戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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蘭が託した勇者のバトンは300年経っても確かに勇者の心の中に生き続けています。




たった1人の英雄〈後編〉

 

 

バーテックスの脅威に怯えながらも、人々は神と勇者と巫女に祈りを捧げ、日々を懸命に生きる。諏訪は四国に比べて神の恵みが少ない為、物資も資源も不足していて生活は苦しい。それでも人々は、自給自足のささやかな暮らしに幸せを見出していた。

 

 

---

ーー

 

 

青葉モカはのんびりした少女だった。物心つく前から両親や祖父母の仲が悪かったせいで、諦め癖がついてしまっていたのだった。

 

モカ母「あんた、そんな事じゃ将来苦労するわよ。」

 

母親はモカの性格に苛立ち、冷たくそう言った。

 

モカ(自分の将来なんて想像出来ない。だけどきっと今と同じ様に、何も出来ず、誰の目にも止まらずに終わっていくんだろうなー。)

 

モカはそんな事を思うのだった。だからモカにとって、蘭との出会いは衝撃だったのだ。蘭は全く物怖じしない性格で、みんなの先頭に立って引っ張っていく。まるで自分とは正反対--

 

モカはそう感じた。

 

 

ーー

ーーー

 

 

 

8月末日--

 

上社本宮の参集殿に設置された通信設備で、蘭は四国と連絡を取っていた。四国は諏訪の他に唯一、人類生存が確認されている地域であった。湊友希那という少女をリーダーに、5人の勇者によって防衛されている。今蘭と通信しているのも友希那である。

 

蘭「はい、今日も襲撃はありましたが、無事に撃退しました。……私、怖いですから、こう見えても。って、この通信じゃ見えませんね。……ええ、他はいつも通り畑を耕してました。……自慢の野菜を、湊さんに送ってあげたいくらいです。」

 

通信している蘭を、モカは部屋の隅で本を読みながら見ていた。友希那と話している蘭は楽しそうである。こういう時、モカはなんだか良く分からない気持ちになる。心が騒ついて、落ち着かない。

 

蘭「それでは、またこの時間に。……通信を終えます。」

 

蘭は四国との通信を切り、モカの方を振り返る。

 

蘭「モカ、何でそんなジト目なの?」

 

モカ「蘭、四国と通信してる時の喋り方、変だよー。敬語で大人ぶって。似合わないなー。」

 

蘭「一応、四国との通信は勇者の公式な仕事だから。丁寧な言葉遣いにしないと。普通電話とか手紙だと、何となく丁寧語とかにならない?」

 

モカ「ならないよー。」

 

モカは素っ気なく答えた。

 

蘭「えっ、私だけ?でも湊さんも丁寧語使ってるしな……。」

 

モカ「私、ご飯食べてくるねー。」

 

蘭の言葉を遮り、モカは立ち上がった。

 

蘭「待ってよ、モカ!私も行くよ。一緒に食べた方が美味しいし。」

 

蘭と話しているとモカの心の騒めきは静まっていく。

 

モカ「……じゃあ、行こうかー。」

 

 

 

 

 

 

 

日が暮れて周りが茜色に染まる中、2人は行きつけの蕎麦屋に入った。

 

信州蕎麦--

 

それは長野が日本に誇る郷土料理である。蕎麦粉の原料となる穀物"ソバ"は、高冷地で育てやすい為、長野の風土に適している。その為、蕎麦は長野で多く作られる様になり、住人にとって欠かせない食べ物になっていった。

 

蘭「うん、いつも通り美味しい。」

 

ざる蕎麦をすすり、蘭が言う。ほとんど毎日食べてるのに飽きないのは、信州蕎麦が優れている証拠である。

 

蘭「温かい汁につけた蕎麦も良いけど、夏はやっぱりざる蕎麦に限るね。」

 

モカ「蘭は良く食べるねー。」

 

蘭「そう言うモカも結構食べてるでしょ。」

 

モカ「あははー、バレたかー。」

 

2人は大盛りの蕎麦を食べすすめていく。

 

蘭「でもソバの畑を増やさないと、蕎麦粉が足りなくなりそう。ソバは成長が早いから1年に2回収穫出来るけど、本当は結界外の高地の方が栽培には適してるんだよね……。」

 

食べながらでも、蘭の頭の中は農作業でいっぱいである。

 

モカ「蘭、さっきはごめんね。」

 

蘭「何、モカ。急にどうしたの?」

 

モカ「なんか不機嫌な態度とっちゃったからさー。」

 

モカの心にあったのは、幼稚な独占欲。蘭が自分以外の誰かと仲良くしていたから生まれてしまったものだった。

 

モカ「私には蘭が眩しいよ。いつも前向きで、一生懸命で、みんなの中心にいて……長野のみんなが、四国の湊さんだって、蘭の事が好きだろうしねー。」

 

それとは反対に、モカには友達と呼べる存在は蘭しかいない。だから蘭が自分以外の誰かと仲良くしているのを見ると、不安になる。自分だけが置いてけぼりになるのではないかと思ってしまう。

 

蘭「モカだって、みんなから大人気だと思うけど。長野の人は誰だってモカの事好きだし。」

 

モカ「それは私がたまたま巫女に選ばれただけだからじゃないかなー。だから蘭とも友達になれて、特別視されてるだけだよー。」

 

蘭は勇者という立場関係なく、元々努力家で、だから誰もが好意を抱く。"巫女だから。"美竹蘭のパートナーだから"という理由で愛されているモカとは、根本的に違うのである。

 

モカ(私は何も持ってない……たまたま巫女に選ばれていなかったら、きっと--)

 

蘭「モカ!!」

 

その時、蘭はモカの額を突いた。

 

蘭「後ろ向きに考えるのはやめな。モカは自分の凄さに気付いてないだけ。私は知ってる。モカだって人を助けてた事。」

 

モカ「蘭……。」

 

蘭「昔、結界の外から避難してきた子供を、バーテックスから助けてたじゃん。モカが自分で結界の外に出て、バーテックスを自分に引きつけて……そのお陰で、この子は無事に避難出来た。凄い事じゃん。」

 

モカ「それは、結局その後蘭が来てくれたから助かったんだよ。私だけだったら、あの子も私も殺されてた。」

 

蘭「でも、普通は出来ないよそんな事。だって戦う力を持った私が人を助けるより、ずっとずっと勇気がいる事なんだから。」

 

モカ「なんだか照れるなー。」

 

モカの顔が赤くなる。

 

モカ(けど、私があんな風に頑張って人を助けようと思えたのは……やっぱり蘭が前に立って頑張ってくれてるからかな。)

 

 

蘭の存在が、モカに勇気を与えてくれる--

 

 

蘭がいるから、モカはほんの少しだけ特別になれるのである。

 

 

 

 

 

 

 

諏訪と四国は、日に日に回線が繋がりにくくなっていった。

 

友希那『もちろん、うどんの方が優れているわ……ザーッ……比べるまでも無いわよ。』

 

蘭「ええ、比べるまでもなく、蕎麦の方が優れているのは明らかですよ。」

 

友希那『……ザーッ……香川のうどんを食べた事があるのかしら?…ザーッ……程よいコシと喉越し…。』

 

諏訪の土地神の力が弱まっている事を、蘭もモカも感じていた。だが蘭は変わらず、前向きな姿を見せ続ける。

 

 

毎日、畑を耕し--

 

 

バーテックスが襲来してきたら戦って--

 

 

定期的に四国と通信して--

 

 

そうやって、バーテックス出現から4度目の諏訪の夏は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

9月--

 

大規模な襲撃が起こった。敵の数はあまりに多く、蘭はかなりの重傷を負ってしまう。大量のバーテックスに噛まれ、体当たりで吹っ飛ばされ--

 

それでも最終的には全ての敵を打ち倒し、諏訪には一切の被害を出さなかった。戦闘が終わると、蘭は病院よりも先に、通信設備がある上社本宮の参集殿へとやって来た。

 

モカ「蘭、何やってるの!?傷の手当てをしないと!」

 

普段のんびりしているモカも声を上げて訴えるが、蘭は無理に作った笑顔で答える。

 

蘭「今日は……四国との通信の日でしょ?……ちょっと時間過ぎちゃってるけど…。」

 

いつもの定時連絡より、2時間は遅れていた。

 

モカ「傷の治療が先だよ!」

 

蘭「四国との連絡も、私の大切な"いつも通りの日常"なの……。だから、守っていかないと--」

 

そうして蘭は通信機を起動させる。

 

 

 

友希那『--四国の湊よ。今日は連絡が遅れ……ザーッ……ザーッ……。」』

 

通信のノイズがいつも以上に大きいく、言葉も途切れ途切れにしか聞こえない。

 

蘭「すみません、湊さん。少しこちらで大きな戦闘があったので……。」

 

友希那『……ザーッ……構わないわ。何かあったの…ザーッ……。』

 

蘭「本日午後、バーテックスとの交戦がありました。」

 

友希那『……ザーッ……被害は……ザーッ……。』

 

蘭「問題無いです。私は傷を負いましたが、人的被害は無しです。」

 

時折、傷の苦痛に顔を歪めながらも、蘭はいつも通りに話していく。そんな蘭を見ながら、モカは遣る瀬無い気持ちになる。結界は狭まり、土地神の力は弱まり、バーテックスの攻撃は激しさを増していく。

 

 

 

蘭も分かっている筈である--

 

 

 

諏訪はもう長くは保たないと。

 

モカ(もう限界だよ……土地神様………。)

 

モカは訴えるように心の中で叫ぶ。だが、その声が神に届いているかは分からない。巫女と言っても、神戸の会話は常に一方通行なのである。昔の神託では、四国でのバーテックスの襲撃が収まった時、四国と諏訪で挟撃して国土を取り戻すと伝えられていた。四国にはバーテックス対策機関である"大社"があり、しかも勇者が5人もいる。準備さえ整えば、きっと戦況を好転出来るから、それまで待つように、と。しかし--

 

 

 

モカ(これ以上はもう待てない……!諏訪が…蘭が…もう…!)

 

 

 

モカに新たな神託が下ったのは、それから間もなくしてからだった--

 

 

 

かつて無いほどの大襲撃が起こる--

 

 

 

バーテックスによる総攻撃になるだろう。恐らく結界は破られる。諏訪内部への侵攻は避けられない、と--

 

 

 

 

 

 

 

神託が下った後でも、蘭は変わらなかった。畑に実った収穫間近の野菜を見ながら、蘭は言う。

 

蘭「かぼちゃに大根、とうもろこし。いつも通りちゃんと育ってる。ねえ、モカ。本宮に保管してある種、何が残ってたかな。」

 

モカ「……色々残ってるよ。ソバとか大根とか…。」

 

モカは声が震えるのを抑えるので必死だった。

 

蘭「良いね。ソバと大根なら種を植えるのに丁度いい季節だし。」

 

 

 

 

モカ「--蘭は………。」

 

蘭にモカは言葉を詰まらせながら言う。

 

モカ「蘭は、どうしてそんないつも通りなの…?怖くないの!?私達は、もう、明日………!」

 

 

 

殺される--

 

 

 

そんな言葉が喉まで出かかった。蘭がどんなに強くても、前回以上の戦いになれば、きっと勝てない。そして、結界が破られれば、バーテックスは諏訪に殺到し、諏訪は崩壊する--

 

だが、蘭はいつも通りの笑顔で、

 

蘭「怖いよ。本当は凄く怖い。」

 

そう言うのだった。笑顔が次第に崩れ、蘭の表情にははっきりと恐怖が浮かぶ。モカが蘭のこんな顔を見るのは初めてだった。

 

蘭「でも、怖くても……何も出来ないのは、絶対に嫌だ。怯えて何も出来なくて……目の前で大勢の人が死んでいくのは、もっと怖いから…。」

 

蘭は本心を吐露する。蘭も無理をして頑張っていた--

 

モカにもそれは分かった。そして蘭は、すぐまた笑顔に戻って言った。

 

蘭「大丈夫、私は1人じゃない。モカがいる。離れてるけど、四国にも勇者の仲間達がいる。だから……だから、頑張れる。」

 

モカ「………っ!」

 

モカは泣きそうになる。だが、必死で堪える。蘭が泣いていないのに、自分が泣く訳にはいかないから。

 

蘭「そうだ、モカ。私達がここにいた証を……想いを、いつかきっとここに来る人達の為に、遺しておこうよ。」

 

そう言うと蘭は大きな木箱を持ってきて、中に鍬と1枚の手紙を入れ、2人で畑の側の地面を掘って、木箱を埋めた。

 

蘭「いつか誰かが、これを見つけてくれたのなら……私達の想いは繋がっていく。願いは託される……きっとね。」

 

蘭はそう言って微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

そして、最後の日が始まる--

 

蘭「……最後っ!!」

 

蘭は上社本宮の御柱を襲撃してきたバーテックスの、最後の1体を鞭で打ち倒した。

 

蘭「はぁ……はぁ………流石の私も、辛くなってきた…。」

 

倒れそうになった蘭をモカが支える。

 

モカ「蘭、しっかり!」

 

蘭「ありがと、モカ……。」

 

もう何度目の襲撃か覚えていない。朝からずっと襲撃を知らせるサイレンが鳴り止まない。人間離れした体力を持つ勇者とは言え、蘭の疲労は限界に来ている。怪我も身体中に目立っている。だがこれまでの戦いは、バーテックスの総力では無い。神託で告げられた程には、敵の数は多くないのである。あくまでも様子見、若しくは蘭の体力を削る為の囮だろう。そんな中突如、モカの脳裏に抽象的なイメージが浮かぶ。

 

モカ(また神託が……。)

 

そしてモカは口を開く。

 

モカ「来る……これが、総攻撃だ…。」

 

結界を取り囲む様に、凄まじい数のバーテックスが出現している。モカの体の震えが止まらない。

 

 

 

諏訪の終わりが始まる--

 

 

 

だが蘭は、

 

蘭「……そろそろ、四国と、通信の時間だ。行かないと……。」

 

ボロボロになって、絶望が目の前に迫っても、蘭はいつも通りの日常を守ろうとしていた。モカも、もう蘭を止める事は無かった。蘭を支えながら、一緒に参集殿へと歩いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

蘭は震える手で通信機のスイッチを入れる。

 

蘭「はぁ…み、湊さん……良かった繋がって……。」

 

友希那『何かあったの!?』

 

蘭「はぁ…はぁ……ち、ちょっと手強いバーテックスを退けましてね……。今日は朝からずっと、戦い続けてる感じで…。な、何とか犠牲者は出さずに済みましたが……。もう………。」

 

参集殿の中で、傷や疲労感を押し隠しながら四国と通信する蘭の姿を、モカは何も言わずに見つめていた。

 

蘭「そちらも大変だとは思いますが……頑張ってください。諦めなければ…きっと何とかなる筈です………。私も、無理な御役目かと思いましたが…予定より2年も長く続けられて……沢山野菜も育てられましたし、湊さんとも友達になれました……。とても幸せです。」

 

友希那『死な……ザーッ……竹さん!ここや……ザーッ……反応があったの!私達も……ザーッ……望を捨てないで!!』

 

蘭「そう……ですか…。まだ希望はあるんですね………。」

 

最後に微かに聞こえた。他の場所での生存の可能性。

 

友希那『そう……ザーッ……だから……ザーッ……。』

 

蘭は通信機越しに微笑み、噛みしめる様に告げる。

 

 

 

 

 

蘭『湊さん………。私の大切な友達……。私たちの想い、あなたに託します。』

 

その言葉を最後に蘭は通信を切った。もうこの通信機が四国と繋がる事は2度と無いだろう。モカは蘭の傍に寄り添い、そっと抱きついた。もう我慢しようとしても、目から涙が溢れてしまう。

 

モカ「言いたい事は言えた?」

 

蘭「うん。私の意思は湊さんが継いでくれるよ……。」

 

モカ「そうだね…。今、また神託があったんだ。最後の神託だって……。」

 

蘭「どんなお告げだった?」

 

蘭は涙するモカに、優しく問いかける。

 

モカ「良く3年間も諏訪を守り続けたって…蘭と私が敵を引き付けてくれたお陰で、四国は総攻撃に対する準備が整ったって……。」

 

蘭「そっか………。」

 

蘭もモカも薄々気付いてはいたが、諏訪は四国の迎撃体制が整うまでの囮に過ぎなかったのだ。

 

モカ「でも、こんなのって………。」

 

あまりに理不尽だと、モカは思う。だが蘭は、安心した様に笑っていた。

 

蘭「私達の3年間の頑張りは無駄じゃなかったんだね……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭とモカは、上社本宮の境内に立っていた。空を埋め尽くす程の大量のバーテックスが結界の周囲に浮かんでいるのが見える。一部のバーテックスは融合し、"進化型"へと姿を変える。間も無く、化け物どもは一斉に雪崩れ込んでくるだろう。

 

モカ「ねえ、蘭。」

 

蘭「何?」

 

モカ「蘭は将来、農業王になるんだよね?」

 

蘭「うん。私が作った野菜を、沢山の人達に食べてもらうのが私の夢。」

 

モカ「そっか……。私はね、夢なんて持った事が無かった。」

 

蘭「……。」

 

モカ「きっと何にもなれない様な、つまらない人生を送るんだって思ってた。だから……夢なんて無かった。」

 

蘭「モカ……。」

 

モカ「でも、蘭と出会ってから変わった。蘭が傍にいてくれれば、私でも何かになれるんじゃないかって思った。」

 

蘭「うん……。」

 

モカ「私は将来、宅配屋さんになるよ。それで蘭が作った野菜を日本中に届けるんだ。」

 

蘭「日本中に?」

 

モカ「そう。最初は仕事のやり方が分からなかったり、蘭と方針の違いで喧嘩したり、中々上手く行かないんだ。」

 

蘭「うん。」

 

モカ「でも、喧嘩しても、すぐ仲直りして。段々、ちゃんと宅配の仕事も出来るようになって。」

 

蘭「うん……。」

 

モカ「蘭の野菜は評判が良いから、口コミで色んな人から注文が殺到するんだ。私は毎日忙しく働いて、沢山の野菜を届けて。」

 

蘭「うん………。」

 

モカ「その内、大人も、子供も、貧しい人も、お金持ちの人も……みんな…蘭の作った野菜を食べて……笑顔になる………。」

 

蘭「うん……うん………!」

 

モカ「それが……私の夢。」

 

 

 

 

蘭「……だったら………。」

 

蘭は空を埋め尽くすバーテックス達へと目を向けた。

 

蘭「モカと私の夢の為に、この世界を壊させる訳にはいかないね!!」

 

化け物達が、一斉に上社本宮へ雪崩れ込み始める。

 

蘭「モカ……。」

 

モカ「なに……?」

 

 

 

 

 

 

 

蘭「モカが一緒にいてくれたから…私は今日まで頑張ってこれたよ……。」

 

そう言って微笑んで、たった1人の勇者である美竹蘭は、地面を蹴って跳躍した--

 

 

 

 

モカ「うん……。最期まで一緒にいるよ、蘭………。ずっとここで見てるから………。」

 

 

 

蘭(ありがとう………モカ……。)

 

 

化け物の群れに向かっていく蘭の最期の姿を、モカはその場から一歩も動かず、いつまでも見続けていた--

 

 

 

 

 

 

 

 

神世紀元年6月、丸亀城天守閣--

 

湊友希那は1枚の手紙を読み返していた。何度も何度も読み返した、諏訪からのあの手紙。

 

友希那(美竹さん……。あなたを始め、私たちは多くの仲間を失ってしまった…。けれど、あなたが託してくれたこのバトンは私達が次の世代へ必ず受け継いでいくわ。だから、安心して見守って頂戴……。)

 

そう心に誓いながら友希那は何処までも広がる青空を見つめた。

 

リサ「おーい、友希那ー。」

 

友希那が声に振り返ると、そこにはリサがいた。

 

リサ「やっぱりここにいた。何してたの?」

 

友希那「ちょっと諏訪の事を思い出してたの………。」

 

リサ「そっか……どんな勇者だったんだろうね。」

 

友希那「きっと素敵な人よ。そして最も勇気があった勇者……。」

 

リサ「うん…友希那が言うなら間違いないね。」

 

友希那「そうね…。それより、リサ。何かあって来たんじゃないの?」

 

リサ「あっ、そうそう。勇者システムのアップデートの件で大赦に行ったからその報告をとね。」

 

友希那「それじゃあ、教室に行きましょう。」

 

そうして2人は教室へと移動する。

 

丸亀城の庭では金糸梅の花が風に揺られていた--

 

 

 

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