紗夜の過去が明らかに。
日菜はこの章では出てきません、悪しからずご覧ください。
勇者達の活躍は大社が報道や紙面で大々的に宣伝している。市民にとって勇者は救世主も同然なのである。
燐子「凄い騒ぎになってるね…。」
あこ「新聞、雑誌一面勇者。もう勇者フィーバーだね。」
あこと燐子は新聞、雑誌を見ながら驚いていた。
あこ「これなんか友希那さんのインタビューまで載ってますよ。」
あこは友希那にインタビュー記事を見せた。
友希那「それも勇者の仕事のうちよ。」
軽くあしらう。そこへリサがやって来た。
リサ「香澄が心配?」
友希那「えぇ。精霊を身体に宿す事は身体への負担が大きいから、少しね。」
あこ「確かに。あこたちはまだ一回しか使ってないけど、香澄と紗夜さんは二回使ってるからね…。」
リサ「でも検査入院なんでしょ。大丈夫だよ。」
リサが笑顔で友希那に答える。
あこ「そう言えば、紗夜さんがいないけど、紗夜さんも検査でしたっけ?」
あこが友希那に質問する。
友希那「紗夜は特別休暇で、高知の実家に帰省しているわ……。母親の病状が悪化したそうよ。」
高知、氷川宅--
紗夜「……。」
高知の人里離れた小さな古い家、そこにポツンと建っているのが紗夜の実家である。
紗夜「…ただいま。」
紗夜が家に入ると寝室には布団で寝ていた母親の姿が。
天空恐怖症候群--
3年前の"7.30天災"以来、空から突如現れたバーテックスへの恐怖によって多くの人々がこの精神の病に侵されてしまった。その症状は4段階あり、最初は空を見る事が出来ない為、大半の人間が建物の中に籠りっきりになる等軽いものだが、ステージ4になると、発狂・自我崩壊に至ってしまう。紗夜の母親はステージ3の段階であった。
紗夜「とうとうこんな段階まで悪化してしまったのね…。」
その時、横の襖が開き、
紗夜父「帰ってたのか、紗夜。久しぶりだね。」
紗夜の父親が出てきた。
紗夜「お父さんが一度戻って来いって連絡したんでしょう。」
紗夜父「まぁ…それはそうだが。母さんが専門の病院に移る前にと思ってね。」
紗夜「…何よ今更………。」
紗夜は部屋の辺りを見回す。
紗夜「………。」
部屋は全く片付いておらず、食べたまんまの皿や紙コップ、ゴミ袋がそのまま部屋や廊下に置かれている。
紗夜「はぁ…掃除くらいちゃんとして。臭いが酷いわよ。」
紗夜父「あっ、あぁ。母さんの看病で忙してくてね…中々時間が作れないんだ…。」
紗夜(何も変わってない…。)
紗夜はそんな父親の姿を見ながら、過去を思い出していた--
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ーー
ー
紗夜(私の父親は昔から家の事は何一つしようとはせず、自分優先で責任感の欠けた人だった…。そんな父親に愛想を尽かし、私の母親は家庭を捨て、男と不倫した。そして天空恐怖症候群になるまでこの家には帰って来なかった…。)
紗夜(それでもずっと私を押し付け合い離婚はせず、二人は私の存在を呪っていた…。だから周りの大人達も--)
村人「あんな親じゃ、あの子もろくな大人にならないわよ…。」
紗夜(学校の同級生には--)
クラスメイト「あばずれー!淫乱女ー!」
紗夜(なんて言われたりイジメられたりもした。私の身体にはその時ついた一生消えない大きな傷が残っている…。誰からも疎まれ、蔑まれる存在…だから私は自ら自分を世界から切り離した。)
紗夜(何も感じない…何も聞こえない…何も痛くない…。無価値な存在だから傷付けられても仕方ないと自分に言い聞かせて今まで生きてきた。)
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紗夜はその場から離れようとする。
紗夜父「何処へ行くんだ、紗夜?」
紗夜「…ちょっと散歩に行くだけよ。」
紗夜(帰ってくるんじゃなかった…実家も故郷も、閉鎖的で息が詰まる。)
紗夜は出かけようと玄関を開けた時、
紗夜「えっ!?この人集りは何…!?」
勇者が帰ってきたと何処からか聞きつけた村の人達が、紗夜の実家に押し寄せていたのだった。
村人「おおっ、出てきたぞ。」
村人「本当に戻ってきたんだ。」
野次馬が話す中、
元クラスメイト「紗夜ちゃん。私達友達だよね?恨んでないよね?」
紗夜「………。」
イジメていた同級生の人達や--
お店屋「勇者様。食事する時は、是非うちの店へ寄ってくれよ。」
紗夜「………。」
食べ物を売ってくれなかった店の人--
村人「勇者様はこの村の誇りよ。」
紗夜「そうか…これは……。」
陰口を叩いた近所の人--
今やこの村の全ての人達は手のひらを返したように紗夜を崇めていたのだった。そんな人々に紗夜は問いかける。
紗夜「皆さん…。私は価値のある存在ですか……?」
人々は一斉に答える。
村人「もちろんよ。だって、あなたは………"勇者"ですから。」
丸亀城へ帰る中、紗夜は考えていた。
紗夜(私の存在意義…。)
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ーー
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帰る間際、実家--
紗夜「ねぇ、お母さん。私が勇者になって…お母さんは嬉しい?」
散歩から帰ってきた時に目を覚ましていた母親に紗夜は尋ねた。
紗夜母「…ええ、あなたを生んで良かったわ……。愛してる…。」
そう言うと母親は紗夜の頬に手を置き、再び眠りについた。
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ーー
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紗夜(私は勇者だからこそ価値がある。賞賛されて愛される。もっと頑張れば、もっとみんなが好きになってくれる…無価値な自分には絶対に戻らない!!その為なら…。私はどんな事だってやり抜いてみせる!!)
そんな事を思いながら帰路に着いた。
丸亀城--
入り口では、着いた紗夜を待っていた人物がいた。
?「さーよーちゃーん!!お帰りー!!」
紗夜「高嶋さん!」
香澄だった。
紗夜「高嶋さん、検査入院だったはずじゃ…病院は!?」
高嶋「えへへー。抜け出してきちゃった。みんな頑張ってるのに休んでる訳にはいかないよ!!」
そう言うと、紗夜が笑った。
高嶋「どうしたの紗夜ちゃん。お家で良い事あった?」
紗夜「そうですね。さて、行きましょうか。」
その時、香澄のスマホに着信が入る。
高嶋「はい…。でも、それは…。戻ります……。」
紗夜「病院からですか?」
高嶋「抜け出したのバレちゃった……。」
紗夜「戻ってください。高嶋さんの笑顔が見れて良かったです。」
高嶋「私も!紗夜ちゃんの笑顔が見れただけで抜け出してきた甲斐があったよ。」
紗夜「それは…良かったです。」
紗夜の頬が赤くなる。
高嶋「検査が終わったら、一緒に特訓しようね。」
そう言うと香澄は病院へ戻っていった。
紗夜「ありがとう、高嶋さん。私は…頑張ってもっと強くなります。それが"勇者"ですから。」
大社が運営する旅館、温泉--
友希那達6人は休養を兼ねて大社が運営している温泉宿へ疲れを癒しにやって来ていたのだった。
友希那「ふぅ、温泉は身に染みるわね。」
リサ「なんだかお爺ちゃんみたいだよ、友希那。」
友希那「折角の休養なのだから満喫しないと失礼だわ。」
そこへ、
あこ「あーー!!やっぱり先に入ってた!一番風呂狙ってたのになー。」
燐子「お風呂は、走ると危ないよ…。」
紗夜「まだまだ子供ですね、宇田川さんは。」
高嶋「良いじゃん。温泉は騒ぎたくなるものだよ。」
他の4人も入ってきた。
高嶋「そう言えば、みんな病院の検査でおかしなところは無かった?」
香澄がみんなに聞いてきた。
友希那「私は問題無しね。香澄こそ大丈夫なの?」
高嶋「"精霊"使用の疲労が残ってるだけで後は健康そのものだって。」
あこ「あこもどこも悪くは無いよ。」
燐子「私も、昔よりは体が丈夫になったくらいです…。」
高嶋「紗夜ちゃんは?」
紗夜「私もどこも問題はありません。敵を倒さないといけないから…病気も怪我もしてられないわ。」
そんな事を言う紗夜を見ながら友希那は思った。
友希那(紗夜は少し変わった気がする…。実家に戻った頃からだろうか、戦闘や訓練でも鬼気迫る勢いで臨んでいる…。だけど、勇者の自覚が1番強いのは、紗夜かもしれないわね…。)
入浴後、6人は居室でトランプで勝負をしていた。スピード3回勝負。トーナメント戦で行い友希那と紗夜の決勝が始まっていた。
友希那「現在1勝1敗。次で決めるわよ、紗夜。」
紗夜「こちらも負ける訳にはいきません。」
友希那・紗夜「「勝負!!」」
両者互角にゲームは進んでいく。
友希那(最初こそ慣れないゲームだったけど、やっとコツを掴んできたわ。)
僅かだが、友希那が押していた。
紗夜「絶対に…あなたには負けません……。あなたには…。」
紗夜は焦りからか表情が曇る。それを見ていたリサは--
ぬいぐるみ「にゃあー。」
猫の声が出るぬいぐるみで友希那の注意を引いたのである。
友希那(はっ、にゃーんちゃん!)
友希那の目線がぬいぐるみへ移る--
紗夜「今です!」
紗夜はその隙を見逃さず、トランプを全て出し終え勝利した。
高嶋「優勝は、紗夜ちゃーーん!!」
香澄が紗夜の右手を上げ優勝宣言する。
リサ「力抜いて。ゲームなんだから楽しまないとね。」
リサが友希那に話しかけ、廊下に出て行く。
友希那「反則よ…リサ…。」
友希那は顔が赤くなり、リサを追いかけた。
少し歩いた所で、急にリサが立ち止まる。
友希那「リサ?」
リサ「友希那、前に聞いてきたよね。"リーダー"って何かって。」
友希那「ええ。」
リサ「何事にも真面目に真剣に取り組むのは友希那の良い所だよ。でも………友希那の周りの人の事も、もっとよく見てあげて。」
友希那「………。」
リサ「さっきだって…。」
友希那「さっき?」
リサ「ううん。これは自分で気付かないと意味無い事だから…。さっ、みんなの所に戻ろ。」
そう言うと、リサは踵を返し戻って行った。
友希那「よく見る…。どう言う事なの…?」
友希那にはそれが何を意味するかまだ分かっていなかった。
--勇者御記--
今後、
特定の◾️が◾️◾️される可能性が出てきたとのこと。
ただただ、悲しいです。
2018年9月 白金燐子 記
皆を鼓舞する為とはいえ、
連日流れる--の情報を見ていると、
背筋がゾクリとする。
2018年10月 湊友希那 記