丸亀城グラウンド--
友希那と香澄は来たる決戦に備え2人で鍛錬をしていた。
高嶋「はぁ…はぁ…ふう。」
友希那「大丈夫?」
高嶋「大丈夫調子戻ってきた感じだよ。」
友希那「そうね。入院前と遜色無いわ。」
高嶋「そう言えば聞いた?」
友希那は少し考え、
友希那「大社の計画の事かしら?」
高嶋「うん、結界の強化の話。」
友希那「確か神託にあった総攻撃さえ乗り切れれば、儀式を行って壁の結界が強化されてバーテックスが入って来る事もなくなる、って話だったわね。」
高嶋「そう。でも大社はもう一つ対策があるって言ってたよね?」
友希那「…ええ。でもそれは私もリサも聞かされてないわ。」
友希那は大社の隠蔽体質に少し疑問を感じていた。
高嶋「とにかく、次の戦いに勝てば敵は来なくなって平和になるって事だよ!!」
香澄は笑顔でそう答えた。
友希那「そうね。」
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鍛錬後、丸亀城教室--
友希那は机に突っ伏し考え事をしていた。
友希那(私の訴えで勇者システムが変更され、私にも新たな力が加わった…。)
先日の友希那の演説を受け、大社は勇者システムを改善し例え神樹の意思だろうと戦闘中に勇者の力が奪われる事は無くなったのである。
友希那(あんな悲劇、二度と起こすわけにはいかない…。)
そこへ友希那の前に沢山の本が置かれた。
リサ「ゆーきな、勉強の時間だよ。しっかり起きてよー。」
本を置いた者の正体はリサだった。
友希那「今日はまた随分と多いわね。」
リサ「必要な事だからね。様々な文献に触れて精霊のイメージを強く掴む事で精霊は強力になるんだから。友希那の新しい精霊は扱いが難しいんだよ。」
友希那「今日は香澄とも鍛錬したから疲れて…。」
リサ「もーー。どうしたらやる気になってくれる?」
友希那は恥ずかしがりながら答える。
友希那「----。」
リサ「しょうがないなー。ほれ。」
そこへ間の悪い事に香澄が教室に入ってきた。
高嶋「友希那ちゃん、リサちゃん、明日…。」
そこで香澄が見た光景は、友希那がリサに膝枕されている姿だった。
高嶋「ごめん、また後で来るね。」
香澄は教室を出ようとするが、
友希那「待って!!今で良いわ!今で!!」
友希那は必死で香澄を引き止めた。
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友希那「それで、何か用があって来たんじゃなかったの?」
友希那は咳払いし平静を装う。
高嶋「夏休みで授業も無いし、明日一緒にお出かけしない?」
友希那「明日は鍛錬も休みだし私は構わないわ。」
リサ「私も大丈夫だよ。」
高嶋「じゃあ決まりだね!待ち合わせは門の前にしよう!!」
3人は明日の予定を決め、解散したのだった。
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次の日、丸亀城門の前--
一足先に待ち合わせ場所に着いていたのはリサだった。
リサ「おっかしいなー。いつもならみんな10分前には揃ってるんだけど。」
友希那「ごめんなさい、待たせてしまって。」
そこに友希那が来る。
リサ「大丈夫だよ。私も今来た……。」
そう言いながら振り返ると、
リサ「ところ…だから……。」
友希那は上下ジャージで帽子にマスクにサングラスの完全防備で待ち合わせ場所にやって来たのである。
リサ「何なのその格好!?」
友希那「変装よ。勇者は目立ってしまうから。」
友希那は真顔で答える。
リサ「あぁ…。」
あまりの友希那の格好にリサはよろけた。
高嶋「おっはよー!リサちゃんどうしたの?」
そこへ香澄も到着する。
リサ「聞いてよ、香澄ーー。友希那の…。」
そう言いながらリサは香澄の方を向くと、
リサ「格好…が…ね……。」
あろう事か、香澄も上下ジャージでお面を被っていたのだった。
リサ「こっちもかっ…。」
リサは肩を落とす。
友希那「やっぱり変装は基本よね。」
高嶋「うんうん!!」
そんなリサを気にもせず、2人は変装談義に華を咲かせていた。
友希那・香澄「「あはははっ!」」
するとリサがおもむろに立ち上がり、
リサ「却下却下!!今すぐ着替えて来てっ!!」
リサはドス黒いオーラを放ち2人に命令する。
友希那・香澄「「はっ、はい……。」」
2人はリサのオーラに慄き着替えに戻ったのだった。
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数分後--
普段着に着替えた2人と合流し、3人は街を散策した。商店街で食べ歩き、途中すれ違う人達に勇者だと気付かれたりしながら3人は束の間の休みを満喫するのだった。
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2時間程経った頃--
友希那「思ってた程騒ぎになったりしないものね。」
リサ「当然だよ。悪い事をしてる訳じゃ無いんだから。」
高嶋「あはは、そうだね。」
その途中香澄はとあるポスターに目が留まる。
高嶋「丸亀婆娑羅祭り…。」
友希那「丸亀お城祭りと双璧を成す市内最大のお祭りね。」
高嶋「もうそんな時期かー。今年も盛大にやるみたいだね。」
リサ「夏…祭り…。浴衣……っ!?」
リサの目が突然輝く。
リサ「浴衣を買いに行こう!!いや寧ろ今から着よう!!!」
友希那・高嶋「「何で今すぐ!?」」
リサ「他意は全然無いよ!2人の浴衣姿が見たいとか、全然そんな事は無いんだからね!!」
友希那「嘘よ。」
高嶋「嘘だ!」
リサの突然の暴走を2人は必死で止めた。
友希那「祭りでもないのに着るのは変じゃない。」
高嶋「そ、そうだよ。また今度にしよ?」
リサ「……分かった。」
2人は安堵するが、
リサ「じゃあお祭りの時は浴衣で撮影会ね!!」
リサは笑顔で答える。2人は逃げられないと悟ったのだった。
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夕方--
3人は海へと辿り着いた。
高嶋「とうちゃーく!!」
友希那「ここが今日の目的地だったの?」
高嶋「ううん、別に場所は何処でも良かったんだ。」
香澄は2人の方へ振り返り、
高嶋「話を…ね。」
友希那・リサ「「?」」
高嶋「私の事を…話したかったんだ。」
友希那「香澄の事?」
リサ「確かにあまり聞いた事無いよね。」
友希那「香澄は聞き上手だからついこちらの事ばかり話してしまうのよ。」
リサ「香澄は気遣い屋だからね。良い事じゃん。」
友希那「ええ。私もいつも助けられてるわ。」
高嶋「ありがとう2人とも、でも…違うんだ。」
そして香澄は俯き本音を語り出す。
高嶋「私は気不味くなったり、言い争ったりするのが苦手なだけ。相手の話を聞くばっかりで、全然自分を出さなくて…。あこちゃんに燐子ちゃん、紗夜ちゃんがいなくなってから、もっと話してたらって。私の事もっと知ってもらえたらって思うと…悲しくなって……。」
高嶋「だから…。」
香澄は2人を見る。
高嶋「友希那ちゃんとリサちゃんには知っておいて欲しいんだ、私の事を。」
友希那「香澄…。」
友希那とリサは互いに見つめ頷き答える。
友希那「ええ。聞かせてちょうだい、香澄の事。香澄の事をもっと教えて欲しい。」
リサ「もちろん、後で私達の事も聞いてよね。」
高嶋「…うん!ありがとう!!」
2人の言葉に、 香澄は笑って答えた。そして香澄は深呼吸して話し出す。
高嶋「私は勇者、高嶋香澄。奈良県出身で誕生日は1月11日。好きな食べ物はフライドポテトと白いご飯。小さい頃は--」
香澄の話は日が暮れるまで続き、2人は何も言わず黙って香澄の話を聞き続けるのだった。
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日も落ちた頃--
高嶋「うーーーん。こんなに話したのは生まれて初めてかも。」
香澄は伸びをする。
友希那「腹を割って話す事も良いものね。」
リサ「香澄の事がもっと分かった気がするよ。」
友希那「またこうして色々と話しましょう。」
高嶋「お出かけもいっぱいしたいし。」
リサ「次は浴衣でお祭りだからね。」
友希那「その為にも。」
高嶋「うん。」
リサ「そうだね。」
3人は手を繋ぎ、夜空を仰ぐ。
友希那「絶対に生き延びるわよ。」
3人は満月に誓った。そして、決戦の日はやって来る--
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樹海--
2人はゆっくりやって来たバーテックスを待ち構える。
友希那「大型が6体…。」
高嶋「前に紗夜ちゃんと3人で戦ったライオンみたいな奴はいないね。」
それぞれ左から、
"口が2つ上下にある完成型"
"巨大な板を持つ完成型"
"魚の様に宙を泳ぐ完成型"
"スカーフ状の触手を持つ完成型"
"左右に水の玉を持つ完成型"
"角を持つ完成型"
である。
友希那「1人3体ずつよ。」
高嶋「了解っ!じゃあ始めようか。」
2人はスマホに手を触れ、
友希那「降りよ--!!」
高嶋「来い--!!」
友希那「"大天狗"!!!」
高嶋「"酒呑童子"!!!」
神樹を守る2人の最後の戦いが始まった--
--勇者御記--
神樹様は土地神が集まったものなんだそうです。
でもその中には、---から--された
神様も混じっているとのこと。
それはとっても心強いな、と思いました 。
2019年8月 高嶋香澄 記