第1章でのたえの動向が少し垣間見得ます。
今後後々出てくるキャラも話に出てくるかもしれません。
本日も勇者部には6人が集まっていた。
ゆり「復興ボランティアのヘルプが入るって聞いてたけど…。」
連絡が来ない事にゆりは困っていた。
沙綾「連絡来ないですね…。」
沙綾は窓の外を見つめている。
たえ「やる事が多くて、どこから手を付けるのか考えるのも大変なんじゃないかな。」
有咲「このままじゃ埒があかねーな。どうする、部長?」
ゆり「うーん、そうだなぁ…。って、危ない危ない!部長はもうりみだったね。」
有咲の投げかけにりみではなくゆりが答えようとしてしまう。
りみ「え、えーと、とりあえず待機で良いんじゃないかな。いきなり連絡が入ってくるかもしれないし、みんな毎日体を動かして大変でしょ。」
有咲「休む時は休むか……。まっ、それも良いかもな。」
香澄「りみりん、もっと自信持って良いんだからね。」
有咲「そうだぞ、りみ。部長なんだからもっとビシッと!」
りみ「そうは言っても……。」
沙綾「りみりんは、時々ズバッと言う事もあるから。後1年もすれば…。」
そう言いながら、沙綾は1年後のりみを想像する--
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沙綾の脳内--
沙綾「りみりん。言われた任務こなしてきたよ。」
りみ「でも、まだ3つ任務が残ってるよ。1つ任務をこなすのは当たり前だよ。もっと効率よく動いて、3つ全部片付けてから報告にきてね。」
沙綾「ご、ごめんね、りみりん。」
りみ「やれやれ……沙綾ちゃんも腕が落ちてきたんじゃないかな。」
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沙綾「…みたいな?」
りみ「そんな昔のブラック企業みたいな事は言わないよ……。」
りみが沙綾の妄想を全力で否定する。
ゆり「そうだよ、沙綾ちゃん。りみの言動にはもっとこう…魂がこもってるんだよ。」
りみ「お姉ちゃんも落ち着いて…。」
その途中、沙綾がゆりの言葉に引っかかった。
沙綾「魂がこもってる…か。昔夏希も同じ事を言ってたね、おたえ。確か…弟の誕生日プレゼントを選ぶのを協力してた時。」
たえ「そうだね…。あれは確か--」
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ある夏の日、海野宅--
たえ「これなんかどう?積み木。」
おたえがスマホの画像を夏希に見せる。どうやら3人はネットの手作りおもちゃの投稿を調べて自分たちで作ったものを弟の誕生日プレゼントとして渡すつもりのようだ。
夏希「ちょっと子供すぎるんじゃないかな?」
たえ「そうかな?ただの四角いブロックだけじゃなくて、星型とか雲型とか、色んな形を沢山作れるんだよ。」
沙綾「なるほどねー。頭を使うおもちゃは良いかもしれないね。」
沙綾も太鼓判を押す。
夏希「でも、ちょっと待って。原料の木材はどこから持ってくるの?」
夏希がたえに質問する。
たえ「それは夏希が山に行って、斧で木を倒せば良いんだよ。」
夏希「私の斧は伐採用じゃない!!」
沙綾「日本地図のパズルとかは?」
夏希「沙綾だったら出来るだろうけど、私には無理だな…。四国の他にどんな所があったのかもよく知らないし…。」
沙綾「教科書見れば載ってるのに。」
その時、夏希がある投稿に目が留まる。
夏希「木材で飛行機を作ってプレゼントしたっていう投稿があるよ。」
沙綾「男の子が喜びそうなプレゼントだね。でも材料の木は…。」
たえ「夏希が山で切ってくる!!」
たえはノリノリで叫んだ。
夏希「だーかーらー、私の斧は伐採用じゃないー!」
夏希「よし、決めた!私は本を作る事にする!!自分で物語を作って、本にして、贈ってあげるんだ。」
沙綾「夏希出来るの?」
沙綾が心配そうに言う。
夏希「大丈夫だって!まぁ、文章書くのは苦手だけど、心がこもってれば何とかなるでしょ!」
たえ「そうそう。それに3人で作るんだから大丈夫だよ。」
沙綾「……そうだね。」
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沙綾「こんな感じだったよねぇ。」
香澄「聞けば聞くほど素敵な子だったんだね、夏希ちゃんは。」
ゆり「何でかな……私たちは夏希ちゃんを知らない筈なのに、どこかで会った気がしてならないよ。」
香澄とゆりは会った事も無い夏希を想い浮かべる。
香澄「もっと話してほしいな、夏希ちゃんの事。」
りみ「お姉ちゃんの言う通り、私たちは知らない人の筈なのに、不思議と沙綾ちゃんが話す光景が目に浮かぶんだ。」
沙綾「また時間がある時にゆっくり話してあげるね。」
ゆり「それじゃあ、沙綾ちゃんを始めとする2年生組に来年の抱負でも聞こうかな?みんなはどんな3年生になりたい?」
ゆりが唐突に話の流れを変える。
香澄「私は、ゆり先輩のような3年生になりたいです!!」
香澄は元気よく答えた。
たえ「私は………23センチって感じかな。」
ゆり「全然分からないよ、おたえちゃん……。」
たえ「冗談冗談。みんなの役に立つ事を勇んでやりたいと思ってるよ。」
ゆり「たえちゃんは大変な時期が長かったから、色々と遊びたいんじゃない?」
たえ「今、みんなと一緒に遊んでるから大丈夫。それに、大変な時期でも、割と我が儘言ったりしたから気ままなものだったんだ。」
たえはその時の事をみんなに話す--
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大赦--
先頭に立つ老齢の神官が一礼して、祀られているたえに話しかけた。
老神官「掛けまくも畏み花園たえ様に、畏み畏みも申す。今日私たちの国土が保たれておりますのはたえ様の尽力の結果でありその功績は永代の英霊にも勝るとも劣らずたえ様におきましては本日のお加減はいかがでしょうか?」
たえ「前置き、長すぎ。もっと軽くて良いよ。」
老神官「たえ様にその様な非礼は出来ません。」
たえ「前置き8割、本題2割じゃ、前置き聞いてる間に眠っちゃうよ。良いの、眠っちゃっても?」
老神官「……善処致します。たえ様の心の慰めとなるのであれば、我々は力を尽くします。お申し付けを。」
たえ「じゃあ、何か美味しいもの食べたいな。」
老神官「承知いたしました。」
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たえ「……ってこんな感じだったかな。肝心の沙綾に会いたいって願いだけはスルーされてたけど。それだけ叶えてくれれば良かったのに。」
沙綾「おたえ……。」
たえ「なのに……あんな事言われたら怒るに決まってるよ。そう、あれは壁に穴が開いたころだったかな…。」
そしてたえは再び語りだす--
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大赦--
老神官「たえ様。現勇者の牛込ゆりが暴走しております…。さらにお気付きかと思いますが、山吹沙綾の動向も怪しいものがあり……その力をお貸しして頂きたく。」
たえ「これで変身して、牛込ゆりさんの暴走を、止めればいいんだよね?」
老神官「宜しくお願い致します、たえ様。」
ところが、大赦の予想に反してたえは、
たえ「なりゆきを見守ろうかな。」
老神官「たえ様………ここでもし勇者が暴走すれば、大赦の危機、ひいては神樹様の……世界の危機に。」
たえ「そうだね。大ピンチだね。」
老神官「もし世界が滅亡したら、海野様は、何の為に体を張って落命されたのですか。」
たえ「もし全員死んじゃったら、向こうで夏希にいっぱい謝るよ。」
老神官「え?」
予想外の回答に、大赦の神官は間抜けな声をあげた。
たえ「今は、生きている沙綾の気持ちを優先してあげたいんだ。」
老神官「た、たえ様……。」
たえ「全部を知った勇者達が何を為そうとするのか…勇者のみんなに、やりたいようにやらせてあげたくて……気持ちは分かるなんてもんじゃないからね。」
老神官「それでは最悪、世界が……。」
たえ「じゃあ……何?勇者になって、沙綾やその友達と戦えって…?」
たえの言葉は落ち着いてはいるが、静かな怒りがこもっていた。
たえ「ふざけないでよ。」
老神官「たえ様!!」
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たえ「いやー、あの時は言ってやったよね。」
たえが笑顔で言い放つ。
沙綾「さすがはおたえ、ありがとう。」
ゆり「苦労をかけちゃったね……本当にありがとう。」
沙綾とゆりがたえに感謝した。
たえ「おっと、話題がそれちゃったね。それじゃあ、有咲の目標は?」
有咲「まぁ……ちゃんとした3年生になることかな。」
沙綾「今でも有咲はちゃんとしてると思うけどなぁ。ねぇ、りみりん。」
りみ「そうだよ。有咲ちゃんはしっかりしてるよ。」
有咲「いや、まだまだ未熟だよ。」
有咲(特に、人との関わり方はな……。)
有咲「色々な人と、色々な事を話そうと思ってる。」
ゆり「うんうん、素敵な目標だよ。」
ゆりが大きく頷いた。
有咲「もちろん、副部長だからりみもしっかり補佐するぞ。」
りみ「ありがとう、有咲ちゃん。頼りにしてるね。」
たえ「沙綾はどんな3年生になりたい?」
たえが尋ねる。
沙綾「勇者部6箇条と日常を守るよ。」
香澄「さーやカッコいい!」
ゆり「香澄ちゃんを助けてから、気持ち沙綾ちゃんが凛々しく見えるよ。」
香澄「あ、そういえばりみりん。バンドオーディションの件はどうなったの?」
唐突に香澄がりみに尋ねる。
りみ「ちゃんと連絡はきてるよ。こんな状況だから中々話は進まないだろうけどね。」
たえ「こんな時だからこそ、音楽が必要だと思うよ。頑張って、りみ。」
りみ「ありがとう、おたえちゃん。」
香澄「今日のボランティアの内容ってやっぱり掃除とかですかね?」
ゆり「今は復興で大変だから、多分そうだろうね。」
香澄「新しいライブ内容考えてたのに、宙に浮いちゃいましたね。」
香澄が残念がる。
たえ「いつかはそっちの方が需要が上がると思うよ。」
りみ「そうだよ、香澄ちゃん。内容みんなで考えていこう。」
とりとめのない雑談が続いていく。復興のボランティアでは、鍬を持って畑を耕したり--
反応があったと言われる地域に連絡をとってみたり--
勇者部のみんなは、平和な日々を噛みしめていたのだった。