戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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第2章でどうして氷川家の石碑だけが無かったのか、その謎の大元が明らかになります。

氷川紗夜は勇者である。




紗夜の選択〈後編〉

 

 

2019年6月、丸亀城入り口--

 

友希那は勇者としてマスコミに囲まれて緊急会見をしていた。

 

友希那「天災の悲劇からもうすぐ4年、人の命や国土、そして自由に見上げることの出来る空。多くのものを私達はあの日奪われました。そして今、再び人類は苦境に立たされています。敵は更に強大となり、2人の勇者が戦いの中で命を落としました。」

 

友希那の会見を道行く人々も足を止めて聞いていた。

 

友希那「だけれど!!私達はまだ敗北していない!!奴らに奪われた平穏を!!友人や家族と過ごす日々を必ず取り戻す!!大社と私達は対策を講じています!間も無く戦況を覆す方法が見つかるでしょう!!私達勇者はこれからも戦い続けます。でもそれは特別な事ではありません。何故なら私達は知っているから!!」

 

友希那「もし我が子が敵に襲われたら、親は身を挺して戦おうとする事を!もし目の前で事故に合いそうな子供を見たら、"天恐"で屋外を恐れる人も恐怖を跳ね除け助けに行く事を!!敵に立ち向かう勇気を!仲間を助ける勇気を!痛みを忘れない勇気を!戦い続ける勇気を!!」

 

友希那「四国に生きる1人1人がみんな勇気を持つ勇者なんです!!私達は決して奴らに負けはしません!!」

 

そして友希那は生大刀を掲げる。

 

友希那「抗い続けましょう!侵略者から全てを奪い返す未来の為に!!!」

 

友希那はマスコミから大量のフラッシュを浴び、街角の人々は友希那の会見に大いにわき上がっていたのだった。家族と引越しを終えた紗夜もパソコンの配信画面から友希那の会見を見ていた。

 

紗夜「………。」

 

一階では紗夜の母親が"天恐"の発作で悲鳴をあげており、父親がそれを必死で看病している。

 

紗夜(こっちに家族を呼び寄せたところで…何も変わらない…私にはもう、何も無い……。)

 

会見を聴き終えた紗夜はベッドで塞ぎ込んでいた。

 

紗夜(湊さん………。)

 

紗夜は思い返す。紗夜が香澄のお見舞いに行った時に、香澄と笑顔で話している友希那の姿を。紗夜は近くにあったリモコンを手に取りパソコンへ投げつけた。

 

紗夜「どうしてあなたばかりが…!!!」

 

パソコンの画面は壊れ、リモコンも壁にぶつかり欠けてしまう。

 

紗夜「私は全部失ったのに!!」

 

 

今度は椅子を机に投げつけた--

 

 

紗夜「勇者の価値も、賞賛も、仲間も…!!」

 

 

 

カッターで枕や雑誌を切り刻み--

 

 

 

紗夜「あなたさえいなければ…!!」

 

 

 

友希那の記事を踏みつける--

 

 

 

紗夜「はぁ……はぁ………。」

 

紗夜の部屋は無残な姿へと変わってしまう。

 

紗夜「…取り返す……。」

 

そう言うと紗夜はスマホを手に取り、

 

 

ーーー

 

TO:大社

--

FROM:氷川紗夜

--

SUBJECT:

--

 

充分な休養を取り、このところは落ち着いてきました。先日、私が起こした事件に対しても、今は深く反省しており、今後はこの様な事は……

 

ーーー

 

 

 

紗夜「…取り返すのよ……どんな事をしても私は…。」

 

大社へと送信したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

樹海--

 

バーテックスの進行があり、友希那はたった1人で樹海で待ち構えていた。そこへ--

 

友希那「紗夜!?謹慎は解けたのね。」

 

紗夜が姿を現した。

 

紗夜「…ええ。今まで迷惑をかけました…。もう、大丈夫です…。」

 

友希那「良かったわ……。」

 

そのタイミングで幼生バーテックスの群れが2人に襲いかかってきた。

 

友希那「復帰早々で悪いけど、力を貸してちょうだい!!」

 

2人は武器を構える。

 

友希那「行くわよ!!」

 

友希那が先陣を切って前に飛び出し、紗夜はその後を追いかけた。

 

友希那「はあぁぁぁっ!!」

 

2人は背中合わせに戦いバーテックスを切り倒していく。

 

友希那(この調子なら"切り札"無しでもいけそうね。)

 

友希那「紗夜!!このまま一気に……。」

 

友希那が紗夜に言う為に後ろを振り向こうとした瞬間だった--

 

 

 

 

友希那「つっ!?」

 

後ろからの急な攻撃に友希那は咄嗟に頭を下げて躱し距離をとった。

 

友希那「どういうつもり……!?……紗夜!!」

 

襲撃者の正体は紗夜だった。

 

紗夜「あなたさえいなければ…。」

 

紗夜は友希那を睨みつけ、"七人御先"を宿して友希那に襲いかかってきた。

 

紗夜「あなただけが愛されて!!私は疎まれ嫌われ…!!そんなの不条理じゃないですか!!」

 

7人の紗夜は四方八方から友希那を攻め立てる。

 

紗夜「勇者が私だけになれば!!あなたがいなくなれば!!みんな私に頼らざるを得ない!!」

 

紗夜は勇者が自分1人になれば、今まで仕打ちがおさまり自分を頼ってくれる、そう思う様にまでなってしまったのだった。

 

紗夜「賞賛を…!!愛を……!!」

 

紗夜は攻撃の手を緩めず、友希那は受け流す事だけで精一杯だった。

 

友希那「止めなさい紗夜!!」

 

紗夜「全部私が受けるんですっ!!」

 

そして遂に友希那のガードを弾き飛ばし--

 

 

紗夜「とった……!!!」

 

 

 

仕留めようとした瞬間だった--

 

 

 

紗夜「………えっ?」

 

 

 

突如紗夜の変身が解ける--

 

 

 

勇者システムが強制的に解除されてしまったのだ。紗夜は再び勇者システムを起動しようとするが反応は無かった。

 

紗夜「勇者システムが作動しない……!?」

 

必死で変身ボタンを叩き続けるも動かない。

 

紗夜「何故…!!どうして……!?なんで変身出来な…!?」

 

そこへ紗夜の背後から一体の幼生バーテックスが襲いかかってくる。

 

紗夜「っ!?」

 

友希那「紗夜っ!!」

 

友希那が間に入り幼生バーテックスを斬り伏せた。

 

友希那「私の傍から離れないで!!」

 

友希那は無防備な紗夜を庇いながらバーテックスと戦い始める。

 

紗夜「どうして…私はあなたを殺そうと……。」

 

友希那「どうしてですって!?決まっているじゃない!!!仲間だからよ!!!!」

 

傷付きながらも、友希那は紗夜を庇い続けるのを決して止めなかった。紗夜はそんな友希那の背中を見ながら思う--

 

 

ーーー

ーー

 

 

紗夜「やっぱり、まだ分かってませんか!?1番の問題はあなたの戦う理由…。」

 

友希那「……。」

 

紗夜「怒りで我を忘れるのも!周りの人間を危険に晒して気付きさえしないのも…!!あなたが復讐の為だけに戦っているだけだからです!!!」

 

 

ーー

ーーー

 

 

紗夜(最初はただ自分自身の復讐の為に戦っているだけだと思っていました--)

 

 

--ー

ーー

 

 

紗夜「どういう風の吹き回しだったんですか?」

 

友希那「ゲームには協力プレイって言うものがあるそうね。1人で出来ない事でも協力すればクリア出来る。私はそれがどういう事なのかを知りたかったの。」

 

紗夜「協力…ですか……。」

 

友希那「そうよ。」

 

紗夜「本当に変わったんですね…。」

 

友希那「えっ?」

 

紗夜「何でもありません…。」

 

 

 

 

 

 

紗夜「渋るようだったら無理やりにでも交代させるつもりだったのですが…。」

 

友希那「出るときは出て、下がる時は下がる。ゲームの協力プレイと同じでしょ。」

 

友希那「後は頼んだわよ…。」

 

紗夜「ええ…塵殺してみせます。」

 

 

ーー

ーーー

 

 

紗夜(ですが他の人と関わっていく中で、あなたは少しづつ変わっていった--)

 

 

--ー

ーー

 

 

友希那「敵に立ち向かう勇気を!仲間を助ける勇気を!痛みを忘れない勇気を!戦い続ける勇気を!!四国に生きる1人1人がみんな勇気を持つ勇者なんです!!私たちは決して奴らに負けはしません!!抗い続けましょう!侵略者から全てを奪い返す未来の為に!!!」

 

 

ーー

ーーー

 

 

紗夜(湊さん…あなたはどこまでも真っ直ぐで、周りの事を考えていた……私を含め………。)

 

友希那はバーテックスの大群に奮闘している。

 

紗夜(私は…何故こんな風に出来なかったんでしょうか…。彼女の強さは戦う強さだけじゃなく…心の強さも……。でも…叶うのなら……私も…。)

 

その時、紗夜は友希那の死角から1体の幼生バーテックスが近づいているのに気付く。

 

紗夜(私も……湊さんみたいに強く---)

 

紗夜は声で知らせるのではなく、何も言わず後ろから友希那を力一杯押した--

 

 

 

 

友希那「うっ!?」

 

友希那は前へ押され転んでしまう。

 

友希那「紗夜っ!何を………!?」

 

紗夜「湊さん…良かった……。」

 

次の瞬間、紗夜は友希那を庇い、幼生バーテックスに右半身を噛みつかれる--

 

 

 

 

 

 

 

友希那「……よ!紗夜っ!!しっかりして紗夜!!」

 

紗夜「……ぅ…………。」

 

紗夜(ここは…。樹海化が解けて……。)

 

紗夜「全部………倒した……ようですね…………。」

 

力無い声で紗夜が話す。

 

友希那「ええ!!すぐに病院まで連れて行くから!!!」

 

友希那が必死で応急処置をするも血が止まる気配は無かった。

 

紗夜(どうして私は気付かなかったのでしょう…全部失ったと勝手に思って………取り戻そうと躍起になって…………。本当は何も無くしてなんかいなかったのに…。仲間は友達としてあんなに私を愛してくれていたのに………。今更それに気付くなんて…………。)

 

紗夜の意識が段々と遠のいていく--

 

 

 

 

 

紗夜「湊………さん……………。」

 

紗夜は残された力で友希那の顔に触れる。

 

紗夜「私は……あなたの事が…嫌い………です……。」

 

 

 

紗夜(伝えないと……。)

 

 

 

紗夜「………でも……………。」

 

 

 

紗夜(残された時間で……これだけは………。)

 

 

 

紗夜「嫌いなのと……同じくらい…あなたに……憧れて………。嫌いなのと……同じくらい…あなたの事が………。」

 

 

 

 

 

紗夜「好き…………でし………た……………。」

 

 

 

 

紗夜の手が友希那の顔から離れる。

 

 

 

 

友希那「紗……夜………。」

 

 

 

 

 

友希那「紗夜っ……………!!」

 

 

 

 

 

友希那は息を引き取った紗夜の手を握りしめ慟哭するのだった--

 

 

 




紗夜は歴史から抹消される事となります。

しかし、その想いは名前を変え神世紀に残る事となっていきます。

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