だいたいこの章も20話前後が目安となっておりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
"蠍型"対千聖・花音・イヴ・日菜です--
任務達成間際に現れた"蠍型"の完成型--
千聖達以外の防人は、彩を引き連れて撤退していく。
千聖「イヴちゃんも助けて連れて帰る!絶対に私の部隊からは犠牲は出さない!!」
防人の銃撃に砕かれ再生途中の"蠍型"を見据えながら千聖は叫んだ。
花音「分かったよ、私も千聖ちゃんの傍にいる!!」
涙目になりながらも花音は言った。
千聖「花音は早く壁の方へ逃げなさい!あなたまで危険に付き合う必要は無いのよ!」
花音「分かってるよ!危険だって事も、逃げた方が良いって事も!でも、千聖ちゃんを1人にしておけないよ!!盾がいなかったら誰が千聖ちゃんを守るの!?」
千聖「花音……。」
そう言うと花音は震えながら盾を構える。
日菜「花音ちゃんの言う通りだよ、千聖ちゃん。2人とも放っておけないよ。犠牲を出さないって事は、千聖ちゃんだって犠牲になっちゃダメなんだからね。」
千聖「日菜ちゃん…。」
日菜も千聖と並んで、銃剣を構える。
千聖(こういうのも……悪く無いわね。)
仲間と共に、仲間を助け、仲間達を守る--
千聖は決して諦めなかった。
千聖(誰かが神の犠牲になる事は絶対に認めるものですか!!)
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防人達は撤退しながらもその表情には絶望が浮かんでいた。凶悪にして人類の絶対的な天敵--
星座の名を冠するもの、バーテックス。
千聖「みんな落ち着いて行動して!あれは"完全型"のバーテックスでは無いわ!!」
千聖は冷静に分析して防人たちに伝える。"完全型"のバーテックスは12体とも既に当代の勇者達によって倒されている。バーテックスは何度でも蘇りはするが、"完全型"になるまではそれなりに時間がかかるのである。故に今目の前にいる"蠍型"は以前に現れた"射手型"と同じく御霊を持たない"完成型"なのだ。だが、それでも防人達にとっては充分な脅威であった。"蠍型"は巨大な尾を振るい、撤退している防人達を薙払おうと襲いかかる。
千聖「護盾隊!攻撃に備えて!!」
護盾隊は盾を構えるが、尾の一振りで盾は崩壊し、中にいた防人達と彩が剥き出しになってしまう。
千聖(まずい……っ!!)
彩が狙われれば、避ける事もできずに一瞬で殺されてしまうだろう。そして"蠍型"は尾の狙いを彩へと定めた。
千聖「誰も死なせないっ!!!」
尾針が彩を刺すより速く、千聖が彩を押し倒す様にして庇った。
彩「あ、ありがとう。千聖ちゃん。」
彩はお礼を言うが、これは千聖の判断ミスであった。2人とも倒れてしまったら、二撃目を避ける事が出来ない。だが、2人の前に花音が立った。
花音「千聖ちゃんが死んじゃったら、誰が私を守ってくれるの!?」
千聖「花音……。」
花音「怖い怖い怖い…来たーーっ!!」
"蠍型"の二撃目が花音に襲いかかる。
花音「ここだよっ!!」
花音は前方にヘッドスライディングの様に飛び込んだ。花音の頭のほんの少し上を、紙一重で尾針が通り過ぎる。地面が植物に覆われていない灼熱の大地だったら、顔面に大火傷を負っていただろう。しかし、花音は最悪のパターンをいくつも想像して、その中から1番生存率が高い方法を本能的に選び出したのだ。花音は立ち上がるが、目の前には三撃目が迫っていた。
花音「ふえぇぇぇっ!!!」
花音は盾を構え、尾針が盾に当たる瞬間に僅かに後ろへ跳躍。同時に盾の角度を斜めにした。尾針の攻撃の威力は逸らされ、花音は3度目の攻撃も回避したのだ。
花音「ふえぇぇぇぇっ!!!もうダメだよ〜!!」
そう言いながらも、花音は何度も"蠍型"の攻撃をギリギリで躱し続けていた。その間、千聖は彩を"蠍型"から充分に距離を離す事に成功する。そして、銃剣を持つ防人達を集め、一斉に射撃体制を取った。
千聖「銃剣隊、一斉発射!!」
銃撃が"蠍型"の前方部分を破壊し、動きを止めた。
日菜「千聖ちゃん、やったね!!このまま一気に…。」
千聖「攻撃は続行しないわ!!このまま撤退します!!」
日菜は一瞬不満そうな顔をするも、すぐに千聖の指示に従った。以前の"射手型"で奴らの恐ろしさは身をもって分かっていたからだ。
千聖(種を使っての実験は成功した。目的は既に達成されている。だったら後は全員が無事に生きて帰る事の方が重要よ!!)
千聖「撤退を始めます!!これより私が持つ指揮権は、私を除く指揮官7人に移行します!番号2〜8番の指揮官は、他の防人達と巫女を率いて、全員生きて壁まで辿り着く事!!」
そう言うと、他の指揮官型防人達は頷いた。なんらかの理由で千聖が全体の指揮を執れなくなった場合、他の指揮官型が代わりに指揮を執る事になっているのである。
千聖「行動開始!!」
千聖の掛け声で防人達と彩は一斉に壁へと移動し始めた。
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他の防人達が撤退を始めても、日菜は千聖の傍に残っていた。
日菜「千聖ちゃんはどうするつもりなの?」
同時に、花音も千聖の元へ戻ってくる。
花音「助かったぁ〜早く逃げよう、千聖ちゃん!」
だが千聖は首を横に振った。
千聖「私は撤退の殿を務め、"蠍型"から部隊全体を守り、イヴちゃんも連れて帰るわ!!」
イヴは幸いな事に吹っ飛ばされて気絶していた為、"蠍型"の攻撃は当たっていなかった。"蠍型"の攻撃を躱しつつ、気絶しているイヴの回収。そしてイヴを抱えながら、部隊の殿で"蠍型"の攻撃から防人達を守り続ける任務。
千聖(被害を最小限に抑えるにはこれしか無い。)
千聖は前に出るが、花音と日菜もそれぞれが盾と銃剣を構えながら前へと一歩踏み出した。
千聖「花音…日菜ちゃん…。」
花音「怖いけど、私も頑張る!!」
日菜「千聖ちゃんもちゃんと生きて帰らないとね。」
千聖の口元が少し緩んだ。
千聖「じゃあ、まずはイヴちゃんを助けだしましょう!!」
そうして千聖がイヴが倒れていた方へ目を向けるが、そこにイヴの姿は無かった。
千聖「えっ!?」
千聖達がイヴを探す為に周囲に目を配っていた隙に、"蠍型"が再生を終えて攻撃を再開してきたのだった。
千聖「みんな、避けて!!」
3人が避けようとジャンプするが、なんとそれより速くイヴが"蠍型"の尾に飛び乗って、銃剣の切っ先で尾を突き刺していたのである。
千聖・花音・日菜「「「イヴちゃん!!」」」
イヴ「この野郎が…効いたぜ、さっきの一撃!お返しだっ!!」
イヴは千聖達が助けるまでもなく、自力で意識を回復し、それどころか反撃を始めていたのだ。
イヴ「おらあぁぁぁっ!!」
イヴは尾に切っ先を刺したまま銃弾を打ち込んで横に切り裂く。しかし尾を切り落とすまでには至らない。"蠍型"は尾を振り回してイヴを振り落とすが、イヴは体をひねって千聖たちの前に着地した。
花音「イヴちゃん〜無事でよかったよ〜!!」
花音が泣きながらイヴに抱きついた。
イヴ「そんなに俺が生きてて嬉しかったか?」
花音「だってぇ〜、千聖ちゃんがイヴちゃんを抱えて行かなきゃいけなかったら、私が生きて帰るのが難しくなるし…。」
イヴ「あんたは…俺の事心配してると思ったら、自分の心配じゃねーか。まぁ、お前らしいけどな。」
次の瞬間、"蠍型"の巨大な尾針が千聖達に向かって突き出される。
千聖「くっ!!」
4人は同時にその場からジャンプして避けたが、直後、その尾が横薙ぎに動きを変えて、千聖と日菜に迫る。
日菜「なんのっ!!」
日菜も千聖も銃剣を盾にして、直撃は免れたものの、吹っ飛ばされて地面に叩きつけられた。
日菜「うっ……。」
千聖はギリギリで受け身をとった。
イヴ「こっちも忘れんなよっ!!」
イヴが銃撃で"蠍型"を狙撃して、意識をこちらへと向けさせた。その隙に千聖たちは再び一箇所に集まる。
日菜「いててっ…さっきの一撃効いたね…。」
直撃では無かったものの、千聖と日菜もダメージは大きかった。特に日菜は受け身に失敗して、肩を押さえている。
花音「とにかく、あの尻尾の針が怖いよ!」
涙目で訴える花音に、日菜も忌々しげに"蠍型"を睨みつけた。
日菜「そうだね…あの針さえ無かったら、かなり楽になるんだけど。」
その時千聖が声を上げる。
千聖「私が切り落とすわ。あの尻尾と針を。」
イヴ「白鷺、出来るのか?」
千聖「出来るはず。みんなが協力してくれれば。」
千聖は作戦を3人に伝えた。
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千聖「じゃあ…行くわよっ!!」
"蠍型"は御構い無しに、尾を容赦無く伸ばして攻撃してくる。
花音「今回だけだからねぇ〜!!もうこんな危ない真似二度とやらないからぁ〜!!」
花音が叫びながら盾を使って"蠍型"の尾針を受け流した。その瞬間に千聖は"蠍型"の尾に飛び乗る。
千聖(さっきのイヴちゃんみたいに攻撃しても、大きなダメージは与えられない…ならっ!!)
"蠍型"の尾は球体がいくつも連なった様な形をしている。千聖はそこに目を付け、球体と球体の接続部分を銃剣の刃で斬りつけたのだ。それでも、一撃で切断する事は出来ず、何度も斬りつけていく。"蠍型"も当然黙っている訳もなく、尾を勢いよく振り回して、千聖を地面に叩き落とした。
千聖「くっ…!!」
だが、千聖はすぐに立ち上がり花音の所へと戻る。
千聖「花音、もう一度お願い!!」
花音「ふえぇぇっ!?」
"蠍型"は再度千聖を狙って尾針を伸ばしてきた。
花音「ほ、本当に今回だけなんだからぁ〜!」
花音は盾を使って、再び同じ事を繰り返す。その隙に千聖は尾に飛び乗るが、今回は立つのでは無く、簡単に振り落とされない様しがみ付いた。千聖はしがみ付きながら、銃剣の刃で削る様に何度も斬りつける。振り落とさないと悟ったのか、"蠍型"は尾を曲げて乗っている千聖を針で突き刺そうとするが、それをイヴと日菜が狙撃して阻止した。
イヴ「ったく、この銃の威力がもうちょい高けりゃこんな苦労しなくて済むのになっ!」
日菜「急いで、千聖ちゃん!長くは持たないよ!!」
千聖「分かってる!!あと少し…。」
千聖は攻撃の手を緩めない。そして、
千聖「これで……トドメよっ!!!」
遂に"蠍型"の尻尾が切り落とされた。千聖は尾からすぐさま尾から飛び降り、3人の近くへ着地する。千聖も大分傷付いたが、敵の戦力は大きく削がれる事となった。
千聖「後は尾の薙ぎ払いに注意して、部隊の最後を守りながら撤退するわよ!!」
花音「やっと逃げられるよ〜!」
日菜「あーあ、尻尾を切り落とす役目、千聖ちゃんに取られちゃったな。」
イヴ「おい、ポンコツ!無駄口叩いてねぇでさっさと引くぞ!」
こうして4人は、部隊の最後を守りながら無事撤退する事に成功したのであった。