戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

44 / 326

防人--

何やら後々のお話の事が出ているようですが--

乞うご期待です。





2人の思い出散歩

 

 

神樹が去ってから暫くしたある日、香澄と沙綾は街を歩いていた。

 

香澄「……。」

 

沙綾「街も落ち着きを取り戻してきたし、良かったね。」

 

香澄「…っ!!」

 

沙綾「どうしたの、香澄?さっきから私を見て…。」

 

香澄「あぁ…さーやだなぁって思って……。」

 

沙綾「っ!?香澄、もしかして具合悪いの?」

 

香澄「大丈夫だよ!!こんなに身体動くし!!」

 

そう言って香澄は飛び跳ねてみせた。

 

沙綾「そんなにはしゃがない。まぁ、身体が動く喜びは私だって分かるけどね。」

 

沙綾もかつて散華の影響で両足が動かなくなり、車椅子の生活を送っていたが、今では香澄と肩を並べて歩けるまでに回復している。

 

香澄「そうだね。身体が元気で、隣に大親友がいる。こんな当たり前な事がこんなにも嬉しいなんて!!」

 

沙綾「香澄は最近そればっかり言うね。」

 

香澄「うん!毎日に感謝感激だよ!!」

 

沙綾「……気持ちは分かるけどね。」

 

沙綾(みんなで神樹様に引き取られもせず、滅亡もせず、こうして少しずつ日常に戻っていく…ありがたいよね。)

 

沙綾「でも……。」

 

 

沙綾は空を見上げて夏希の事を思い出す--

 

 

沙綾(失ったものが大きすぎる…。だからこそ、尚更…こういう日々を大切にしていかなきゃ。)

 

その時、

 

りみ「あっ、香澄ちゃんに沙綾ちゃん。」

 

2人の前にりみが通りかかった。

 

香澄「りみりん!お買い物?」

 

りみ「そうだよ、香澄ちゃん。少しずつ自炊も出来るようになったて、レパートリーも増やしていかないとって思って。でも普通に買い物できるとは思ってなかったよ。」

 

沙綾「大赦も備えで色々備蓄してたみたいだよ。」

 

りみ「じゃあ、私は夕ご飯の研究しないとだから行くね。」

 

沙綾「頑張ってね、りみりん。」

 

香澄「部長、お疲れさまでした!」

 

りみ「香澄ちゃ~ん、その呼び方はぁぁぁ。」

 

香澄「あはは、ごめんごめん。」

 

りみは恥ずかしがりながら、マンションへ帰っていった。再び2人は街を散歩する。

 

香澄「そういえば、もうさーやと出会ってから2年経つね。」

 

沙綾「2年か。もっと経ってるかと思ってたよ。」

 

香澄「駆け抜けるような2年だったしね。」

 

沙綾「色々とありすぎたもんね…でも、全部覚えてるよ。」

 

香澄「え、満開とか、そういう大きな事だけじゃなくて全部?」

 

沙綾「もちろん!今度は絶対に忘れない……。試しに何か聞いてみてよ。」

 

香澄「じゃあ……さーやが風邪を引いた日は?」

 

沙綾「あれは…1年生の時の12月3日だったかな。確か香澄が看病してくれたんだよね。」

 

香澄「さーや凄い!!でも、さーや中々看病させてくれなかったよね。」

 

沙綾「香澄に風邪うつす訳にはいかなかったし…。」

 

香澄「それで、看病するしないで話してるうちに、さーやの熱が高くなったらいけないと思って私が帰ったんだよね。」

 

沙綾「その話は続きがあるでしょ。私が寝てる間に香澄また来てたでしょ。」

 

香澄「沙綾が寝た後なら、私に気を遣う事無いなぁって思ったから。」

 

そう言い合いながら2人はその日を回想するのだった。

 

 

---

--

 

 

2年前の12月3日--

 

沙綾「か、香澄!何でここにいるの!?うつしたくないのに…。」

 

香澄「大丈夫、馬鹿は風邪ひかないって言うし。」

 

香澄は笑いながら言う。

 

沙綾「香澄、来てくれてありがとう。でも…。」

 

香澄「うん、分かった今日は帰るね。」

 

その言葉に沙綾は一瞬だけ悲しげな顔を見せた。

 

香澄「……やっぱりいようかなぁ。」

 

沙綾「駄目駄目、私は大丈夫だから。」

 

そう言うと香澄は帰っていったのだった。

 

 

ーー

---

 

 

沙綾「懐かしいね…。」

 

香澄「次の日、すぐ直ったからホッとしたよ。」

 

沙綾「心配かけちゃったね。」

 

そんな2人のやりとりを車から見ている人物がいた。

 

 

 

 

 

安芸「……もうすっかり元気ね、2人とも。」

 

たえ「素敵な光景だよね。かくあるべしだよ。」

 

安芸とたえであった。安芸は忙しい合間をぬって、時々沙綾達の様子を見に来ていたのである。

 

安芸「戸山さんの体調検査は当然続けていくとして…。」

 

たえ「そうだね、御姿だったんだから。」

 

安芸「あなたもよ。御姿に限りなく近い…。」

 

1年前、壁に穴が開いた一連の騒動で、強引に満開した香澄は全身を散華してしまった。やがて香澄は他の少女達と共に回復したが、それは従来の供物が戻ってきた訳では無い。供物は満開と引き換えに散華時に捧げられてしまっている。戻りようがないのである。寿命少ない神樹が力を振り絞り、彼女達の機能を作り出したに過ぎないのだ。それが馴染んで自分のものになるまでに時間はかかった。彼女達のリハビリ期間は厳密に言えば馴染む期間だったのである。

 

たえ「寿命が少ない神樹様が造った力が身体に馴染むまで……大変だったろうね。立ち眩みとかも大変だったよね。」

 

安芸「だから、それはあなたもでしょう。」

 

たえも香澄ほどではないが、世界を守る為にたった1人で20回以上も満開をし続け、身体のほとんどの機能を散華した身である。

 

たえ(大橋で初めて香澄と直に会った時と、身体が元気になった時に再開した時とで、ちょっと印象が違って見えたのは…御姿だったからなんだね…。)

 

たえ「神樹様がいなくなったからって、身体の機能が消滅しなかったの事は本当に良かったよね。」

 

安芸「馴染ませて自分のものにした訳だから。」

 

3年前の沙綾達、そして1年前の香澄達、神世紀における神の尖兵であるバーテックスとの戦いを見てきた神樹は、人類に希望と活路を見出し、籠城戦から方針を変えた為に与えられた身体の機能である。そして以後は、国造りによる反撃を始める予定だった。天の神が顕現してくるという、西暦の時代でも起こらなかった事態に及ぶまでは。

 

安芸「山吹さんも1度は奉火祭に向かった身体……心配ではあったけど、今のところは大丈夫なようね。」

 

安芸「次は、白鷺さん達ね…。」

 

たえ「手伝うよ。花園の名前もまだ通じると思うし。」

 

安芸「正直、助かるわ。」

 

たえ「いえいえ、お手伝い程度ですから。」

 

安芸「……小学生や中学生は、お手伝いぐらいが本来の姿なのよ。大人がいる以上、仕事の責任を負うのは、こちらの役目…。」

 

たえ「先生、燃えてるねー。」

 

安芸「花園さんは嬉しそうね。」

 

たえ「人は人で生きていく。こうなって欲しいって思ってたから。」

 

そうして安芸は車を走らせ、防人達の所へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

かめや--

 

香澄「肉ぶっかけうどん、お願いします!」

 

沙綾「おろし醤油うどん、お願いします。」

 

2人は注文を澄ませ、テーブルに着いた。

 

沙綾「今でも覚えてるよ。新しいお隣さんだって香澄がやって来た日の事を。」

 

香澄「うん、私も忘れないよ。初めてさーやと会った日を。」

 

2人は初めて会ったあの日を懐かしむ。

 

沙綾「その日のうちから、香澄は色々教えてくれたよね。この街の事とか、自分の事とか…。」

 

香澄「すぐに連れまわしちゃったよね。」

 

沙綾「初めは不安だったけど、楽しかったよ。この辺りは確か、3回目に連れてきてもらったよね。」

 

香澄「そうそう、少しずつ2人で行く範囲を広げてってね。」

 

沙綾「出会ってから毎日一緒にいたっけ……。」

 

香澄「たださーやと遊びたかっただけだよ。家が隣なのに、何度も泊まりに行っちゃったし。」

 

沙綾「初めは何度も断ってごめんね。寝る時まで一緒だと、思う様に動けないところ見せちゃうから…。」

 

香澄「そうだったんだね…。」

 

沙綾「でも香澄はそれでもずっと親身になってくれた。」

 

香澄「さーや…。」

 

沙綾「だから急に神婚するなんて言い出した時はどうしようかと思ったよ。」

 

香澄「うぅ…ごめんなさい。」

 

香澄は落ち込んだ。

 

沙綾「顔上げて、ちゃんと止めたんだからもう気にしない。前は私を止めてくれたしね。」

 

話し込んでいる間にうどんが到着し、2人はうどんを食べて再び街を散策していく。

 

 

 

 

 

 

海岸にて--

 

香澄「段々暖かくなってきたよねー。」

 

香澄は大きく伸びをする。

 

沙綾「海……ここにも思い出いっぱいあるね。」

 

そう言うと、沙綾はあの日を懐かしむ--

 

 

---

ーー

 

 

1年前のある夏の日--

 

沙綾「もうすぐ水泳の授業か…頑張らないと。」

 

香澄「おっ、さーやが燃えている。」

 

沙綾「メニューが別とはいえ、泳げるのは嬉しいから。」

 

香澄「授業のプールも良いけど、普通に海にも行きたいよね。」

 

沙綾「そうだね。水中用の車椅子もあるみたいだし。」

 

香澄「うんうん!色々行ってみようね!」

 

 

ーー

---

 

 

沙綾「車椅子でも色々と出来る事はあった……。香澄も、随分調べてくれたよね。」

 

香澄「さーやと色んな事がしたかったからね。」

 

 

そんな2人を遠くの方で、鍛錬していた有咲が見ていた。

 

 

有咲「何してんだ、あの2人……。まっ、でも楽しそうで良いな。それにしても香澄……あんなに笑って…。本当に良かったな。」

 

有咲は香澄の笑顔を見て微笑んだ。

 

有咲「それより…。香澄と海で大喧嘩したのは我ながら不覚だった……友達の力になると思って熱くなるなんて。あれが空回りってやつかな。もっと香澄の立場になって考えてあげないといけなかったのに…。あの時千聖からきつく言われてなかったらダメだったかもな。」

 

有咲は自分の頬を叩く。

 

有咲「まだまだ修行が足りないな!有事に備える意味でも、鍛錬を続けないと!」

 

そう言って有咲は鍛錬へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

勇者部部室--

 

2人は部室に来ていた。

 

香澄「ふー。海ではしゃぎ過ぎたねー。」

 

沙綾「そうだね。」

 

ゆり「おや?香澄ちゃんに沙綾ちゃん。」

 

部室にいたのはゆりだった。

 

沙綾「こんにちは、ゆり先輩。」

 

香澄「ゆり先輩は何をしてたんですか?」

 

ゆり「部室が恋しくなってね。」

 

香澄「なんだかゆり先輩らしいですね。」

 

沙綾「先輩お茶を淹れました。」

 

香澄とゆりが話している間に沙綾はお茶を用意した。

 

ゆり「おぉ…さりげない心配り……なんて言っても沙綾ちゃんは初めから何でも出来てたよね。」

 

香澄「初日からパソコンばりばり使ってましたもんね。」

 

ゆり「あそこまでパソコンを自由自在に操れるとは思わなかったよ。あっという間に依頼が舞い込んで、色んな事が出来る部活になったもんね。」

 

ゆりが沙綾の仕事ぶりを褒める。

 

沙綾「先輩が素敵な部長だったから、存分に腕を振るえたんですよ。」

 

ゆり「最初は3人だったけど……りみや有咲ちゃん、たえちゃんが入って、人数も倍になったね。」

 

香澄「先輩の人徳も大きいと思いますよ。」

 

ゆり「私そんなにちゃんと部長出来てた?」

 

香澄「はい!それはもう!!」

 

香澄がゆりを褒める。

 

ゆり「……あんまり褒めないで、泣いちゃいそう。」

 

香澄「これからの勇者部はりみりんともどもお任せください。」

 

ゆり「そうね。まぁ、何度も言うけどこれからも私はここに来るつもりよ。」

 

ゆりは笑いながら言った。

 

沙綾「あっ、そういえばさっきりみりんを見ましたよ。」

 

香澄「料理頑張るって張り切ってました。」

 

ゆり「それは是非見守らないとね、それじゃあね2人とも。」

 

そう言いながらゆりは部室から出て行った。

 

沙綾「……本当に私達、ゆり先輩が部長で良かったね。」

 

香澄「うん!!最高の先輩だよ!!」

 

沙綾「そして良かった繋がりで遡れば…引越してきた日、香澄が私に声をかけてくれて本当に良かったよ。」

 

香澄「それを言うなら私の方こそ。さーやと仲良くなれて、私の日常はいーっぱい楽しくなったんだから。」

 

そう言って香澄は沙綾の手を握った。

 

香澄「私ねぇ、さーやが思っている以上に、さーやが大好きだよ!」

 

沙綾「香澄………。」

 

そして沙綾も香澄の手を握り返した。

 

沙綾「私も香澄が思っている以上に、香澄が大好きだよ。」

 

香澄「さーや…。これからも宜しくね、さーや。」

 

沙綾「こちらこそ!!」

 

今日1日で、2人の絆はより深まっていったのだった--

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。