戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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西暦の2人の尽力があり、神世紀の勇者達は救われたのです。

そして実際に奇跡は起きました--




努力の結晶

 

 

薄暗い社殿の中で蝋燭の炎が揺れている。唯一の光源は、集まった者達の姿を薄闇の中で照らしていた。ここに円座にて集った者達は、主に"大赦"所属の神官である。その中でも、特に発言力が強い者たちが集められていた。

 

だが、それ程高位の神官たちが集められていても、今この場を支配しているのは彼らでは無い。まだ中学生にすぎない1人の少女--

 

 

今井リサである。

 

 

今日、神官達を招集したのはリサである。彼女は非常に重要な要件があると言うのだ。神官たちに緊張がはしる。西暦の時代を唯一生き残った勇者・湊友希那を導いたという実績ゆえ、今やリサの発言力は強力なものとなっている。加えて昨今、リサは戸山明日香を始めとした有力な巫女達をまとめ、大赦内で大きな勢力を作り始めていた。

 

巫女の最高権威である少女は、大人たちに囲まれながらも、ただ静かに目を閉じ、正座している。少女の無言の姿は社殿内に厳かな沈黙を生み出し、空気はまるで重みを持っているかの様に神官達を押さえつける。彼らは、自分よりもはるかに年下の少女が放つ威厳に、完全に支配されていた。神官たち全員の前には、紙の束が置かれている。

 

 

ゆらゆらと揺れる蝋燭の炎--

 

 

呼吸さえ止まっている様な静寂--

 

 

質量すら持っていそうな重圧感--

 

 

神官達は巫女の少女を見つめ、その言葉を待つ。やがてリサはゆっくりと目を開け、話し始めた。

 

リサ「それじゃあ企画書の1ページ目を見てください。本日の議題は、勇者システムのアップデートに際し、新たなイノベーションをもたらすメソットの提案です。題して"初代勇者応援プロジェクト"。続いて2ページ目を見てください。」

 

リサの言葉を受け、神官たちは目の前に置かれた企画書の表紙ページを、厳かにめくった。同時に、プロジェクターからスクリーンに、プレゼンテーションソフトで作成された映像が映し出される。リサは企画の概要を語り続けた。

 

リサ「本プロジェクトは勇者のメンタル面の保全に対し、大きな効果をコミットするもので--」

 

 

---

ーー

 

 

時は2日前に遡る--

 

丸亀城、友希那の部屋--

 

リサ「勇者システムの強化案?」

 

以前2人が話していた勇者システムの強化案について、友希那がリサに詳しい内容を提案してきた。

 

友希那「ええ。少しでも未来の勇者達の手助けになればと思ってね。基礎的な戦闘能力の強化だけでなく、心理的な面でもサポート出来るシステムを加えた方が良いと思ったの。」

 

勇者の戦いにおいて、精神面が重要な事は友希那が1番身をもって知っている。人間を超越した身体能力を持つ勇者であっても、心はただの少女に過ぎない。

 

 

傷付きやすく、脆く、壊れやすい--

 

 

その無防備さこそが、紗夜の悲劇をもたらしたのだから。

 

リサ「精神面のサポート……それが出来れば1番良いんだけど。」

 

しかし心とは複雑なものである。人が100人いれば100通りの心があるのだ。

 

友希那「私も具体的に確信のある案は出せないけれど……ほんの一手間でいいの。」

 

その時、友希那が閃く。

 

友希那「これはどう?変身すると、私の声が何処からともなく聞こえてくるの。」

 

リサ「………っ!?」

 

その提案にリサは一瞬硬直する。

 

リサ「友希那の声が何処からともなく聞こえてくるなんて……最高じゃない!?」

 

友希那「でしょ。記録に残っている勇者達全員の肉声を使っても良いわね。」

 

リサ「良いね!私なら力が100倍になるし、音声再生するだけだから、きっと実現可能だよ。」

 

友希那「では、早速組み込みましょう。」

 

リサ「でも……友希那はどんな事喋るの?」

 

期待を込めてリサは友希那を見つめる。友希那は塾考し、答える。

 

友希那「負けないで!立って!頑張りなさい!とか、ポジティブな事を言い続けるの。」

 

友希那の提案にリサは目を輝かせる。

 

リサ「良いじゃん良いじゃん!」

 

友希那「きっと未来の勇者達も元気付けられて、挫ける事は無くなる筈よ。」

 

リサ「早速、大赦に提案しよう!今から企画書を作るよ!!徹夜で企画書を仕上げないと!」

 

2人はノリに乗っていた。リサはパソコンで企画者を作り始め、翌朝までに数十ページにも及ぶ企画者を作り上げ、そのまま一睡もせずに大赦へ向かった。その間、友希那はどんな言葉を未来の勇者に告げるか、真剣に考えていた。

 

 

ーー

ーーー

 

 

そしてリサは今、大赦の神官達にプレゼンをしているのである。最後まで説明し終えたリサは、神官達に頭をさげる。

 

リサ「私からの意見は以上です。検討のほど、よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

翌日--

 

リサは非常にがっかりした顔で丸亀城に帰還した。

 

リサ「ボツになっちゃった…。」

 

友希那「どうして!?」

 

友希那は既に原稿用紙50枚程の言葉を書き連ねていたのだ。

 

リサ「戦闘中ずっと声が聞こえてるなんて、集中出来ないだろって……。」

 

友希那「……確かにそうかもしれないわね。」

 

リサ「そもそも勇者に選ばれる者達は、応援されなくても戦えるくらいのガッツはあるはずだって……。」

 

友希那「……それもそうね。」

 

友希那はぐうの音も出なかった。

 

友希那「仕方ないわ……諦めるしか…。」

 

リサ「いやっ!!まだ諦める必要はないよ!!」

 

リサは前のめりで叫んだ。

 

リサ「ボツになったけど、初代勇者が励ますシステムは決して悪い事じゃないよ!」

 

友希那「やっぱりリサもそう思う?」

 

リサ「もちろん!だから、より有用に深いところで役立つプランがあったんだよ。」

 

友希那「何かしら?」

 

友希那は興味津々でリサに尋ねた。

 

リサ「友希那も前に言ってたでしょ、精霊システムだよ。」

 

友希那「なるほど……私が"義経"の様な精霊になれば、未来の勇者達とずっと戦い続けられるわね。」

 

友希那は精霊の姿となった自分を想像する。未来の勇者の傍に、守護霊の様に威風堂々と立つ自分の姿を。この時、友希那はまだ知るよしもなかった--

 

 

約300年後に誕生する、目に見える形の"精霊"がマスコットキャラクターの様な姿になるという事実を--

 

 

友希那「カッコいいじゃない。そして同じ勇者である私が傍にいる事で、未来の勇者達も心強く感じる筈よ。1人で戦っているんじゃ無い、と。やってみましょう!」

 

リサ「でも、残念だけど、狙って精霊になる技術は無いんだ。」

 

友希那「……そうなのね…。」

 

即答でリサに否定されてしまう。

 

リサ「でも、擬似的な事なら出来るかも。能力を持つ精霊じゃなく、あくまでビデオ映像の様な、再生専用の精霊だったら……。」

 

友希那「再生専用…?」

 

リサ「今までの戦いを思い出してよ。精霊のせいで溜まった穢れは内側から、ネガティブな言葉や映像を出してきたよね?友希那の擬似精霊は、内側からポジティブな声や映像を出すんだよ。」

 

友希那「映像や声……だけなの?」

 

リサ「うん……多分そこまでが限界だね。」

 

友希那「だけどそれだけなら、結局戦闘中は邪魔になるんじゃないかしら?」

 

リサ「だから、邪魔にならない時に限定するんだよ。例えば敵の精神攻撃で、心を砕かれた勇者。戦いのせいで心を病んだ勇者。そんな勇者に対して、友希那の擬似精霊が現れて元気づけるんだよ。」

 

友希那「それなら戦いの邪魔にはならないわね。」

 

2人の話は弾んでいく。

 

リサ「ただし期待しないで欲しいのは、あくまでも"友希那の記憶"が励ますだけだよ。温もりのある励ましは出来ると思うけど、それ以上は何も出来ないよ。その声や映像も、決して全てをそのまま伝えられるとは限らないし、抽象的なイメージになるかもしれない。………だから結局は、心折れた勇者が立ち直れるかどうかは本人次第だよ。」

 

リサの言葉に、友希那は頷き言った。

 

友希那「構わないわ。少しでも手助けになれる可能性があるのなら……それで良い。」

 

こうして友希那擬似精霊化計画はまとまり、大赦からの許可も出た。大赦からは一部、効果を疑問視する声も出たが、それでもやらせて欲しいとリサは強く訴えたのだった。

 

 

 

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