戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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花音に焦点が当たります。


彼女は何故臆病なのか。彼女の武器は本能--




臆病なりの戦い方

 

 

ある日の夜、花音は千聖の部屋で彼女にしがみ付いて叫んでいた。

 

花音「ありがとう、千聖ちゃん!!やっぱり千聖ちゃんは勇者だよ〜!」

 

千聖「まったく、調子が良いんだから。」

 

千聖は呆れながらの口調だったが、何処か表情は柔らかくなっていた。防人の中で最優秀な千聖と最下位の花音。性格も正反対の2人が何故こんなにも結び付きが強いかの原因は、花音の性質によるものが非常に大きかった。

 

 

---

 

 

幼い頃、花音はブランコに乗る事が出来なかった。同年代の子供達が楽しそうに遊んでいる中、花音はいつも思うのだった。

 

花音(何でみんなあんなに怖い事が出来るんだろう?途中で落ちたり、金具が取れたりしたらどうしよう…。)

 

そんな事を想像すると花音は恐怖で乗れなくなってしまうのである。花音は何かと最悪なパターンを想像してしまうのだ。ビルに登れば、ビルが壊れる事を想像してしまったり、遊園地に行けばアトラクションが何かの拍子で止まってしまう事を想像してしまう。風邪を引いた日にはその風邪が悪化してしまう事を想像してしまうのだ。

 

花音は臆病者ではあったが、臆病な自分は好きではなかった。それは他人に対しても同じである。怖そうな人を見ればイジメられるのではないかといつも怯えていた。だから花音はヒエラルキーが高い人を見つけ出してその人の懐に潜り込むのだ。自分を守ってもらう為に。

 

格好悪いという事は自分でも自覚していた。だがこれは花音なりの処世術なのだ。だけどそんな自分が嫌いだという事もまた自覚していたのだった。

 

そんな風に幼稚園と小学校を過ごしていき、中学校に入ってもその処世術を生かして花音はある同好会に参加した。理由はその同好会の1人がヒエラルキーのトップであり、その人からこの同好会に勧誘されたからだった。この同好会の部員は4人ほどで、特に決まった活動も無く放課後にダラダラと喋っているだけの集まりだった。花音にとってもここには自分を脅かす人はいなくまさに箱庭のような場所であった。

 

だが一つだけ気になったのが、何故ヒエラルキートップの人がこんな存在意義さえ不明な同好会を作ったのかという事である。そんな疑問を心の片隅にしまいながら花音は学校生活を過ごしていく。

 

 

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しかし、そんな生活は1年ほど続いた夏突然の終わりを迎える。

 

部長「同好会は今日で解散しましょう。」

 

部長が突然それを口にしたのだ。あまりにも唐突な話である。当然花音は必死で解散を止めた。何故なら後ろ盾を無くしてしまうからだ。だが、部長は少し悲しげな表情で花音に伝える。

 

部長「もうこの同好会は意味が無いのよ。」

 

それでも花音は引き下がらなかった。そんな花音を見た部長は仕方なくと言った表情で解散の本当の理由を教えてくれたのだ。

 

部長「実は私は"大赦"って所の人間なの。四国を襲ってくる"バーテックス"と戦う人達を集める為に"勇者適正の高い人達"を集めてたんだよ。」

 

花音は部長が何を言っているのかが分からなかった。それでも部長は話し続ける。

 

部長「四国の各地で同じようなグループが中学校で作られてるのよ。そしてバーテックスが攻め込んできた際に、神樹様に選ばれたいずれかのグループが"勇者"として覚醒するの。」

 

にわかには信じ難い話であるが、常に最悪の展開を想像してきた花音にとってはそれをすんなり信じた。そして花音は理解する。既にバーテックスの進行は始まっていて、花音達のグループは勇者に選ばれなかったという事を。

 

花音はゾッとした。もし勇者に選ばれていたら、危険な御役目とやらを背負ってたかもしれないのだから。花音はこの時部長を恨んだ。何も知らせずに勝手に死地へと放り込もうとしたんだ、と。

 

けれど、そんな考えはすぐにお門違いだと気づいたのだった。何故なら花音の方からこの同好会に進んで入会したのだから。

 

花音(何で自分はこんなに臆病なんだろう……。)

 

今でも花音は考えているのだった--

 

 

---

 

 

そして今--

 

花音は何の因果か防人として御役目に就いている。花音に与えられた番号は32番。即ち花音は防人達の中で最弱であると大赦から評価されているのである。だが、その評価を覆して花音は今5度目の結界外の調査に参加していた。

 

 

--

 

 

花音「ふえぇぇぇぇっ!!!何あれ!?絶対無理絶対無理だよ〜!!」

 

花音が叫ぶ事は毎度の事だが、今回は状況が違っていた。星屑が無数に集まって異形の巨体が形成されていく。そして、それは"進化型"をも上回る大きさになった。千聖はその姿に見覚えがあった。

 

千聖「あれは……"射手型"!?」

 

その姿はまさしく勇者が戦う相手である星座の名を冠する12体の"完全型"の内の1体そのものだった。

 

"完全型"が出現する事は無いと女性神官は言っていた。だが、西暦の時代に出現した"完成型"は出現する可能性があるという。外見は"完全型"と"完成型"は全く同じだが、唯一違うのは"完成型"には核となる"御霊"が無いのだ。その為、"完全型"よりは脆弱だがそれでも到底防人達が敵う相手では無かった。

 

千聖「サンプルの採取を今すぐ中止して!!全員すぐに撤退を!!」

 

千聖は迷わず防人達に指示を出す。だが、退路に星屑が迫っていた。

 

千聖「銃剣隊は迎撃して!!」

 

千聖の指示で星屑に向かって一斉射撃を開始する。

 

日菜「この程度の雑魚、私の敵じゃないよ。千聖ちゃん、強行突破と行こうよ!」

 

迎撃しつつ日菜は強気に言うが、

 

花音「待って待ってよ〜!強行突破なんて絶対に無理だよ〜!!」

 

花音が必死でそれを阻止しようと叫び出す。

 

日菜「だったらどうするの!?星屑よりも後ろの"射手型"の方が危険だよ!」

 

後方では"射手型"がどんどん形成されていく。"射手型"の攻撃は2種類あり、上の口から巨大な一本の針を飛ばす攻撃と、下の口から無数の小さな針を飛ばす攻撃である。どちらの攻撃も防人達にとっては致命的な攻撃だ。

 

花音「前は星屑が沢山、後ろは"射手型"!どうしたら良いの〜!!」

 

花音は座り込んでしまう。

 

日菜「そんなんじゃ無駄死にするよ!立って!!」

 

日菜は座り込んだ花音を引きずろうとするが、

 

千聖「待って、日菜ちゃん。完全に星屑に囲まれている今、撤退は間に合わないわ。花音の言う通りここに留まりましょう。」

 

日菜「何言ってるの、千聖ちゃん!?それじゃあ……。」

 

その時だった。

 

千聖「護盾隊は盾を展開!"射手型"の一斉射に備えて!!」

 

その言葉を聞いて花音もすぐに立ち上がり盾を形成する。その直後に"射手型"から無数の針が機関銃の如く降り注ぐ。盾に響く反響音が防人たちの恐怖を掻き立てた。

 

やがて、攻撃が止まると全員が安堵の息を漏らした。

 

花音「ふえぇぇぇぇっ!死にたくない〜!!」

 

どう言う訳か、突然花音は組み合わせていた自分の盾を外して、盾の外へと飛び出してしまったのだ。

 

日菜「花音ちゃん!?何やってるの!?」

 

日菜が花音へ叫ぶ。ここにいる防人達全員が花音が発狂したのかと思った。だが、それは違ったのだ。花音はすぐに自分の盾を構え直し、同時に"射手型"が巨大な1本の針を打ち出した。

 

 

花音「こんなのまともに受けたら死ぬに決まってるよ〜!!」

 

絶叫と共に盾に巨大な針がぶつかった。真正面から受ければひとたまりも無いが、なんと花音は盾を微妙に斜めにして、針の力を絶妙に逸らしたのだ。

 

千聖「護盾隊は盾を解除!全力で逃げて!!」

 

千聖は巨大な針は連続で発射されない事を知っていた。防人達は千聖の合図で一斉に結界へと走り出す。

 

日菜「っ!?なんで星屑の数が減ってるの!?」

 

日菜は後方にいた星屑の数が減っていた事に驚いた。

 

千聖「"射手型"の針が星屑を巻き込んだのよ。」

 

千聖が日菜の問いに答える。星屑たちは"射手型"の無数の針と玉砕覚悟で防人達を取り囲んでいたのだった。直後、巨大な針が再び"射手型"から発射されるが、またも花音が盾を上手く使って攻撃を逸らした。更に方向を変えられた矢は星屑の方へと飛んでいき、星屑の群れはその矢でかなりの数が減ったのだった。

 

千聖(留まって防御に徹し、"射手型"の針を上手く使って星屑の数を減らす…。花音がここまで考えていたとは到底思えないわ……。けど、花音は本能で自分達が生き残る最善の術を選び出したって事ね……。)

 

千聖は花音の生き残る道を探す嗅覚の鋭さを信用していた。だからこそ、千聖はあの場面で花音の案を咄嗟に採用したのだ。花音のお陰で、想定外の事態はあったものの全員が無事に帰還する事に成功したのである。

 

 

 

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