戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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第4章クライマックス--

たった2人の勇者に世界の存亡が託されます--




6人の確かな想い

 

 

紗夜が亡くなってから3日程経った頃--

 

友希那「紗夜の葬儀が取り止めになったですって!?どうしてっ!?」

 

友希那は机を叩きリサに詰め寄った。

 

リサ「友希那への凶行と勇者の力を喪失した件で、大社が勇者としては葬送する事が出来ない…って。葬儀は実家で個人的に済まされたそうだよ…。」

 

リサが力無く答えた。

 

友希那「そんな…。あれは紗夜だけのせいではないでしょう!?」

 

リサ「私も納得なんて出来ない…多分大社は勇者の"神聖性"を汚したくないんだと思う…。」

 

勇者は人々のシンボルであり、前を向いて生きていく為の象徴というのが大社の大部分の考えであり、それを汚した紗夜は最早勇者でも何でもないという宣告であった。

 

友希那「それじゃあ…紗夜が生きていた事や記録の何もかもが最初から存在しなかったという事なの……?」

 

リサ「もう…決まった事なんだよ……。」

 

何も出来ない不甲斐なさを噛み締める2人の前に、

 

高嶋「おっはよー!!」

 

香澄が元気な声で教室に入ってきた。

 

高嶋「高嶋香澄、ただ今戻りました!」

 

友希那「退院したのね。」

 

リサ「お帰り香澄。」

 

友希那「香澄…その……紗夜の事…。」

 

友希那「あっそうだ友希那ちゃん!後で練習に付き合ってよ。入院中に体がなまっちゃってさー。」

 

落ち込む2人を他所に、香澄は元気な様子を見せていた。友希那は紗夜の事で話そうと香澄に近づくが、リサがそれを止める。

 

リサ「友希那。もう香澄だって大社から聞いてる筈だよ。」

 

友希那「…そうよね。」

 

リサ「あっ、そうだ香澄!良かったら回復記念に写真撮っても良いかな?」

 

高嶋「オッケー!全然大丈夫だよ!!」

 

リサが香澄にスマホを向けるが、写真が撮れなかった。

 

リサ「おっといけない、メモリーがいっぱいだったかー。」

 

リサはカバンから大量のSDメモリを取り出す。

 

高嶋「凄い量!?」

 

リサ「毎回何かと写真撮ってるとすぐいっぱいになっちゃうんだよねー。」

 

友希那「流石にこれは多すぎね。」

 

香澄はその中で1つだけ色が違うメモリを見つける。

 

高嶋「あれ?これだけ色が違うよ?」

 

リサ「あーこれは最近のものだよ。」

 

リサがメモリをスマホに差し込み写真を見せた。そこに写っていたのは友希那達6人が丸亀城に来た頃のものだった。

 

高嶋「うわー懐かしいね。まだみんな小学生の頃だったよね。」

 

友希那「3年前ね。懐かしいわ。」

 

3人は次々と写真を見ていった。

 

友希那「これは確か、私のおすすめ手打ちうどん屋に行った時ね。」

 

高嶋「さすがうどんの本場だよね。衝撃の美味しさだったよ。」

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

友希那「さあみんな食べてみて。これが私のおすすめのうどんよ。」

 

リサ「どれもみんな美味しいんだから。」

 

あこ「お、美味しいです友希那さん!あここの味気に入りましたよ!!」

 

燐子「確かに、美味しいです…。今井さん達が、ここに何度も足を運ぶのも納得です……。」

 

高嶋「私こんなに美味しいうどん始めて食べたよ!ねっ、紗夜ちゃん!!」

 

紗夜「ええ、本当ね。出汁の味がしっかりしていて麺のコシも堪らないわ。」

 

 

ーー

ーーー

 

 

高嶋「あっこれは燐子ちゃんが行方不明になっちゃった時のやつだね。」

 

 

 

---

ーー

 

 

あこ「あっ、りんりんこんな所にいた。もー必死で探し回ったんだからねー。」

 

燐子「ごめんね、あこちゃん…。つい夢中になって気付いたら寝ちゃってたみたい…。」

 

あこ「みんな待ってるから早く帰ろう。」

 

燐子「うん…。」

 

 

ーー

ーーー

 

 

 

リサ「そうそう。みんなで必死に探し回ったよね。」

 

友希那「外で本を読んでいて寝てしまうなんて、燐子らしいわよね。」

 

高嶋「あ……。」

 

そして香澄は1枚の写真に目が溜まった。

 

リサ「どうしたの、香澄?」

 

高嶋「この写真…。」

 

友希那「確かまだ紗夜が1人でゲームに夢中になってた頃だったわね。」

 

高嶋「うん。この事がきっかけで、私と紗夜ちゃんは仲良くなれたんだ。」

 

香澄はその時の事を思い返す--

 

 

 

---

ーー

 

 

西暦2015年12月--

 

紗夜「クリスマスですか?」

 

高嶋「そう!!みんなでパーティーしよう。」

 

香澄が紗夜に提案する。

 

紗夜「クリスマスとか…よく分かりません。家では…そういう事はやった事がないので……。」

 

高嶋「んーと…クリスマスっていうのは……。おっきな木を飾り付けてケーキと鳥を食べて、帽子をかぶってパーンって鳴らすんだよ!!」

 

紗夜「帽子に鳥に…パーン……?」

 

高嶋「とにかくやってみようよ!ねっ?」

 

香澄はぐいぐい紗夜に迫っていた。

 

紗夜「え…ええ。」

 

そうして2人は協力してクリスマスツリーの飾り付けを完成させ、6人でパーティーを楽しんだ。

 

高嶋「紗夜ちゃん。」

 

紗夜「何ですか?」

 

高嶋「私にオンラインゲームの事教えて?」

 

紗夜「また突然どうしてですか?」

 

高嶋「だって紗夜ちゃんともっと仲良くなりたいし……もっと紗夜ちゃんの事知りたいから!!」

 

香澄は満面の笑みで答えた。

 

紗夜「ええ…。私で良ければ……。」

 

紗夜は顔を赤らめながら答える。

 

高嶋「やったー!!早く覚えるからいっぱい遊ぼうね!」

 

紗夜「そうですね。」

 

高嶋・紗夜「「あはははっ!!」」

 

2人は笑い合い、パーティーを楽しんだのだった。

 

 

ーー

ーーー

 

 

高嶋「でも、結局紗夜ちゃんの足引っ張ってばかりだったなー。私達……6人いたんだよね。」

 

香澄の目に涙がたまる。

 

高嶋「あこちゃんも、燐子ちゃんも…紗夜ちゃんも……。」

 

その時、リサが2人に提案する。

 

リサ「…探してみない?」

 

高嶋「えっ?」

 

リサ「紗夜がどこでどのように葬られたのかを…御墓参りくらいは出来るようにさ……。」

 

香澄は紗夜との写真を見つめ、

 

高嶋「うん、探そう!!私まだ紗夜ちゃんにお別れも言えてないから!!!」

 

こうして3人は町内周辺や病院などに聞き込みをして、紗夜の引越し先に辿り着いた。

 

 

 

 

 

 

氷川家、紗夜の部屋--

 

3人は紗夜の部屋を探索していた。

 

リサ「滅茶苦茶になってるね…。」

 

友希那「紗夜が自分自身でやったのでしょうね。」

 

リサ「近所の人に両親の事を聞いたら、父親は夜逃げで失踪して母親は何処かの病院に保護されたみたい。」

 

友希那「………。」

 

高嶋「2人ともちょっと来て!」

 

どうやら香澄が何かを見つけたようだった。

 

友希那「何か見つけたの?」

 

高嶋「これ…。」

 

香澄はベッドを指差した。ベッドの上にあったのは--

 

 

 

模擬戦をした日、紗夜の為に5人で作った手作りの卒業証書だった。部屋にある他の物はボロボロになっていたのに、この卒業証書だけは無傷のままベッドに置いてあったのである。

 

高嶋「部屋の全部を壊しても、それだけはずっと持っていたんだね。」

 

香澄は卒業証書を手に取った。

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

あこ「友希那さん!!絶対に失敗しないでくださいね?」

 

友希那「気が散るわ、あこ!」

 

燐子「あこちゃん…友希那さんは真剣に書いてるんだから、邪魔しちゃダメだよ……。」

 

リサ「そうそう、友希那は紗夜の事を思って書いてるんだから。」

 

あこ「そうなんですか!?友希那さん。」

 

友希那「え、ええ…当たり前じゃない。」

 

高嶋「これを受け取ったら紗夜ちゃん絶対嬉しそうな顔するだろうなー。」

 

燐子「そうですね…その顔が目に浮かびます……。」

 

友希那「…よし、出来たわ。」

 

リサ・高嶋・あこ・燐子「「「おおーーーっ!!」」」

 

 

 

 

 

 

燐子「実は、紗夜さんにはもう1つだけお願いがあるんです…。」

 

紗夜「えっ?これって…。」

 

高嶋「みんなで紗夜ちゃんの為に作ったんだよ。」

 

あこ「学年が変わるだけで、紗夜さんはずっとここにいるけどね。」

 

友希那「だけど、形だけでもこう言う行事はやっておいた方が良いでしょ?」

 

リサ「私もそう思うよ。」

 

燐子「紗夜さんへのお願いは…この卒業証書を受け取って下さい…です…。」

 

紗夜「そう…ですか…。お願いなら…仕方ないですね……。」

 

 

ーー

ーーー

 

 

高嶋「紗夜ちゃん……。」

 

香澄の顔から涙が溢れる。

 

高嶋「紗夜ちゃんは…仲間で……勇者で……確かに…っ…ここにいたんだよ……。うぅ………っ!!」

 

香澄の泣き顔を見ながら、友希那はある事を心に誓う--

 

 

 

 

 

 

 

丸亀城入り口--

 

友希那は再びマスコミの前で演説をするところであった。

 

友希那「今日はこの場に集まっていただきありがとうございます。」

 

友希那の手元には大社が用意した原稿が握られていた。市民を安心させ奮い立たせる為の作られた筋書き--

 

 

 

聴衆心理の操作を目的とした演説--

 

 

 

紗夜が死亡したのは勇者として人格が足りなかった為で、友希那と香澄ならば負ける筈が無いという内容が書かれていた。だが、友希那は途中で演説を止める。

 

友希那(違う!!大社の思惑など私達には関係ないわ!!!)

 

そして友希那は原稿を握り潰し話し続けた。

 

友希那「氷川紗夜は紛れもなく勇者だったわ!!彼女は確かに心のバランスを崩していたけれど、最期の時彼女は命懸けで私を守ってくれた!!自分の命を犠牲にしても人を守ろうとする、それが勇者でなくて何だというの!?例え全ての人間が認めなくても、全ての人間が否定しても…。私達は"彼女は勇者だ"と言い続ける!!」

 

友希那「あこも!!」

 

友希那「燐子も!!」

 

友希那「紗夜も!!」

 

友希那「私達は"5人で"共に戦う勇者だったのよ!!」

 

自分が言いたい事を言い終えると、友希那はその場を後にした。この演説が報道された後、紗夜の勇者除名の一時保留の連絡が大社から通知された。そして、西暦2019年7月--

 

 

 

バーテックスへの対処法は未だ見つからないまま、新たなバーテックス進行の神託がたった2人の勇者に下った--

 

 

 




--勇者御記--

◾️◾️◾️◾️という勇者がいたことを、
私は忘れない。
彼女は最後に確かに、
自分に勝ったのだ。

2019年7月 湊友希那 記

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