。

 

沙綾「おはよう。」

 

クラスメイト「あっ、山吹さんおはよう。」

 

今度は男子が沙綾に話しかけてきた。

 

クラスメイト「あのさ…事情は分からないけど、海野はみんなの為に……。」

 

沙綾は答える。

 

沙綾「それが出来る強い子だったから神樹様に選ばれたんだ。」

 

クラスメイト「海野……。」

 

沙綾「夏希の事を思ってくれるなら、そっとしておいてね。」

 

 

 

 

 

 

道場--

 

沙綾は走りながら矢を放つ。たえは前転して、立ち上がると同時に槍を傘に変えた。と、同時に沙綾が駆け寄ってくる。2人は背中合わせになって弓と傘を構え、

 

沙綾「はいっ!」

 

沙綾は力を溜めて、傘の脇から矢を放った。

 

たえ「はぁ……。」

 

沙綾「おたえ?」

 

たえ「あっ、ごめんごめん。もうワンテンポ早くなきゃだよね。」

 

沙綾「ねぇ、勇者にも気分転換は必要じゃないかな。」

 

沙綾は安芸先生の方を向き、先生は頷いた。

 

 

 

 

 

 

夏祭り会場--

 

たえ「沙綾から遊びに行こうなんて珍しい事もあったもんだね。」

 

沙綾「先生から許可をもらえて良かった。今日は御役目を忘れてリラックスしよう。」

 

その時たえから笑みがこぼれる。

 

沙綾「?」

 

たえ「沙綾も気合い充分だしね。」

 

沙綾「そうだね。」

 

たえ「うんうん、浴衣似合うよ沙綾。お人形さんみたいだよ。くるくる回ってみて。」

 

沙綾「恥ずかしいって。」

 

たえ「えーお願いー。」

 

沙綾「しょうがないなー。」

 

たえ「シャッターチャンス!」

 

沙綾「あっ、こら。写真撮影は禁止。」

 

たえ「えー、待ち受けにしようと思ったのにー。」

 

沙綾「恥ずかしいからやめてよー。」

 

たえ「今も沙綾が待ち受けだよ。」

 

沙綾「え?」

 

たえ「ほら。」

 

そう言って見せたたえのスマホの待ち受けは沙綾がドラムを叩いている姿だった。

 

沙綾「いつ撮ってたの!恥ずかしいなーもう。」

 

たえ「えへへー。」

 

沙綾「じゃあ、私はおたえを待ち受けにしよっと。」

 

たえ「相思相愛だ。」

 

沙綾「そ、そんな関係じゃないからー。」

 

沙綾・たえ「「あはははっ!!」」

 

 

 

 

 

 

射的--

 

たえ「うーむ。」

 

たえは射的の1等であるウサギのぬいぐるみ欲しさに射的をしているが、中々倒れないのであった。

 

たえ「なんてこった。」

 

沙綾「後1発だけだね。」

 

的に当たりはするのだが、重いせいで倒れないのである。たえが最後の一発を込め、構える。沙綾はたえの手を支えてアドバイスした。

 

沙綾「落ち着いて。呼吸を正して。」

 

たえ「う、うん。」

 

沙綾「ライフルの癖は見てた。調整は私に任せて。」

 

たえ「分かったよ。」

 

2人は狙いを定める。

 

沙綾「吸って。」

 

たえ「スー……。」

 

沙綾「吐いて。」

 

たえ「ハー……。」

 

沙綾「狙いを定めて。」

 

たえ「集中……。」

 

沙綾「力を入れずに、指を絞る様に…今!」

 

たえは引き金を引いた。弾がぬいぐるみに命中する。

 

沙綾「後は気合い!」

 

2人が手を出して前に出し気を送ると、ぬいぐるみが倒れる。

 

沙綾「やったーーー!」

 

たえ「沙綾、やったね。」

 

沙綾「射撃は得意だから。でも引き金を引いたのはおたえだよ。それはおたえの物。」

 

だが、たえは端っこを指差し、

 

たえ「コレとソレ3つを交換して下さい。」

 

ぬいぐるみを3つのウサギのストラップと交換したのだ。

 

 

 

 

 

 

日が暮れ、花火を見ている2人。

 

沙綾「ありがとう。」

 

たえ「?」

 

沙綾がたえにお礼を言う。

 

沙綾「これ。」

 

たえ「うん。」

 

たえはあの時交換した3つのストラップのうち、1つを沙綾にあげたのだった。

 

たえ「もう1つは夏希の分ね。」

 

沙綾「うん。」

 

たえ「私もありがとうね、沙綾。」

 

沙綾「どうしたの?突然。」

 

たえ「私、一緒に選ばれた勇者が沙綾と夏希で良かった。」

 

沙綾「えっ?」

 

たえ「私ってほら、変な子でしょ。だから、中々友達出来なくってさ…。」

 

沙綾「おたえは変じゃない、素敵だよ。」

 

たえ「っ…。2人じゃなかったら、こんなに頑張れなかったかもしれない。」

 

沙綾「夏希は前衛型だし、私も何かと硬い部分もあったから…。だから、おたえがリーダーじゃなきゃ纏まらなかったよ。3人だから頑張ってこれた。」

 

たえ「うん…。6年生になってから訓練もお泊まりも楽しかった…。私2人の友達になれて本当に良かった!」

 

沙綾「私もだよ、おたえ。」

 

沙綾はたえの手を握った。

 

たえ「友達だよ!私達3人は。これから何があっても。ずっと……。」

 

沙綾「うん!」

 

沙綾(夏希……私忘れないから。夏希と過ごしてきた日々を。夏希に会えて本当に良かったよ!)

 

夜空に花火が上がり光り輝く中、2人は夏希の事を思いながら固く絆を結ぶのであった--

 

 

 

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