戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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諏訪に到着です。そろそろ4章も折り返しまできました。


ここから事態は急転直下--





命のリレー

 

 

大阪、梅田--

 

高嶋「ここも酷いね…。」

 

大阪も他の都市と同じく廃墟が並び、人の影は全く見えなかった。

 

友希那「諦めるのはまだ早いわ。手分けして調べましょう。」

 

友希那達は香澄・紗夜、あこ・燐子、友希那・リサの三手に分かれて大阪を捜索した。

 

 

 

 

 

 

 

2時間後--

 

リサ「こっちは誰もいなかったよ。友希那は?」

 

友希那は首を横に振った。

 

高嶋「友希那ちゃーん。」

 

そこへ残りのペアが戻って来る。

 

リサ「どうだった?」

 

高嶋「誰も見つからなかったよ…。」

 

あこ「あこの方もいなかったよ。」

 

友希那「そう…。ここにも生存者はいないのね…。」

 

リサ「燐子は?」

 

あこ「りんりんなら少し早めに戻って、この周辺をまだ探してると思うけど。」

 

その時、

 

燐子「みなさーん…!」

 

燐子が友希那達を呼んだ。

 

友希那「何か見つけた?」

 

燐子「調べたところ、大阪の駅周辺には広い地下街があるみたいなんです…。もしかしたら、まだ中に人が…。」

 

友希那「地下ね…。」

 

紗夜「でも、この様子じゃ…。」

 

紗夜が言う事も最もで、地下街への入り口も既にボロボロになっていたからだった。

 

友希那「それでも、降りてみましょう…。確かめてみないと何も分からないから。」

 

友希那がそう言うと、全員で地下街へと足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

 

大阪、地下街--

 

高嶋「誰かいますかー!」

 

香澄が大声で呼ぶも返事は無い。

 

リサ「人がいた痕跡はあるみたいだけど…。」

 

リサが辺りを見回すと、寝袋やゴミ箱に溢れたゴミの山、開けられた非常食などが散乱していた。

 

友希那「もっと奥まで探してみましょう…。」

 

6人は更に奥へ進んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

リサ「行き止まりだ…。」

 

しばらく歩くと、友希那達は地下街の1番奥へと辿り着く。

 

友希那「残念だけど、ここにも…。」

 

友希那がそう言った時、足元に何かを見つけた。

 

友希那「これは…。」

 

友希那がそれを手に取る。

 

友希那「日記…かしら……。」

 

それと同時に、

 

あこ「友希那さん!!」

 

あこが何か見つけたようだ。

 

友希那「どうしたの!?」

 

他のみんながあこの元に集まる。

 

紗夜「酷い…地上はボロボロで、地下もこんな…。」

 

紗夜が力無く呟く。

 

友希那「そんな…!?」

 

友希那が目の当たりにしたのは、無残にも転がった人骨の数々だった。

 

 

 

 

 

 

燐子「酷い…。」

 

リサ「ここで一体何が…。」

 

他のみんなもその光景に絶句していた。

 

友希那「…これに何か書いてあるかもしれない……。」

 

友希那はそう言うとみんなに拾った日記を見せる。

 

紗夜「これは、日記ですか?」

 

友希那「ええ…。こうなった原因が分かるかも。」

 

友希那は全員を集め、懐中電灯で照らしながら読み始めた。

 

 

 

 

---

ーー

 

 

2015年某日--

 

地下に潜んでから何日経っただろうか。もう日付も分からない。だから時間の感覚を失わない為にも日記を付けることにした。

 

7月末に突如現れた化け物から逃げて私たちは地下街に逃げ込んだ。みんなで入り口にバリケードを作ったが、私達も外へは出られない。

 

地上は今どうなっているだろうか。お父さんもお母さんももういない…。家族は妹だけ。妹はまだ小学生だ。高校生の私がしっかりしないと。

 

 

 

 

 

 

2015年某日--

 

今日起こった喧嘩で人が亡くなってしまった。食料の奪い合いや意見の対立、弱い者イジメ…化け物から逃げる為に閉じこもっているのに、人間同士で争うなんてバカみたいだ。

 

死体は決められた場所に集められている。放置しておくと衛生上の問題もあるし、精神的にも良く無いからだ。

 

 

 

 

 

 

2015年某日--

 

妹が家に帰りたいと泣き出す。普段はワガママも言わない大人しい子なのに…。

 

妹の泣き声に苛立った大人が外に出すかしろと言ってきた。そんな事はさせない。妹は私が守るんだ。

 

 

 

 

 

 

2015年某日--

 

今日のご飯は栄養補助食品2個とスナック菓子半袋。食料問題で大人達が話し合っている。弱い者を見捨てて食料を節約するべきだと主張する人、バリケードを解いて外に出るべきだと主張する人。今日も結論は出なかった。

 

外に化け物はまだいるのだろうか。誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

2015年某日--

 

妹に元気がない。呼びかけると返事はするが上の空だ。何かの病気かもしれない。

 

 

 

 

 

 

2015年某日--

 

今日も妹は元気が無い。でもどうする事も出来ない。

 

 

 

 

 

 

2015年某日--

 

病院に連れて行かないと--

 

 

 

 

 

 

2015年某日--

 

妹が返事をしない。

 

どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。

 

 

 

 

 

 

2015年某日--

 

酷い争いが起こった。一部の人達が勝手に食料節約の為と老人と病人を殺し、その人たちも別の人達にすぐ殺された。もう訳が分からない。

 

私の妹も殺されてしまった。私ももう死んでも良いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

2015年某日--

 

地上へ出ようと訴えていた人達がバリケードを壊してしまった。

 

化け物が次々と雪崩れ込み、防火シャッターも簡単に壊されてしまった。

 

きっとあの化け物は私達が自滅する事を分かってて放置していたんだろう。

 

私は今死体置き場にいる。

 

最期は、妹と一緒に迎えようと思う--

 

 

 

 

ーー

---

 

 

日記はここで終了していた。

 

友希那「これが、その結末だって言うの…。」

 

リサ「人間同士の殺し合いで…。」

 

高嶋「神の裁きって事…?」

 

燐子「酷すぎます…。」

 

あこ「あこ達がここにいれば…。」

 

友希那「………!?」

 

友希那は後ろに何かの気配を感じ、生大刀に手を掛ける。

 

友希那「ここにもう生き残りはいない…。脱出して次の街に向かうわよ!!」

 

目線の先には幼生バーテックスが迫ってきていた。友希那を先頭にみんなは走り出すが、紗夜は死体置き場を見つめていたままだった。

 

友希那「紗夜!?」

 

紗夜「ええ…分かっています。」

 

紗夜(強大な敵に立ち向かえず、人間同士で争い奪い合った。無力で醜く弱い人達--。危機が迫って追い詰められれば、四国の人達もきっと同じ様な結末を…。)

 

紗夜はそんな事を思いながらバーテックスへと斬りかかる。

 

紗夜(私は…そうはならない!私には勇者の力がある。あんな惨めな死に方なんて絶対に嫌……!!勇者として最後まで敬われて生きていきます…!!)

 

こうして様々な思いを抱えつつ、一同は大阪を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

愛知、名古屋--

 

あこ「やっとここまで来たね、りんりん。」

 

燐子「本州も半分ってところだね…。」

 

高嶋「紗夜ちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」

 

紗夜「ええ。大丈夫ですよ、高嶋さん。」

 

友希那「よし、じゃあここも大阪の様に三手に分かれて探索しましょう。」

 

友希那の言葉を合図にそれぞれは三手に分かれて探索を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

あこ、燐子サイド--

 

あこ・燐子「「……。」」

 

2人とも、大阪での出来事があったからか無言で探索を続けている。

 

燐子「ねえ…あこちゃん……。」

 

燐子が口を開いた。

 

あこ「何?」

 

燐子「あこちゃんはあの日記を見て……ううん、やっぱり何でも無いよ…。」

 

燐子はなるべく思い出さない様、話を途中で止めた。

 

あこ「りんりん…。あこはそんな事はさせないよ!」

 

燐子「あこちゃん…?」

 

あこ「どんな事があってもあこはりんりんを守るから。初めて勇者になった時…りんりんに会った時そう誓ったんだ!」

 

あこは笑顔で燐子に答える。

 

あこ「もちろんりんりんだけじゃ無いよ。他の人達だってあこが守る。四国を大阪の様にはさせないよ!!」

 

燐子「そう…だね…!」

 

あこ「っ!?」

 

だが、あこは眼前に何かを見つけ目の色が変わった--

 

 

 

 

 

 

紗夜・高嶋「「っ!?」」

 

紗夜「爆発!?」

 

高嶋「あこちゃん達の方向だ…行こう、紗夜ちゃん!」

 

友希那組と香澄組は、突然の爆発音を聞きあこ達の方へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

友希那・リサ「「あこっ!!」」

 

高嶋「あこちゃん!!」

 

紗夜「宇田川さん!!」

 

友希那達があこと燐子の元へと駆けつける。

 

燐子「友希那さん…皆さん…。」

 

友希那達が見たものは、

 

 

 

あこ「はぁ…はぁ…。」

 

切り札である"輪入道"の力を使い辺りを燃やし尽くしていたあこの姿だった。

 

友希那「何があったの!?」

 

燐子「実は…。」

 

 

 

 

---

--

 

 

あこ「!?」

 

燐子「どうしたの、あこちゃん…?」

 

あこ「りんりん、離れて!!」

 

燐子「?」

 

あこ「来い、"輪入道"!!」

 

燐子を下がらすといきなり切り札を使い辺り一面を燃やし尽くしたのだった。

 

燐子「あっ…!?」

 

その際燐子は見たのだった。今にも生まれてきそうなバーテックスの卵の数々を--

 

 

ーー

---

 

 

友希那「そうだったのね…。」

 

あこ「はぁ…はぁ……。」

 

肩で息を切らしながらあこが戻ってきた。

 

あこ「驚かせちゃったね、りんりん…。」

 

燐子「大丈夫だよ…。」

 

リサ「もうっ、いきなり切り札を使うなんて無茶なんだから…。」

 

リサがあこを諭す。

 

あこ「ごめん、リサ姉…。奴らの卵を見たらついカッとなってさ……。」

 

燐子「……!」

 

燐子は何も言わずあこを抱きしめた。

 

あこ「っ!?りんりん!?」

 

燐子「あこちゃん……。その気持ちだけで、私は嬉しいよ…。みんなで力を合わせて守っていこうね…。」

 

あこ「りんりん……。」

 

あこも燐子を抱きしめたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

高嶋「やっと見えてきたね!」

 

紗夜「諏訪まであと一息って感じですね。」

 

燐子「あこちゃん…大丈夫?」

 

あこ「ちょっと疲れただけだよ…心配しないで、りんりん…。」

 

燐子「まだどんな影響があるか分からないから気をつけて…。」

 

あこ「ありがとう…。」

 

友希那「やっとここまで来たのね…。美竹さん……。」

 

リサ「行こう、友希那。彼女も知ってほしいはずだよ、友達だった友希那に諏訪の結末を…。」

 

友希那「…そうね…行きましょう。」

 

友希那達は諏訪に辿り着いた。

 

 

 

 

 

 

諏訪大社本宮--

 

友希那とリサは荒れ果てた諏訪大社を捜索していた。

 

友希那「執拗に破壊されてるわね…。」

 

リサ「ここが結界の要だったからかな…。」

 

友希那は拳を強く握りしめた。その時、

 

あこ「友希那さーん!!ちょっとこっちに来てくださーい!」

 

大社の外からあこが友希那を呼んだ。

 

友希那「何か見つけたの、あこ?」

 

あこ「これ見てください。」

 

友希那「これは…畑?」

 

あこの隣には一面耕された後があった。

 

燐子「正確には、畑だった場所ですが…最近まで人の手が加わった感じがあります…。」

 

友希那「何か手がかりになる物が無いか探しましょう。」

 

友希那達は畑だった場所を捜索し始める。

 

 

 

 

 

 

しばらくして、

 

香澄「ん?何か埋まってるよ!」

 

香澄が掘ると、木の箱が埋まっていた。中を開けると、そこには1つの鍬と一通の手紙が。

 

友希那「これは…。」

 

友希那は手紙を読む。

 

 

 

 

---

ーー

 

 

もしこれを見つけたのが湊さんでなければ、どうかこれを四国の勇者である彼女に渡していただければと思います。

 

バーテックスが現れた日から既に3年程になります。諏訪の結界も切迫した状況になってきました。ここはもう長くは保たないでしょう。

 

けれど、まだ湊さんの四国は残っています。人間はこれまでどんな困難に見舞われても、再興して来ました。諦めなければきっと大丈夫。

 

湊友希那さん…まだ会った事の無い私の大切な友達…。あなたに出会えた事を私は嬉しく思います。あなたが戦いの中でも無事であるよう、世界があなたの元で守られていくよう願っています。

 

人類を守り続けるのがたとえ私じゃなかったとしても、湊さんの様な勇者が守り続けてくれるのであれば良い。

 

私はそこに繋げる役目を果たします…。

 

 

 

 

ーー

---

 

 

それは諏訪をたった1人で守り続けて来た勇者、美竹蘭からまだ会った事の無い友希那へ宛てた最期の手紙であった。

 

友希那「美竹…さん……。」

 

紗夜「結局、ここも全部壊されて…。」

 

友希那「それは違うわ、紗夜…。」

 

友希那は涙を拭いながら答える。

 

友希那「まだ、これが残ってる…。」

 

友希那は紗夜に一緒に入っていた鍬を見せた。

 

友希那「これは美竹さんから引き継いだバトンよ…。」

 

そう言いながら、友希那は鍬を見つめる。

 

友希那「やっと会えたわ…美竹さん……。あなたの遺志は確かに私達が引き継ぐから…。」

 

 

 

 

 

 

 

リサ「そう言えば、さっき境内でこんな物を見つけたんだけど。」

 

リサはみんなに小さな麻袋を見せ、中身を出した。

 

燐子「これは、蕎麦の種…他にも色々な種類の作物の種があります…。」

 

友希那「……。」

 

友希那は畑の跡を見つめ少し考える。

 

友希那「みんな…。」

 

友希那にみんなが賛同する。友希那たちは蘭が残した鍬で畑を耕し、そこにその種を植えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

全部の作業が終わる頃には外は暗くなっていた。

 

リサ「よし、これで完了だね。この鍬と残った種は四国に持ち帰っ…。」

 

その時、リサがフラつき友希那が支えた。

 

友希那「リサ!?大丈夫?次の街へ移動する前に少し休みましょう。」

 

リサ「ううん…違う…。違うんだよ、友希那…。」

 

友希那「?」

 

リサ「神託があったんだよ…四国が再び危機に晒されるって…。」

 

 




--勇者御記--

私が産まれ育った土地は
神話の里とも呼ばれています。

あの日、神社で授かった力は
迫り来るものへの◾️◾️。
これでまた、いつもみたいに皆を守る。
守りたい。

2019年2月 高嶋香澄 記

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