戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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今回は少し区切りが良いので短めです。

こっちはこっちで曲者が揃ってますね。




もう1人のイヴ

 

 

2回目の結界外調査が行われる。新しく防人となった4人は最低限の武器の使い方を教え込まれただけで戦地へと赴く事となる。それだけ大赦は焦っていたのだ。

 

千聖「今回も密集陣形で行きます!目標地域までの到達予想時間は30分。それまで持ち堪えて!」

 

千聖の指示通りに防人達は進んで行く。前回は壁のすぐ近くの土壌調査だった為、壁の近くから動く必要は無かったが、今回は西暦の"中国地方"と呼ばれた地域まで行き、採取と調査を行う。勇者達より運動能力が低いとはいえ、何も妨害が無ければ壁から中国地方までは然程時間は掛からない。だが、事はそう上手く運ばなかった。

 

花音「ふ、ふえぇぇぇっ!!」

 

花音の悲鳴は最早敵が来るのを知らせるアラートと化していた。密集して進む防人達に星屑の一群が迫ってくる。

 

千聖「護盾隊は盾を展開!銃剣隊の奇数番号は星屑と交戦!偶数番号は交代の為に盾の内側で待機して!!」

 

移動速度は落ちるが、護盾隊は盾を組み合わせ隊全体を覆いながら進んで行く。

 

千聖(敵が星屑だけなのが幸いね…。)

 

本当に恐ろしい敵は"完成型"と呼ばれるバーテックスである。星屑とは比にならない程巨大で、圧倒的な攻撃力と防御力を誇る。西暦の時代では"御霊"と呼ばれる核を持たない個体が出現していたのだが、そいつらですら勇者でさえ戦えば命の保証は無いと言われている。"御霊"があると無いとではまた力の差が開き、2年前の先代勇者達の時は追い返すだけが精一杯だったのだ。

 

だが、12体いると言われる"完成型"バーテックスは現勇者達に全て倒された直後であるらしく、しばらくは出現しないと大赦は予測しているようだ。

 

 

--

 

 

負傷者を出しながらも千聖達は目的地にたどり着くが、そこも延々と爛れた大地が広がっているだけであった。防人の戦衣は周囲の映像を記録する機能があり、この光景は全て大赦へと送られる。

 

千聖「……最悪の景色ね…。」

 

千聖は気分が悪くなるが、任務に集中する。他の防人達が羅摩を使って採取している中、近づけさせないように星屑と戦って部隊を守り続ける。

 

 

--

 

 

千聖「撤退開始っ!!」

 

充分な採取が出来た為、千聖の合図と共に防人たちは後退を開始する。

 

日菜「はぁー、はぁー…今回も簡単な御役目だったね。歯応え無さ過ぎて…ふぅ…ふぅ……退屈だったよ…。」

 

花音「日菜ちゃん、物凄く息切れしてるよ?しかもかなり傷だらけだし。」

 

日菜「うるさいなぁー花音ちゃんはー。そんな事言ってると敵陣に放り出しちゃうよー。」

 

日菜「ふえぇぇっ!ごめんなさい〜!」

 

千聖「日菜ちゃん、考え無しに突っ込むのは止めてちょうだい。疲れてるなら盾の中で休んでて構わないから。」

 

日菜「えー、やだー。敵をいっぱい倒して功績をあげるんだから。」

 

疲れて傷だらけな日菜だが、彼女の目はやたらと闘志に満ちていた。その時だった--

 

 

 

花音「あ……あれっ!」

 

千聖「今度はどうしたの、花音?」

 

花音「あっち…なんか星屑がいっぱい集まってるよ!」

 

花音が指差す方を見ると、空中で何体もの星屑が粘土の様にひとまとまりになって新たな形を形成していたのだ。千聖は神官から聞いた事を思い出す。

 

千聖(あれは融合!時期的に完全なバーテックスが出来る事は無いだろうけど"進化型"なら出てくる可能性が高い!!)

 

星屑の融合が終わる。角の様なものを持ち、体は丸く、赤と白を基調とした姿であった。大きさは星屑とは比べものにならない程大きくなっている。

 

花音「何あれぇぇぇ!」

 

花音は必死で千聖にしがみついていた。融合して生まれた"進化型"は、撤退途中の防人達の最後部へと迫る。そこには、イヴがいた--

 

 

--

 

 

巨大な"進化型"の接近に気づいた護盾隊の1人が盾を展開するが、大き過ぎる巨体の突撃に耐えれる筈もなく、紙クズの様に蹴散らされてしまう。"進化型"の大きさと攻撃力の前に防人達は一瞬で戦意を喪失してしまった。イヴも目の前に迫る"進化型"の巨体に愕然としている。

 

イヴ「……死ぬ?」

 

その言葉が自然とイヴの口から溢れる。

 

 

死--

 

 

祭壇--

 

 

棺--

 

 

献花--

 

 

イヴの記憶がフラッシュバックしていく--

 

 

花の中に横たわる少女--

 

 

勇者の御役目で死んだ少女--

 

 

名誉だと言う声--

 

 

座る者のいない机--

 

 

いつも明るくみんなの中心にいた少女--

 

 

イヴ「…嫌だ。死ぬなんて嫌……死ぬって何…?」

 

 

イヴは目を見開く--

 

 

--

 

 

後方が"進化型"によって危機に陥っている時、千聖達前方も星屑の襲撃に遭っていた。

 

千聖「退きなさいっ!!」

 

千聖は必死で星屑を倒しながら後方へと向かうが、敵の数が多すぎてたどり着けない。

 

千聖「くっ、こんな奴らに手間取ってる暇はないのに……!!」

 

焦る千聖を他所に、"進化型"は座り込むイヴを丸呑みした--

 

千聖「イヴちゃんっ!!」

 

千聖が叫ぶ--

 

 

 

が、同時に銃声が響き渡った。

 

 

 

千聖「…えっ!?」

 

銃声は"進化型"の内部から発せられたものであった。同時に"進化型"の体が内部から弾ける--

 

 

直後その中からイヴが出てくる。千聖は安堵するが、どこかイヴの様子がおかしかった。

 

イヴ?「ったく、このデカブツがあああああっ!!3枚に下ろしてやるよっ!!」

 

突如吠えたかと思えば、イヴは"進化型"へと飛びかかり、銃剣の切っ先で巨体を突き刺し、同時に銃を乱射する。イヴは凄まじい勢いでそれを繰り返して"進化型"と互角以上の戦いを繰り広げ、あっという間に"進化型"は消滅してしまう。

 

花音「だ……誰、あれ……。」

 

花音は恐怖からか結界内に戻るまで震えが止まらなかった。かくしてイヴのお陰で2回目の御役目も誰1人死ぬ事なく帰って来る事が出来たのである。

 

 

 

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