戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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第4章の始まりです。

始まりの勇者である湊友希那がどのように誕生したのか、その物語をお楽しみください。

原作のアニメ化に期待が高まりますね。





第4章〜湊友希那の章〜
運命の変わった日


 

 

西暦2018年7月30日--

 

満月が光り輝く夜空の下で、薄紫色の髪の少女が城から街を見下ろしていた。そこへもう一人、茶髪の少女が近づいてくる。

 

?「やっぱりここにいた。友希那は何か考え事をする時にはいっつもここに来るよね。」

 

茶髪の少女、今井リサが話しかける。

 

友希那「ここに来ると頭の中がすっきりして考え事が捗るのよ。」

 

薄紫の髪の少女、湊友希那がリサに答える。

 

リサ「で、今日はどんな事考えてたの?」

 

友希那「私が初めて勇者になった時の事よ。」

 

リサ「ちょうど3年前の今日だったね。」

 

友希那「そうね。あの日から、私達の運命は変わっていった…。」

 

 

 

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--

 

 

西暦2015年7月30日--

 

香川県に住む小学5年生の友希那とリサは修学旅行で島根県に訪れていた。普通の小学生として観光を楽しんでいた2人であったが、その日の日中、突如として全国各地で大規模な地震が発生--

 

2人は地域の避難所である神社へと避難したのだった。

 

友希那「凄い地震だったわね…。怪我は無い?リサ。」

 

リサ「私は大丈夫だよ。友希那は?」

 

友希那「私も大丈夫よ。」

 

リサ「にしても、日本各地で同じような地震が起きたなんて…これからどうなっちゃうのかな?」

 

リサはこれからどうなるのかという不安に押しつぶされそうになっていた。

 

 

 

 

 

 

夜になり、友希那は学級委員という責任感からか眠らずに過ごしており、リサは友希那が心配で傍で付き添っていた。突如、外から大勢の悲鳴が聞こえる--

 

友希那「っ!?いったい何なの?」

 

 

友希那が神社から外に出るとそこには--

 

 

 

地獄が広がっていた--

 

 

 

友希那が目にしたものは、白くて大きな異形の生物が避難している人々を次々と食い殺している光景だった。

 

友希那「な、何なの!?この…惨劇は。」

 

リサ「友希那ー、どうしたの?何が…。」

 

友希那「外に出ないで!!」

 

友希那がリサに叫ぶ。だが、少し遅くリサもその惨劇を目の当たりにしてしまう。

 

リサ「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

友希那はリサに駆け寄る。

 

友希那「リサはここにいて。」

 

リサ「でも、友希那は?」

 

友希那「私は出来るだけ、クラスのみんなを助けに行く。」

 

リサ「っ!?そんなの危ないよ!!何かあったらどうするの!?」

 

友希那「助けられそうな人がいるのに、私はそれを黙って見過ごす事は出来ない!!」

 

そうリサに言うと、友希那は外に飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

友希那は必死でクラスメイトを探し走り回るが、周りには食われてしまった友達や避難していた他の人の無残な死体が転がっているだけだった--

 

友希那「はあ、はあ、はあ……もう、誰も残ってないの…?」

 

だが、しばらく走った先にクラスメイトの1人が蹲っているのを発見する。

 

クラスメイト「あっ、友希那ちゃん!」

 

友希那「良かった、まだ無事だった…。大丈……」

 

 

次の瞬間、クラスメイトの後ろに空から異形の怪物が降ってきた--

 

 

クラスメイト「ひっ…助け………。」

 

助けの言葉を叫ぶ間もなく、そのクラスメイトは怪物に食われてしまう--

 

 

 

友希那「あ……あぁ………。」

 

友希那は膝から崩れ落ちる。

 

友希那「かえ……せ。」

 

友希那は無意識に傍にあった瓦礫を掴み、

 

友希那「私のクラスメイトを返せ!!」

 

クラスメイトを殺された怒りに身を任せ怪物へ応戦する。が、当然敵うはずもなく友希那は吹っ飛ばされてしまう。

 

友希那「うわっ………!」

 

 

 

 

 

 

一方その頃、中々戻らない友希那を心配したリサは、

 

リサ「怖いけど…行くしかないか。」

 

友希那を探しに外へ出て行った。

 

 

 

 

 

 

リサが友希那を探しながら歩いていると、遠くの方で友希那の姿を見つける。リサは友希那を見つけて安堵したが、その後ろから怪物が姿を現し友希那に襲い掛かってきた。

 

リサ「友希那!」

 

リサは叫ぶ。

 

友希那「リサ!何でここに…。」

 

だが、一瞬リサに気を取られ、友希那は怪物の体当たりをモロに受けてしまう。

 

友希那「うっ………っ!」

 

リサの元に吹っ飛ばされる友希那。リサがそこへ駆け寄った。

 

友希那「何で外に出てきたの…?」

 

リサ「友希那が心配で…。そんな事より、早く逃げようよ!傷だらけじゃん!」

 

友希那「リサだけでも逃げて…。アイツは私のクラスメイトの命を奪った!」

 

友希那は怒りに捕らわれリサの言葉に聞き耳を持たない。

 

リサ「友希那!!あっ……。」

 

その時、リサが何者かの声を聴く。

 

リサ「声が……聞こえる………。」

 

その姿を見た友希那は少しだけ落ち着きリサを見る。

 

友希那「声って、私には何も聞こえないけど…。」

 

そしてリサが奥にあった祠を指さした。

 

リサ「あそこ……あそこにあの怪物と戦える武器があるって…。」

 

友希那「武器!?分かった、行きましょう。」

 

友希那はリサを引っ張り、怪物の攻撃を躱しながら祠へとたどり着く。祠を開けた友希那が見つけたものは、錆びた日本刀だった。

 

友希那「確かに武器はあった。けど、こんなに錆びてたら何も切れないわ。」

 

リサ「大丈夫…その日本刀の名は”生太刀(いくたち)”。地の神である大国主神の力が宿っている。」

 

リサは何かに取り憑かれたかの様に喋り続ける。

 

リサ「あの怪物は”バーテックス”…生物の頂点…天の神の僕…。あなたにならその刀を使いこなせるはず……。信じて…自分の力を…。守りたい想いを………。」

 

そうリサが言うと、突然意識を失い倒れてしまう。

 

友希那「リサ……。」

 

友希那はリサを瓦礫の陰に移動させ、錆びた生大刀を掴んだ。

 

友希那「この世界に、もし神様がいるのなら…私に……私に力を貸して!世界を……みんなを………私の友人を守れる力を!!」

 

 

次の瞬間、錆びた生大刀が青白く光り出し桔梗の刻印が浮かび上がり--

 

 

錆びた生大刀が輝きを取り戻し--

 

 

友希那の服が青を基調とした物へと変化する--

 

 

その姿は、まるで勇者--

 

 

友希那「力が……溢れてくる………。」

 

ここに世界で最初の勇者、湊友希那が誕生した--

 

 

 


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