戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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心と身体の強さは反比例--


物語の主人公にありがちな展開ですね。







絶望の孤独

 

 

香澄の自室--

 

机に向かい勉強をするも、夕方の件があり中々集中出来ないでいた。その時、スマホのNARUKOにりみから連絡が入る。

 

 

 

 

 

(りみ)「今、病院です。お姉ちゃんが車に跳ねられちゃって…。」

 

(りみ)「私どうしたらいいか。」

 

(有咲)「りみ落ち着け、すぐ行く。」

 

(沙綾)「すぐ行くよ。」

 

(たえ)「もう出た。」

 

 

 

 

 

香澄「あっ…ああっ……。」

 

香澄は後悔と自責の念に駆られた。

 

香澄(あの時、私がゆり先輩に相談しなければこんな事にはならなかった…。私のせいだ。私のせいで…。)

 

香澄は左胸を抑え、立ち上がりフラフラと歩き出した。

 

 

 

 

 

花咲川病院--

 

4人は病院でゆりの処置が終わるのを待っていた。そこに遅れて香澄がやって来る。

 

香澄「みんな!」

 

沙綾「香澄…。」

 

香澄「ゆり先輩は?」

 

みんなは手術室の方を見た。

 

香澄「っ……。」

 

有咲「まだ出てこねー。」

 

 

 

 

 

2時間経ち、ようやくゆりが手術室から出てきた。

 

りみ「お、お姉ちゃん!」

 

ゆり「みんな心配かけちゃったね。」

 

りみ「お姉ちゃん。」

 

有咲「ゆり。」

 

香澄・沙綾・たえ「「「ゆり先輩」」」

 

みんながゆりの側へ駆け寄る。

 

ゆり「大丈夫だよ。そんなに大した怪我じゃないから。」

 

りみ「でも、でも……。」

 

ゆり「りみ…。」

 

ゆりはりみの頭を優しく撫でた。

 

ゆり「みんな心配かけちゃってごめんね。」

 

有咲「全く、心配かけやがってー。」

 

ゆり「有咲ちゃんはちょっとは労って…。」

 

沙綾「でも、受験生にはちょっと酷ですね。」

 

沙綾が笑って言う。

 

ゆり「それは言わないで。試験は絶対受けるから。」

 

有咲「でも、入院するんだろ?」

 

ゆり「ほんの1.2週間だから。」

 

看護師「病院ではお静かに。」

 

沙綾・ゆり・りみ・有咲「「「はい…。」」」

 

看護師「妹さんですか?」

 

りみ「は、はい。」

 

看護師「入院の手続きがありますので、一緒に来ていただけますか?」

 

りみ「分かりました。」

 

りみは看護師について行った。

 

ゆり「それじゃあみんな、わざわざ来てくれてありがとうね。」

 

たえ「大きな怪我じゃなくて良かったね。」

 

有咲「お前らも怪我には気をつけろよな。」

 

香澄「………。」

 

香澄はただただ黙ってゆりを見送る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

帰り道--

 

有咲「命に別状は無かったのが不幸中の幸いだったな。」

 

沙綾「精霊は何してたんだろう。」

 

たえ「うーん。」

 

沙綾「もし、みんなの身に何かあったら、私きっと正気じゃいられないかも。」

 

有咲「もうブラックホールは勘弁しろよ。」

 

香澄「……。」

 

沙綾「香澄もね。」

 

沙綾が香澄に注意するが、香澄は上の空の様だ。

 

香澄「っ!?私!?」

 

沙綾「怪我だけは気をつけてね。」

 

香澄「うん。」

 

 

 

 

 

香澄・沙綾「「じゃあねー。」」

 

香澄と沙綾は有咲とたえと別れ帰路に着く。

 

たえ「………?」

 

その時たえは香澄の様子を見て何か違和感を覚えたのだった。

 

 

 

 

 

香澄の自室--

 

香澄は今自分の身に起こっている事の現状をノートにまとめ考えていた。

 

香澄「……うっ!」

 

胸が痛み出す。

 

香澄(私がみんなに話そうとしたら、みんなに少しずつ嫌な事が起こった。改めてちゃんと話そうとしたゆり先輩には事故が起きた…。天の神の力は現実の私達の世界に及ぼす事が出来る程……。なんとかしようとしても、必ずどこかに影響が出る。そうやってバランスを取っているんだ…。)

 

香澄(私が心の中で思う分には大丈夫。質問されても答えなければ大丈夫。例え話も多分大丈夫だった。話そうと口に出した途端に他の人にも刻印が見えて嫌な事が起こる。私が詳しく話せば話す程にみんなに降りかかる危険は大きくなるんだろう。だから、私に起きてる事は絶対に言っちゃダメだ。私がルールを破るとみんなに不幸が起きる。もう、私達の戦いは終わったんだ!みんなはもうこれ以上苦しまなくて良いんだ!)

 

香澄(私が黙っていれば、いつも通り何も変わらない。勇者部の楽しい毎日が続く。誰も、絶対に巻き込んじゃダメなんだ。私が、私が黙っていれば……。)

 

 

 

 

 

香澄はそれ以来誰にも打ち明けずに過ごしている。体育の授業ではみんなが笑いながら運動し、部活ではクリスマスツリーの飾り付けの続きをみんなでやる。たまに香澄が変な冗談を言ったりするとみんなが笑う。そんなありふれた、しかし勇者にとっては幸せに溢れた生活が続いていたのだ。

 

 

 

そう、香澄が黙っている限り--

 

 

 

 

 

12月24日、ゆりのお見舞いに行く為香澄は花咲川病院に来ていた。ゆりの病室へ入ろうとする香澄だか、その時中からゆりとりみの話し声が聞こえてきた。

 

ゆり「りみ、今日は大事なイベントでしょ。」

 

香澄「っ!?」

 

ドアを開けようとする香澄の手が止まる。今日は本来ならりみが手伝う軽音部のライブがある日なのだ。

 

りみ「良いんだよ。」

 

ゆり「良くないでしょ。」

 

りみ「お姉ちゃんが怪我してるのに、私だけ楽しい事は出来ないよ。」

 

ゆり「こっちが気を使うよ。お姉ちゃんの事なんて気にしなくて良いのに。」

 

りみ「ううん。お姉ちゃんが楽しくないと私も楽しくないんだ。だから良いの。ちゃんと代わってもらったから。」

 

2人の会話一つ一つが香澄の胸に突き刺さる。

 

りみ「怪我人は安静にしてなきゃ。」

 

ゆり「ちゃんとごはん食べてる?出前とって良いからね。」

 

りみ「作ってるよ。スーパーのお惣菜がほとんどだけど。」

 

ゆり「昔はご飯も炊けなかったのにね。」

 

りみ「えぇ?いつの話をしてるの!?もう大丈夫だよ。」

 

ゆり「朝も?」

 

りみ「ちゃんと起きてるよ。遅刻もしてない。家の事は心配しないで。」

 

 

 

胸が痛む--

 

 

 

ゆり「なんか、りみの方がお姉ちゃんみたい。」

 

りみ「本当?やった。」

 

ゆり「ありがとね、りみ。」

 

りみ「うん。」

 

 

心が抉られる--

 

 

りみ「退院したら絶対楽しい事しようね。」

 

ゆり「うん。お正月が楽しみだね。」

 

りみ「うん!」

 

 

気が狂いそうになる--

 

 

ゆり「今年は凄い年だったなー。」

 

りみ「来年はもっと凄くしようね。楽しい方に。」

 

 

この気持ちを誰かに吐き出したい--

 

 

香澄は体を震わせる。

 

りみ「あれだけ頑張ったんだもんね。」

 

ゆり「うん。みんな幸せにならないと。」

 

 

だけど言えば誰かが不幸になる--

 

 

ゆり「りみも沙綾ちゃんも有咲ちゃんもたえちゃんも香澄ちゃんも、みんな良い子ばっかりだった。」

 

 

言えない--

 

 

ゆり「勇者部の部長は幸せ者だよ。」

 

 

言える訳がない--

 

 

外では雪が降り始める。

 

りみ「あっ、お姉ちゃん。今年はホワイトクリスマスだね。」

 

ゆり「そうだね。」

 

その時、沙綾と有咲が病室へ入ってきた。

 

有咲「おーい、怪我人。」

 

沙綾「遅くなってごめんね、りみりん。」

 

ゆり「そんなにしょっちゅう来なくても大丈夫なのに。今日は何かあった?それにしてもその格好は?」

 

2人はサンタの帽子を被り、有咲はサンタの袋を担いでいた。

 

有咲「クリスマスイブに病院じゃ寂しいんじゃねーかと思ってな。」

 

沙綾「あれ?香澄は?先に来てると思ったんだけど……。」

 

ゆり「え?」

 

 

 

 

 

香澄「はあ、はあ、はあ、はあ……。」

 

香澄は病室へは入らず無我夢中で雪の降る中外へ駆け出していた。時同じくして、戸山家の前に黒い車が止まり、中から大赦の神官が現れる。

 

 

 

 

 

 

沙綾「香澄、どうしたんだろう。」

 

少し遅れてたえが病室前へ来るが、そのドアの前に香澄の手袋が落ちている事にたえは気付いた。

 

たえ「……。私分かっちゃったかも。」

 

たえは何かに気付いたようだった。

 

 

 

 

 

 

香澄「はあ、はあ、はあ、はあ……。」

 

ただがむしゃらに走る香澄。

 

香澄「あっ!」

 

だが、途中で転んでしまい雪を掴む。

 

香澄「うぅっ……。うっ…うわあああんっ……。」

 

これまで、香澄は何があっても悲しくて泣いたりはしてこなかった。どんなに辛くても助け合える、相談し合える友達がいたからだ。だが、今回は違う。助け合えない、相談し合えない。何故なら友達が傷付いてしまうから。

 

自分が傷付くならまだ良い。だが友達に不幸が降りかかる、しかも自分が原因で。この残酷な現実にこれまで強く有り続けた香澄の心は遂に折れてしまったのだった。

 

 

 

香澄はただ蹲って泣き続けるしかなかった--

 

 

 

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