戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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外伝4部のその後のお話。

突然七深に届いた謎のメッセージ。
"人としての高嶋香澄"を感じるべく、三人は彼女の軌跡を追体験しようと試みるーー


人としての姿

 

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ーー

 

 

七深(私が初めてその人の姿を見た時、胸が締め付けられるような感じがした。TVの特番で映った、猫耳の様な髪型が特徴的な少女。カメラに向かって若干の恥ずかし気に笑う姿。桜色の装束を纏って凛々しく立っている姿ーー。)

 

七深(その人は高嶋香澄ーー一目惚れだった。四国を、世界を、多くの人々を守り抜いた歴史的な英雄。だけど、悲劇の英雄でもある。まだ10代前半でありながら、過酷な戦いに駆り出され、傷付き、命を落とした。)

 

七深(この人の偉大さを、悲劇を、栄光を、奇跡を私は世間に広めないとダメなんだ。それが私の天命なんだって悟った。)

 

七深(だけど、私が高嶋様の事を話すと、お母さんはいつも苦い顔をする。"高嶋香澄は大人に利用された哀れな子供で、英雄だなんて言ってはいけない"ーーと。どうしてそんな酷い事が言えるんだろう?私はお母さんと仲は良いが、この一点だけに関しては全く意見が合わなかった。)

 

 

ーー

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観音寺市のとある音楽堂ーー

 

人のざわめきが彼方此方から聞こえる。小学校の体育館程の広さであろうこの音楽堂に見ただけでも100人以上は集まっていた。

 

芙蓉「おー!盛況してるなぁ!この音楽堂で漫画の即売会が行われるなんて!」

 

扉を開けるや人の多さに圧倒される芙蓉。彼女が此処へやって来た理由は七深に呼ばれたからである。

 

芙蓉「倉田ちゃんも誘ったんだけど、昨日から全然電話に出てくれないんだもんなぁ…。」

 

そんな事を呟きながら、芙蓉は人混みの中から七深を探し歩く。彼女を見つけるのにそんなに時間は掛からなかった。

 

芙蓉「あ、いた!七深ちゃーん!」

 

七深を見つけた芙蓉は足早に駆け寄るが、七深の隣にいた人に驚き足を止めた。七深の隣にいたのはましろだった。

 

芙蓉「倉田ちゃん!?」

 

倉田「リリさん。」

 

芙蓉「どうして此処に!?誘おうと昨日から何度も電話したのに!」

 

七深「ごめんね、その時からシロちゃんには同人誌作りを手伝ってもらってたんだ。シロちゃんのお陰で助かったよ。」

 

芙蓉「成る程ねぇ。ところで、同人誌って何?聞いた事はあるけど、見るのは今日が初めてなんだ。」

 

芙蓉が疑問を投げかけると、七深は得意げに一冊の本を取り出し語り出す。

 

七深「じゃじゃーん!これが今回の新刊なんだ!私のサークルはね高嶋香澄様に関する漫画が専門でね、絵も文章も全部私が書いて、印刷所に入稿して本にしたんだ!」

 

七深が渡した漫画をペラペラと読み進める芙蓉。話はともかく絵はとても上手く、一般販売されている漫画と比べても肩を並べる程の出来だった。

 

芙蓉「凄い上手な絵だよ!そっか、確か七深ちゃんのお母さん、和奏レイさんは絵本を書いてたんだっけ。」

 

七深「そう。仕事じゃないんだけど、どうしてか何年かに一冊絵本を描いては何処かに送ってるらしいんだ。」

 

七深のサークルでは高嶋香澄がいかに偉大だったかを世間に広める事を第一に活動しており、文章が苦手な人でも読める様にと漫画を書いているらしい。

 

七深「何とか頑張って普及に励んでるんだけど、いまいち何かが足りない気がするんだよねぇ……。」

 

漫画の売れ行きも絵の上手さが後押しとなり上々なのだが、七深はこれといった手応えを感じていない様子だった。

 

倉田「なら、新しいネタとか探しに行きます?」

 

芙蓉「それは良い案じゃないかな、倉田ちゃん!"勇者部"の活動も出来て一石二鳥だよ!」

 

七深「本当に!?ありがとうシロちゃん、リリちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、丸亀駅ーー

 

即売会の翌日、三人は丸亀駅へとやって来ていた。高嶋香澄の足跡を辿る為だ。

 

七深「高嶋様は大社に所属した後、ここ丸亀で暮らしていたんだ。だから此処に来れば何かある筈だよ。」

 

芙蓉「確か勇者達は丸亀城を基地にしてたんだよね。訓練や日常生活もそこで送ってたとか。」

 

七深「そう!それと二人にまだ言ってなかったんだけど、昨日の夜に変なメッセージが届いたんだ。」

 

倉田「変なメッセージ?」

 

七深はスマホを取り出し、そのメッセージを二人に見せる。

 

 

 

 

 

 

『貴女の同人誌、毎回興味深く拝読させていただいております。貴女は勇者の高嶋様に関して大変多くの知見を持っているようですね。ですが、"人としての高嶋香澄"に関してはどうでしょうか?人としての高嶋香澄を知らずして真に高嶋香澄を理解したと言えるのでしょうか。』

 

 

 

 

 

 

倉田「何これ…。」

 

七深「私が思うに、このメッセージは高嶋様のファンだよ。私が知らない高嶋様の事を知っているというマウント取りのメッセージだよ!」

 

倉田「そ、そうなのかな…?」

 

七深「だけど、このメッセージの言う事も一理あるんだ。私は勇者としての高嶋様にばっか目を向けて、人としての高嶋様を見てなかった。だから今日この丸亀で高嶋様が過ごした日常を追体験して、もっと高嶋様の理解を深めるんだよ!!」

 

芙蓉「確かに………興味津津だよ。日常生活に関してはTVや本じゃあまり取り上げられない事だし。」

 

七深「という事で………先ずはあそこに行くよ!!」

 

そう言うと、七深は意気揚々と歩を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うどん屋ーー

 

七深「もぐもぐ………ここは奈良出身の高嶋様が、初めて本格的な香川のうどんを食べたうどん屋だよ!」

 

芙蓉「ずるずる……うん、美味しい!!」

 

七深「汁まで一滴も残さないよ!………ぷはぁっ!」

 

倉田「七深ちゃんのテンションがいつになく高い…。」

 

七深「ごちそうさまでした!さぁ、食事についての理解を深めたら次は買い物だよ!」

 

芙蓉・倉田「「ちょっ……早すぎる!!」」

 

息つく暇も無く七深は店を飛び出し、それに置いて行かれたまいと二人は残りのうどんを口へと頬張るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

商店街ーー

 

七深「此処は丸亀通町商店街!生前、高嶋様が湊様と今井様と一緒に、この商店街を楽しげに歩いていた姿が目撃されてるんだ。」

 

芙蓉「ひっ……今井リサ様ぁ!?」

 

リサと言う言葉を発しただけで芙蓉に悪寒が走り震え上がってしまう。

 

七深「リリちゃん、どうしたの?」

 

倉田「あはは……リリさんは今井様の名前を聞くと怯える病気……みたいなものです。」

 

七深「ん………?お大事にね。」

 

芙蓉「ああああぁっ、今井様、今井リサ様、私は何も悪い事はしてないですからねーー!」

 

そんな話をしながら買い物を済ませた三人は目の前に聳える大きな城へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

丸亀城、三の丸ーー

 

色々な場所を巡った三人は最後にこの丸亀城へとやって来ていた。

 

倉田「まさか入れるなんてね……。てっきり大赦に管理されてて入れないかと思ってたのに。」

 

七深「普段は立ち入り禁止だけど、お花見の為に春のこの時期だけは一部解放されてるんだ。もう散りかけてるけど、まだ入れる。この三の丸までだけどね。」

 

倉田「天守閣まで行かなくても、だいぶ高いね。」

 

芙蓉「この丸亀城は旧世紀から石垣の高さが日本一だったらしいからね。」

 

静かに丸亀の町を見ながら、七深は過去に思いを馳せていた。

 

七深「………高嶋様もきっと此処から町を見下ろしてたんだろうね。だけど、その頃の町は今とは違ってた…。」

 

倉田「そうだね…。景色はあまり変わってないだろうけど、人は今みたいに平和に暮らしてなかっただろうし。」

 

リリ「………それで、七深ちゃん。今日一日丸亀を見て回ってどうだった?」

 

その質問に返ってきた言葉は意外にもあっさりしていた。

 

七深「うーん……分からないかな。」

 

倉田「随分とあっけらかんとした答えだね。」

 

七深「やっぱり分からないものは分からないや。………だって私達はあの時代を生きた訳じゃないから。」

 

倉田「終末戦争、狭間の時代………か。」

 

七深「うん。私達がいくら想像しても、追体験しようとしても、結局その苛烈な時代を知らない私達は高嶋様の本当の気持ちは分からない。」

 

倉田「………そうかもね。」

 

七深「でも、一つだけ思う事は………高嶋様が、今のこの平和な時代を見ることが出来なかったのはとても残念。高嶋様が守り通した世界なのに……。」

 

仮初ではあるが、この平和な時代に高嶋香澄が生きていたら、彼女はきっとどんな生活を送っていたのだろうか。

 

 

友希那の様なカリスマになっていただろうかーー

 

 

リサの様な矢面に立つリーダーだっただろうかーー

 

 

 

それともーー

 

 

 

芙蓉「案外、普通の人になって、平凡な生活を楽しんでたのかもしれないね。」

 

七深「あははは!それが一番高嶋様っぽいかも。」

 

そんな事で話に花を咲かせていると、七深のスマホから着信音が鳴った。どうやらメッセージのようである。

 

七深「これは……。」

 

七深は内容を一読し、目を泳がせた。文面的にこのメッセージはあの時と同じ人物が送ったものだろう。

 

 

 

 

 

 

『高嶋香澄について色々知ろうと努力したようですね。だけど、分からなかったでしょう?

…………当然だ。"同じ時代"に彼女の身近で生きている人でさえ人としての高嶋香澄をほぼ理解出来なかったんだから。それはあいつ自身が、自分について殆ど何も語らなかったからさ。だが、私は人としての香澄を理解しようとする者が増える事を望み、人としての香澄に目を向ける者が多くいて欲しいと願うよ。"お前さん“の母の様にね。

もしお前さんが人としての高嶋香澄のことをもっと深く理解しようと望むなら、最も良い方法を提案しようか。

 

 

大赦に入ることさ。

 

 

 

そこには高嶋香澄が過ごした日々に関して、最も多くの情報がある。』

 

 

 

 

 

七深「……………。」

 

倉田「どうしたの、七深ちゃん?」

 

芙蓉「何か考え事?」

 

七深「……ううん、大した問題じゃなかったよ。次の同人誌について印刷業者からの連絡メッセージだったよ。」

 

七深は敢えて二人にこのメッセージの事は伝えなかった。

 

七深「それじゃあ今日の事を纏める為に、うどん食べて力をつけよう!」

 

芙蓉「レッツゴー!!」

 

三の丸を後にする三人。

 

 

 

 

三人がいなくなった後、物陰から一人の老齢な女性が先程まで三人がいた場所に姿を表した。

 

詩船「…………結局お前さんを理解出来る人は存在するんだろうかねぇ。因子を受け継いだあの子達なら……もしかするかもね………なぁ、香澄。」

 

そう呟きながら都築詩船は晴れ渡る空を仰ぐ。

 

詩船「後は自分達で決めることさ。"勇者部"としてーー"語部"としての活躍に期待だ。」

 

ポケットからタバコの箱を取り出し、詩船はその場を後にするのだった。

 

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