戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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7月30日は世界が閉ざされた日ーー


自分は人とは同じ歩幅で歩くことはできないかもしれない。

だけど、今を精一杯頑張って生きる事が"語り部"として、"勇者部"として、"芙蓉香澄"としての生きた証になるんだからーー


目の前の今を生きる

 

外泊研修から数日後ーー

 

七深「あはははっ!リリちゃんって寝相悪かったんだねぇ。」

 

芙蓉「笑わないでよぉ!顔厚忸怩!みんなに笑われて大変だったんだからぁ!」

 

七深「まぁまぁ、それにしても無事に外泊研修が終わって良かった。リリちゃんも体調崩さなかったし。」

 

芙蓉「えっへん!この通り私の身体は健康そのものだよ!それが分かったら勇者部の活動を再開しよう!もうすぐ夏休みだよ!!」

 

七深「ごめん、リリちゃん。夏休みはあんまり時間が無くて……。」

 

芙蓉「えーーっ!?倉田ちゃんは?」

 

倉田「私もちょっと……もう私たちは受験生だから勉強もしないと。」

 

芙蓉「へ?勉強なんかしなくたってそこら辺の高校に入れば大丈夫じゃない?」

 

倉田「そうだ、リリさんは頭良かったんだった…。」

 

夏休み間近、受験の事を考えなくてはならない時期に差し掛かろうとしていた。今まで通りに勇者部の活動ばかりに力を入れることも難しくなってくる時期だった。週に1回は集まれるだろうと3人は考え、取り敢えず夏休み最初の活動日を決めて解散する。図書館に寄るという香澄を見送り2人も帰路へ向かった。

 

七深「ねぇ、シロちゃん。夏休みの間は勉強で暇がないって言ってたけど、何処の高校を受験するつもりなの?」

 

倉田「えっと………県外のバスケが強い高校に行こうと思ってるよ。」

 

七深「そっか……もう志望校も決まってて当然だよね。」

 

倉田「え?七深ちゃんは違うの?」

 

同じ歩幅で歩いていた七深の足が止まる。

 

七深「………私、実はね…大赦に入らないかって誘われてるんだ。」

 

倉田「えっ………!?」

 

七深「実は……前にみんなと高嶋香澄様について調べてた時にね、都築詩船様から連絡があったんだ。」

 

倉田「詩船様って確か………私とリリさんが七深ちゃんのお母さんに話を聞きに行った時にあったあの人?」

 

七深「そう詩船様はあの高嶋香澄様の巫女だった人。勿論すぐに大赦で働く訳じゃないよ。附属の学校で高校の勉強と神職の勉強をしていずれ神官なるってコースらしいんだけどね。」

 

高嶋香澄に近付ける所謂出世コースである筈だが、七深の声色は低かった。

 

七深「でもね…………どうして私なんだろうって。勇者様や巫女様みたいに特別な力を持ってる訳でも無いし、頭が良い訳でも無い。大赦って言ったら国の中枢だよ?そんなエリートコースに行ける人間じゃないよ、私は。」

 

倉田「大赦なんて雲の上の話だもんね…。」

 

七深「取り敢えず私は夏休みの間は詩船様の元で大赦や神職に関する勉強をして…それで決めようと思うんだ。」

 

倉田「なんだ、七深ちゃんもしっかり将来について考えてるんだね。」

 

七深「そうかなー。…………リリちゃんはどうなんだろう?」

 

倉田「どうだろう?」

 

七深「リリちゃんは……未来の事より今目の前の事に一生懸命なんだよ。先の事を考えるよりそういう生き方ができる方が、私は羨ましいな。」

 

倉田「でも、リリさんの場合は……………ううん、そうかもしれないね。」

 

出そうと思った言葉を飲み込むましろ。

 

倉田(リリさんの場合は今を懸命に生きているというより、どこか焦っている様にも見える。少しだけ危うい感じがする。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、図書館ーー

 

閉館時間間際、香澄はようやく作業がまとめ終わっていた。

 

芙蓉「………良し、ギリギリまで頑張った甲斐があったよ。これで勇者部の活動表が完成だ。家に帰ったら2人にメールして意見を貰わないと。…………流石に疲れたなぁ。」

 

窓から夕日が差し込む。外を眺めると窓からは小川が見える。その川は瀬戸内海まで続いている。この川の流れは四国の周りを壁が囲う以前からずっと変わらないのだろう。香澄は2人との温度差を感じていた。

 

芙蓉「…………あぁっ、もう何で!何で何で!………つい半年前までは私と倉田ちゃんと七深ちゃんの足並みは揃ってたのに…。みんなと一緒に歩いてたのに!でも今は違う!仕方ない………仕方ない事だけど…でも……っ!?」

 

心臓の鼓動が早くなるーー

 

 

 

 

呼吸が激しくなるーー

 

 

 

 

 

意識が遠のいていくーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

芙蓉「………………………っ……ここは……?」

 

病室で香澄は目を覚ます。側にはましろと七深がおり、香澄が目を覚ましたと気付くと直ぐに2人は香澄の手を握り声をかけた。

 

倉田「リリさん!」七深「リリちゃん!」

 

芙蓉「倉田ちゃんに……七深ちゃん……私…。」

 

倉田「道の途中で倒れてたんだよ!やっぱりこの前の外泊研修でずっと歩き回ってたのが……。」

 

芙蓉「違うよ!これはたまたま………夏の暑さでバテる事くらい誰にだってあるでしょ!」

 

倉田「でも!!」

 

2人の言い合いに七深が割って入った。

 

七深「まぁまぁ。リリちゃんはしばらく安静にすること。勇者部の活動はリリちゃんの身体が良くなってからどうするか考えよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倉田宅ーー

 

香澄が入院した日の夜、ましろのスマホに香澄からメールが届いた。

 

 

 

TO:倉田ましろ

--

FROM:芙蓉香澄

--

SUBJECT:勇者部活動表

--

 

夏休みの勇者部の活動表を作ったんだ!倉田ちゃんの意見を聞かせてね!

 

 

 

 

 

メールと共に画像も添付されている。文面から察するに活動表の画像なのだろう。

 

倉田「………はぁ。取り敢えず返信はしておこう。」

 

 

 

 

 

 

TO:芙蓉香澄

--

FROM:倉田ましろ

--

SUBJECT:Re:勇者部活動表

--

 

リリさんが元気になったら付き合ってあげますね。

 

 

 

 

 

 

 

だけど夏休みに入っても、7月が終わっても、8月の半ばになっても、勇者部の活動が行われる事は一度も無かった。外泊研修後に倒れて以来、香澄の体調が改善する事は無かったのだ。少し調子が良くなったかと思えば体調を崩す。そんな状態を繰り返した。香澄の父親はとても心配していた。病院で検査をしてもらったが、持病の悪化という訳ではないらしい。原因ははっきりしなかった。疲れ、夏の暑さ、ストレスーーどれも原因ではなかった。結局は様子を見る方しか出来なかったのだ。

 

 

 

 

 

 

病室ーー

 

芙蓉「来週!来週こそは元気になって勇者部の活動をするんだからね!」

 

倉田「ダメです!少なくても夏休みの間は!」

 

七深「リリちゃん、無理は禁物だよ。」

 

芙蓉「けど……。」

 

倉田「まずはリリさんの身体を治すところからです。四国の調査はいつだって出来ます!」

 

芙蓉「………………………ここにいるとお母さんの事を思い出すんだ。亡くなる直前までずっと入退院を繰り返してたから。私は毎日面会に来てお母さんの側にいた。」

 

倉田・七深「「………………。」

 

芙蓉「退院したら3人で何処かに遊びに行こうって何度も言ってくれた。でも、結局………。」

 

七深「リリちゃん……。」

 

芙蓉「病室の小さな窓からずっと外を見ていた。今の私も……同じ。」

 

布団の裾を握り、香澄は唇を噛み締める。だけどましろの声が室内に響き渡った。

 

倉田「違うよ!!リリさんは持病が悪化した訳じゃないでしょ!お母さんの時とは状況が違う!リリさんは体調不良が続いてるだけ!不治の病じゃないんです!たったそれだけの事で弱気になるなんて………今の状況は全然大した事じゃないよ!暑さで身体が弱ってるだけ……すぐに良くなる筈だから心配ないですよ。」

 

芙蓉「倉田ちゃん………。」

 

倉田「………私帰るね。勉強とバスケの練習があるから…。」

 

七深「ちょ……シロちゃん!」

 

そう言い残し、ましろは病室を後にするのだった。その後を追いかける様に七深も病室を後にした。翌日からましろは香澄の病室に足を運ぶ事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、病室ーー

 

ましろが来なくなっても、七深は香澄のお見舞いを続けていた。

 

七深「リリちゃん、今日は体調大丈夫?ごめんね、本当は毎日お見舞いに来たいんだけど。」

 

芙蓉「七深ちゃん……気にしないで。七深ちゃんの家はここから遠いから仕方ないよ。」

 

七深「シロちゃんは………今日も来てないの?」

 

芙蓉「うん…そうだね……。まぁ、倉田ちゃんも忙しいだろうし。」

 

七深「そっか……。」

 

芙蓉「昨日一度退院したんだ。でも………また家で倒れちゃって…まだ本調子には程遠いみたいだよ。」

 

七深「心配し過ぎる事じゃないよ。どうせ8月は暑すぎて、あんまり外には行けないし。勇者部の活動はもっと涼しくなってからでも大丈夫だよ。」

 

芙蓉「うん……そうだね。何だか少し疲れちゃったな…。」

 

七深「無理しないでリリちゃん。横になってて大丈夫だから。」

 

芙蓉「ありがとう………私、倉田ちゃんに呆れられちゃったかな。」

 

昨日の事について香澄は呟いた。

 

芙蓉「倉田ちゃん………来ないから。」

 

七深「………………っ!」

 

七深は香澄の手を握ると、何かを思い出したかの様にそのまま病室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

月ノ森中学校、体育館ーー

 

倉田「ふっ!」

 

一方のましろは学校の体育館にいた。何かを振り切るかの様に一心不乱にゴールに向かってシュートを打っている。だがボールがゴールに入った回数は片手で数えられる程しかなかった。

 

倉田「……また外れた…。」

 

そこに七深がやって来る。

 

七深「惜しかったね、もう少しでゴールに入りそうだったのに。」

 

倉田「七深ちゃん……いつからそこに?」

 

七深「今来たんだよ。シロちゃんが今のシュートを打つ少し前。」

 

倉田「そっか……情けないところ見せずにすんだよ。」

 

七深「?」

 

倉田「今日はずっとシュートの練習してるんだけど、全然入らなくて…。」

 

七深「ねぇ、シロちゃん。最近リリちゃんのお見舞い来てないでしょ。」

 

倉田「そう………だね。勉強と練習で忙しいし……私が行ってもリリさんの体調が良くなる訳じゃないから…。」

 

七深「そんな事言ってるけど、バスケの練習集中出来てないんじゃない?」

 

ボールの音だけが響く体育館に静寂が訪れる。

 

倉田「…………………私は結局何も出来ないんだね…。」

 

七深「えっ?」

 

倉田「私は、昔自分は特別な人間じゃないって事を嫌って程思い知らされた……その時も吐きそうな程悔しかったけど、今はその時よりも悔しいんだよ。あの時の悔しさは所詮私だけの問題だった。私が自分の事で落ち込んだだけ。でも、今は友達の為に……何も出来ないんだよ。その方がよっぽど苦しいし、悔しい……。リリさんがどれだけ望んで勇者部の活動を望んでいるかは分かってる!でも…………何もしてあげれない。」

 

七深「………だからリリちゃんに会えない?」

 

倉田「リリさんを見ると自分が何も出来ない事を思い知らされるだけで………キツイんだ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

七深「シロちゃんのバカ!!!」

 

静まり返る体育館に七深の怒声が響く。

 

七深「リリちゃんはアホだけど、シロちゃんは真面目バカだよ!!」

 

倉田「それは言い過ーー」

 

七深「何も出来ないなんて当たり前!!私たちは子供なんだよ!医者でもなければ神様でもない!私たちみたいな子供にそんな特別な事が出来たのならその方が歪だよ!!子供はね、何も出来なくて良いんだよ。」

 

倉田「けど………!」

 

七深「何も出来なくても良いから……リリちゃんの側にいてあげて。リリちゃんの一番の親友はシロちゃんなんだから。シロちゃんがいない事がリリちゃんが一番悲しい事なんだよ!!私見てられないよ!シロちゃんとリリちゃんが気まずくなってるところなんて。私たち、3人で勇者部でしょ!!」

 

ましろの両肩を掴んで、七深は思いの丈を叫んだ。自分では香澄の心は癒してあげられない。悔しかったけど七深は分かっていた。それができるのは一番の親友であるましろだけだと。

 

倉田「っ!?…………そうだよ…今一番辛いのはリリさん自身なんだ…私は何も出来ないけど、友達として側にいられる!今からリリさんの所に行ってくる!」

 

そう言ってましろは体育館から走って出て行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病室ーー

 

倉田「リリさん、いますか?」

 

病室の手前で息を整え、そっと病室を開ける。少し遅れて七深もやって来た。だがーー

 

七深「あれ?」

 

そこに香澄の姿は無かったのだ。

 

倉田「え?」

 

七深が出て行って少し後、香澄の姿は忽然と消えてしまったのだ。病院のスタッフも必死で探していたのだが、何処にもいなかった。学校の連絡網を使い全生徒にも呼びかけたが、それでも見つかることは無かった。その日のうちに警察にも捜査届けが出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いなくなってから丸1日が経過した。まだ見つかったとの連絡はない。

 

七深「誘拐とか事故とかじゃないよね…。」

 

倉田「………楽観的な予測だけど、リリさんに何か致命的な事が起こった訳じゃないと思う。」

 

七深「どうして分かるの?」

 

ましろは香澄の事について七深が知らない事ーー香澄には産まれた時から大赦の監視が付いている事を話した。

 

七深「監視!?どうして!?香澄だから!?」

 

倉田「私の本名も香澄だけど、私は監視されてたって訳じゃ無いみたい。前に今井リサ様がそう言っていたんだ。」

 

それは2人が七深と会う少し前、神世紀29年の11月。香澄に壁の外を見せるべく、四国の周りを囲む壁をましろが登っている時だった。

 

 

 

 

 

ーーー

ーー

 

リサ「2人とも犯罪者になんかならないよ。そもそも、2人を壁に近付けたのは私達なんだから。」

 

芙蓉・倉田「「え……?」」

 

リサ「フェンスを壊して通るっていう雑な手口で、壁に近付ける訳ないでしょ。私達は2人がフェンスを越えた事も………いや、今日香澄--ましろが"自宅を出た時から"、"クライミング教室や壁登り用の道具を買ってた時から"。寧ろ、7月に初めて2人が出会った時からずっと行動は観察してたんだよ。」

 

芙蓉・倉田「「んなっ!?」」

 

リサ「こっちの香澄に関して言えば、生まれた時から監視してるよ。だから中学に入ってから壁を越える為の活動をしていた事も、丸木舟を作ってた事も全部把握済み。本来なら、フェンスを越えた時に2人は警備員に捕まる筈だったんだけど……友希那が言ったんだ。2人の好きにさせなさいって。2人が壁に近付く事を私達は敢えて見逃してた。だけど、壁を登るなんて向こう見ずにも程があるよ。流石にこれ以上は危険だって判断したから救助したんだ。さてと………。分かる?私達は2人の行動を全部把握してる。今回は見逃したけど、今度からは実力行使で握り潰すよ。諦めて。あの壁の外に出る事は不可能だよ。」

 

 

ーー

ーーー

 

 

 

七深「今井リサ様が……。」

 

倉田「リリさんは多分、大赦にとって何か特別な存在なんだと思う。今も大赦はリリさんが何処にいるか知ってるんじゃないかな。もし命に関わるような事があれば大赦が動いてる筈。」

 

七深「だったら何で行方不明になってるのを放置してるんだろう。」

 

倉田「分からない…………そもそもリリさんが幼い頃、社会的に辛い境遇に置かれてた時も大赦はそれを放置してた。リリさんは大赦に守られてるって訳でも無いかもしれない。」

 

七深「大赦はリリちゃんの行方を知っている………。」

 

倉田「そうだ!七深ちゃんは大赦と連絡を取り合ってるんだよね!だったらリリさんの事を探してもらえないの!?」

 

七深「私もそう思ったんだけどね………私が連絡を取り合ってるのは詩船様だけなんだ。それがちょっと前から連絡が取れなくなって…何の前触れもなくメールも返ってこないし、電話も繋がらないんだよ。」

 

倉田「大赦には頼れないか……。」

 

七深「でも…………詩船様が言ってた事で一つ気になる事があった。"和奏レイ"の娘ならーー」

 

その瞬間外から轟音が鳴り響き病室の電気が消えた。近くに雷が落ちたのだ。

 

倉田「今のは近くに落ちたね……七深ちゃん、大丈夫?」

 

七深「……………これは…?」

 

倉田「七深ちゃん、大丈夫!?」

 

七深「う、うん大丈夫。ごめん、私帰るね。」

 

倉田「…えっ……うん、気をつけてね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道ーー

 

七深「はぁ……はぁ……!!早く帰らないと!」

 

雨が降りしきる中、七深は脇目も降らず家路を走っていた。雷が落ちた瞬間、七深の脳内には何かの情景が浮かんだのだ。

 

七深(都築詩船様が前に言っていた事があった。私が"和奏レイ"の娘なら、私には人を助けられる力がある。もし何かおかしな事が起こったら、お前さんの母親を頼れーーと。)

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日になっても香澄が見つかったとの連絡は無かった。そんな時、ましろのスマホに七深から着信が入った。

 

倉田「もしもし、七深ちゃん?」

 

七深「シロちゃん!!今から1時間後に観音寺港に来て!!私も今そこに向かってるから!!!」

 

倉田「観音寺港?」

 

七深「うん!待ってるから!!」

 

それだけを言い残し、一方的に電話は切られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後、観音寺港ーー

 

時間は既に18時を過ぎている。ましろが観音寺港に着き周りを見回すが七深はまだ来ていないようだった。港には伊吹島行きの船が停まっている。数分後に七深も観音寺港へとやって来た。

 

七深「シロちゃーーん!!良かった、間に合った!」

 

倉田「七深ちゃん、突然どうしたの!?」

 

七深「今から伊吹島に再上陸するよ!」

 

倉田「えっ!?」

 

七深「昨日………神の御告げがあったんだよ!」

 

2人は伊吹島行きの船に乗り、七深はそこで昨日の出来事についてましろに話し始めた。雷が落ちた瞬間、七深の脳裏には何か不思議なイメージが頭に浮かんだのだ。七深はそのイメージについて母親の和奏レイに尋ねたのだ。

 

 

ーーー

ーー

 

 

七深「ーーーってイメージが当然浮かんできて……。」

 

レイ「………………そう。」

 

レイは表情を曇らせながらも、七深から聞いたイメージを元に一枚の絵を描き上げたのだった。

 

レイ「この場所に行ってみなさい。ここに行けばきっと何かある筈よ。」

 

 

 

ーー

ーーー

 

 

 

 

七深「これがその絵なんだけど、これって伊吹島の海岸じゃないかな?」

 

倉田「この橋………確かに見覚えがある。でも、七深ちゃんのお母さんって凄い人だったんだね。」

 

七深「普通の絵本作家だよ?」

 

そんな事を話している間に、船は伊吹島に到着する。船を降りた2人はすぐさま絵に描かれていた海岸へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

芙蓉(ずっと微睡みの中にいるーー自分の見ているものが夢なのか現実なのか分からない。私は倉田ちゃんと七深ちゃんと一緒に歩いている。私は屈託なく笑っていた。だけど、何かを忘れているような気がする。何を忘れているのか分からないまま私は歩き続ける。そして突然私は忘れていたものを思い出す。その瞬間、足が止まる。前に進もうと思うのに身体が動かない。隣にいた倉田ちゃんと七深ちゃんは止まってしまった私に気付かず歩き続けてしまう。なんでこうなるの!?どうして!?2人が行ってしまう!悔しい!悲しい!!苦しい!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊吹島、海岸ーー

 

倉田「もう完全に日が暮れてる。足元気をつけてね、七深ちゃん。」

 

七深「うん、ありがとう。…………多分ここだよね、絵に描いてある海岸は。」

 

倉田「本当にここに何かあるのかな?」

 

七深「分からない……私の頭の中に浮かんだイメージもお母さんが描いた絵も何の意味があるのかは理解してないし……。」

 

そんな話をしていると、ましろは遠くに人影いるのを見つける。小さな姿だったが、ましろはその姿を見間違える事は無かった。そこには香澄がいたのだった。2人は香澄の元に駆け寄り声をかけるが、何故か香澄からの返答はなかった。

 

倉田「リリちゃん今まで何処に行ってたの!?」

 

七深「心配したんだよ!!」

 

芙蓉「…………。」

 

倉田「なんか様子がおかしい!」

 

七深「リリちゃん、しっかりして!帰ろうよ!!」

 

身体を揺すっても香澄から反応が返ってこない。2人はそれでも必死で叫び続ける。するとーー

 

芙蓉「帰らない。」

 

倉田・七深「「えっ?」」

 

芙蓉「私はここにいる。私はどこにも行かない。」

 

倉田「いい加減にして!!」

 

芙蓉「私は………どこにも行けない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

芙蓉(意識がぼやけている。夢だと理解できる夢ーー明晰夢の中にいるみたいだ。誰かが私を呼ぶ声がする。聞き覚えがある友達の声。子どもの頃、私は殆ど外に出る事が出来なかった。母親の身体の弱さを受け継ぎ、長時間外に出ていると体調を崩してしまう事があったからだ。友達は出来なかった。一緒に遊ぶことが出来ない子は次第に友達の輪から外されていくから。仕方ない事だ。少し大きくなって身体は以前より丈夫になり人並みに外で遊べるようになった。でも私は芸能界に入ったからやっぱり友達と遊ぶ時間が無くて、私は去っていく友達の背中ばかりを見ていた気がする。だからーー倉田ちゃんと七深ちゃんが私にとって唯一で初めての友達だった。)

 

芙蓉(倉田ましろちゃんーー私が勇者部を作って1人じゃ何も出来なくなってた時に私と一緒に活動をしてくれた。本当の私は弱いけれど、倉田ちゃんがいてくれたから明るい自分で生きる事ができた。)

 

芙蓉(広町七深ちゃんーー住んでいる場所が遠かったのに私をいつも応援してくれた。お母さんの日記を手に入れる為に御百度参りをした時も、七深ちゃんは私よりももっと朝早くに起きて一緒に登山をしてくれていると思えたから、それを達成する事ができた。)

 

芙蓉(一緒に勇者部として活動して、一緒に遊んで、私たちは一緒に歩んでいた。でも、私はまた立ち止まってしまった。身体が弱くて動けなかった幼い頃と同じ。夏休みに入る前、私がびに運び込まれた時に担当医がお父さんと私に話してくれた。私はーーお母さんと同じ年齢くらいしか生きられないかもしれない、と。私と倉田ちゃんと七深ちゃんとじゃ流れている時間が違う。これから見られる未来が違う。2人にはこの先もずっと未来が続いている。でも私は………10年後、20年後も生きているかは分からない。倉田ちゃんと七深ちゃんは立ち止まっている私をおいて先に行ってしまう。また私は………友達の背中を見ているだけだーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倉田「違うよ!!!」

 

七深「私たちを見損なわないで!!!」

 

芙蓉「倉田ちゃん………七深ちゃん………。」

 

香澄の目に光が戻る。意識を取り戻したのだ。頭の中で思っていた言葉ーーだが香澄はそれを実際に口に出していたようだった。

 

倉田「もしリリさんが立ち止まったら…動けなくなったら……私たちは待つよ!!いつまでだって待つに決まってるでしょ!!」

 

芙蓉「そんなの無理だよ!!立ち止まった私はいつか普通の生活を送る2人の足枷になっちゃう!邪魔になるに決まってるよ!!!」

 

七深「邪魔になるかどうか決めるのは私たちだよ!!!私たちはリリちゃんと絶対に一緒にいる。リリちゃんが動けなくなったら、肩を貸して歩く事だってできるよ。友達なんだから。」

 

倉田「一年前、私が立ち止まってた時に歩き出すきっかけをくれたのはリリさんだよ。」

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

芙蓉「倉田ちゃんはどうしてそんなに自分の名前を嫌ってるの?」

 

倉田「リリさんは自分の名前、なんとも思ってないんですか?」

 

芙蓉「お母さんから取ったリリエンソールって名前は好きだけど、香澄に関しては特になんとも思ってないかな。有名人と同じ名前ってだけでしょ?」

 

倉田「………私も、ずっと前はそう思ってました。小学校の頃、女子のミニバスケチームに入ってたんです。その頃から運動は得意で、みんなから慕われてチームの中核だったと思います。今だって子供だけど、その頃の私はもっと子供で、視野が狭くて傲慢でした。小さなミニバスケチームで活躍出来るくらいで、自分には特別な力があるんだって思い込んでましたし。」

 

芙蓉「うん、そんな感じは今までから何となく想像出来るよ。」

 

倉田「でも、ある時、四国の大会に私達のチームは出場したんです。だけど結果は散々でした。一回戦負け。何も出来なくて一方的な敗戦だった。私よりもずっと高い能力を持った選手達が、井の中の蛙だった私を完膚なきまでに蹂躙したんです。それで思い知らされました。自分は特別なんかじゃないって。そして戦った相手チームの選手の1人が、私を見てこう言ったんです…………意外に大した事なかったなって。」

 

芙蓉「どうしてそんな事を。ガツンと言ってあげるよ!」

 

倉田「今更ですよ。それでその時思ったんです。何で意外にって思ったんだろう、どうして他のみんなは私を持て囃すんだろうって。答えは簡単でした。だからその事に気付いたら、もう恥ずかしくて表に出るのさえ嫌になりました。学校も何日か休みました。私は"香澄"という名前の力を自分の力だと思い込んで、持て囃されて勘違いして……。恥ずかしかったし、悔しかった。香澄じゃない私は、特別な力なんて無い、ただのバカな女。そんな自分が凄く醜い存在に思えたし、今でもそう思ってます。」

 

芙蓉「……倉田ちゃん。少ししゃがんで。」

 

倉田「え?」

 

芙蓉「いいから!」

 

芙蓉「どう?こうすると落ち着くでしょ?」

 

倉田「……どうして…?」

 

芙蓉「お母さんが生きてた頃、私が泣いたり怒ったりした時に、よくこうしてくれたんだ。」

 

倉田「………本当に私ってバカだな。誰にも話してこなかった事をこうやって話しちゃうんだもん。何となくリリさんと一緒にいる理由が分かった気がします。」

 

芙蓉「そうだね……。私も倉田ちゃんと一緒にいる理由が分かった気がするよ。」

 

倉田「私は……ずっと力が欲しいって思ってます。香澄って名前を恥ずかしくなく思えるように。たとえ名前のせいで過大評価されても、自分はこんな事が出来るんだって自信を持って言えるように……でも、私にはどう考えても、特別な力なんて無い……。」

 

芙蓉「私は倉田ちゃんにはきっと力があるって信じてるよ。最も、例え倉田ちゃんに力があっても無くても、倉田ちゃんがどんな名前だって、何者だって、私は倉田ちゃんの味方であり続けるけどね。」

 

倉田「………ありがとうございます。」

 

芙蓉「どう致しまして。」

 

 

ーー

ーーー

 

 

七深「私はリリちゃんのお陰でお母さんとの事で前に進めた。」

 

 

ーーー

ーー

 

 

芙蓉「やっぱりここにいたね、七深ちゃん。」

 

七深「………また来たんだ。」

 

倉田「うん、色んな人に七深ちゃんの容姿とかを聞き込みして、よく夕方にここに来てるって情報をね。見つけられて良かったよ。」

 

七深「今度は何の用事?」

 

芙蓉「単刀直入に聞くね?七深ちゃんのお母さんは西暦時代、四国外からの避難民だったよね?」

 

七深「………どうやってその事を?」

 

芙蓉「それは極秘だよ。私達は"勇者部"。旧世紀の真実を記録し、保存する活動をしてる。是非七深ちゃんのお母さんから旧世紀の話が聞きたいんだ。」

 

七深「……勇者部?よく分からないけど、それは無理だよ。」

 

芙蓉「どうして?」

 

七深「お母さん、当時の事は話したがらないから。私にも絶対に話してくれない。この来島海峡大橋は旧世紀に四国と本州を繋いでいたしまなみ海道の一部……お母さんは2015年の夏、あの橋を通って四国に来た。私がもっと小さかった頃、お母さんは時々ここに来てあの橋を眺めていた。橋を見に行った日は何故だかいつもより優しくて、私の好きなおまけ付きのお菓子を買ってくれた。だから私は今でもこの大橋が好きなんだ。でも、お母さんが何を思っていたのか……きっと昔、あの場所で何かがあったんだと思う。…………私も、本当はお母さんからもっと話を聞きたい。でも……。」

 

芙蓉「私達に任せてよ!きっと七深ちゃんのお母さんから当時の話を聞き出してみせるから!」

 

倉田「そうです!普段はポンコツなリリさんですけど、いざとなったら凄いんですから!」

 

芙蓉「ポ、ポンコツーーー!!??それはちょっと酷いんじゃないかな、倉田ちゃん!!」

 

倉田「事実を言ったまでです!」

 

芙蓉「なにをーー!!!!」

 

七深「あはははははっ!!二人とも面白い!面白いよ!!真剣に悩んでた私が馬鹿みたいに思えてくる!」

 

倉田「へ?」

 

芙蓉「へぇ……ふぅ………はぁ……な、何を笑って……?」

 

七深「分かった、良いよ。二人ならきっとお母さんから話を聞けると思う。」

 

 

ーー

ーーー

 

 

 

倉田「だから今度は、私たちがリリさんの背中を支えます!」

 

七深「もしリリちゃんが歩けなくなったら。私たちも立ち止まって側にいるよ。」

 

倉田「ずっと一緒にいるから。だから………一緒に帰ろう?」

 

芙蓉「………………そうか……私はやっぱり臆病者だな。こんなにも優しい2人の友達を自分の臆病さが理由で信用できなくなってたんだから…2人が私を見捨てるなんて思う事自体裏切りみたいなものだった!………ありがとう倉田ちゃん…七深ちゃん…!私の……友達でいてくれて!」

 

倉田「リリさん!」七深「リリちゃん!」

 

2人は香澄が無事だった事への安堵から、香澄は自分をずっと友達だと思ってくれていた事への感謝から側に駆け寄り、抱き合い、涙した。

 

倉田「リリさん、今までの事覚えてる?」

 

芙蓉「えっと………何が何だか…。」

 

七深「やっぱりリリちゃんがいないとね。私たち3人は友達なんだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大赦、とある一室ーー

 

?「ーーーうん…分かった。ありがとね、巴、明日香。何とかなったみたいだね。この件は流石のアタシでも対応出来なかった事態だったから、何とかなって一安心。」

 

今井リサは今回の勇者部に起こった一連の出来事を監視していた宇田川巴と戸山明日香からの連絡を聞いていた。

 

?「私が対応しても良かったのよ、リサ。」

 

リサ「なーに言ってるの、友希那。友希那が出張ったら目立ちすぎるでしょ。それに、後進の育成だって必要でしょ。」

 

?「そうだね。いずれ広町七深は大赦に来る筈さ。何たってあの"和奏レイ"………高嶋香澄の巫女だった者の娘だからね。」

 

友希那「だけど詩船さん、もし広町さんが大赦に来るのなら、それ相応の対策はしないといけないわ。」

 

詩船「あぁ。望んではいなかったが、レイは平和を手にしたんだ。」

 

友希那「………………それにしても、芙蓉さんの件、リサはどう思う?」

 

リサ「…………多分友希那と同じ事を考えてるよ。」

 

2人の脳裏に蘇るのは、かつて体験したあの記憶ーー

 

友希那「あの状態はかつて私たちも経験した"精霊汚染"に似てるわ。」

 

詩船「大赦に裏切り者がいるのか………はたまた第三者が精霊を使ってるのか…。前に芙蓉が電話中に誰かに見られてる気がすると倉田に伝えてた事があったね。」

 

 

ーーー

ーー

 

芙蓉「あれ……?」

 

倉田「どうしたんですか?」

 

芙蓉「……………なんか窓の外から人の気配がしたような……。いや、多分気のせいだね。だってここはマンションの6階なんだから。」

 

倉田「…………………今井様とか?」

 

 

ーー

ーーー

 

 

詩船「大赦の監視に限ってそんなヘマをする事事態有り得ない。」

 

リサ「はい。だから第三者の線が濃厚ですね。………………友希那、"あの件"の準備を進めるよ。」

 

友希那「えぇ。"矢"は多いに越した事はないわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄は病室からいなくなった時の事を覚えていなかった。あの事件は一体何だったのか、結局最後まで分からなかった。そしてこの事件の後、香澄の体調は毒が抜けるみたいに急激に回復していった。

 

 

 

数日後ーー

 

芙蓉「完全に復活だぁーーーーーっ!!」

 

倉田「あんまりはしゃぐとまた倒れちゃいますよ。」

 

七深「そういえば、昨日詩船様からメールが来たんだ。」

 

 

 

 

TO:広町七深

--

FROM:都築詩船

--

SUBJECT:無し

--

 

どうやら万事解決したようだね。流石は和奏レイの娘だ。やると思ってたよ。

 

 

 

 

 

七深「って書いてあったんだけど……何なんだろう?」

 

芙蓉「細かい事は気にしない!それより、早速勇者部の活動だよ!残りの夏休みは一気呵成に行くよ!!」

 

香澄は少し前までの弱々しさが嘘みたいに元気に走り回っている。

 

倉田「病み上がりなのに元気ですね。」

 

七深「あははっ!やっぱりリリちゃんはそうじゃなくっちゃね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海にーー四国に壁が出来てからおよそ30年。人々が広い世界を失ってからおよそ30年。この世界で暮らす全ての人々がきっと多かれ少なかれ未来の可能性を失った。

 

芙蓉(私の身体は人より弱い。私の命はきっと他の人よりも短い。壁のある無しに関わらず未来の可能性は少しだけ閉ざされているかもしれないーーでも、そんなのは関係ない。今この瞬間に大切な友達がいてくれれば……今この瞬間を何倍も濃密に生きる事ができれば……世界が狭くても、未来が短くても私の人生には充分過ぎる意味があるんだから。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて中学最後の夏が終わり、秋が過ぎて冬が訪れーー中学生という時間を3人は過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

高校生になっても、3人はずっと友達だった。その間にも沢山の出来事があった。毎日が楽しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も春、夏、秋、冬を越えて、3人の日々は続いていく。そして10年の月日が経ったーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神世紀41年ーー

 

倉田「おーーーい、リリさーん!七深ちゃーん!」

 

芙蓉「倉田ちゃん!」

 

七深「シロちゃん、やっと来たね。」

 

倉田「ごめんね。次の試合のミーティングが長引いちゃって。京都明日はこの後何も予定を入れてないからさ。」

 

七深「シロちゃんも忙しいからねー。この前の試合見たよ。強かったね、シロちゃんのチーム。」

 

倉田「他のメンバーが強いんだよ。そういう七深ちゃんこそ大赦から2日も抜け出しちゃって良かったの?」

 

七深「まぁ普通は許されないんだけど、私って結構優秀な神官だからね。リサ様にも気に入られてるし。」

 

芙蓉「私だって忙しかったんだよ!今は国立図書館で書籍データベースを作るのに廃寝暴食の日々を送ってるんだから。」

 

倉田「うん、知ってるよ。この前だってテレビのインタビュー受けてたよね?けど、そんなに忙しくて身体の方は大丈夫?」

 

芙蓉「室内での作業が殆どだからね。外を動き回るよりはずっと楽だよ。もし何かあっても、一緒に働いてるスタッフが助けてくれるから。…………さて、時間は有限だよ!早速行こう!今日の調査は太平洋側の島だよ!!」

 

 

 

 

あれから随分と時間が過ぎ、3人は大人になった。

 

 

芙蓉香澄は在野の歴史研究家として、四国では少し名の知れた存在になっている。

 

 

倉田ましろは女子バスケットボールリーグのチームの一員として。

 

 

 

そして広町七深は大赦の神官としてそれぞれ忙しい日々を送っていた。

 

香澄は20代の半ば頃からあまり外に出る事が出来なくなってしまった。最近は今まで以上に体力の衰えを感じていた。だけど、3人は年に一回必ず集まって勇者部としてーー語部として活動を続けていた。集まる日は7月30日ーーこの狭い世界が始まった日だ。3人が今いる世界と時間はいつまで続くのかは分からない。それでも3人はこの世界に生きていくーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

芙蓉「さて、今日も勇者部の活動開始だよ!まだまだ調べてない場所は多いんだからね!!」

 

 

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