次回、花咲川中学勇者部が久々に登場します。
花音のおかげもあり"完成型"を相手に死者0で戻ってこれた千聖達。彼女達はただ今夕食を食べていた。
彩「千聖ちゃん凄いよ。防人のみんなに被害が少ないのは。流石だね。」
夕食を食べながら彩が千聖を賞賛した。花音や日菜、イヴも同じ机で夕食を食べている。
千聖「ありがとう、彩ちゃん。でも今回は予想外の襲撃があったからそれほど土壌のサンプルは持って帰れなかったわ。」
彩「分析に必要な量は持って帰れてるよ。それに、命あってこその御役目だから。」
彩は目を輝かせていた。不意にイヴが千聖の袖を引っ張り無言で頭を下げた。
千聖「どうして謝るの、イヴちゃん。」
イヴ「変われませんでした…。」
イヴは自由にもう1人と入れ替わる事は出来ないのである。申し訳無さそうな表情をするイヴに千聖は優しく声をかける。
千聖「そんな事気にする必要は無いわ。状況に合わせて戦術を考えるのが指揮官の勤めだから。今のイヴちゃんでも、もう1人のイヴちゃんでもそれに対応出来るようにするだけだから。」
イヴ「それでも…千聖さんに迷惑かけました……。」
そんなイヴの手を彩が優しく握る。
彩「気にしてるんだね…。でも今のイヴちゃんだって偉いんだよ。サンプルを1番採取したのはイヴちゃんなんだから。」
イヴ「ありがとう…ございます。」
イヴは彩の言葉を聞いて軽く頭をさげる。そして千聖は補足してイヴに伝えた。
千聖「それに今回に関して言えば、今のイヴちゃんで良かったと思ってるわ。もう1人のイヴちゃんだったら"射手型"に突っ込んで行って被害が大きくなってたかもしれなかったもの。」
花音「でも、千聖ちゃんが早めに撤退指示出してくれて本当に助かったよ〜。」
花音はため息をつきながら話した。
日菜「でも、千聖ちゃんが撤退命令出さなかったら私が"射手型"とか言う奴をボッコボコにしただろうねー。」
花音「無理だよ〜。」
花音が一閃。
千聖「無理よ。」
千聖も一閃。
イヴ「……。」
イヴは無言で首を横に振った。
日菜「ちょっとーみんな私を侮りすぎだってばー。」
日菜はふてくされるが、
彩「でも勝負は時の運って言うでしょ。もしかしたら日菜ちゃんが勝ってたかもしれないよ。」
彩だけは日菜をフォローするのだった。
---
女性神官の部屋--
食事の後、千聖は定期報告の為に女性神官の部屋へと訪れていた。
神官「実際のところ、あなたは非常に良くやっています。」
神官は今回の任務の報告をまとめながら淡々と話す。
神官「これまで死者は0、2回目以降は重傷者も出てません。もっと交代要員が必要になると思っていました。」
千聖「でしょうね。この防人というシステムは初めから交代を前提に作られているんじゃないかしら?」
初めての御役目の後にあんなにもすぐに補充要員があった事を考えれば簡単に推測出来る。
神官「ええ、そうです。」
神官は隠す素振りも無く肯定する。
神官「しかし我々にとっても、交代は少ない方が望ましい。新人の鍛錬の時間が取れなく任務に支障が出る可能性がありますから。だからあなたの指揮は賞賛に値します。」
神官はあくまでも任務の効率しか考えていなかった。彼女は犠牲を考えていないのだ。
千聖「私の部隊で、死者は絶対に出しません。これは私が課した誓約ですから。」
千聖は神官に威圧するかの様に言い放つ。彩はこの状況を神樹様のご加護だと言うだろう。だが、千聖はそうは思っていない。これは千聖の執念の結果なのである。
神官「"隊長"としての誓約ですか?」
千聖「"人間"としての誓約です。西暦の時代も、2年前も、バーテックスとの戦いで勇者には犠牲がでたのでしょう?天の神だろうが人類の天敵だろうが知った事じゃないわ!あんな化け物共に人間が殺される時代はもう終わらせないといけないの!!」
千聖は改めて硬く自らに誓った。
千聖(自分の部隊で絶対に死者は出さない!!)
神官はキーボードを叩きながら千聖の話を聞いていた。
神官「報告が終わったのなら、もう退出して構わないですよ。」
そう言われた千聖は足早に部屋から出ていくのだった。
--
神官の部屋から自室へ向かう途中で2人の少女と出会った。良く一緒に行動している事が多い仲良しな2人組だった。
防人「白鷺さん、トレーニングの帰り?」
千聖「いいえ、報告をしてたところよ。トレーニングはこれからやるわ。」
防人「今から?白鷺さんの鍛錬っぷりには頭下がるよ。」
千聖「そう……。」
防人「あっ、そうだ。白鷺さんって、先代勇者様の端末を受け継ぐ候補の1人だったんだよね?」
千聖「ええ、そうよ。」
防人「私達2人共、本物の勇者様には会った事無いんだよね。確か、市ヶ谷有咲さんだったっけ?」
千聖「……。」
市ヶ谷有咲。その名前を聞く度に千聖の心は騒ついた。同じ屋根の下で暮らしていると、当然お互いの個人情報も知る様になってくる。特に千聖は隊長というのもあり、有咲と知り合いだったという情報は防人内で知られる様になる。イヴも勇者達とは知り合いだが、いかんせん無口な為、その事が知られていない。だから、勇者への興味は当然千聖へと集中するのである。
防人「勇者様ってどんな人だったの?やっぱり人間離れした強い人なのかな?」
防人「いやいや、強さは見た目だけじゃ無いよ。内側から出てくるオーラとかもきっと凄いんだよ。」
彼女達にとって勇者とはもはや神格化された存在となっていた。千聖は唖然とする。
千聖「市ヶ谷さんは、私達とは変わらなかったわよ。強いのは確かだったけど。」
防人「「ええー……そうなんだ。」」
2人はがっかりした表情を浮かべる。
千聖「当たり前よ。勇者だって私達と変わらないのよ。」
だからこそ千聖は怒りを覚えてしまう。有咲に特別なところは無かった。なのになぜ有咲が勇者として選ばれたのか、千聖には分からなかった。
---
翌日の昼休み--
いつもの様に千聖達5人が昼食をとっていると、昨日とは違う防人の少女達に話しかけられた。
防人「白鷺さん。勇者様が普通の人だったって本当なの?」
千聖「本当よ。」
防人「う〜ん、そうなんだぁ〜。」
納得してない顔をして、その少女は立ち去っていく。
--
更に翌日、また別の少女から尋ねられた。
防人「ねえ、白鷺さん。勇者の市ヶ谷様ってどんな人だったの?」
千聖「私達と変わらない普通の人よ。」
--
夕食後にも話しかけられる。
防人「勇者様って……。」
千聖「普通の人よ。」
そんな風に千聖は毎回誰かしらに有咲の事を尋ねられるのだった。
花音「千聖ちゃん、人気者だね。」
花音は少しからかう様に言う。
千聖「毎回毎回溜まったものじゃないわ。同じ答えを返すのが苦痛よ。」
彩も苦笑いを浮かべている。
彩「実際勇者様を間近で見た人は少ないからね。私も興味あるし。」
千聖「彩ちゃんまで!?」
彩「大丈夫だよ、千聖ちゃん。わざわざ聞いたりなんかしないから。」
そんな中日菜が身を乗り出す様に彩に言う。
日菜「だったら、氷河家の歴史を聞かせてあげようか?」
日菜の手には"氷河家300年史"という本が。
イヴ「………だめです。」
そこへイヴが日菜の裾を引っ張り首を横に振った。
日菜「露骨な拒否!?」
千聖は日菜を無視して話を続ける。
千聖「いっその事張り紙でも貼っておこうかしら。有咲ちゃんの事について。」
そんな中、花音が昔を懐かしむ様に話し出す。
花音「確かにあの人、強そうだったけど、特別な感じはしなかったかな。勇者だって事前に知らなかったら気付かないよ。」
千聖「あら?花音、有咲ちゃんの事知ってるの?」
千聖は花音が有咲を知っている事に少し驚いた。
花音「実はね、私現役の勇者様全員に会った事あるんだよー。あれはねー………。」
花音は少し得意げに千聖達に話し始めるのだった--
花咲川中学勇者部の勇者達の事を--