戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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この章では戦いの描写がかなり少なくなります。ご了承ください。


相談出来ない。香澄にとってこれ程辛いものはないでしょう。




それぞれの思いやり

 

 

年が明け、神樹様を祀っている神社へ初詣に来た勇者部6人。

 

ゆり「やっと退院出来ました。迷惑かけてごめんね、みんな。」

 

沙綾「早く退院出来て良かったですね、ゆり先輩。」

 

ゆり「ありがとね、沙綾ちゃん。でも、もうすぐ卒業かぁー。」

 

有咲「何ならもう1年いても構わないけどな(笑)」

 

ゆり「有咲ちゃん、ちょっと冗談に聞こえないから……。」

 

5人は笑う。が、香澄はすぐに笑顔を戻してしまっていた。

 

たえ「ねえ、私甘酒飲みたい。」

 

ゆり「良いね、おたえちゃん。みんなで行こう。」

 

 

 

 

 

甘酒振舞所--

 

ゆり・りみ「「ぷはー。」」

 

有咲「おぉ、姉妹揃って良い飲みっぷりだなー。って、ノンアルコールなのに何か場酔いしてねーか!?」

 

りみ「あはは!酔ってないです!あははは!」

 

ゆり「うわーーーーっ!私の中学時代が終わっちゃうーーーっ!!」

 

沙綾「記録に残しておこっと。」

 

沙綾はスマホで姉妹の動画を撮り出した。

 

有咲「ん?香澄、飲まないのか?」

 

香澄「あ、熱くて…。」

 

たえ「なら、冷ましてあげるよー。フー、フー。」

 

りみ「ねぇ、沙綾ちゃ〜〜ん!写真撮りましょ〜〜〜!」

 

有咲「りみって酔っ払うとあんな感じになるんだな…。」

 

有咲含め4人はその様子を見て、全員同じ様な事を思ったのだった。

 

沙綾「じゃあ、みんなで撮ろうか。」

 

沙綾が自撮り棒を取り出し、写真を撮った。

 

 

 

 

 

勇者部部室--

 

沙綾はカメラを回し出す。

 

ゆり「ん?ふふーん。」

 

ゆりは決めポーズを取る。

 

沙綾「ゆり先輩、自然体で大丈夫ですよ。」

 

ゆり「ついねー。でもなんでカメラなんか回してるの?」

 

沙綾「もうすぐ先輩が卒業してしまうので、みんな揃っての活動は貴重ですから。」

 

ゆり「でも、私卒業してもここに入り浸ると思うけどね。」

 

りみ「入り浸るんだね…。」

 

ゆり「りみが心配だし。」

 

りみ「お、お姉ちゃんがいなくても大丈夫だもん!」

 

ゆり「そんな〜!!」

 

りみの一言にゆりは体育座りでうずくまる。

 

有咲「まっ、でもそうなる予想はついてたけどな。」

 

沙綾「とか言って、嬉しいんじゃないの?有咲は?」

 

沙綾が有咲を茶化す。

 

有咲「ちょっ!?………。」

 

有咲の顔が赤くなる。

 

沙綾「まさか図星?」

 

有咲「ちょまっ…そんなんじゃねーー!!」

 

たえ「いやー、ゆり先輩と有咲は仲が良いですね。あっ、私用事があったんだった。それじゃーまた明日。」

 

香澄「またねー、おたえ。」

 

帰るたえを香澄が見送った。

 

ゆり「あっ、そう言えば卒業旅行は何処に行こうかな。」

 

沙綾「年末は入院で何処にも行けなかったですからね。」

 

ゆり「そうそう。大赦のお金でみんなで温泉とか行く?」

 

香澄「っ!?」

 

その時、香澄が、

 

香澄「温泉は前に行ったから違う場所とかどうですか?山とかもいい感じだと思いますよ。」

 

温泉だとみんなに体の刻印がバレてしまう。香澄はそれとなく晒した。

 

 

 

 

 

猫探しの依頼中--

 

香澄「迷子の迷子の仔猫ちゃーん?どっこかなー?」

 

香澄が茂みの中を探していた。

 

ゆり「うーん、見つからないねー。ねぇ、りみ。猫語で探してみたらどう?」

 

りみ「えっ!?……にゃー、にゃー、にゃー。」

 

沙綾「可愛い!りみりん可愛いよ!」

 

沙綾がビデオカメラでりみを撮影する。

 

りみ「さ、沙綾ちゃん!?これは撮らないで〜!」

 

その時、

 

香澄「あっ、いた。」

 

香澄が探していた仔猫を見つける。

 

香澄「おいで、一緒に帰ろう。」

 

しかし、

 

猫「ふぎゃー!」

 

香澄「あっ……。」

 

猫は香澄を威嚇し、逃げてしまうが、すんでのところでゆりが捕まえた。

 

ゆり「おお、よしよし。香澄ちゃん、ナイス発見。」

 

香澄「あはは…怖がられちゃいました。」

 

有咲「よし、これで依頼は終わりだな。」

 

沙綾「記念に1枚撮りましょう。」

 

そう言って、沙綾はまたみんなで集合写真を撮った。

 

 

 

 

 

カラオケ--

 

沙綾とたえがデュエットを歌っている。

 

ゆり「良いわよー2人ともー!」

 

りみ「息もピッタリだったね。」

 

ゆりとりみが2人を褒める。

 

有咲「じゃあ、こっちも行くぞ、香澄。」

 

有咲が声をかけるが、香澄はどこかボーッとしているようで頬が赤くなっていた。

 

香澄「えっ?うん、これから宿題やるよ。」

 

有咲「どした?」

 

たえ「香澄寝ぼけてるんだね。有咲、私と歌おうよ。」

 

有咲「お、おう。」

 

香澄の代わりにたえが一緒に歌った。

 

 

 

 

 

別の日の夕方--

 

香澄は教室から1人で夕日を眺めていた。そこへ有咲がやって来る。

 

有咲「香澄。」

 

香澄「っ!有咲。」

 

有咲「話、良いか?」

 

香澄「突然どうしたの?」

 

有咲「少し外歩こうぜ。」

 

 

 

 

 

2人は歩いて港に来た。

 

香澄「久々にこっちの方まで来たね。前は沙綾を助けに寄ったぐらいだっけ。」

 

有咲「なぁ、香澄…。」

 

香澄「その前に、良いかな?」

 

有咲「何だ?」

 

香澄「有咲は寒くないの?」

 

真冬の海辺は流石に堪えるようだ。

 

有咲「あぁ、ごめん。全然気が回らなかった。場所変えるか?」

 

香澄「ううん、大丈夫。」

 

そう言うと、香澄は有咲に寄りかかる。

 

香澄「こうすれば寒くない。」

 

有咲「っ……!この前、ゆりが卒業した後もちょくちょく来るって言ってただろ?」

 

香澄「うん。」

 

有咲「私、それ聞いてちょっと嬉しかった…。」

 

有咲が照れ臭そうに言う。

 

香澄「ちょっとだけ?」

 

有咲「ちょ、ちょっとだ!」

 

香澄「本当?」

 

有咲「あ……でも、結構…。」

 

香澄「嬉しいよね。」

 

有咲「っ…!………うん。」

 

有咲「でさ…。」

 

香澄「?」

 

有咲「私も気持ちをこうやって話すようになったんだから……。香澄も話してよ。」

 

香澄「っ!?」

 

有咲「香澄、年末辺りから様子おかしーぞ。絶対何があっただろ?」

 

流石に有咲も香澄の様子が何か変だという事に気が付いていた。

 

香澄「………。」

 

香澄は答えない。

 

有咲「私が力になる。話を聞かせてくれない?香澄。」

 

香澄「何ともないよ。」

 

言えなかった。

 

有咲「っ!大丈夫だよ!」

 

香澄「えっ!」

 

有咲「どんな悩みだろうと私は受け止めるから!香澄の事なんだから!!」

 

香澄「有咲……。」

 

有咲「力になる。私は香澄の為に何だってしてあげるつもりだ!そう思える友達を持てた事が私は嬉しいから。その気持ちを持たせてくれたのは、香澄達だから。」

 

香澄「有咲…。」

 

有咲「何があったんだ?香澄。」

 

 

 

言葉に詰まる--

 

 

 

香澄「…。……っ!」

 

 

 

葛藤する--

 

 

 

有咲はじっと香澄を見つめて、言葉を待っていた。

 

香澄「あ…あの……。」

 

香澄にゆりとの出来事が脳裏に浮かぶ--

 

ゆりに話そうとした結果、ゆりは入院してしまった。

 

香澄「本当に、何でもないんだ。」

 

有咲を同じ目に合わせたくは無い。

 

有咲「っ……。そうか…。」

 

有咲は両手で香澄の肩を掴んだ。

 

香澄「有咲…。」

 

有咲「悩んだら……。」

 

香澄「っ!?」

 

有咲「悩んだら相談じゃなかったの?」

 

勇者部の5箇条、その1つ。香澄が入部した時に決め、いつも守ってきた決まり事である。誰よりもその決まりを守ってきた香澄が、今、それを破ってしまったのだ。

 

香澄「っ!!」

 

有咲「私、友達の力になりたかった……。」

 

有咲は目に涙を浮かべ走り出してしまった。

 

香澄「有咲!待って!」

 

香澄は動けない。

 

香澄「有咲!!」

 

追いかけようとするも、胸を押さえて膝をついてしまった。

 

香澄「はあ、はあ、はあ…。」

 

有咲は走って行ってしまう。

 

香澄「ごめんね…。ごめん……。」

 

誰よりも勇気を出して、自分を変えてまで手を差し伸べてくれた友達の手を香澄は払い除けてしまったのだった。その事実に胸が押しつぶされ、香澄の目からも涙がこぼれた。

 

 

 

 

 

その夜、山吹宅--

 

沙綾は今まで撮っていた写真を真剣な眼差しで見つめていた。

 

香澄(やっぱり、最近の香澄の様子はどう考えてもおかしい。)

 

パソコンでビデオの映像もチェックする。

 

香澄『あっ、大吉だー。あはは、やったー。』

 

香澄がおみくじを引いている映像を見る沙綾。

 

沙綾「違う。大吉を引いたら香澄はもっと弾けるように喜ぶはず。なのに…。何でそんなに切ない顔をしてるの?きっと私達に言えない何かが起こっているに違いない!……だったら!」

 

そう言うと沙綾はスマホを取り出し、勇者へと変身し、

 

沙綾「私が真相を確かめる!」

 

香澄の家に忍び込んで調べる決意をしたのだった。

 

 

 

 

 

香澄の部屋のベランダに辿り着いた沙綾はまず、精霊である"青坊主"に偵察させた。"青坊主"が部屋を覗き、

 

青坊主(対象は睡眠中。侵入可能。)

 

と、ジェスチャーで知らせる。そして沙綾は"青坊主"にベランダの鍵を開けさせ、中に侵入した。

 

沙綾(香澄ってば、電気付けっ放しで…勝手に入ってごめんね。)

 

何か手掛かりはないかと調べる沙綾。その時本棚の違和感に気が付いた。

 

沙綾(っ!あれは!香澄が中学の時、4月3日にイネスでご両親に買ってもらったけど、手に取る事は一度も無かったという百科事典の位置がズレてる!)

 

沙綾は百科事典に手を伸ばす。本棚から取り出し、中の辞典を出すと、

 

沙綾(勇者御記?何故こんなものが…?多分……いや、絶対にこれに手がかりがある。でも…。)

 

その時、

 

香澄「うっ……。」

 

香澄はうなされていた。沙綾は香澄の手を握り、

 

沙綾(香澄、ごめんね。これ…借りるね。)

 

沙綾は香澄の勇者御記を持って自宅へ戻ったのだった。

 

 

 

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