戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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外伝4部の3話目。

二人の前に現れた人物は、かつて旧世紀時代の話を聞きに訪ねた人物の娘である広町七深だった。

久々の再会を懐かしむ三人。その中で芙蓉は七深にとある提案をする。



価値のある体験

 

?「あの………るいるいに此処に来るように言われたんですけど……。」

 

倉田「あっ……。」

 

芙蓉「やっと来たね……ってーー」

 

 

 

 

 

 

 

芙蓉・倉田・?「「「えーーーーーーーーっ!!!!」」」

 

七深「シロちゃん!?」

 

倉田「な、七深ちゃん!?」

 

二人が驚いたのも無理はない。現れた人物は以前とある人物から旧世紀の話を聞く為、知り合いになった広町七深だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

うどん屋ーー

 

三人は公園で話し込むのは難だからとうどん屋へ行き、久々の再開を喜びあっていた。

 

七深「まさかまたリリちゃんとシロちゃんに会えるなんて夢にも思わなかったなぁ。………うどん美味しい。」

 

倉田「私もだよ。アカウント名が"深沼香澄"だったからてっきり初対面の人だと………うん、ここのうどんも美味しいね。」

 

七深「あはは……高嶋香澄様を調べているうちにどんどん沼にハマっちゃってね。そこから自分の名前から取って"深沼香澄"って名前にしたんだぁ。」

 

芙蓉「そうだったんだね。………あっ、そう言えば確か七深ちゃんと初めて会った時もこうしてうどん食べてたよね。」

 

倉田「言われてみれば…。」

 

七深「そうそう。最初はちょっとギスギスしてたかも。」

 

三人はうどんを食べながら初めて会ったあの時の事を思い出すのだった。

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

数ヶ月前、うどん屋ーー

 

三人が知り合ったきっかけは、芙蓉からの情報が最初だった。"どうやら愛媛の方で高嶋香澄について調べて回っている人がいるらしい。"とのタレコミがあったらしい。

 

その情報を元に、二人は愛媛を虱潰しに探し、聞き込みして回り広町七深へと辿り着いたのだ。

 

七深「二人って"香澄"の名前だけど、全然高嶋様に似てないよねぇ。笑顔もカリスマ性も。」

 

芙蓉「七深ちゃんは高嶋様に会った事もないでしょ!」

 

七深「私は高嶋様の事だったら何でも知ってるつもりだよ?」

 

静かな口調ではいるが、このままいけば軽い口論になってしまうだろうとましろは察し止めに入る。

 

倉田「ちょっとちょっと二人とも。店の中だと迷惑になっちゃうよ!」

 

芙蓉・七深「「むむむむ…………。」」

 

二人はましろに宥められ、落ち着き再びうどんを食べ進める。

 

 

 

 

 

 

七深「……ご馳走様でした。それじゃあ私は帰るね。折角高嶋様の事が知れると思ったんだけど、当てが外れちゃったみたいだし。」

 

そう言い残し、七深はうどん屋を後にするのだった。

 

倉田「………行っちゃったね。」

 

芙蓉「ごめんね倉田ちゃん。今回は単純に私の調査ミスだったよ。」

 

倉田「でも、何だか不思議な人だったね。少し話しただけで高嶋香澄様へのこだわりが強いって分かったよ。」

 

芙蓉「そうだね……。高嶋香澄様が載ってた記事をスクラップにしたり、出ているテレビ番組とかは全部録画してるって言ってたし。」

 

倉田「重度の高嶋香澄信者……。まるで戦国時代の武将ファンみたいだよ。そもそも勇者のファンってそんな感じがするもんね。」

 

そんな事を二人で話していると、芙蓉は何か気になる点があるようだった。

 

芙蓉「うーん…………。」

 

倉田「どうしたんです?」

 

芙蓉「広町七深………じつは気になる事があるんだ。」

 

 

 

ーー

ーーー

 

 

 

七深「そうそう、確かに最初はそんな感じだった。でも私が帰った後にそんな事話してたんだね。」

 

芙蓉「それから数日は七深ちゃんの事を色々と調べたりしてたんだ。」

 

七深「気になる事があるって言ってたもんね。私はその後の二人の話が気になるなぁ。」

 

倉田「そうだね………確かあの後ーー」

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

二人が七深に出会ってから数日が経った頃の夜、ましろのスマホに芙蓉からの着信が入った。

 

倉田「もしもし、リリさん?」

 

芙蓉『倉田ちゃん!!』

 

電話口から聞こえてきた芙蓉の声はいつもの倍は大きな声であり、きっと大発見があったのだとましろもすぐに理解する事が出来た。

 

芙蓉『新事実だよ!!』

 

倉田「何がです?」

 

芙蓉『七深ちゃんの母親は、あの"7.30天災"の時四国の外から避難してきた避難民だったんだ!』

 

倉田「え、そうなんですか!?」

 

芙蓉『九分九厘間違いないよ。あらゆる伝手と方法を使って調べたんだから。』

 

倉田「リリさんのその調査能力は本当に凄いですね……。」

 

そんな事を話していると、突如電話口のリリから困惑の声が聞こえた。

 

芙蓉『あれ……?』

 

倉田「どうしたんですか?」

 

芙蓉『……………なんか窓の外から人の気配がしたような……。いや、多分気のせいだね。だってここはマンションの6階なんだから。」

 

倉田「…………………今井様とか?」

 

芙蓉『い、いやいやいやいや!!そそそそそそんな筈はなななななない!!!亀毛兎角(きもうとかく)だよよ!!?』

 

倉田「落ち着いてください、リリさん!冗談ですよ。風か何かじゃないですか?それより七深さんの事ですけど…。」

 

芙蓉『あぁあっ!そうだね!…………どう?少しは興味が湧いた?広町七深ちゃんは私達と全く同じ境遇なんだよ。』

 

倉田「四国外からの避難民の子供………。」

 

芙蓉『避難民だった私のお母さんと倉田ちゃんのお父さんはもういないけど、七深ちゃんのお母さんはまだ生きている。当時の話を聞けるかもしれない。』

 

倉田「…………。」

 

実際これまでの芙蓉がしてきた"勇者部"の活動に対しましろは未だに懐疑的だったが、いざ西暦時代の話が聞ける可能性がちらつくと手を伸ばしてみたい衝動にかられてしまいそうになる。

 

芙蓉『私は七深ちゃんのお母さんから話が聞きたい。もう一度七深ちゃんに会ってみよう!』

 

倉田「…………そうですね。」

 

芙蓉『……………ところでなんだけど。』

 

倉田「まだ何かあるんです?」

 

芙蓉『………やっぱり外の気配の事が気になるから、今晩は倉田ちゃんの部屋に行って寝ちゃ駄目?』

 

倉田「一人で寝てください。」

 

芙蓉『倉田ちゃーーーん!!!』

 

芙蓉の断末魔の叫びの途中でましろは通話を終了させる。その後でふとましろは思った。今井リサ様なら有り得ない話ではないと。

 

芙蓉がこの世に生を受けた時から監視しつづけ、ましろが芙蓉と接触した後は二人を監視し続けた。壁の調査をした時も、芙蓉が丸木舟を作った時も、ましろが壁を登っていた時もだ。大赦のトップであり外の世界の真実を隠し続けると決めたリサなら十分その可能性がある。

 

倉田「………そんな筈ないよね。」

 

そんな事を思いながら、ましろは眠りにつく準備をするのだった。

 

 

 

ーー

ーーー

 

 

芙蓉「あの時は確かに怖かったよ……結局明け方まで眠れなかったし…酷いよ、倉田ちゃん。」

 

倉田「もう中学生なんですから一人で寝れるようになりましょうね。」

 

七深「あはは……でも、そこからすぐ私をまた見つけたんだよね。シロちゃんも言ってたけど、リリちゃんの調査能力には感服しました。」

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

芙蓉から電話があった次の日、二人は来島海峡大橋を訪れる。水面が夕日を反射し、海がまるで光り輝いてあるようだった。遠くの方に人影が見える。その姿は広町七深その人だった。

 

芙蓉「やっぱりここにいたね、七深ちゃん。」

 

七深「………また来たんだ。」

 

倉田「うん、色んな人に七深ちゃんの容姿とかを聞き込みして、よく夕方にここに来てるって情報をね。見つけられて良かったよ。」

 

七深「今度は何の用事?」

 

芙蓉「単刀直入に聞くね?七深ちゃんのお母さんは西暦時代、四国外からの避難民だったよね?」

 

その言葉に七深の瞳孔が大きくなり、息を呑んだ。どうやら図星の様である。

 

七深「………どうやってその事を?」

 

芙蓉「それは極秘だよ。私達は"勇者部"。旧世紀の真実を記録し、保存する活動をしてる。是非七深ちゃんのお母さんから旧世紀の話が聞きたいんだ。」

 

七深「……勇者部?よく分からないけど、それは無理だよ。」

 

芙蓉「どうして?」

 

七深「お母さん、当時の事は話したがらないから。私にも絶対に話してくれない。」

 

そう言って、七深は来島海峡大橋を指差した。

 

七深「この来島海峡大橋は旧世紀に四国と本州を繋いでいたしまなみ海道の一部……お母さんは2015年の夏、あの橋を通って四国に来た。私がもっと小さかった頃、お母さんは時々ここに来てあの橋を眺めていた。橋を見に行った日は何故だかいつもより優しくて、私の好きなおまけ付きのお菓子を買ってくれた。だから私は今でもこの大橋が好きなんだ。でも、お母さんが何を思っていたのか……きっと昔、あの場所で何かがあったんだと思う。…………私も、本当はお母さんからもっと話を聞きたい。でも……。」

 

俯く七深。その時、芙蓉が七深の手を握り力強く答える。

 

芙蓉「私達に任せてよ!きっと七深ちゃんのお母さんから当時の話を聞き出してみせるから!」

 

倉田「そうです!普段はポンコツなリリさんですけど、いざとなったら凄いんですから!」

 

芙蓉「ポ、ポンコツーーー!!??それはちょっと酷いんじゃないかな、倉田ちゃん!!」

 

倉田「事実を言ったまでです!」

 

芙蓉「なにをーー!!!!」

 

七深を蚊帳の外にほっぽり出し砂浜で追いかけっこをする二人の香澄。だが、それも芙蓉の体力がすぐに底を付き終了となった。そんな二人の姿を見て、七深は吹き出し笑い出してしまう。風も無く穏やかな海岸に七深の笑い声が響いた。

 

七深「あはははははっ!!二人とも面白い!面白いよ!!真剣に悩んでた私が馬鹿みたいに思えてくる!」

 

倉田「へ?」

 

芙蓉「へぇ……ふぅ………はぁ……な、何を笑って……?」

 

七深「分かった、良いよ。二人ならきっとお母さんから話を聞けると思う。」

 

こうして二人は七深のお母さんとの面会の約束を取り付けてくれる事になったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りの電車内ーー

 

芙蓉「愛媛となると、移動だけでもかなり時間が掛かるね。」

 

倉田「リリさん。七深さんは説得出来ましたけど、七深さんの母親から本当に話は聞けるんですかね?」

 

芙蓉「もし聞けなくても、会えるだけで意味はある筈だよ。七深ちゃんは少し不思議だけど、心は歪んでない。前向きに明るく生きている。それは七深ちゃんのお母さんが強く真っ当に生きているからだと思う。」

 

倉田「………うん、そうですね。」

 

芙蓉「"7.30天災"の事を話したがらないのは、多分何か辛い事があったから。でも、七深ちゃんのお母さんはそれを精神的に乗り越えたんだよ。そんな人と話す事は、きっと価値がある事だと私は思う。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその次の日、二人は愛媛にある七深の自宅を訪れるのだった。七深の母親である和奏レイは意外にも気さくで明るく、旧世紀の終わり頃にあった様々な事を三人に話してくれたのだ。

 

三人が特に驚いた事は、和奏レイが高嶋香澄と一緒に四国にやって来たという話だった。その事を話すレイの口調はずっと迷いが無かった。芙蓉とましろはその姿にリサの姿を重ねていた。全てを乗り越えた上で前を向いている人のそれだった。

 

もう一つ驚いた事があった。レイとの面会の場に大赦の巫女である都築詩船の姿があった事だ。詩船とレイからの話を聞いている中で芙蓉はとある事に勘付く。二人は何か大事な真実を隠しながら話しているという事に。その中で二人は倉田香澄の名前の由来を知ることが出来たのだった。

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

レイ「あれ?倉田さん、もしかしてお母さんから聞いてないの?芙蓉さんの場合は詳しくは知らないけど、倉田さんの場合は単純に高嶋香澄様が由来って言えないんだよ。霧絵さんが自分の名前………"きり"から最初は"かすみ"ってつけようと考えてたんだけど、生まれた後に逆手を打ったから、折角だからって"香澄"にしたんだから。つまり、倉田さんの本当の名前である"香澄"は、高嶋香澄様から半分、お母さんの霧絵さんから半分貰った名前なんだよ。」

 

 

ーー

ーーー

 

 

 

それからまた暫くの日が経ち、二人はレイから聞いた話を一冊のノートにまとめていた。

 

倉田「凄いね、リリさん。ここまで細かく覚えてるなんて。」

 

芙蓉「発蒙振落(はつもうしんらく)だよ。まさか都築詩船さんまであの場にいたなんてね。」

 

倉田「あの人は何だったんだろう。高嶋香澄様の巫女だったらしいけど。」

 

芙蓉「あの人は色々と伝説を持ってるらしいよ。巫女随一の武闘派で、逆らう神官100人を一人一人素手で殴って今井様に従わせたとか、巫女なのに勇者より強かったとかね。」

 

倉田「流石にそれは嘘なんじゃないかな……。」

 

 

 

ーー

ーーー

 

 

 

七深「話してた雰囲気を見るに、詩船さんは結構老獪な人だよね。…………ふぅ、ご馳走様でした。」

 

芙蓉「確かに。だけど、七深ちゃんのお母さん……レイさんと話してる時は所々に笑顔が見えたりもしてたけど。………美味しかったぁ。」

 

倉田「そうですか?あの笑いは絶対含みのあるヤツですって。大赦の人しか知らない情報とか言ってたし……絶対困った顔見て笑うタイプだと思いますよ。…………ここのうどんは出汁が少し違いましたね。」

 

食べ終えた三人はうどん屋を後にし、七深は二人を見送る為に、芙蓉とましろは帰る為に最寄り駅へと向かっていた。

 

七深「そう言えば、二人はどうしてまた私を探してたの?」

 

倉田「……そうでしたね。結局"香澄SNS"の加入依頼のが発端でしたけど………どうしましょう、リリさん。」

 

芙蓉「それなんだけどね……さっき考えたんだけど、七深ちゃん。」

 

七深「ん?」

 

芙蓉「"勇者部"に入らない?」

 

倉田「え?き、急すぎますよリリさん!唐突過ぎて絶対にはいっーー」

 

七深「良いですよ!」

 

倉田「即決!?良いんですか?七深ちゃん!」

 

七深「だって、リリちゃんとシロちゃんは旧世紀の事を調べてるんでしょ?だったらそれについて行けば高嶋様の情報も色々と知れるだろうし。」

 

芙蓉「勿論!それはそれは大船に乗ったつもりでいて大丈夫だよ!」

 

倉田「前みたいに転覆しないと良いですけど。」

 

芙蓉「倉田ちゃーーーん!!」

 

七深「あはははははははっ!やっぱこの二人は面白いなぁ!!」

 

新たな仲間が加わり賑やかさが増した"勇者部"。彼女達はその目で何を見て、何を残していくのだろうかーー

 

 

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