戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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香澄が傍にいない今、紗夜はどうなっていくのでしょうか?




紗夜の選択〈前編〉

 

 

勇者達の討伐任務は失敗、意識を失った香澄は緊急入院となり面会謝絶となっていた。

 

 

 

 

 

 

丸亀城寮、紗夜部屋--

 

"切り札"の酷使、二人の勇者の死、そして追い討ちをかける様に香澄の再入院。紗夜の心は追い詰められ、部屋にて篭ってはパソコンの掲示板や勇者が特集されている雑誌を読み精神を落ち着かせる日々が続いていた。

 

紗夜「私は…私は勇者よ……。勇者だから、みんな私を認めてくれて…褒めてくれて……。」

 

掲示板を見ている紗夜の手が止まる。

 

紗夜「……えっ?」

 

 

 

 

 

 

『新しいタイプの化け物が現れて、何人か勇者が殺されたんだって』

 

『死んだのは宇田川あこと白金燐子』

 

『政府と大社は真実を隠蔽している』

 

 

 

 

 

 

紗夜「何…ですか……これ……。」

 

そこに書かれていたのは、何処から情報が漏れたのか二人の死についてや任務を失敗した勇者達への罵倒の書き込みだった。

 

 

 

 

 

 

『勇者負けたってマジかよ役に立たねぇな』

 

『この前凄い竜巻あったじゃん。あれってその新しいタイプの化け物のせいだって』

 

 

 

 

 

 

紗夜「みんな…なんで……。」

 

紗夜(命を危険に晒して戦ってきたのに…。みんなの為に2人は命を散らしてまで守ってきたのに…。)

 

 

 

 

 

『俺達を守れてねえじゃん、勇者』

 

 

 

 

 

 

紗夜「……ふざけないで!」

 

 

 

 

 

 

 

病院--

 

友希那とリサは紗夜のカウンセリングの為に病院に付き添っていた。

 

医師「では体に異常を感じたらすぐに連絡してください。」

 

紗夜「……はい。」

 

紗夜が診察室から出てくる。

 

友希那「どうだった?」

 

紗夜「"切り札"を使うのは控えてだそうです…。」

 

友希那「紗夜も同じなのね…。」

 

掲示板に情報が漏れて以降大社は情報の隠蔽は無理だと判断し、勇者の戦死と最近の災害や事故がバーテックスによるものだと公表した。そして、人々の間に不安が溢れ、自殺の増加や治安の悪化が各地で起き始めていた。

 

友希那「何とか迅速に敵を倒したいところだけれど…。」

 

紗夜「市民は分かってないんです……!!」

 

友希那「紗夜…。」

 

紗夜「でしたら"切り札"は絶対に使いません!それでどれだけの犠牲が出るか…身を持って知れば良いんです!!」

 

友希那「紗夜、もうこれ以上は…。」

 

リサ「友希那。」

 

リサが友希那を下がらせ紗夜の前に立つ。

 

リサ「少しでも気持ちが楽になるなら、私に話して。」

 

リサは紗夜の手を取るが、

 

紗夜「……放っておいてください。」

 

紗夜はその手を払い除けた。

 

紗夜「安全な場所にいる巫女には関係ありません…。」

 

友希那「紗夜っ!苛立つからといって人を傷付けていい訳じゃないのよ!!」

 

友希那が紗夜に怒鳴る。

 

友希那「苦しい状態だからこそ、私達は結束していかなければ…。」

 

紗夜「また正論ですか!?あなたみたいな強い人には、私の様な弱い人間の気持ちが分からないんです……!!」

 

友希那「こんな時に弱音は吐かないで!」

 

紗夜「うるさいっ!!」

 

紗夜は友希那を突き飛ばした。

 

リサ「友希那!!」

 

紗夜「あ………。」

 

友希那の後ろにあった観葉植物の鉢が割れ、その破片で友希那が怪我をする。

 

友希那「つ…っ!!」

 

紗夜は困惑し病院を飛び出してしまった。

 

友希那「待って、紗夜!!」

 

友希那の制止も聞かず紗夜は走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「はぁ…はぁ…。悪くない……私は悪くない……。」

 

紗夜は無我夢中で走り続け、寮まで戻ってきた。

 

紗夜「さっきだってワザとじゃないんです…湊さんがあんな言い方するから……。」

 

紗夜はベッドへもたれ込んだ。

 

紗夜「怪我をしたのも、不幸な偶然です……。」

 

その時だった--

 

 

 

?『そう…あなたのせいじゃないわ。』

 

紗夜「っ!?」

 

紗夜が後ろを振り返るとそこには--

 

 

 

もう1人の紗夜が立っていたのだった。もう1人の紗夜は淡々と話し続ける。

 

紗夜?『でも、あの怪我…不自然ではなかったでしょうか…。』

 

紗夜「えっ……?」

 

紗夜?『強いはずの湊さんがあんな簡単に倒れて、しかも謀ったかのように植木鉢が後ろにあるなんて……。』

 

紗夜「何が…言いたいんですか……?」

 

もう1人の紗夜は紗夜の耳元へ顔を近づけ、

 

紗夜?『きっとワザとです…。ワザと倒れて怪我をしてあなたを悪者に仕立てようとした……。』

 

紗夜「何の……為に…?」

 

紗夜?『正義の名の下に…あなたを攻撃する為…。彼女は昔あなたを傷付けていた人達と同じなんですよ……。』

 

紗夜「そんな…。」

 

紗夜?『湊さんはあなたの敵です……。』

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「はっ……!?」

 

紗夜が目を覚ますと外は既に朝になっていた。

 

紗夜「夢…だったの……?」

 

その時、紗夜のスマホに大社からメールが届いた。

 

紗夜「メール?」

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、病院--

 

手に軽い怪我をした友希那は手当をされていた。

 

友希那(あの時、私は紗夜の言動に対して明らかに冷静さを欠いていた…。感情の自制が効かなくなっている気がする……。)

 

そこへリサがやって来る。

 

リサ「友希那。さっき大社から連絡があって…"切り札"の影響について検査結果から新事実が分かったんだって。」

 

友希那「それは…?」

 

リサ「精霊を宿すと肉体だけでなく、精神的にもダメージを受けるみたい。その結果、攻撃性の増加や自制心の低下が起こって…最終的には言動にも大きな影響が出るって……。」

 

友希那「じゃあ…紗夜や私は……。」

 

昨夜の紗夜や友希那の言動、それが全て"切り札"使用による悪影響であれば全て納得のいく出来事だった。精霊といっても元を辿れば妖怪の様な存在--

 

不浄なものを体に宿し続ければ、体にも不浄は溜まっていくのも道理である。

 

友希那「燐子は"切り札を使用しない様に"と言っていたわ…。きっとその事に早くから気づいていたんでしょうね…。」

 

その時、友希那のスマホに着信が。

 

高嶋「紗夜ちゃんそこにいる!?」

 

友希那「香澄!?」

 

電話の主は香澄だった。入院先の電話からかけてきたようだ。

 

高嶋「精霊の事聞いて…友希那ちゃんと紗夜ちゃんが心配で…でも抜け出せないから……。紗夜ちゃんにさっき電話したんだけど、全然出なくって……!」

 

香澄はかなり焦っている様だった。

 

友希那「落ち着いて、香澄。精霊の事はこっちでも聞いたわ。私は大丈夫よ。香澄こそ大丈夫なの?」

 

高嶋「う、うん。体はもうほとんど治ってるよ。面会謝絶が長引いているのは精神面の問題みたいだから……。」

 

友希那(いつも前向きである香澄でさえかなりの影響を受けるほどだというの…!?)

 

高嶋「お願い…もし何かあったら……紗夜ちゃんを助けて…。」

 

友希那「ええ、任せて。紗夜がどこにいるかも大社から聞いて分かってるわ。」

 

高嶋「えっ?ホント!?」

 

友希那「ええ、紗夜は今……高知の実家に帰っているわ。」

 

 

 

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