戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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言いたいけど言えない、そんな時みなさんならどうしますか?

そして、もし今回の香澄と同じ場合だったらどうしますか?




負の連鎖

 

 

街はクリスマス一色。鮮やかなイルミネーションが街を彩っていた。その中を香澄と沙綾は歩いている。

 

香澄「わあ!もう飾り付けされてるよ。」

 

沙綾「なんかあっという間に一年が過ぎていくね。」

 

香澄「色々あったもんね…。」

 

思い出されるのはバーテックスとの戦いの日々。

 

香澄「さーやは勇者になって良かったと思う?」

 

沙綾「どうしたの突然?」

 

香澄「何となく聞いてみただけ。」

 

沙綾「香澄は?」

 

香澄「私は……良かったと思ってるよ。」

 

沙綾「何で?」

 

香澄「確かに辛い事沢山あった。痛い事や胸が苦しい事いっぱいあった。」

 

沙綾「なのに香澄は良かったって思うの?」

 

香澄「さーやに会えた!ゆり先輩やりみりん、有咲におたえ。それに勇者部にだって入れた。バンドや劇、ボランティアで色んな人の笑顔を見る事が出来た。それだけで、どんなに辛い事があっても私は頑張れる気がするんだ。だから私は勇者になれて良かったって思ってるよ!!」

 

香澄は笑顔で沙綾に答えた。

 

沙綾「…そっかぁ……。なら私も勇者になれて良かったかな。2年前の事があって、その時記憶は無かったけどきっと体は覚えてたんだと思う…2回も勇者になるのが最初は怖かった。でも、香澄を守る為なら頑張れた。私もそう。どんなに辛い事があっても香澄の笑顔があれば乗り越えられた。そして、大事な記憶や友達だって取り戻せた。それこそ、勇者になってなきゃ私は大事なものを失くしたまま生きてたってこと事になる。だから私も香澄とおんなじ気持ちかな。」

 

2人は胸の内に閉まっていた思いを打ち明けながら歩き続けた。

 

香澄「クリスマスツリー、どんな風にしようか?」

 

沙綾「良かった。」

 

香澄「え?」

 

沙綾「香澄とクリスマスをちゃんと迎えれそうだよ。」

 

香澄「当たり前だよ。さーやが何処かへ行ったりしない限りね。」

 

沙綾「そうだね。」

 

そこへ、

 

たえ「私とは?」

 

香澄・沙綾「「おたえ!?」」

 

たえ「実は、一緒にクリスマスやるのは初めてかも。」

 

香澄「今度はみんな一緒だよ!盛り上がろうね、クリスマス!」

 

沙綾・たえ「「「おー!!」」」

 

3人はそのまま家路に着くが、この時香澄の胸に炎の刻印がある事は2人は知るよしもなかった--

 

 

 

 

 

 

勇者部部室--

 

香澄、りみ、有咲の3人はクリスマスツリーの飾り付けをしていた。

 

有咲「なぁ、香澄。飾り付け曲がってないか?」

 

香澄「大丈夫大丈夫。」

 

有咲「りみも見てくれるか?」

 

沙綾はホームページにクリスマス会の事を書いている。

 

残りのゆりとたえは--

 

ゆり「うーむ…。」

 

参考書片手に勉強に勤しんでいた。

 

有咲「何だ?あのメガネ。」

 

りみ「視力が落ちてきてるんだって。」

 

有咲「受験生は大変だなー。部室に来てまで勉強なんて。」

 

ゆり「先週は色々と大変で勉強どころじゃなかったからね。取り返さないと…?」

 

沙綾「すみませんでした!」

 

沙綾が土下座した。

 

ゆり「あっ、ごめんごめん。そういうつもりで言ったんじゃないの、気にしないで。」

 

香澄「受験よりブラックホールの方が急務だったし…。」

 

香澄が呟くと、

 

沙綾「ごめんなさい!!」

 

おでこを擦りながら沙綾は土下座した。

 

香澄・ゆり・りみ・有咲「「「わあああ!!」」」

 

たえ「丸、丸、丸、丸、丸っと。」

 

たえはゆりの回答の採点をしていた。

 

たえ「最後の問題も花丸。ゆり先輩全問正解です。」

 

ゆり「よし!さすが私頑張った!」

 

たえ「さて、ここで大事な大事なアタックチャーーンス!」

 

ゆり「ん?」

 

たえ「正解すると女子力が2倍になります。」

 

ゆり「やります!」

 

有咲「どんな試験勉強だよ!」

 

たえ「とまあ、ゆり先輩の女子力は置いといて。これだけ出来れば大丈夫ですよ。」

 

ゆり「たえちゃんが見てくれたおかげだよ。来週はりみの大舞台があるから。」

 

有咲「それで詰め込んでたのか。」

 

りみ「お姉ちゃん!大舞台なんて大袈裟だよー。軽音部のお手伝いでライブするだけなんだから。」

 

香澄「それでも凄いよ、りみりん!」

 

りみ「香澄ちゃんが練習を手伝ってくれたから。」

 

ゆり「さすが私の妹だね!」

 

沙綾「風邪引いたりしないようベストコンディションで臨まないとね。」

 

りみ「ありがとう、沙綾ちゃん。」

 

香澄はみんなのやり取りを少し下がって見ていた。そこにゆりが話しかけてくる。

 

ゆり「何だからしくないね。何か考え事?」

 

香澄「え?何も考えてないですよ。」

 

ゆり「そう?本当はどこか具合でも悪いんじゃないの?」

 

香澄「そ、そんな事無いですよ。ほら、私は元気です!」

 

香澄は元気をアピールする。

 

ゆり「なら良いんだけど…。」

 

香澄は勇者部5箇条の1つ"悩んだら相談!"の項をじっと見つめていた。その間、他の5人は仲良く話している。

 

香澄「っ……!」

 

香澄は覚悟を決めて話し出した。

 

香澄「み、みんな!あのね…。」

 

沙綾・ゆり・りみ・有咲・たえ「「「ん?」」」

 

香澄「え、えっと……。」

 

だが、刻印の事を言って良いのか、寸出で迷ってしまう。

 

香澄「ここで、問題です。キリギリスがアリの借金を肩代わりしたとしたら、その後どんな問題が起こるでしょうか?」

 

有咲「何だそれ?」

 

香澄「私にも分かんない…。」

 

有咲「なんでだ!」

 

たえ「社会学の実証問題?」

 

香澄「えっ!?えっと…学校新聞のクイズを考えてて……。」

 

香澄は咄嗟にはぐらかした。

 

有咲「それ、クイズになってねーぞ。」

 

香澄「あはは…。」

 

だが、香澄は勇気を出して、

 

香澄「えっと、じゃああのね!じつは私、あの日……。」

 

 

 

その時だった--

 

 

 

香澄「っ!?」

 

5人の胸に香澄のと同じ炎の刻印が浮かんできたのだ。

 

香澄「っ……!っ!!」

 

香澄は目を瞑り、もう一度よく見ると刻印は無くなっていた。

 

沙綾「どうしたの、香澄?」

 

沙綾が心配になって香澄の顔を覗き込んできた。

 

香澄「う、うん…やっぱ何でもないや。」

 

こうして、香澄は結局刻印の事を話せぬまま今日1日を過ごしたのであった。

 

 

 

 

 

 

その日の夜--

 

香澄は自室でスマホをいじっていた。

 

香澄「はぁ……。」

 

ベッドに寝転び考える香澄。

 

香澄(さーやを助けた時、御役目は私に引き継がれた…。この事を知ったらきっとさーやは悲しんじゃう…。せっかく、今みんながやっと揃って楽しいのに…。私は………。)

 

 

 

 

 

次の日の教室--

 

香澄(私は生かされている。だからこっち側にいられるんだ…。)

 

教室の神棚を見ながらそんな事を思っていた。

 

 

 

 

 

勇者部部室--

 

有咲「あー!こんな寒い時に何でうちの暖房壊れるんだよー!」

 

沙綾「私も昨日は急に電灯が切れて困ったよ。」

 

有咲と沙綾に小さな不幸が起こったようだ。

 

ゆり「それは大変だったね。」

 

有咲「そっ、災難だな。」

 

ゆり「私達なんて、りみが鍵を落として寒空の下大変だったんだから。」

 

りみ「もう言わないでよー。」

 

ゆり「ちょーっとコンビニ行っただけだったのに。」

 

りみ「うぅ〜。」

 

どうやらゆりと、りみにも不運が起こったらしい。香澄は少しだけ違和感を覚えた。そこへ遅れてたえがやって来たが、その右手には包帯が巻かれていた。

 

りみ「おたえちゃん、大丈夫?」

 

たえ「あぁ、大丈夫だよ。ちょっとポットで火傷しちゃっただけ。」

 

有咲「はぁ、揃いも揃って12月にろくなもんじゃねーな。」

 

有咲がそんな事を愚痴った。

 

香澄「………。」

 

香澄は昨日の出来事を思い出した。香澄が話そうとした瞬間にみんなの胸に同じ刻印--

 

有咲「勇者部全員で厄払いでも行った方が良いんじゃないか?」

 

ゆり「有咲ちゃん、縁起でも無い事言わないで。でも必要かもね。」

 

有咲「ちょまっ、本気にすんなよなー。」

 

香澄は胸の辺りを抑える。

 

沙綾「香澄は何も無かった?」

 

沙綾が香澄に尋ねる。

 

香澄「っ!うん、平気だよ。」

 

沙綾「良かった。香澄にまで何かあったら、いよいよ祟りか何かだと思わなくちゃならないところだよ。」

 

たえ「また大赦かーって。」

 

たえの一言にみんなが凍りつく。

 

たえ以外「「「…………。」」」

 

有咲「いやいやいやいや、まさかそんな事はねーだろ。」

 

ゆり「流石にね。」

 

たえ「だよね。」

 

有咲、ゆりはたえの冗談に笑う。

 

有咲「私ら、何かと疑い深くなってるからなー。」

 

香澄「あはは。」

 

香澄は力なく笑う事しか出来なかった。

 

たえ「…?」

 

その様子をたえは静かに見ていた。

 

 

--

 

 

香澄「…あのゆり先輩。ちょっと良いですか?」

 

ゆり「ん?」

 

香澄は意を決してゆりにだけ打ち明けて見る事にし、放課後階段にゆりを呼び出した。

 

 

 

 

 

 

放課後--

 

ゆり「どうしたの香澄ちゃん。悩み事?」

 

香澄「えっと….。えっと……。」

 

香澄は覚悟を決める。

 

香澄「実は、この間…。」

 

ゆり「どの間?」

 

香澄「えっと、スマホを返してもらった日に……。」

 

ゆり「何かあった?」

 

香澄「実は、さーやを………っ!?」

 

 

 

香澄が話し出すと再びゆりの胸に炎の刻印が浮かんできた--

 

 

 

香澄「あ…いえ……。」

 

話すのを止めるとまた消える。

 

ゆり「?」

 

香澄「前に撮ったみんなの写真とか大事なやつ、スマホから消えちゃってて……。」

 

香澄は必死で他の話題に晒すしかなかった。

 

ゆり「ああ、それは仕方ないね。大赦の検閲で消えちゃったのかも。」

 

香澄「でもみんなに悪くて…。」

 

ゆり「もしかして見られたら恥ずかしい写真でもあったの?」

 

香澄「無いですよーそんな写真!」

 

こうして、香澄はまた言い出せずに終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

洗面所--

 

鏡を見ながら悩む香澄。胸には黒々と炎の刻印が刻まれている。

 

香澄(同じものがゆり先輩にも見えた。昨日のだってそうだ。私が話そうとしたら、他の5人にも同じのが見えた。そして、次の日に小さいけど全員に不幸が起こった…。私が話そうとすると、みんなが不幸になる…。みんなが傷付くなんて…どうしたら……。)

 

 

 

 

 

 

一方ゆりの方はりみと一緒に自宅に帰っているところだった。

 

ゆり「りみのイベント、楽しみだね。応援してるよ。」

 

りみ「だから、私のじゃないってばー。」

 

ゆり「ふふふ…。」

 

りみ「でも、ありがとう。頑張るよ。」

 

ゆり「さすがは私の妹。じゃあ今日は温かいものでも作ろうか。」

 

りみ「うん。」

 

ゆり「じゃあスーパー寄って帰ろう。」

 

 

 

歩行者信号が青になり、ゆりが横断歩道を渡ろうとする。すると、ゆりの胸に炎の刻印が浮かびあがり--

 

 

 

突然、車がゆりに向かって突っ込んでくる--

 

 

 

ゆり「えっ?」

 

咄嗟に"犬神"が現れ守ろうとするが、

 

 

 

ゆりのカバンが宙を舞う--

 

 

 

りみ「っ……!お姉ちゃん!!!」

 

 

 

それはりみの目の前で起こった事故だった--

 

 

 

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