戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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防人として過ごしていく中で、防人は千聖のかけがえのないものになりました。

そして物語は終わりへと動き出します--





今の君を思う

 

 

千聖達は退院する事が出来、ゴールドタワーに戻ってきた。

 

日菜「私達の凱旋だよー!きっとみんなも首を長ーくして私達の帰りを待っててくれたよねー。」

 

花音「騒がしい人が戻ってきたって思われてそうだよ…。」

 

日菜「か~の~ん~ちゃ~ん~?」

 

千聖「まったく、仲の良い2人だわ。」

 

呆れながら千聖がタワーに入ると、防人の少女の1人が入り口に立っていた。

 

防人「お帰り、みんな。何はともあれ、展望台に来てよ。」

 

千聖「展望台?次の任務の日が決まったのかしら?」

 

千聖達は言われるがままに展望台へと向かった。

 

 

--

 

 

千聖達は展望台に着くも、そこに女性神官の姿は無かった。すると、突然クラッカーの音が鳴り響く。

 

千聖「なっ、何!?」

 

クラッカーを鳴らしたのは防人達だった。防人の少女たちは次々と千聖達4人へ駆け寄る。

 

防人「お帰りなさい、白鷺さん、みんな!」

 

防人「待ってたよ!」

 

防人「復帰、おめでとう!」

 

防人の少女達は次々にと口にする。

 

千聖「これはいったい…?」

 

千聖が横を見ると、日菜や花音、イヴも同じ様な表情をしている。そこへ彩がやって来て説明を始めた。

 

彩「みんなで、千聖ちゃん達が戻って来たらお祝いしようって話になったんだよ。この前の御役目で一番危険な役目を果たしてくれたんだから、そのお礼にってね。」

 

千聖「そんな…私はこの隊を纏める者として、当然の事をやっただけよ。」

 

千聖には特別な事をやったという自覚は無かった。至極当たり前の事をやったまでである。

 

彩「それでも、私達は千聖ちゃん、日菜ちゃん、花音ちゃんにイヴちゃんに守られたんだよ。」

 

彩の言葉に防人みんなが頷いた。

 

彩「さぁ、回復祝いに乾杯しよう!」

 

彩の一言でみんながジュースを持って乾杯したのだった。

 

 

--

 

 

乾杯の後の4人は、他の防人達にもみくちゃにされるように囲まれた。千聖は今までにこの様な経験が無い為か戸惑っている。花音は、褒められる事に慣れておらず、オロオロとしていた。

 

一方で日菜は少し得意げに、自分の活躍を語っていた。イヴは相変わらず無口で無表情でずっと千聖の傍を離れなかった。慣れない状況に戸惑っているのかもしれない。

 

 

--

 

 

暫くして、防人の少女の1人が千聖の前に来て言った。

 

防人「白鷺さんって、勇者みたいだよね。」

 

千聖「……えっ?」

 

唐突な言葉に千聖はキョトンとする。

 

防人「だってバーテックスにだって立ち向かっていって負けてなかったじゃん!防人はバーテックスとは戦えないって言われてたけど、実際白鷺さんは戦えてたし。そんな事が出来るのは勇者様ぐらいだよ。だから、白鷺さんは勇者様と同じくらい凄いよ!!」

 

その言葉を皮切りに、次々と他の少女達が賛同し始めた。

 

防人「うんうん、本当、勇者様みたい。」

 

防人「私もそう思うよ。」

 

千聖「………あ、ありがとう。」

 

千聖はどう答えていいか分からずに、咄嗟にそんな言葉しか出てこなかった。

 

 

---

 

 

夜になりパーティーが終わった後、千聖は1人で再び展望台を訪れていた。祭りの後の様な静けさの中で、彼女の胸中にはよく分からない感情が渦巻いていた。それは、恥ずかしい様な、嬉しい様な、居心地が悪い様な--

 

他人と関わっていく中でしか生まれ得ない感情に、千聖は全く慣れていない。感情が落ち着かずに眠れなかった為、千聖はここにやって来たのだった。ふと、千聖は展望台の隅に目をやる。

 

そこには、錠前を掛けておく事が出来るオブジェがあった。入院中に彩が持ってきた、西暦の時代の願掛け用の錠前が、十数個掛けられている。そのオブジェの前に何やら人影があるのを千聖は見つけ、駆け寄った。そこにいたのはイヴであった。

 

千聖「イヴちゃん?こんな所で何をやってるの?」

 

千聖の声にイヴが振り返る。

 

イヴ「これを見ていたんです。」

 

そう言いながら、イヴは1つの錠前を指さした。

 

千聖「これは……ふふっ。」

 

千聖はそれを見た途端笑みがこぼれた。イヴが見ていたものは、5人の名前が書かれた錠前だった。

 

千聖「1つの錠前に5人分の名前を書いたから、ぎゅうぎゅう詰めでちょっと見栄えが悪いわね。」

 

 

松原花音--

 

 

白鷺千聖--

 

 

氷河日菜--

 

 

丸山彩--

 

 

若宮イヴ--

 

 

他の錠前には2.3人分の名前しか書かれていないのに。

 

イヴ「でも………嬉しいです。」

 

イヴは小さな声で呟いた。

 

イヴ「千聖さん…もう1人の私を………受け入れてくれて、ありがとうございます。」

 

千聖「当り前よ。もう1人のイヴちゃんだって防人の一員だもの。」

 

その言葉を聞いたイヴは千聖に語りだした--

 

 

自身の過去を--

 

 

---

 

 

イヴ「私の家は……あまり幸せでは…無かったんです。」

 

イヴが生まれ育った家庭は、かなり問題のある家だった。両親ともに心が不安定で、些細なきっかけで激昂してしまう。そうしてイヴは暴力を受けてきたのだった。

 

イヴ「だから……ずっと静かにしているように……しました。」

 

感情を表に出さず、何も話さない。そうしていれば両親の怒りの矛先がイヴに向かう事が“少しだけ“減ったのだった。親の暴力で傷が増えていく中で、イヴはその環境に耐える事が出来る強い人格を生み出した。

 

イヴ「…それが、もう1人の私です……。」

 

強くて粗暴な、もう1人のイヴ--

 

彼女がいたから、イヴは辛い家庭環境を生きていく事が出来た。イヴにとって、彼女は1番の味方であり、友達だったのだ。

 

けれど、イヴは孤独だった。イヴの中に生まれた別人格が1個の人間として存在を認められる事はないからである。その上、粗暴な性格の為に、例えもう1人のイヴが表に出ている時でも、彼女は誰とも仲良くなれなかった。

 

イヴ「でも、千聖さんは……私を受け入れてくれました。」

 

それはイヴにとって人生が変わる程の出来事だったのである。今までもう1人のイヴと真正面からぶつかって、彼女と和解した人間など存在しなかったのだから。

 

イヴ「もう1人の私も……千聖さんに出会えて良かったって言ってます。」

 

千聖「私も彼女の事は嫌いじゃないわ。」

 

イヴ「ありがとうございます……。」

 

イヴは透き通った瞳で、千聖をジッと見つめ言った。

 

イヴ「…私も、千聖さんは勇者だと思います……。」

 

それは昼間、防人達にも言われた言葉。

 

イヴ「もしも…千聖さんが勇者になっても…防人の隊長で…いて欲しいです……。」

 

千聖はこのゴールドタワーに来た際、いつまでもここにいるつもりは無いと思っていた。勇者になってこの防人の集団から抜け出す、と。しかし、今の千聖は違う--

 

千聖「そうね、私は必ず勇者になる--この防人を率いて勇者になってやるわ!」

 

 

次の任務はまだ通達されない--

 

 

日々は続いていく--

 

 

---

 

 

怪我から回復した千聖は、また以前と同じ生活に戻る。厳しい自己訓練を重ね、授業を受け、次回の任務に備えて部隊の訓練を行う。過ごし方は全く変わっていないが、心境は変わってきていた。仲間達と過ごしていく時間に、以前には感じなかった温かみを感じていたのだ。

 

千聖(この日々は、日常は、かけがえのない大切なもの……。)

 

千聖は強く思うのだった。

 

 

--

 

 

ある時、彩が言った。

 

彩「私は勇者様に実際に会った事は無いんだけど、勇者様の人柄や功績はよく聞かされてきたんだ。」

 

千聖「有咲ちゃんは、私と変わらない人間に見えたけど…。」

 

彩「うん、勇者様は普通の人と変わらないんだよ。初代勇者様も、先代勇者様も、戦う能力だけで言えばもっと強い人は他にもいたはずだよ。でも……勇者様は、仲間と過ごす日常を何よりも大切にしてたんだよ。」

 

千聖「…………。」

 

彩「仲間が大切だから、今の日々が大切だから、それを守る為に戦ってたんだって。」

 

千聖「……少しだけ分かった気がするわ。私が勇者になれなかった理由が。」

 

 

任務はまだ通達されない--

 

 

---

 

 

花音はバーテックスと戦い、生き残った事から、防人歌の中での評価が凄まじいほど上がっていた。護盾型防人の中では、”花音は隠れた最強防人説”なるものが囁かれるほどだった。

 

防人「いざとなったら、松原さんが守ってくれるよ!」

 

護盾型防人達はそんな事を言うようになった。

 

花音「ふえぇぇぇぇぇっ!!みんな勘違いしてるよ~!?私は弱いんだから~!!千聖ちゃんに守ってもらわなきゃ死んじゃうんだからねぇ~!!!」

 

それ以来、しばしば千聖の部屋にやって来ては、花音はそう言って千聖に泣きつくのだった。

 

 

任務はまだ通達されない--

 

 

---

 

 

日菜は千聖に対抗し、朝晩の訓練を一緒にやるようになった。早朝のランニングと射撃と銃剣術の訓練。夜の基礎体力トレーニングとイメージトレーニングである。ある朝、一緒に走りながら、唐突に日菜は千聖に言い出した。

 

日菜「千聖ちゃん…。」

 

千聖「どうしたの、日菜ちゃん?」

 

日菜「私も、千聖ちゃんを勇者だと認めてあげても良いよ…。」

 

千聖「………ふふっ。」

 

千聖は吹き出してしまい、日菜の顔が赤くなった。

 

日菜「なんで笑うの~!?」

 

千聖「何でもないわ。ありがとう。」

 

 

任務はまだ通達されない--

 

 

---

 

 

その日の朝食時、何故か彩の表情が少しだけぎこちなかった。

 

千聖「彩ちゃん、どうかしたの?」

 

尋ねた千聖に、彩はやはりぎこちない笑顔で答える。

 

彩「な、何でもないよ。あ、今日は私、巫女のお勤めで、大赦に行ってくるからね。」

 

 

"千聖達には"任務はまだ通達されない--

 

 

---

 

 

大赦神殿の1つに、彩を含む6人の巫女が集められていた--

 

 

神官の1人が告げる。その顔は仮面に隠れて伺えないが、声が微かに震えていた。

 

神官「想定外の事態が起こっています。今この時をもって、我々が進めていた計画の全てを中止し--奉火祭の儀を執り行う事が決まりました。」

 

 

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