戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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この章の裏主人公は紗夜です。


紗夜の心情がこの物語をかき乱していくでしょう。




壁の外へ

 

 

あこ「壁の外の調査?」

 

リサ「そう。バーテックスの襲撃もしばらくは無いって神託も来たから、大社がこれを機に壁の外に生存者がいないかを調べて欲しいんだって。」

 

燐子「そうですね…。北と南に生存者がいる可能性があると、前に神託がありましたし…。」

 

友希那「諏訪も気になるわ…。」

 

大社は先日の総攻撃後の隙を利用して、勇者達に懸案だった四国外の地域の調査を指示してきたのだった。

 

高嶋「何だかキャンプみたいだね、紗夜ちゃん!」

 

紗夜「高嶋さん、これは遊びじゃ…。」

 

紗夜が香澄の方を見ると、香澄は目をキラキラさせながら紗夜を見ている。

 

紗夜「そ、そうね…。高嶋さんが嬉しいなら良かった。」

 

あこ「リサ姉、どの道を通ってどっちに行くの?」

 

リサ「それなんだけど…。」

 

リサは地図を広げ5人に説明する。四国から瀬戸大橋を渡って北を目指すルート。各地で生存者や地質・水質を調査しながら、敵襲を想定して徒歩で北の大地を目指す強行ルートだった。

 

高嶋「うひゃー。これは長旅になりそうだね。」

 

友希那「勇者になってしまえば、そんなに苦ではないわ。」

 

リサ「私も通信要員として同行するからね。」

 

燐子「今井さん、危なくないですか…?」

 

リサ「心配ないよ。いざとなったら友希那が守ってくれるから。ねっ!」

 

友希那「ええ。誰一人欠ける事なくここにまた戻ってくるわよ。」

 

友希那以外「「「おーっ!!」」」

 

そして一同は結界の外へと足を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

兵庫県、六甲山--

 

友希那「よし、今日はここで休みましょう。」

 

友希那は抱えていたリサを下ろし、みんなに伝える。

 

あこ「あこ、色々持ってきたんだ。テントとかね。」

 

高嶋「さっすがあこちゃん!!」

 

あこ「いやー照れるよー。香澄もっと褒めて。」

 

高嶋「日本一っ!!」

 

紗夜「そんな事より灯りを早く確保しましょう。私は薪になる物を探してきます。」

 

そう言うと紗夜は森へ入っていった。

 

あこ「あこと香澄はテントを張るよ。」

 

高嶋「頑張るよ、あこちゃん!」

 

2人はテントの準備に取り掛かる。

 

燐子「私は、水を探してきますね…。」

 

友希那「私も行くわ。リサはここで待ってて。その方が安全だから。」

 

リサ「分かった。じゃあ私はここでご飯の準備して待ってるよ。」

 

燐子「お願いします…。」

 

友希那と燐子は川を探しに向かった。

 

 

 

 

 

 

川を探している2人--

 

燐子「今井さんを守ってあげてなくて大丈夫だったんですか…。」

 

友希那「心配無いわ。香澄とあこもいるし、リサもね。それに…。」

 

燐子「それに…?」

 

友希那「燐子にはお礼を言わないとって思っていたから。先日の戦いはあなたのお陰で勝つ事が出来たから。」

 

燐子「そんな事無いです…。皆さんの力があったからこの作戦が成功したんです…。」

 

友希那「燐子の指揮があってこそよ。もっと自分に自信を持っても良いんじゃないかしら?」

 

燐子「そう…ですね…。」

 

 

 

 

 

 

2人は川を見つけ、水を汲んだ。

 

友希那「これくらいで充分かしらね。」

 

燐子「そうですね…。えっと…。」

 

友希那「どうしたの、燐子?」

 

燐子「私は、今までずっと自分に自信が持てなかったんです…。3年前のあの日だって、あこちゃんに出会ってなかったら私はどうなってたか…。」

 

友希那「あなた達を見ていると本当の姉妹の様に見えるわね。」

 

燐子「あこちゃんは私のヒーローですから…。」

 

友希那「そう…でも、忘れないで。」

 

燐子「え?」

 

友希那「あなたも私達のヒーローなんですから。」

 

友希那が燐子に微笑んだ。

 

友希那「戦う事だけが勇者じゃない。作戦を立てて、しっかりとした指示を出す。これも立派な勇者って言えるんじゃない?」

 

燐子「……はいっ!!」

 

友希那「そろそろみんなの所に着く頃ね。」

 

燐子「あっ…灯りが見えます…。テントも張り終わってますね…。」

 

友希那「急ぎましょう。みんなお腹を空かせて待ってるわね。」

 

燐子「はい…。」

 

あこ「ん!?おーい、りんりーん!!」

 

あこが遠くから戻ってくる燐子に手を振った。

 

燐子「あこちゃん、おまたせ…。」

 

あこ「お腹ぺこぺこだよー。」

 

紗夜「高嶋さん、お疲れ様。」

 

高嶋「ううん。紗夜ちゃんも大変だったでしょ。」

 

紗夜「これくらいなんて事無いですよ。」

 

リサ「よしっ、全員揃った事だしリサさん自慢の料理を食べましょうかね。」

 

あこ「わーーい!!」

 

友希那「では、」

 

全員「「「いただきます!」」」

 

 

 

 

 

 

高嶋「あ〜美味しかった!外で食べるのは格別だね!」

 

友希那「そうね。それにしてもリサ、この料理用具はどこにあったの?」

 

リサ「これ?実は紗夜が見つけてきたんだよね。」

 

友希那「紗夜が?」

 

紗夜「ええ。枝を探してる途中でキャンプ場を見つけまして。そこにあったんです。生存者はいませんでしたが…。」

 

友希那「……。」

 

沈黙が訪れる。

 

高嶋「大丈夫!必ず生存者は見つかる!信じようよ!!」

 

友希那「香澄の言う通りね。明日は神戸を調査しましょう。」

 

燐子「神戸は、大きな都市だから期待が持てるかも…。」

 

リサ「そうと決まれば早めに寝ようか。」

 

あこ「そうだね。あこもう秒で寝れるよ。」

 

こうして夜間は夜襲に備え交代で見張りを立て休んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

神戸--

 

友希那「ここは広いから二手に分かれましょう。」

 

友希那、紗夜、リサと香澄、あこ、燐子の二手に分かれて調査を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

友希那組サイド--

 

友希那達は1時間程歩きまわったが、街は無残な廃墟と化し生存者の影すら見えなかった。

 

紗夜「ここも…全滅ですか……。」

 

友希那「まだ決まった訳じゃ無いわ。」

 

紗夜「気休めにしか聞こえません。この状況で人が暮らせる訳…。」

 

その時、石が落ちる音が微かに紗夜の耳に入った。

 

紗夜「!?」

 

紗夜は血相を変えて音のする方へ走り出す--

 

友希那「紗夜っ!?」

 

慌てて友希那も紗夜を追いかける。

 

友希那「紗夜、何か見つけ……!?」

 

友希那が目にした光景は--

 

 

紗夜「お前…っ!!達が…っ!!」

 

紗夜が大葉刈で幼生バーテックスの死骸を屠っている姿であった。

 

友希那「紗夜…そいつらはもう…。」

 

 

 

 

 

 

しばらくの後、紗夜が落ち着きを取り戻し、

 

紗夜「…行きましょう。」

 

歩き出す。

 

紗夜「…生きている人を探すのでしょう……?」

 

友希那「そうね…。」

 

しかし、神戸では生存者を発見する事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜--

 

リサ「友希那。」

 

落ち込んでいる友希那にリサが声をかける。

 

リサ「しんみりしすぎだよ。まだ1日、無事な地域もきっとあるって。」

 

友希那「ええ。」

 

高嶋「はいはーい。暗い気分は水浴びで流そうよ!!」

 

燐子「寒くないですか…。」

 

あこ「あこも賛成!廃墟の調査で身体が埃っぽいし。」

 

こうして6人は川へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

香澄「流石に冷たいね。」

 

あこ「夏だったらもっと楽しいのに…こうやって……。」

 

あこは香澄に水をかけた。

 

あこ「水のかけ合いとかしてさ!!」

 

高嶋「きゃ!!あこちゃん冷たいよ〜。」

 

香澄も負けじとあこに水をかける。

 

あこ「やったな〜。」

 

高嶋「なにお〜。」

 

あこ「まだまだ〜。」

 

2人の姿を少し離れて友希那、リサ、燐子が見ている。

 

友希那「2人とも元気ね。」

 

リサ「冷たい水に浸かるなら動かない方が良いのに。」

 

燐子「体温を奪われますからね…。」

 

友希那「あんなに動き回るなんて銃撃戦の中に飛び込んでいくようなもの……。」

 

その時、3人に大量の水がかかった。

 

リサ「きゃあっ!!」

 

水をかけたのは言うまでもなく香澄とあこである。

 

高嶋「どうせ動いてもジッとしてても同じなんだから。」

 

あこ「みんなもあこ達と楽しもう!!」

 

その言葉にリサが腹黒い笑みを浮かべる。

 

リサ「…ほう。ならば容赦はしないよ?」

 

あこ・高嶋「「………。」」

 

香澄とあこは生唾を飲み込む。

 

リサ「うおりゃー!」

 

水かけバトルにリサと燐子が参戦し戦いは熾烈を極めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

因みに友希那は我関せずの姿勢で眺めている。

 

友希那「みんな元気ね。」

 

友希那がふと目を横にやると紗夜が岩壁にもたれ遠くを眺めていた。

 

友希那「紗夜…。昼間も様子がおかしかったけれど…。」

 

そこへ香澄がやって来て、

 

高嶋「紗夜ちゃん。そろそろ見張り交代するね。」

 

紗夜「ええ…そうね。」

 

高嶋「みんなと水かけ楽しいよ!!」

 

紗夜「私は遠慮します…。」

 

そうして紗夜は香澄と交代し、1人離れた所で川に浸かった。

 

友希那(香澄相手にも素っ気ない態度…。心身共に過酷な遠征になりそうね。)

 

 

 

 

 

 

 

深夜--

 

外では友希那と香澄が見張りをしていた。

 

高嶋「みんな見張りを交代した途端にぐっすりだね。」

 

友希那「みんなはしゃぎ過ぎよ。」

 

高嶋「明日は大阪だね…。」

 

香澄は大きな欠伸をする。

 

友希那「その後は諏訪、東京、そしてもっと北ね…。」

 

高嶋「先はまだまだ遠いから頑張らないと!!」

 

どんな時でも明るさを絶やさない香澄を見て友希那は思う。

 

友希那「香澄は…強いわね…。戦いの中でも明るく迷いが無い。その強さに私達みんなは助けられてきた…。ねえ。」

 

高嶋「何、友希那ちゃん?」

 

友希那「香澄はどうして勇者として戦っているの?」

 

高嶋「理由かー。あんまり考えた事無かったなー。」

 

香澄は少しの間考え、そして答える。

 

高嶋「頑張ってバーテックスと戦ったら、人を助ける事が出来るでしょ?」

 

友希那「ええ。」

 

高嶋「だから、もっと頑張って人を沢山助け続けてたら…少しづつ元の世界を取り戻していけるって思うから…かな。」

 

香澄は照れ臭そうに答えた。

 

友希那「確かに…その通りね。」

 

友希那(香澄は信じているのね…人の力を…。未来の希望を…。)

 

高嶋「あっ、でもやっぱり1番の理由は勇者って何だかカッコいいからってだけかも!だから、これからも生きてる人を頑張って探そう。"勇者"らしくさ。」

 

友希那「…そうね。きっと明日は生存者が見つかる筈…。」

 

その希望を胸に友希那達は大阪へと足を進めていく--

 

 

 




--勇者御記--


みんなでお出かけをします。
いわば、◾️◾️◾️という部活の修学旅行、です。
どうか楽しい旅でありますように。
悪いことが起きませんように。
生き延びた人達との出会いがありますように
ルートは◾️◾️半島は避けるよう言われました。

2019年1月 白金燐子 記
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