沙綾が囚われている場所、高天原--
そこはかつて香澄が散華時に訪れていた場所だったのです。
香澄達5人の勇者は消えた沙綾を探す為に壁の外へと足を踏み出した。
ゆり「相変わらずの凄まじさだね。」
有咲「何度見てもこの世の光景じゃねーな。」
壁の外の世界は相変わらず炎が渦巻く世界だった。
たえ「あっ!?レーダーに反応があったよ。」
たえがスマホを見るとそこには山吹沙綾の名前が。
香澄「さーやだ!やっぱりさーやは壁の外にいたんだ!」
ゆり「なんとかなりそうだね、香澄ちゃん。」
香澄「はい!」
りみ「意外と近いけど…。」
香澄「この方向で間違いないはず……うえぇ!?」
香澄が沙綾がいる方を見ると、そこにはブラックホールが渦巻いていた。
有咲「な、何なんだ…あれ。」
ゆり「あの位置だよね……。」
たえ「うん。沙綾はあの中にいるみたい……。」
香澄「さーやがブラックホールになっちゃってる…。」
りみ「っ!?お姉ちゃん!」
りみがスマホを見ると、沙綾の周囲にはバーテックスがたむろしていた。まるで沙綾を守っているかのように。
有咲「周囲にバーテックスがいるじゃねーか!」
香澄「……行ってみよう!」
香澄は決意する。
りみ「でもどうやって?」
周りには足場は無く、下は底の見えない暗黒の世界が広がっている。その時、幼生バーテックスが襲ってきた。
りみ「こんな時に!」
ゆり「てやー!」
ゆりがバーテックスを一刀両断する。
りみ「お姉ちゃん、危ない!」
後ろからゆりを襲ってきたバーテックスを、りみがワイヤーで切断した。
ゆり「ありがと、りみ。」
りみ「うん!」
香澄「はあぁぁぁぁっ!!てやっ!」
香澄はパンチや蹴りで蹴散らしていき、
有咲「完成型勇者舐めんな!」
有咲は小刀を投げて撃ち落とす。
たえ「はああああっ!せぇぇぇぇい!!」
たえは槍を伸ばしてバーテックスを次々と薙いでいく。
有咲「やるじゃんか、おたえ。」
たえ「有咲に褒められたー。」
有咲「でも、このままじゃジリ貧だ……。沙綾の所までどうやって行けば…。」
たえ「あそこまでなら船で行けそうかも。」
有咲「船って……たえ!?」
たえはそう言うと飛び上がり、
たえ「満開!!」
たえは満開し巨大な箱舟に乗る。
ゆり「たえちゃん、いきなり満開しちゃって…。精霊の加護が無くなっちゃうんだよ!?」
ゆりが驚くのも無理はない。満開を使うとゲージが一気にゼロになり、精霊のバリアが使えない。即ち攻撃が当たれば致命傷になりかねないのだ。
たえ「大丈夫ですよ。昔はバリア無しで戦ってたし。」
ゆり「大丈夫って……。」
たえ「さあ、みんな乗って!これが沙綾行きの船だよ!」
香澄「お邪魔しまーす。」
りみ「カッコいい船だね、おたえちゃん。」
ゆり「沙綾ちゃんといい、たえちゃんといいなんか羨ましい満開だね。」
有咲「まー私のがいちばんカッコいいけどな。」
4人はたえの箱舟に乗り込む。
香澄「おたえ、スゴイよ!」
たえ「ありがとう、香澄。さあ!このまま行くよー突撃!」
香澄(待っててね、さーや!)
5人は沙綾を助けにブラックホールの中心へ向かう。
道中5人を熱波が襲い、しがみつきながら何とか進んでいく。
香澄「みんな、乗り物酔い大丈夫?」
香澄がみんなに聞くが、
有咲「酔いって言うか、普通にやべーよこれ!」
香澄「中で何が起こってるんだろう、さーや……。」
その時、炎の中から"乙女型""射手型""天秤型"バーテックスが現れる。
たえ「仕掛けてきた…。」
有咲「あいつら、もしかしてここを守ってんのか!?」
たえ「むぅ…囲まれちゃってるね。」
香澄「私がさーやの所に行くよ!」
りみ「香澄ちゃん!」
香澄「絶対一緒に帰って来るから!」
有咲「香澄…。」
ゆり「もう…ちゃんと帰って来てね。隊長命令!」
たえ「邪魔して来る敵は私達で倒しちゃうからね。」
有咲「あんなもんの中じゃ何が起きても不思議じゃねー。気合いだ!」
みんなが香澄の背中を押した。
香澄「うん!」
たえ「香澄、沙綾の事お願いね。」
香澄「任せて、おたえ!」
たえ「よーし、それじゃー行くよー!」
箱舟は鳥の様な姿になり、沙綾の元へ少しづつ近付いて行った。後ろから"蠍型"のバーテックスが追ってくる。
たえ「っ!!香澄の邪魔はさせないよ!」
箱舟の羽根からビームを照射し"蠍型"の動きを止めた。
たえ「香澄、今だよ!」
香澄「うん!行って来るね!」
香澄は箱舟から飛び降り、ブラックホールへと飛び込んだ。
香澄「くっ……うぅ………!」
香澄の刻印のゲージが1つ消える。
香澄「っ!?」
その時、香澄の後ろから"乙女型"が迫って来ていた。
香澄(まずい!?このままじゃ、狙い撃ちされる…。)
しかし、"乙女型"が突如大きな音を立てて凹んで行く。
香澄「っ!?何かが頭の中に…。」
?(クナ…ソチ…ワヘハ…イクナ。オマエハ…モウ…アトモ…ハデキナ…ナル。)
香澄の頭の中に直接何者かの声が響く。
?(テンノ…ノ、ノロイ…オマエヲ……。)
周りには"乙女型"の他には誰もいない。
香澄(まさか、バーテックスが…。)
次の瞬間"乙女型"が圧縮され潰されてしまった。
香澄「っ……。」
香澄は段々と中心へ近付いて行く。
香澄「あそこまで……行く!」
香澄の刻印がまた1つ消えた。
香澄「さーや…。」
また1つ消える。
香澄「さーや!!!」
また1つ消える。そして、ついに香澄は中心に辿り着く。
香澄「あっ!?ああぁーーーーーーーーっ!!」
突如香澄は突然引っ張られ、香澄の身体と精神が切り離される。
香澄「これって、幽体離脱!?」
自分の身体を見る香澄、そこへ突然炎の様なものが飛んでくる--
香澄「っ!?」
そして、炎が香澄の肉体と精神に降り注いだ。
香澄「きゃあっ!!」
炎に触れ、精神の方は火傷した様な痕が付いていく。
香澄「ああああっ!!」
炎が止み、次に泡の様なものが飛んできた。
香澄「あっ、さーや!?」
その泡には沙綾が写っていた。香澄がその泡に触れると、沙綾の記憶が流れ込んでくる--
ーーー
ーー
ー
とある雨の日--
沙綾(おたえが私達の中学に来てから、しばらくして…大赦にとって予想していない事態が起こっていた。私が結界の一部を壊してしまった事で、外の火の手が活性化してしまっていたのだ。)
沙綾の家の前に大勢の大赦の神官がやって来た。
沙綾(このままでは外の炎が世界を飲み込む。大赦が進めていた反抗計画を凍結し…現状を打破する必要があったのだ。炎の勢いを弱めるには奉火祭しかない。それは神の声が聞ける巫女を外の炎に奉げ、天の神の許しを乞う。昔、西暦の終わりにも行われた生贄の儀式である、と。)
沙綾(今、大赦で御役目を果たしている数人が生贄の御役目に選ばれた。だけど、私でもその代わりが出来ると言う。私は勇者の資格を持ちながらも、巫女の力を持つと言う唯一無二の存在だとか。悩むまでもない。結界に穴を開けたのは私だ。私は償わなくてはならない。香澄やみんなが無事なら…。私は1人なら……。私がいなくなれば、きっと香澄達が…みんなが私を探す。そうしない様に……神樹様、お願い致します。)
こうして、沙綾は生贄として捧げられた。
沙綾(香澄……。)
ー
ーー
ーーー
香澄「っ…!さーやはいつも突っ走るなぁ…。自分をいない事にしちゃうなんて………。」
再び炎が降り注いでくる。香澄は手を握り、
香澄「でも、私は約束したから!さーやを1人にしないって!!」
炎が香澄を襲う。
香澄「きゃあ!あぁっ!!」
しかし、香澄は踏ん張り、
香澄「だから…何度でも、助ける!!」
炎に立ち向かっていき、前に進み続けたのだった。
高天原--
香澄「あっ……あれ!?」
突如香澄の目の前に広がるのはモノクロの世界。
香澄「ここ…前に……。」
周りを見渡すと、
香澄「っ!?さーや!!」
水鏡の様なものに囚われている沙綾が。そしてその上には沙綾の魂が燃やされている。香澄からは見えないが、左胸の辺りに炎の様な刻印が刻まれていた。
香澄「ひどい……。」
香澄は自分の手を見つめ、
香澄「今助けるから…。」
囚われた沙綾を引っ張り出すが、
香澄「あっ!?」
焼ける様に熱い。だが、香澄はそれでも引っ張り続ける。
その瞬間、沙綾に刻まれていた刻印が消える--
香澄「あっ!?」
そして、香澄の左胸に同じ刻印が刻まれた--
香澄「構わない!さーやを離して!!」
それでも香澄は沙綾を引っ張るのを止めない。香澄が沙綾を引っ張る毎に香澄の刻印は大きくなっていった。
香澄「ううああーーーっ!!」
沙綾を引っ張る。刻印が大きくなる。
香澄「耐えろ!私!!」
香澄「くぅっ!ううーーー!」
そして、遂に沙綾を引っ張り出す事に成功する。
香澄「やった…これで……。くぅっ!?」
胸の刻印の模様が真っ赤に輝き、火傷が広がっていく。
香澄「ああああああーーーーっ!!」
水鏡にヒビが入り、眩しい光に包まれた--
ブラックホールが砕け散る--
ゆり・りみ・有咲・たえ「「「「きゃあーーーっ!!」」」」
ブラックホールの外にいた4人が爆風に吹き飛ばされる--
そしてブラックホールは小さくなり、消滅したのだった--
花咲川病院--
沙綾「あっ…。」
香澄「やった!目が覚めた!さーや!!」
有咲・たえ「「沙綾!」」
ゆり・りみ「「沙綾ちゃん!」」
病室で沙綾が目を覚ました。
沙綾「みんな…?」
たえ「ここ数日眠りっぱなしだったんだから。」
沙綾「助けて、くれたの?」
香澄「うん!」
沙綾「でも…でも、このままじゃ世界は炎に……。」
ゆり「事情は聞いたよ。炎の勢いはもう安定したから生贄はもう必要ないってさ。」
沙綾「っ!?まさか、代わりの人が…?」
有咲「ちげーよ。普通なら死んじまうくらいの生命力をごっそり奪われたんだって。それできっと御役目を果たしたんだろ。でも、タフだったからまだ生きてた。」
たえ「いっぱい体を鍛えておいて良かったね。」
りみ「どこも異常無いみたいだよ、沙綾ちゃん。」
有咲「お勤めご苦労さん。まあ、もうしばらくは病院だろうけどな。」
たえ「これで改めて勇者部全員集合だ。」
沙綾「みんな…。」
香澄「さーや、ごめんね。」
沙綾「え?」
香澄「さーやの事絶対忘れないって約束してたのに、何日か忘れちゃってて……。」
沙綾「私の方こそごめん。心配させちゃったね…。」
香澄「仕方ないよ。多分私でも同じようにしてたと思うよ。」
飾ってある写真にも沙綾の姿が戻っていた。
ゆり「次からはきちんと全部話してね。部長命令。」
沙綾「はい……。」
有咲「ま、お互い様って事で良いんじゃね?私たちも忘れてたんだから。」
沙綾「それでも、みんな思い出してくれた…。夢じゃないんだね。」
沙綾から涙が溢れる。
香澄「そうだよ、さーや。」
沙綾「ありがとう…。」
たえ「よーし、よーし。」
たえが沙綾の頭を優しく撫でた。
有咲「これで、一件落着だな!」
香澄「よーし、これで本当に全員揃ってクリスマス!そして大晦日にお正月だー!」
香澄は飛び上がって喜んだ。
ゆり「香澄ちゃんったら、全部遊ぶ事ばっか。」
全員「「「あはははっ!!!」」」
沙綾が勇者部に戻り、平穏な日常が戻っていく--
その夜--
お風呂で鏡を見る香澄。
その左胸には痛々しいほどの、赤黒い炎の刻印が刻まれていた--