戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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有咲の旧友である白鷺千聖--


防人である彼女の話は今後出てきます。





日々の積み重ね

 

 

キャンプ場--

 

香澄「有咲ー、テントの準備終わったよー。」

 

有咲「ありがとう、香澄。テントの張り方とかあまり知らなくて。」

 

香澄「普通はこういう経験する事あまり無いもんね。私は小学校の頃、お父さんと何度かキャンプに来た事あるから任せてよ!」

 

香澄は胸を叩いて誇らしげな表情を浮かべる。

 

有咲「そうなんだな。私は家族と遊びに行った事とか無かったから…。っと、それにしてもこんな近くに手ごろなキャンプ場があるなんてな。」

 

香澄「この近くには海辺のキャンプ場がいくつかあるからねー。」

 

有咲「へーそんなにあるのか。」

 

香澄「バーベキューも出来るから、後でやろうよ。」

 

有咲「さすがに2人だけじゃ難しいんじゃないか?」

 

香澄「それもそっかぁー。じゃあ、今度みんなが揃った時にしよう。」

 

有咲「そうだな。それより、香澄。今日は遊びに来たんじゃないからな。」

 

有咲の目が真剣になる。

 

香澄「そうだった、ごめんごめん。」

 

有咲「そう、私達は特訓をしに来たんだから!」

 

何故こうなったのか、話は1日前に遡る--

 

 

---

ーー

 

 

昨日、勇者部部室--

 

ゆり「さて、今日の勇者部の依頼は……園芸部の手伝い、女子ソフト部の手伝い…えっと、街の剣道場の手伝い?学校の剣道部じゃなくて、とうとう外部の剣道場からの依頼が来たんだね!?」

 

ゆりはそれを見て驚いた。

 

たえ「勇者部がどんどん有名になっていくね。」

 

香澄「有咲が何度も剣道部の人をコテンパンにやっつけてるから、それで剣道をやってる人の間で有名になったのかな?」

 

香澄がにやにやしながら推測した。

 

有咲「別にコテンパンまでにはしてねーよ…。本気でやらないと、訓練になんねーだろ。」

 

りみ「最近は毎日のように剣道部から、有咲ちゃんの派遣要請がくるもんね。」

 

たえ「有咲、剣道部の姫の貫禄が出てきた。」

 

沙綾「剣道部員への聞き取り調査によると、有咲と本気で戦って勝ちたいという部員が5割、残りの5割は……有咲に叩きのめされる事に、不思議な何かを感じるようになってきて、止められないんだって…。」

 

沙綾は笑いをこらえている。

 

有咲「不思議な何かってなんだよ!?」

 

ゆり「とにかく名誉な事だよ。剣道所の人からは"うちの門下生にも是非稽古をつけて欲しい"って。」

 

有咲「分かった。剣道部員よりも強い人がいるかもしれないし、私にとってもいい練習になるからな。」

 

有咲は依頼を快諾する。

 

りみ「有咲ちゃんはその内、"私より強い人に会いに行く!"って言いそうだね。」

 

そこへ、ゆりが1つ提案してきた。

 

ゆり「待って、有咲ちゃん。今回は香澄ちゃんも一緒に行ってもらうね。」

 

有咲「どうして?剣道だろ?」

 

香澄「私、素手の武術だったら少しだけ出来ますけど、剣道はやった事無いですよ。」

 

ゆり「今回に関しては、有咲ちゃんの御目付け役だね。学校外からの依頼だし、有咲ちゃんが暴れすぎてもいけないから…。」

 

有咲「暴れるか!人を猛獣みたいに言うな!!」

 

ゆり「そんな訳で、有咲ちゃんと一緒に行ってもらっても良いかな、香澄ちゃん?」

 

香澄「分かりました、ゆり先輩!有咲は暴れないと思いますけど、剣道場ってキラキラドキドキしそうですし!」

 

香澄の瞳は輝いていた。

 

香澄「でも、せっかく剣道場に行くんだったら、私も剣術出来るようになってみたいなー。」

 

有咲「香澄、剣術に興味あるのか?」

 

香澄の言葉に有咲が食いついた。

 

香澄「うん!有咲が2本の剣を振るってるの、凄くカッコいいって思ってたんだ。剣士・戸山香澄!どうかな?」

 

香澄は決めポーズをとる。

 

沙綾「その姿の香澄も悪くないかも…。」

 

沙綾が香澄の姿を想像する。

 

有咲「まあ、香澄がやりたいなら、私が教えてやっても良いけど…。」

 

香澄「え、本当!?やるやる!!道場行くまでには剣術使えるようになっておきたいなぁ。」

 

りみ「お姉ちゃん。剣道場に行くのはいつなの?」

 

ゆり「週末の連休明けだよ。」

 

有咲「うーん…たったそれだけの時間じゃ、さすがに出来るようになるのは難しいな…。」

 

有咲は腕を組んで悩みだす。

 

たえ「なら、短期間で力をつける為の、部活動の定番イベントがあるよね?」

 

たえが有咲に投げかける。

 

有咲「そうか、その手があったか!」

 

香澄「え、なになに?」

 

有咲「合宿だ!!」

 

香澄「面白そう!!」

 

香澄の瞳が輝きを増す。

 

有咲「だけど、合宿に適した場所なんてあったか?」

 

香澄「それなら任せて!私、いい場所知ってるから!」

 

こうして香澄と有咲は剣道修行の為の合宿を行う事となったのであった。

 

 

ーー

---

 

 

そして現在--

 

香澄「剣術を鍛える為にはまず何からやるんですか、有咲先生!!」

 

有咲「先生って…。」

 

香澄「もちろん!剣術を教えてくれるんだから、先生だよ。」

 

有咲「まぁ、香澄が呼びたいならそう呼べば?」

 

有咲の顔が赤くなった。

 

香澄「うん!有咲先生みたいに、二刀流でカッコ良く戦えるようになれるかなー。」

 

有咲「そうだな…でも、二刀流は簡単じゃないぞ。私みたいな完成型勇者だからこそ出来るんだから、無難に刀は1本にしといた方が良いんじゃないか?」

 

香澄「勇者部6箇条、1つ!成せば大抵何とかなる!私、有咲先生みたいになりたいなぁ…。剣の使い方もペアルックみたいで良いし…。」

 

有咲「ペアルック!?し、しかたねーな…だったら、二刀流を習得出来るよう、厳しく教えてやる!」

 

香澄「お願いします!!」

 

こうして2人の特訓が始まった。

 

 

 

 

 

 

有咲「まずはここに木刀が2本。これをもってみろ。」

 

香澄「分かった。おお、木刀って意外と重い!2本両手に持つと、腕が疲れるね。」

 

有咲「慣れないうちは仕方ない。いずれ重みを感じず、自分の手と同じくらい自然に使えるようになるのが目標だな。」

 

香澄「頑張らないと。」

 

有咲「じゃあ次は、私の動きの真似をしてみて。」

 

香澄「分かった!」

 

こうして訓練は続いていった--

 

 

 

 

 

 

夕方--

 

有咲「はい!はあっ!たぁ!」

 

香澄「やあ!とお!てい!」

 

有咲の動きを香澄が真似している。

 

有咲「凄いぞ、香澄!まだ動きはぎこちないけど、ちゃんと剣を振るえてる。」

 

香澄の上達の速さは有咲の目を見張るものがあった。

 

香澄「えへへ、そうかな。ありがとう!」

 

有咲「やっぱり武術をやってたからか、身体の基礎は出来てるんだな。この調子なら、花咲川中の剣道部員……いや、街の剣道場の人しかよりもきっと強くなれるぞ。むしろ私から剣を習うからには、強くなってもらわないと!絶対に香澄を、剣道場の人達よりも強くして見せる!」

 

有咲に気合が入る。

 

香澄「おお、有咲が燃えている!だったら私も頑張るよ!」

 

その直後、香澄のお腹が大きな音をたてた。

 

香澄「あ……運動した分、お腹すいたね…。」

 

有咲「そうだな。そろそろ夕飯にするか。」

 

2人片付け始めた。

 

有咲「ところで、夕飯はどうするんだ?近くにコンビニがあるなら、買ってくるけど。」

 

香澄「今日は自分達で作ろうよ!それがキャンプの醍醐味だよ。」

 

こうして2人は夕飯の準備を開始した。

 

 

 

 

 

 

日も落ちた頃--

 

有咲「香澄ー!全然、火がつかないぞ…。」

 

有咲は火をつけるのに苦労し、香澄に助けを求める。

 

香澄「焚き木の組み方に工夫がいるんだよ。あと、着火剤も使った方が良いよ!」

 

有咲「あと、ご飯はどうやって作るんだ?確か飯盒ってやつ使うんだよな?」

 

香澄「ご飯は鍋で炊けるんだよ。慣れてない人は、鍋で炊く方が作りやすいんだって。まずお米を30分くらい水につけて--」

 

有咲「うあぁ、中身をこぼした!!」

 

香澄「竈にかかってないから大丈夫だよ!お米の予備はあるし。」

 

キャンプにおいては香澄が有咲の先生である。そうしてどうにか夕飯を作り終えたのだった。

 

 

 

 

 

 

香澄「いっただきまーす!」

 

有咲「いただきます。」

 

香澄「うーん、美味しい!」

 

有咲「うん、美味しいな。けど、私は全然役に立ってなかったな…。」

 

有咲からため息がこぼれた。

 

有咲「テントを張るのも、料理を作るのも、香澄に任せっきりにして…凹むな。」

 

香澄「気にする事ないよ。有咲は私に剣術教えてくれてるんだから。有咲はキャンプとかした事なかったんだよね?」

 

有咲「そうだな…小学生までは厳しい家で暮らしてたから、外泊とか外で遊んだりする事もほとんど無かった…。んで、小学校6年の時からは、ずっと施設で勇者の戦い方の訓練ばっかりしてて、やっぱり外で遊ぶ事なんて無かったよ。」

 

香澄「改めて聞くと、有咲って凄い人生を送ってるよね…。」

 

有咲「ホント、変な人生だよな。」

 

香澄「ううん、変っていうか、カッコいいよ!」

 

有咲「え…?」

 

香澄「それだけ有咲が勇者になる為に、全力で打ち込んで来たって事でしょ。努力を積み重ねてきたって事だよ。だから、それはカッコいい事だよ。」

 

香澄は屈託のない笑顔で言った。

 

有咲「香澄……ありがとう。…よし、香澄!ご飯を食べ終わった後は、もう一度、剣の動かし方の訓練するぞ!」

 

香澄「はい!有咲先生!」

 

 

 

 

 

 

有咲「右手に意識が集中して、左手がおろそかになってる!」

 

香澄「分かった!左手も使って…!」

 

有咲「そうだ!いい感じ!」

 

2人の訓練は遅くまで続いた--

 

 

 

 

 

 

合宿2日目--

 

有咲「昨日は剣の使い方をみっちりやったから、今日は足さばきをやるぞ!」

 

有咲は気合十分である。

 

香澄「はい!」

 

有咲「フットワークは重要だぞ!」

 

 

 

 

 

 

有咲「理想は、蝶のように舞い、蜂のように刺す!」

 

香澄「こうかな!?」

 

有咲「考えるな!感じるんだ!!」

 

香澄「分かった!」

 

 

 

 

 

 

有咲「中々こなれて来たな、良い調子だぞ!これなら香澄は剣術に関しては、日本じゃ2番目だな!」

 

香澄「じゃあ、1番目は誰なの!?」

 

有咲「私だ!!」

 

そうして、2日目、3日目が過ぎていき--

 

 

 

 

 

 

有咲「はあっ!」

 

香澄「てやぁ!」

 

有咲「左!がら空きだぞ!!」

 

香澄「うん、分かってるよ!」

 

有咲「フェイント!?」

 

香澄「はあっ!」

 

有咲「甘いぞ、香澄!!」

 

香澄「ああ……木刀、弾き飛ばされちゃった…。」

 

有咲「でも凄いぞ、香澄。3日間の訓練でここまで動けるようになるなんて。」

 

有咲は香澄の上達の速さに驚くばかりだった。

 

香澄「ありがとう、有咲のおかげだよ!」

 

有咲「まったく、香澄の素質には驚くよ…勇者の武器も、手甲よりも剣2本の方が良かったんじゃないか?」

 

香澄「あはは、さすがに実際の戦いになると、有咲の様に上手く剣を使えないと思うよ。」

 

有咲「もっと訓練したら、強くなりそうな気がするけどな。でも、これでひとまず合宿訓練、終了だ!香澄は黒帯だ!」

 

香澄「やったぁ!有咲流剣術の黒帯だね!」

 

有咲「私流…かな?私のはあくまで、施設で習った剣術をアレンジしたものだし。」

 

香澄「そうなの?」

 

有咲「先代の双斧の使い方と、いろんな剣術家の剣術を組み合わせて……まぁ、それだけ混ぜ合わせてアレンジしたら、ほとんど我流か。一応、施設で訓練を受けてた人たちは、似たような剣術を使えるけど、みんなそれぞれ自己流にアレンジしてたしな。」

 

香澄「じゃあやっぱり有咲流だね!」

 

有咲「ま、そうかもな。合宿、結構楽しかった。なんだかあの頃を思い出した。」

 

香澄「あの頃?」

 

有咲「施設にいた時の事だよ。今の香澄みたいに必死になって特訓してたから。あの頃のみんな、今どうしてるのかな…。」

 

そう言いながら、有咲は夕焼け空を見上げた。

 

香澄「どんな人達だったの?有咲の昔の友達って。」

 

有咲「友達……って言うのはちょっと違うな。私はみんなライバル、競争相手だと思ってた。グループを作って遊んでた人たちもいたけど、私はずっとトレーニングばかりしてたから、あんまり他の人達と話さなかったしな。」

 

香澄「有咲って……私が思っていた以上に壮絶な人生を送ってる…。」

 

有咲「実際に施設の中にいた人にとっては、それが普通だから、壮絶って訳じゃないよ。」

 

香澄(そういう台詞が出てくる事が、壮絶だと思うんだけど…。)

 

香澄は声に出して言おうとしたが、心に留めておくことにした。

 

有咲「大変って言ったら大変な生活だったけど、あの頃があったから今の私がいる。勇者になれたし、おまえらにも会えたし…。って、別におまえらに会えたから良かったとか、そんな事じゃないからな!そんな恥ずかしい事を言おうとした訳じゃ--。」

 

香澄「恥ずかしく無いよ!私も有咲に会えて良かったって、本当に思ってるから!有咲が勇者になって、私たちのところに来てくれて。良かったって、絶対にみんな思ってる!」

 

有咲「んなっ……あ、えっと…ありがとう。」

 

有咲は顔を真っ赤にしながら小さな声でお礼をした。

 

有咲「そ、そういえば施設にいた頃、友達はいなかったけど、気が合いそうな奴はいたのを思い出したな。」

 

有咲はテンパりながら話題を変えた。

 

香澄「気が合うけど、友達じゃないの?」

 

有咲「うん、ほとんど話した事無かったから。私もそいつも、友達と遊ぶより訓練するって性格だったし。あの頃はお互いに競争相手だって思ってたから…口喧嘩しただけだったけど、今あったら違うかもな。」

 

 

有咲は思い出す--白鷺千聖の事を。

 

 

最後に会ったのは香澄が天の神からの祟りで苦しんでいる時だった。その頃の有咲は香澄の事で憔悴しきっていて、その事を千聖に咎められたのである。

 

香澄「ねぇ、有咲。またその子に会ってきたらどうかな?」

 

有咲「……え?」

 

香澄の思いがけない提案に有咲は呆気にとられる。

 

香澄「同窓会みたいな感じで、きっと楽しいと思うな。」

 

有咲「………そうだな。会いに行ってみるのも良いかもな。あ、でも私、あいつがどこにいるか知らない…。」

 

香澄「だったら、おたえかさーやに頼んで、大赦の人に調べてもらえば分かるんじゃない?」

 

有咲「その手があったか。」

 

香澄「ねえ、もし会えたら、私たちにも紹介してよ、その人を。」

 

有咲「でもそいつ、もの凄く気難しい性格だぞ。私よりも。」

 

香澄「有咲は気難しくないよ、ちょっと照れ屋なだけ。」

 

有咲「わ、私は照れ屋じゃねぇー!!まぁ、でも香澄なら友達になれるかもな。」

 

有咲(会いに行ってみるか。その時はあの時のお礼もしないとな。でも、千聖と会うのはきっと楽しいと思う。)

 

こうして2人だけの合宿は幕を下ろすのだった--

 

 

 

 

 

 

依頼日当日--

 

香澄「はああ!はっ!やぁ!」

 

有咲「てやあああ!たああ!」

 

剣道場で香澄と有咲の気合の叫びが響き渡る。

 

剣道場の人「剣術が強いのは市ヶ谷さんの方だけって聞いてたのに…。」

 

剣道場の人「あっちの子も強すぎる…!」

 

剣道場の人達は2人の武者にコテンパンに打ちのめされたのだった--

 

 

 

 

 

 

勇者部部室--

 

有咲「っと言う訳で、香澄と一緒にコテンパンに叩きのめしてやったぞ。」

 

香澄「私と有咲の大勝利!!」

 

2人はガッツポーズをとる。

 

りみ「さすがだね、香澄ちゃんに有咲ちゃん。」

 

ゆり「というか、道場やぶりに行った訳じゃないんだから、叩きのめす必要はなかったんだけどな……。」

 

ゆりは苦笑いをした。

 

有咲「…なぁ、おたえ。ちょっと良いか?」

 

たえ「ん?どうしたの?」

 

有咲「ちょっと、どこにいるのか調べて欲しい人がいるんだよ。白鷺千聖って言うんだけど。」

 

 

勇者部の日常は続いていく--

 

 

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