戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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香澄と明日香に血の繋がりはありません。


ここで出てくる"大社"は後の"大赦"の前身となります。





一騎当千の切り札

 

 

友希那達5人が戦っている頃、リサは丸亀城で5人の無事を祈っていた。

 

リサ(全員無事に帰ってきてね……。)

 

そこへ、とある人物がやって来る。

 

 

 

 

 

 

樹海、中央サイド--

 

友希那は1人"進化型"のバーテックスと相対していた。

 

友希那「ふっ!はっ!」

 

生大刀で切りつけるが"進化型"も頭上の角で友希那の剣を捌いていく。

 

友希那「くっ、"進化型"って名前は伊達じゃないのね…。」

 

友希那は攻めあぐねていたのだった。

 

友希那「"アレ"を使うしかないようね…。」

 

友希那はそう言うとスマホを握り締める。

 

 

 

 

 

 

右サイド--

 

紗夜は大葉刈を使って"進化型"の角と鍔迫り合い、香澄はその隙を付いて胴体に正拳をお見舞いした。

 

高嶋「勇者パーーンチ!!」

 

ところが、

 

高嶋「……か、硬ーーい!!」

 

表面が固すぎて逆に香澄がダメージを負ってしまったのだった。

 

紗夜「大丈夫ですか、高嶋さん!」

 

高嶋「何とかー。」

 

紗夜「よくも、高嶋さんに怪我を…。許さない!!」

 

紗夜が攻撃の速度を上げるが、"進化型"はびくともせずに、紗夜の動きが止まった一瞬の隙を付いて紗夜の腹部を角で貫く--

 

高嶋「紗夜ちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

左サイド--

 

あこが"進化型"の角での攻撃を旋刃盤で受け止めながら、燐子が遠距離から金弓箭で攻撃していた。

 

燐子「ダメ…硬すぎて攻撃が通らない…。」

 

あこ「りんりん、頑張って!あこが攻撃を防いでいるうちに何かアイデアを!!って、うわ!?」

 

"進化型"の猛攻にあこがよろけてしまう。

 

燐子「あ、あこちゃん!?」

 

燐子の心臓の鼓動が早くなり、汗が滲んでくる。

 

燐子(どうする…。どうしたら"進化型"に攻撃が通る…?考えて…考えて…。)

 

燐子はそう自分に言い聞かせるが、それが仇となり余計に考えがまとまらない。

 

燐子(どうすれば…。)

 

あこ「りんりん!!」

 

燐子「っ!?」

 

あこの方を向く燐子。

 

あこ(大丈夫、りんりんなら出来る!自分を信じて!)

 

あこはそんな事を思いながら燐子に目で訴えかけたのだった。

 

燐子(あこちゃんが、私を信頼してくれてる…。あこちゃんの為に…私が…。)

 

燐子は落ち着きを取り戻し、再考する。

 

燐子(………これなら…。)

 

燐子「あこちゃん、聞いて!」

 

あこ「なーにー!!」

 

燐子「"アレ"を使うよ!!」

 

あこ「分かった、"アレ"だね!」

 

そう言うと2人はスマホへと手を伸ばした--

 

 

 

 

 

 

中央サイド--

 

友希那はスマホを手に取り、

 

友希那「行くわよ、"義経"!!」

 

するとスマホが光り、光が友希那と1つになる--

 

 

次の瞬間--

 

 

"進化型"の角がバラバラに切り刻まれたのだ。友希那が目にも止まらぬ速さで切りつけたからである。

 

友希那「どう、バーテックス。これが私たちの切り札、"精霊"の力よ。」

 

そう言い放つ友希那の勇者装束はさながら牛若丸の様な衣装に変わっていた。

 

 

"精霊"--

 

 

勇者の切り札であり、精霊と一体となる事でその力を何倍にも引き上げる事が出来る。そして、精霊ごとに固有の能力が備わっている。

 

友希那の精霊は"源義経"。一体となる事で、剣撃とスピードが上昇するのである。持続時間に際限は無いが、所有者の体力や精神状態によって持続時間は変化する。

 

角を斬られてしまった"進化型"は攻撃方法を突進に切り替えてきた。

 

友希那「角を無くしたお前など、牙をもがれた猛獣も同然よ。」

 

友希那は生大刀を構え、

 

友希那「八艘飛び!!」

 

一瞬友希那が消え、"進化型"を強固な表皮ごと一閃。真っ二つになった"進化型"は消滅したのだった。消滅したのを確認した友希那は精霊を解く。

 

友希那「ふぅ…。こんなところで止まってはいられないの…。」

 

 

 

 

 

 

右サイド--

 

高嶋「紗夜ちゃん!」

 

"進化型"の角に突かれてしまった紗夜。だが次の瞬間、突かれた紗夜が消えたのだ。

 

高嶋「紗夜ちゃんが消えた…?」

 

紗夜「私はやられてませんよ、高嶋さん。」

 

高嶋「!?」

 

香澄が後ろを振り向くとそこには無傷の紗夜が--

 

 

7人いたのだ。勇者装束も変化し、さながら死神にも見える衣装である。

 

高嶋「ん!?」

 

香澄は自分の見間違いだと思い目を擦る。だが、変わらず紗夜はそこに7人いる。

 

高嶋「さ、紗夜ちゃんが…7人!?」

 

紗夜「これが私の精霊"七人御先"の力です。」

 

紗夜はやられる瞬間に精霊を憑依させ逃れたのだった。

 

紗夜「"七人御先"を憑依させると私は7人に分身します。しかし、その全てが私であり、私ではありません。」

 

高嶋「!?!?!?」

 

香澄の頭がこんがらがる。

 

紗夜「つまり、7人のうち1人がやられても本体の私には傷1つ付きません。そしてすぐもう1人私が現れます。この状態になると私はほとんど不死身です。7人全員が一度にやられない限りは。」

 

7人それぞれが氷川紗夜であり、紗夜ではない。7人のうち誰か1人でも欠けたら、すぐに別の紗夜が補填される。7人をいっぺんに倒さない限り紗夜は絶対に死ぬ事はないのである。

 

高嶋「凄いよ紗夜ちゃん!無敵だね!!」

 

紗夜「別に無敵という訳ではありません。力はそれ程上がってはいないので。」

 

高嶋「だったらパワーは任せて!」

 

そう言うと香澄もスマホを手に取り、

 

高嶋「行くよ、"一目連"。」

 

スマホが光り、香澄の勇者装束も変化する。手甲が両手に装備され、左目が補助パーツで覆われる。

 

紗夜「私が動きを止めている間に止めを!」

 

高嶋「分かった、行っくよー!高速勇者パーーンチ!!」

 

香澄は目にも止まらぬ速さで"進化型"に突進し勇者パンチを食らわせる。"一目連"は対象者の速度を大幅に上げるのである。速度だけで言うなら、友希那の"義経"より速く、香澄はその速さをそのままパンチに乗せている。速度が早ければ早いほどパンチは重くなり威力も上がる。パンチを食らった"進化型"は衝撃に耐えられずに粉々になってしまった。

 

高嶋「ふぃー。やったね紗夜ちゃん。」

 

紗夜「そうですね。」

 

2人は精霊を解きハイタッチした。

 

 

 

 

 

 

左サイド--

 

燐子「あこちゃん!"アレ"を使うよ…!」

 

あこ「任せて、りんりん!」

 

2人はスマホを手に取り精霊を憑依させる。

 

あこ「頼んだよ、"輪入道"。」

 

燐子「お願い、"雪女郎"。」

 

あこの勇者装束に変化はないが、旋刃盤が憑依前より大きくなっているのが特徴である。対して、燐子は"雪女郎"の名の如く雪女の様な白い着物の装束に変化した。

 

燐子「まずはあこちゃん、お願い…。」

 

あこ「オッケー!」

 

そう言うと、あこは旋刃盤に炎を纏わせ"進化型"に向かって投げつけた。だが、"進化型"を狙った訳ではなく、旋刃盤は"進化型"のまわりをぐるぐると回りだし炎の渦をつくり閉じ込めたのである。

 

燐子「いい感じだよ…。次は私が…。」

 

あこは旋刃盤を手元に戻すと、今度は燐子が"雪女郎"の力で吹雪を巻き起こした。

 

燐子(そろそろかな…。)

 

燐子「あこちゃん、もう一度旋刃盤を投げて…。」

 

あこ「分かった!」

 

再びあこは旋刃盤に炎を纏わせ炎の渦を作り"進化型"を閉じ込める。

 

燐子「もう大丈夫だよ…。」

 

そして、燐子がまた吹雪を巻き起こした。

 

あこ「りんりん、こんな事でアイツ倒せるの?」

 

燐子「大丈夫だよ…。まかせて…もうそろそろの筈…。」

 

次の瞬間、"進化型"の身体にヒビが入ったのだ。

 

あこ「えっ!?何で!?」

 

あこは驚き、燐子が説明した。

 

燐子「あの"進化型"は私達の攻撃が通らない程身体が固かった…。だけど、あこちゃんが熱して、私が冷ませば…身体が急激な温度の変化に耐えきれなくなって、脆くなるんだよ…。」

 

あこ「りんりん頭良いー!!」

 

燐子「今なら、私達の攻撃も通る筈だよ…。」

 

あこ「よし、一緒に止めを刺そう!!」

 

あこは旋刃盤を、燐子は金弓箭を構える。

 

燐子「これでも…。」

 

あこ「くらえーー!!」

 

燐子は冷気を込めた矢を、あこは炎を纏った旋刃盤を"進化型"目掛けて放ち、それぞれが"進化型"に命中し、"進化型"は光になって消えていった。

 

あこ「やったね、りんりん!」

 

燐子「私達の…勝ちだよ…。」

 

2人は精霊を解いて抱き合った。

 

 

 

それぞれが3体の"進化型"を倒し、樹海化が解除されていく。

 

 

 

 

 

 

丸亀城--

 

天守閣に勇者5人が転送される。

 

友希那「どうやら片付いたようね。」

 

高嶋「もうね、紗夜ちゃんの精霊がとんでもなく強かったんだよ!」

 

あこ「そーなの、香澄!?あこ、気になるー。紗夜さん、教えて下さい!」

 

紗夜「また今度です。」

 

そこへリサが駆けつけてきた。

 

リサ「良かった!みんな無事だったんだね。初めての戦闘だったから戻ってくるまでハラハラしてたよ。」

 

友希那「みんなそれほど大した怪我はしていないわ。」

 

リサ「でも、一応みんな念の為に"大社"で検診してもらってね。"精霊"も使ったんだし。」

 

紗夜「そうですね。初めて"精霊"を使ったのですから診てもらいましょうか。」

 

"大社"とは神樹を奉祭する機関で、バーテックス侵攻以降に表舞台へ出てきた。政府から対バーテックス戦の全権限を委任されており、勇者システムの開発、勇者たちへの教育・戦闘訓練・健康管理を行っていて、また勇者の宣伝公報などをマスメディアを通して行ってもいる場所である。5人が大社へ行こうとした時、もう1人巫女の姿をした少女がやって来た。

 

?「あこ、燐子ちゃん。無事に帰って来たんだね。」

 

あこ「明日香!」

 

明日香はあこ達が心配になり丸亀城へやって来たのだった。

 

明日香「怪我とかしてない?」

 

あこ「大丈夫だよ。りんりんのお陰で勝てたから。」

 

明日香「本当?さすが燐子ちゃん。」

 

燐子「わ、私はそんな大した事は…。あこちゃんが粘ってくれたから、勝てたんだよ…。」

 

明日香「そっか。なんか2人を見てると、本当の姉妹なんじゃないかって思うよ。」

 

あこ「本当に!?それなら、あこがお姉ちゃんで、りんりんが妹かな。りんりんはあこが守るからね!」

 

燐子「ふふっ…。頼りにしてるよ、あこちゃん…。」

 

明日香「皆さん、大社に行かれるんですよね。私が案内しますね。」

 

5人は明日香に連れられ大社へと向かう。こうして、初めてのバーテックスとの戦いは、勇者側の大勝で幕を閉じたのだった。

 

 


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