エガオノキミヘ→ギンヘアイヲコメ
次回第2章最終回。物語は勇者の章へと続きます。
車内--
安芸「はい、データ受け取りました。確認中です。彼女たちですか?えぇ、私の判断で休暇を与えています。やはり1人を失ったメンタルダメージはかなり大きい様です。はい、それでは失礼します。」
安芸「………。」
パソコンには大赦から送られてきた資料。西暦の時代、とある勇者が独自で調べ上げた資料である。
安芸「これ以上に勇者の損失を出さない為の新システム…。っ!?何これ…。こんなものが実装されたら……。」
安芸(武器や技の強化は幾らでも出来る。だけどら心の強さには限界があるわ…。あの子達を、もうこれ以上…。)
私は、--を―になってから知った。
過去、--を苦しめたのは----では無く、-----だった事も。
そうなった原因は、そもそも--だった事も。
---の―の話に少し似ている、と思った。
勇者御記 298年9月21日
周りは豊かな自然、滝が流れる場所。沙綾とたえは身を清めている。沙綾は少し前の事を思い出していた。
ーーー
ーー
ー
沙綾「新装備?」
安芸「えぇ、それを得る為に、一時的にスマホを納めてもらいます。」
2人は顔を見合わせ、安芸先生にスマホを渡す。
ー
ーー
ーーー
沙綾(神樹様は外敵と戦う為に勇者に力を与える。しかし、その力は誰もが受け取れる訳ではない。それはとても限定的なもので…。神樹様と極めて高いレベルで共鳴出来る人間…。ごく少数の選ばれた人間にしか使う事が出来ない。)
2人は大赦の女官達に勇者の正装に着替えさせてもらい、アップデートされたスマホを受け取る。するとスマホが光り出し、精霊が現れた。
沙綾・たえ「「!?」」
たえ「わぁ…!」
沙綾「これが新装備…。」
安芸「そう、これが勇者の武器を何倍にも強化する精霊よ。」
たえ「わぁ〜よろしくね。」
沙綾「これが間に合っていれば…。」
たえ「えっ?」
沙綾「ううん。何でもないよ、おたえ。」
たえ「頼もしいね。」
沙綾「そうだね。」
沙綾の精霊は"青坊主"、たえの精霊は"烏天狗"である。2人は精霊を抱えながら微笑み合った。
山吹宅--
朝食を運んでくる沙綾とお手伝いさん。
沙綾父「今日は朝から豪勢だな。沙綾が作ったのか?」
沙綾「うん。今日は特別に野菜たっぷりにしてあるよ。」
沙綾母「どうして?朝からお肉もりもりで良いのに。」
沙綾「ダメだよ。お母さんにはもっと健康に気を付けてもらわないと。」
沙綾父「さぁ、食べようか。」
沙綾母「沙綾。」
沙綾「?」
食べようとした時、沙綾の母が声をかける。
沙綾母「沙綾は勉強も御役目もあるんだから無理しなくても良いのよ。」
沙綾「大丈夫だよ。私に出来る事はこれくらいしかないから。」
両親は顔を見合わせた。
沙綾母「沙綾。あなたは十分に大切な私達の子よ。」
沙綾「分かってるよ。ありがとう、お父さん、お母さん。それに私、料理作るの好きだから、お母さんよりもね。」
沙綾母「むー。」
沙綾父「はははっ。」
一家団欒、幸せな食卓であった。
沙綾「それじゃあ、行ってきます。」
沙綾父「ああ、気を付けて行ってらっしゃい。」
沙綾が退室する。
沙綾父「沙綾は本当にいい子に育ってくれたな……。」
沙綾母「本当に。優しい子になりましたね。」
神樹館小学校、教室--
沙綾・たえ「「おはよう。」」
沙綾とたえが教室に入ると、クラスメイト達がブルーシートを敷いて何かをしていた。
クラスメイト「あっ……。」
クラスメイトの手には、
"わたしたちの勇者がんばれ。"
と書かれた横断幕が握られていた。
沙綾・たえ「「っ……。」」
クラスメイト「先生達に内緒で作ってたの…。」
クラスメイト「この間は、その…ごめんね。」
沙綾「こういう事は禁止されているはずでしょ。」
沙綾が諭す。
クラスメイト「でも、他に何も思いつかなくて…。」
クラスメイト「夏希ちゃんの事、2人の事も考えないで質問攻めしちゃったから…。」
クラスメイト「山吹さんも花園さんも、私達なんかよりずっと辛いはずなのに…。」
クラスメイト「みんなで考えて、どうしても謝りたくて…。」
次々にクラスメイトが答えていった。
沙綾「……これは先生には絶対に内緒にしておかないと。」
クラスメイト「うん…。」
沙綾「でも……。ありがとう、本当に…。」
たえ「気持ちだけでも十分に伝わってるよ。」
沙綾とたえはクラスメイトの気持ちを無駄にしない為にも、この横断幕を受け取った。クラスメイト達は喜び、
クラスメイト「ねぇ、御役目っていつかは終わるんでしょ?そしたら、一緒に遊べるんだよね?」
沙綾「え?そうだね…。」
クラスメイト「やったー!私、山吹さんともっとお友達になりたかったの。」
クラスメイト「私も私も、花園さんの事もっと知りたいな。」
沙綾・たえ「「くす…。」」
2人とクラスメイトの距離はこうして縮まっていった。
10月--
街並みはすっかりハロウィンの飾りで溢れていた。
たえ「カボチャだカボチャだ。これって確か外国のお祭りなんだよね。」
沙綾「そうだね。季節が変われば色んな国のお祭りが楽しめるね。」
たえ「沙綾、この帽子被ってみてよ。」
たえは沙綾に魔女の帽子を勧めた。
沙綾「どうかな?」
たえ「おぉー、似合ってる!」
沙綾「そう?」
たえ「その帽子で鳩出す芸でも覚えてみると良いんじゃない?」
その時、たえの被っていた帽子から"烏天狗"が飛び出してきた。
たえ「わっ!こら!出てきちゃダメだよドロちゃん!」
沙綾「ドロ…?」
たえ「"烏・ドロちゃん・天狗"。ミドルネーム付けてみたんだ。」
たえが指を鳴らすと、精霊は消えていった。しかし、後ろのカボチャの置物がぷかぷか浮き始める。
たえ「もう!勝手に出てきちゃダメだよ。」
沙綾「神樹様が遣わした精霊…この子達がねぇー…。」
たえ「きっと見た目と違ってその力は真に恐ろしいんだよきっと。」
沙綾「だと良いんだけどね…。」
その時、
子供「ママ、カボチャが空飛んでるよ?」
沙綾・たえ「「!?」」
子供の母「えっ?あらホント…。」
精霊は他の人には見えない。従ってこの状況はカボチャが勝手に浮いている様にしか他の人には見えないのである。
沙綾「あ、あはは…。手品の練習なんですよー!」
沙綾は必死で誤魔化し、
沙綾「早くしまって!」
たえに小声で伝えた。
その頃、花園宅--
大赦の神官がたえの両親と話していた。
たえ父「それも御役目の一環なのだと言うのなら仕方ありません。花園家に生まれたたえの使命です。」
たえ母「あの子には何の責任もないのに…。」
説明された何かに対し、たえの父は覚悟を決めているが、母は悲しんでいた。
たえ父「花園家の魂は、私達"花園家"が"湊家"だった頃からずっと神樹様と共にあるんだ。とても光栄な事だよ。」
たえ母「分かっているわ、でも…代われるものなら私が代わってあげたい……。」
両親が話している頃、沙綾とたえは一緒にハロウィンのコスプレを楽しんでいた。
別の日、山吹宅--
先日たえの両親と話していた神官が今度は沙綾の両親と話している。
沙綾母「その新しいシステムの事は、あの子達に伝えたらダメなのですか?」
沙綾父「こんな残酷な事、教えられる訳無いだろう…。」
その頃、2人はイネスでジェラートを食べていた。
沙綾「あーん。うーん。醤油豆はやっぱり私の中ではピンと来ないなー。」
たえ「あはは、沙綾ったら夏希に怒られるよ?」
沙綾「おたえのバニラ味ちょうだい!」
たえ「わぁ!?沙綾にバニラ味取られた!」
沙綾「ふっふっふ…。」
たえ「なぬっ!?その目はまだ狙ってるー!」
場面は沙綾の家に戻る。
神官「どうか、くれぐれも取り乱す事の無いよう、お願い致します。神樹様と共にある彼女らの為にも。」
沙綾の両親と話していた神官は安芸先生だった。
沙綾母「そんな…。それじゃ、あの子達はまるで……生贄じゃないですか!!」
沙綾の母が叫ぶ。
安芸「………。」
安芸先生は沙綾の母の問いには答えずただ黙っていた。
大橋にて--
安芸(勇者なんて体よく取り繕っているけど……。)
大橋には歴代の勇者を輩出した家名の石碑が建てられていた。
左から、
"湊家"
"高嶋家"
"今井家"
"白金家"
"美竹家"
"宇田川家"
"赤嶺家"
"瀬田家"
"奥沢家"
そして"山吹家"と"花園家"と"海野家"
安芸(それは、これからもずっと選ばれ…そして失われていく生贄……。)
別の日の帰り道--
夕方、沙綾とたえは学校から帰宅していた。
沙綾「お父さんもお母さんも学校の友達も、みんな応援してくれてる。御役目がある私達は幸せだな。」
たえ「急にどうしたの、沙綾?でも、そうだね。横断幕も貰っちゃったしね。」
沙綾「っ!?」
沙綾が何かの気配を感じた。
たえ「来るの……?」
沙綾「うん、来る。」
たえ「分かるようになってきちゃったね……。」
沙綾はいつかに見た夢の事を思い出す。
沙綾(今度のはきっと大変な戦いになる…。神樹様もそれを伝えようとしていた…。)
2人のスマホが鳴り出した。
ー-樹海化警報-ー
そして時が止まる---
沙綾「おたえ、気を引き締めて。」
たえ「うん。集中集中。あっそうだ。」
たえは持っていたリボンを沙綾に渡した。
沙綾「?」
たえ「これ、沙綾が持ってて。」
沙綾「うん、でも何で?」
たえ「髪に付けてくれても良いんだよ。」
沙綾「戦いが終わったら付けてみるよ。似合ってたら褒めてよ、おたえ。」
たえ「もちろん。」
樹海化が始まる--
沙綾「おたえは絶対に私が守るから。」
たえ「沙綾も必ず私が守るからね、約束。」
沙綾「うん、約束。必ず一緒に帰ろう。」