戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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全ては友希那の為に、リサは大赦を掌握する覚悟を決める。

外伝第1部最終回です。




私の大切な人

 

 

奉火祭の翌日、残された巫女達に神託が下った。人間側の敗北と服従宣言は天の神に受け入れられ、赦しを得られた。人間が四国の外に出ない事と、勇者が戦う力を放棄する事を条件に、これ以上人間を攻撃する事をやめるという。

 

奉火祭は成功し、和睦が結ばれたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

6人の巫女の命を犠牲にして--

 

 

---

 

 

数日後、大社--

 

 

神官達とリサで会議が行われ、停戦が決定した事を大社全体の総意として確認し、リサはその後丸亀城へ戻る為に、荷物を持って廊下を歩いていた。6人の友人の命が一瞬にして失われた。そのショックが大きすぎて、リサは感情が摩耗したように何も考えられなくなっていた。

 

明日香「……大丈夫ですか?手伝いますよ。」

 

リサ「ありがとう………。」

 

偶然通りかかった明日香が荷物を持つのを手伝ってくれた。力なく答える事しか出来ず、明日香も何も言わずに頷いた。宿舎を出ると神官数人が話している声が聞こえた。

 

神官A「上手くやったものだ。」

 

神官B「どうやって手懐けたんだか。」

 

神官C「手懐けたどころか、あれは狂言だろう。今井様の代わりに死ぬなど。」

 

神官D「このような時の為に自分に心酔する者を作っておいたのだとしたら、恐ろしい人だ。」

 

それを聞いた明日香は地面を苛立たしげに踏みつけ、神官達の所へ行こうとする。

 

明日香「あんた達………!」

 

リサ「待って!」

 

明日香「でも!」

 

リサ「気にしないで。行こう。」

 

2人は気づかれないようにその場を後にする。明日香の怒りはまだ収まらない様子だった。

 

明日香「どうして怒らないんですか!?」

 

リサ「怒るも何も……仕方ない事だから。私は巫女達に優しく接する事で、みんなが私に親愛の情を寄せるようにした。その情を利用して、私の代わりに死ぬように仕向けた……そう揶揄する人がいてもおかしく--」

 

明日香「リサさんはそんな事してない!それなのにあんな酷い言い方……!」

 

リサ「案外的を射てるかもしれないよ。私は……そうなるように動いてたのかも。巫女達の歓心を買って、いざという時の為に代わりに犠牲になってくれるよう立ち回ってたのかもしれない。」

 

親鳥の子育ては、周囲から愛情があるように見えても、実際は愛情なんて無いのと同じ様に。リサの行動が本当に善意から来ているかどうかだなんて、リサ自身でも証明する事は出来ない。

 

リサ「明日香。神官達の一部が私に対して抱いてる評価はそのままにしておいて。"今井リサは巫女達の人心を掌握し、彼女達を操り、自分の代わりに生贄になるように仕向けた"って。そうしておく事はいつか何かの役に立つかもしれないから。」

 

明日香「……リサさんは…自分に罰を与えようとしてるんですか?」

 

悲しげに明日香が呟く。

 

リサ「…………。」

 

明日香「……自分が生き残ったから…。」

 

 

 

勇者の友達--

 

 

 

 

巫女の友達--

 

 

 

 

 

 

沢山の人が死んだ--

 

 

 

 

 

 

 

たった数ヶ月で数えきれない人が死んだ--

 

 

 

 

明日香「リサさんは………性格は友希那さんとは全く違うけど、きっとそういうところは似てますよね。自罰的なんですよ。自分が罰せられない事が、自分が痛みを負わない事が許せないんです。私は友希那さんの事は詳しくないですけど、リサさんから聞いた友希那さんの性格も、やっぱりどこか………自罰的です。」

 

その声はやるせなさに満ちていた。

 

 

---

 

 

丸亀城--

 

友希那に奉火祭の執行と人間の敗北を伝えると、友希那は涙を流した。友は亡くなり、奪われた世界を取り戻す事も出来なかった。絶望的な結末だった。それでも、友希那は一晩中泣いて、最後には全てを飲み込んだ。

 

友希那「私達は多くのものを失ったわ…。」

 

リサ「そうだね。」

 

友希那「だけど命は繋いだ。」

 

リサ「うん、私達の戦いはまだ終わってない。」

 

友希那「敵は天の神。バーテックスを、用いて人間を根絶しようとし、人が神の力を使うのを嫌っている。」

 

リサ「対する土地神は力を合わせて神樹様となり、人に神の力を与えた。」

 

友希那「しかし、既に大勢は決し人類は辛うじて命を繋いだ状態。勝つ為にはまず力を蓄えないと…。」

 

リサ「じっくり対策を見つけて行こう。」

 

この頃からリサは、いつか巴に言われた言葉について考える様になっていた。

 

 

--

 

 

巴「このままだと、いずれ湊さんは大社の誤った舵取りの犠牲になってしまう。紗夜さんと同じように。紗夜さんがいなくなった今、私はもう勇者も、大社も、この世界も、何がどうなっても構わない。だけど、リサさんはそうじゃないですよね?大切な人が生きてるんですから。」

 

 

--

 

 

友希那が大社の犠牲になってしまう。それを防ぐ為にはリサ自身が大社を掌握しなければならない--

 

リサ(友希那はこれから、唯一生存している勇者として神聖視され、カリスマ化していくだろう。そして大社はそんな友希那を利用し続ける。どこかで友希那が大社の意向の為に苦しまなければならない時が来るかもしれない。)

 

リサ「私は友希那を守る………絶対に守らないといけない…。」

 

 

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翌日、大社--

 

ここ最近大社での会議や報告が多く、リサは連日丸亀城と大社を行き来していた。

 

神官A「それでは、我々は"大赦"と名を改め、暦を表す為に"神世紀"を使うよう正式に提案します。」

 

会議が進んでいくのをリサはどこか上の空で聞いていた。今回の会議の内容は今後の大社と社会をどのようにしていくかについての話し合いだった。大社は今後、"天の神から赦された者"という意味を込めて"大赦"と改名し、暦は西暦から神世紀へと変更する等だ。

 

 

--

 

 

議題も出尽くした頃、老神官が声をあげる。

 

老神官「ところで、今後の大赦の活動は、これまでと異なってくるでしょう。人員整理も行っていかなければならないのでは?」

 

その議題に次々と反対や賛成の声が上がる。神官達の間には派閥のようなものが存在している。今回の会議の中でも、ある派閥が提案した事に対して、別の派閥が反対したり、また別の派閥は両方の顔色を伺ったりと、内容よりも発言力や力関係の競い合いが重視されていた。

 

天の神との戦いは終わったが、その後の世界で誰が権力を持つのか、利益を多く取る立場になるのか。一部の神官達の関心はそこにしかなかった。

 

リサ(こんな人達が--)

 

 

 

リサ(こんな人達が、あこや燐子、紗夜、香澄。そして麻里恵、光、史織、佳奈子、成美、園水……。みんなが命を捧げて守った世界で、こんな人達が権力を振るうのか…。)

 

リサ「………くだらない。」

 

そう小さく呟き、リサは神官達に一声かけ会議室を後にするのだった。

 

 

---

 

 

大社、宿舎--

 

自室へと戻ったリサはスマホに保存されていたみんなの写真を見ていた。最初は友希那の写真だけだった。それが巫女になり丸亀城で暮らしていく中で、あこ、燐子、紗夜、香澄の写真も増えていった。

 

だけど、巫女との写真はあまりない。丸亀城に来てからは大社にいる時間は短かったし、行ったところで報告や会議等でみんなと過ごす時間も無かったからだ。奉火祭で犠牲になった6人との写真も殆ど無かった。

 

リサ「どうして………。どうしてもっとみんなの写真を撮らなかったんだろう…。」

 

後悔しても遅い事は分かっていた。

 

リサ「……………。」

 

リサはスマホを操作し、明日香と詩船にメールを出した。出してすぐ明日香がリサの部屋にやって来て、少し遅れて詩船もやって来た。2人に対してリサは言う。

 

リサ「もう、止めようと思う。」

 

明日香「え?」

 

怪訝そうな明日香に対し、詩船は表情も変えずリサを見ている。

 

リサ「私は今まで、大社に対して基本的には味方であろうとしてきた。だけど、もう止める。あれじゃあ友希那は守れない。」

 

詩船「…………。」

 

リサ「友希那を守れない組織なら、もう……要らないよ。」

 

沈黙が部屋を包み込んだ。

 

詩船「大社を乗っ取るって事かい?後世に悪名を残す事になるよ。それに死んだ友人が帰ってくるわけでもないだろ。」

 

リサ「帰ってこなくても……その遺志を継ぐ事は出来る。悪名なら、寧ろ残してほしいくらいだよ。私は何の痛みも受けてないんだから。あこが死んで、燐子が死んだ。紗夜が死んだ。香澄が死んだ。友希那には身体中に消えない火傷が残っている。四国の人を守る為に、麻里恵が、光が、史織が、佳奈子が、成美が、園水が死んだんだ!私は何もしてない!何の痛みも負ってないんだよ!!」

 

痛みを負っていない人間には、それを負っている人の苦しみを理解する事は出来ない。それじゃあ友希那の隣に立つ事なんて出来ない。友希那を支え続ける事なんて出来ない。

 

リサ「私は友希那を守り、支え続ける。どんな事をしても。多くの友達を犠牲にして生き延びた末に、大切な人さえ守れないのなら、私にはなんの価値も存在しない!」

 

その為に自身を痛みで満たさなければならないのだ。空虚な人間であるリサにならそれが出来る筈だから。

 

明日香「……分かった。私も何でも協力します。リサさんがやりたいようにやってください。」

 

詩船「私も協力せざるを得ないね。今井には4年前の件で逆らえないんだから。」

 

 

--

 

 

その後大社は正式に大赦へと改称される事となり、他にも様々な変化があった。友希那は苗字を"湊"から"花園"と改め、友希那を疑似精霊化して、未来の勇者達に言葉を託すといった事も行った。

 

その間にリサは準備と根回しを始めていた。これから行う事には、巫女達の強固な結束力が必要不可欠だったから。そしてもう一つ、重要なピースが手元になかった。そのピースを見つけたのは、秋も終わりに近づいてきた頃だった。

 

 

---

 

 

高知県、とある神社--

 

リサは小さな神社を訪れていた。この神社は宮司が大赦の神官となった為休業状態になっているのだが、境内は掃除が行き届いており、綺麗に保たれていた。その境内には赤い彼岸花が絨毯の様に一面に咲き乱れており、その中に1人の少女が座り込んでいる。

 

リサ「……やっと見つけたよ、巴。」

 

巴は振り返り驚いた顔を見せた。

 

巴「リサさん……。」

 

リサ「ここは身を隠すのには最適だよね。神官の父親と口裏を合わせれば、大赦に調査される事も少ないし、もし調査が行われる事になっても、事前に時間を伝えておけばその時だけ身を隠せば良いんだから。」

 

リサが巴の居場所を突き止めるのにかなりの時間を費やしてしまった。巴が何をしていたのかも、手引きを行った明日香でさえ知らなかったのだから。

 

巴「どうやってここを突き止めたんですか?」

 

リサ「詩船先生に聞いたんだ。灯台下暗しだよね。問い詰めたら渋々教えてくれたよ。」

 

巴「詩船先生ったら……。」

 

苦笑いをしながら巴はため息をつく。

 

リサ「綺麗な彼岸花だね。手入れをしてたの?」

 

巴「彼岸花は殆ど手を加えなくても強く育ってくれますけど、たまに雑草を抜いたり、手をかけた方が良いんです。」

 

リサ「まるで紗夜みたいだね。じゃあ、その彼岸花の下に紗夜が?」

 

巴「はい。……リサさんは何をしにここまで来たんですか?紗夜さんを奪いに来たんですか?」

 

リサ「巴の返答次第では…かな。」

 

巴「どう言う意味ですか?」

 

リサ「協力してほしい事があるんだ。」

 

リサはこれからしようとしている事を巴に話し始める。それを聞いた巴は笑いながら答えた。

 

巴「中々良いですね。リサさんなら出来るかもしれません。」

 

リサ「協力してくれる?巴は前に、私が大赦を掌握するべきだって言ったんだから。」

 

巴「そうですね。でも、本当に選ぶとは驚きましたよ。思ってた以上に、リサさんは湊さんが大切なんですね。」

 

リサ「そうだね。」

 

巴「分かりました、協力します。ですけど、条件が2つあります。」

 

リサ「何?」

 

巴「紗夜さんを奪わないでください。そして、紗夜さんが存在していた証を……どんな形でもいいから、後世に残して欲しいんです。」

 

リサ「両方とも言われるまでもなくそうするつもりだよ。香澄が亡くなった今、紗夜を一番大切にしてくれるのは間違いなく巴だから……。紗夜の遺体は、巴に預けるよ。大赦には手出しさせない。そして紗夜が存在してた証だけど…すぐには難しいけど、いずれは何らかの形で紗夜の名前を歴史に復活させるつもりだよ。」

 

巴「そうですか……ありがとうございます。」

 

リサは巴に手を差し伸べ、巴はその手を取った。

 

リサ「じゃあ、簒奪を始めようか。」

 

 

---

 

 

その後、巴は大赦に戻り、再び巫女としての役職に就いた。神官達は驚いていたが、巫女達は巴の帰還を何の疑問もなく受け入れていた。リサが予め戻ってくる事を伝えていたからだ。神官達は巫女達の態度の変化に気付く素振りすら見せなかった。

 

 

--

 

 

数週間後--

 

早朝、リサは予告なく大赦を訪れる。

 

リサ「昨夜、神樹様より重要な神託が下されました。急いで神官達を召集してください。」

 

そう告げると大赦にいた神官達が一同に会議室に集まり、全員が注目する中でリサは話し出す。

 

リサ「昨夜下された神託の内容は、非常に明確で、かつてないほど神樹様から強い意志を感じました。この神託により神樹様は、今後人間社会に自らがどのように関わるかを………これまでと関わり方をどう変えられるのかを示されました。差し詰め、これまでの神樹様と人間の関係が"旧約"、今後の関係は"新約"といった感じです。」

 

神官A「神託の内容は……?」

 

リサ「これまでは社会と大赦の運営を人間に任せていたが、今後はその運営を"神樹様ご自身が行う"との事です。これからは神託の頻度を増やし、あらゆる決定を神樹様ご自身が下す。大赦は神樹様の決定に万事従うべし……と。」

 

その言葉に神官達はざわつき出した。リサが言った内容は、即ち神樹がありとあらゆる決定権を神官達から奪うという事と同義なのだ。全ての物事は神樹様の神託通りに行われ、神官は何も口出しできなくなる。

 

神官B「そ……その神託は間違いないのですか、今井様!」

 

リサ「間違いありません。」

 

毅然とした態度で答え、直後会議室の扉が開き、明日香達他の巫女が入室する。

 

明日香「私達にも、昨夜全く同じ内容と思われる神託が下りました。今後は神樹様があらゆる決定を行い、大赦は神樹様の決定を忠実に実行せよと。」

 

巴「神樹様のご意思に反した場合、人間への加護の一切を取り消すとの事です。私達全員に同じ神託が下ったという事は、非常に優先度の高い、厳守すべき御命令なのだと思いますが。」

 

神官C「し、しかし……!それでは……!」

 

リサ「何か問題でも?」

 

神官C「それでは、神託の精査は誰が行うのですか!もし"神託が真実ではなかったら"……!」

 

この場の神官全員が懸念している事は、リサが嘘をついている可能性である。神官には神託を受ける力が無い。巫女が団結して嘘をつけば、それを嘘だと確かめる方法が神官達には存在しないのだ。

 

事実、リサが言った"今後の大赦の運営は全て神樹様が行う"という神託自体が、嘘なのだ。だが、巫女達はこれが嘘だとは神官達には話さない。

 

神官A「神託を、我々神官が精査しなければ……本当に実行すべきかどうかを…!」

 

明日香「必要ありません。」

 

巴「不要です。神託を受ける力が無い人の助けは要らない。無駄なプロセスを増やして、神託の実行を遅らせる事は、神樹様に反する事。精査という行為自体が、神に対する侮辱でしかないんです。」

 

2人が神官の言い分をバッサリと切り捨てる。

 

神官D「ば、馬鹿な事を言うな!お前達は今井様の言いなりだろうが!」

 

怒鳴りつけるが、巫女達には全く響かない。神官の言う通り、巫女全員がリサに全面的に協力している。神官につくか、リサにつくかを選ばせれば100%リサにつくのは目に見えている。それが人格的に優れているかとか、カリスマがあるからだとかではなく、大赦は巫女を道具としてしか見ていないのだ。その反発が今まさに現れているだけである。

 

今後、リサが神託だと言った言葉は、全て本当の神託として扱われるようになる。そして神託で大赦全てが決定出来るなら、リサが全ての決定権を握る事になる。動揺している神官達の中で、いち早く頭を下げた神官が2人いた。1人は詩船。もう1人は巴の父親である。

 

詩船「私は今井に賛成だよ。現実的な問題として、私達には神託を受ける力が無い。神樹に真意を問う事さえ出来ないし、巫女達の言う通りにするしかないだろう。」

 

巴父「私も神樹様と巫女達に従うべきだと思います。奉火祭によって四国を救ったのは巫女達です。私達は何も出来なかった。私達はなんの役にも立たない存在なんだと、あの時に証明されてしまったんです。」

 

巴の父親には、巴を通じて味方するように取り計らっていた。彼は最初から神官の無力さを痛感していたから、巴に言われ素直に協力したのである。他の神官にも密かに根回しをしており、1人、また1人と神官はリサ達に頭を下げていく。そして過半数の神官が巫女に従う意思を見せたのだった。だが、まだ納得していない、最大派閥の神官達がリサ達を睨みつけていると、詩船が神官達に釘を刺す。

 

詩船「お前達の為を思って言っておくが、今井に危害を加えたり、脅迫するような事は止めておいた方が賢明だよ。今井は神樹から愛されているだけじゃない、湊……花園友希那から最も寵愛を受けているんだ。私はそっちの方が恐ろしいよ。勇者の仲間を全て失い、今井まで何かの被害を受ければ、花園は何をするか分からない。それでも、やりきれるかい?」

 

 

---

 

 

その日を境に、大赦は名前だけでなく、体制までも大きく変わった。神官達にあった決定権は、ほぼ全て巫女達に移った。反発していた神官達も妨害や反抗を繰り返していたが、リサが下す神託と、協力してくれる巫女や神官達の協力で、徐々に邪魔な者達を排除していった。

 

やらなければならない事が沢山あった。リサは全ての改革を終えるまで、大赦を少しの時間も離れる事が出来なくなっていた。不在の間に、反対派によって全てを覆される可能性も捨て切れてはいなかったから。大赦の新体制を盤石なものとするまでは、リサは丸亀城に戻る事が出来ず、友希那とも会えない日々が続いていた。

 

友希那自身も、生き残った唯一の勇者という立場上、最早ただの一般人とは言えなくなっていた。天恐の人々への慰問や、バーテックの被害を受けた地域への訪問等、忙しい毎日を送っていた。2人の会話は、メールのやり取りをしたり、たまに電話で会話をするだけだった。

 

 

--

 

 

秋が終わり、冬が訪れる。雪が降る朝、友希那に"雪が積もったね。"と写真付きのメールを送ると、友希那からは"寒さの中で鍛錬をする事で精神的な強さが云々。"等と長文が返ってきて、リサは思わず微笑んでしまう。

 

 

--

 

 

春になり、少しずつ暖かくなってきた。気温が上がった事に油断して風邪を引かないようにと、電話で注意する。

 

友希那「子供扱いしないで頂戴。」

 

と笑いながら答えるも、翌々日"風邪を引いたかもしれない。"とメールが届いた。

 

 

--

 

 

夏、電話で話していると友希那の声がほんの少しだけ弱々しかった。夏バテをしているかもしれない。あれだけの業務だ。忙しい日々で疲れもあるのだろう。

 

 

--

 

 

そしてまた秋が来て、冬が過ぎていって--

 

 

 

 

 

 

 

 

---

 

 

神世紀2年の春--

 

リサは丸亀城の桜の木々の下を歩いていた。空中を舞う花びらの先には、ずっと会いたかった大切な人が待っていた。リサは微笑んで声をかける。

 

リサ「少し背が伸びた?顔つきも大分大人びて、もっとカッコ良くなったじゃん。」

 

それに友希那も笑いながら答える。

 

友希那「ありがとう。リサの方は、もう終わったの?」

 

リサ「うん。全部の改革が完璧に終わった訳じゃないけど、もう反対派に妨げられる事の無い段階まで進んだんだ。これで暫くは、大赦を人々に寄り添った組織に出来ると思うよ。でも、組織である以上、長い時間が経てば、いつかまた腐敗するだろうけど………。」

 

友希那「それはその時代を生きる人達に任せるしかないでしょうね。心配する必要無いわ。きっと未来にも良い心を持った人が生まれて、正しい道を切り拓いてくれる筈よ。」

 

リサ「そうだね…そう信じよう。私はこれからまた丸亀城で暮らすよ。友希那と一緒に。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「そう。--お帰りなさい、リサ。」

 

 

 

 

 

 

そう言って友希那はリサを優しく抱きしめた。リサは久しぶりに友希那の暖かさに包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リサ「ただいま、友希那。」

 

 

 

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