香澄が高天原で出会った青い烏。
それは西暦の勇者であるあの人の事です--
沙綾は香澄の家から勇者御記を借りた後たえと有咲に連絡し、ゆりとりみが住むマンションへとやって来た。
ゆり「これを香澄ちゃんが書いたって事か…。」
沙綾「最近の香澄は様子がおかしかった。その原因がこれに書かれてると思う。」
有咲「っ!」
有咲に緊張が走る。
たえ「私からも良いかな。」
沙綾「何、おたえ?」
たえ「私も、香澄が心配になって調べてみたんだ。最近、みんなより早く帰ってたでしょ。実は大赦に行ってたんだ。」
たえはたえで独自に調べていたようだ。
たえ「結論を先に言うとね、香澄の様子がおかしいのは、香澄が天の神の祟りに苦しめられてるからなんだ。」
沙綾・ゆり・りみ・有咲「「「えっ?」」」
沙綾「おたえ、それは…?」
たえ「聞いて、沙綾。大赦の調べで、この祟りは香澄自身が話したり書いたりすると伝染する、それが分かったの。だから…この日記はとても危険な物。それでも……みんな見る?」
沙綾「見るよ。香澄が心配だから。」
ゆり・りみ・有咲「「「うん。」」」
4人は即答した。
たえ「うん。なら読んでみよう。」
5人は勇者御記を開く。
ーーー
ーー
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香澄(はじめに。年末に大赦の人達が私の変化に気付いてやって来た。事情は神託や研究を交えて知ったので神聖な記録として残して欲しいと…。続くかな。どうしてこうなったのか……。)
香澄(自分は前の大きな戦いで相当無理をしたようで、身体中のほとんどを散華してしまった。さらに、敵の御霊に触れた事で魂が御霊に吸い込まれてしまった。気がつくと、そこはさーやを助けに行ったあの場所だった。どこまでも広がるモノクロの世界。頑張って抜け出そうとしたけど…。どこまでも、どこまでも、どこまでもそれは広がっていた…。)
香澄(だけど、その時…。)
〜♩
香澄(楽器の音色が聞こえた。私はすぐに分かった。あれは勇者部のみんなが弾いているって事に。)
〜♩
香澄(みんなが泣いてる…。演奏を通してみんなの気持ちが痛いくらい伝わってくる……。)
〜♩
香澄(ゆり先輩…。りみりん…。有咲…。さーや……!)
香澄「私は勇者だ!勇者は泣いている友達を放っておいてなんか出来ない!勇者は根性!絶対帰るんだ!!」
香澄(そして私は…光の方へずっと進み続けて……。)
香澄「演奏…凄かった……。」
香澄(みんなの元へ戻って来る事が出来た。)
香澄(でも、身体は違っていた。私やみんなは散華から回復したけど、あれは捧げられた供物が戻ってきた訳じゃないみたい。回復した機能は神樹様が創ったものらしい。それが自分の身体に馴染むまで時間がかかった。強引に満開して散華した私なんかは治す為に全身が神樹様の創ったパーツになった訳で…。)
香澄(大赦では私を御姿と呼んでいるとか……。御姿とは良く言えばとても神聖な存在なので神様からは好かれるそうだ。だから私は、私の望んだ事が…友達の代わりになる事が出来た。それで世界のバランスが保たれた。)
香澄(あれから大赦は私の異変に気付いて私を調べてくれた。分かったのは、結界の外の炎の世界がある限り、この身体が治る事は無いという事……。そして--)
香澄(私は今年の春を迎えられないだろうという事。)
香澄(とても怖いし……。私のせいで怪我をさせてしまったゆり先輩に申し訳ないし…。なんだかトンネルの中にいる気分だった。)
香澄(1月7日、ゆり先輩が退院出来たのはおめでたい。みんなといると元気が出て来るけど、うつさない様に気をつけなきゃ。やっぱり口数が減っちゃう。食欲は無かったけど、甘酒が美味しくて喉が喜んだ。でも、家で吐いちゃった…。)
香澄(1月9日、吐き気は酷かったけど、部室にいるととても心がほわほわする。また明日って言葉が最近は好き。約束すれば、明日が来ると思えるから…。出来ればずっと、この場所にいたいな…。ゆり先輩は温泉を提案してくれたけど、今の私の裸を見たら、みんながびっくりしちゃう。刻印はどんどん大きくなりお腹の方まで広がっている。とても行けない、ごめんなさい。)
香澄(1月11日、今日は調子が良い。しっかり休んでるのが効いたのかも。仔猫探しの依頼で体を動かせて楽しかった。このまま根性で良い状態が続くかもしれない。他にも体に良い事を試してみよう。)
香澄(1月13日、胸がとても痛くて頭がくらくらする。多分、みんなと会話が成立してなかったかも…。体、せっかく良くなったと思ったのに……。)
香澄(1月14日、いっぱい寝て体力を回復させなきゃ。でも、電気を消して寝るのが怖い。暗いのが怖い。そのまま、暗いものに包まれてしまいそうで…。)
香澄(1月16日、今日は有咲を傷付けてしまった。でも、絶対に言う訳にはいかない。ごめんなさい。ごめんなさい。とても苦しい。体も痛い。心も痛い。グチャグチャになりそう。もうおかしい。私はただ……。みんなと毎日過ごしたいだけなのに…。)
香澄(弱音を吐いたらダメだ!私は勇者だから。覚悟してたんだから。もう泣かない!頑張れ戸山香澄!勇者は挫けない!!)
香澄(とにかく有咲とちゃんと仲直りしたい。でも本当の事は話せない。どうすればいいんだろう?もう、ここでいっぱい書く。)
香澄(有咲…私、有咲の事大好きだよ。有咲、本当にごめんね。)
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沙綾「そんな…。」
ゆり「治らないってどういう事……。春は迎えられない?」
沙綾とゆりは絶望し、他の3人も絶句していた。
沙綾「っ!!」
たえ「待って、沙綾!!」
沙綾「止めないで、おたえ!全て私の所為じゃん!天の神の怒りは収まって無かった!!私が受けるべき祟りだよ!!」
たえ「日記に書いてあったでしょ!沙綾に移っても本人は祟られたまんまなんだよ!」
沙綾「そんな…。」
ゆり「くっ!大赦はまた、私達に重要な事を黙って…。」
ゆりは怒りを露わにする。
たえ「迂闊に説明するとみんなに祟りが行くかもしれないから話せなかったんだよ。」
たえがゆりをなだめた。
たえ「私もそうなんだ…。祟りについて詳しい事が分かったのはついさっきだから……。」
有咲「うっ……うっ…うっ…。」
その時、有咲が泣き出した。
有咲「香澄が…っ…そんなに苦しんでるのに……。私、酷い事言っちゃった…。」
思い出されるのはあの日の港での出来事。
ーーー
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有咲「悩んだら……。」
香澄「っ!?」
有咲「悩んだら相談じゃなかったの?」
香澄「っ!!」
有咲「私、友達の力になりたかった…。」
香澄「有咲!待って!」
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有咲「っ…酷い事言っちゃったよぉ………!」
5人は真相を知っても何も出来ずにいたのだった。
翌日--
沙綾「おはようございます。」
沙綾は朝から香澄の様子を見に来ていた。
沙綾「おはよう、香澄。」
香澄「おはよう、さーや。」
沙綾「今日は早めに起きてたね。」
香澄「うん。早く目が覚めちゃって…。でも、寒いから出たくないなーって。」
その時、香澄が沙綾の顔をまじまじと見つめだした。
沙綾「どうしたの、香澄。」
香澄「さーや、調子悪そう。大丈夫?」
沙綾「っ!……。」
沙綾は突然香澄を抱きしめた。
香澄「さ、さーや!?」
沙綾(私が不安だった時、香澄はいつもこうして抱きしめてくれた。)
香澄「っ…。」
香澄は微笑んで沙綾を抱きしめ返した。
沙綾(香澄……。今度は私が絶対に助けるから!!)
沙綾は香澄を祟りから救い出す事を改めて心に誓ったのだった。