TF:軌跡を辿った者達   作:ペペロンチーノ伯爵

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chapter7『処女喪失』

「動けぇ!!!ティナ!!!!!」

 

 

 

 

「ッッ!!!」

 

ケイドの叫び声に反応するように、ティナはスマートピストルの引き金を引く。

照準はアイゼンから外れていたが、放たれた弾丸は銃口から伸びるレーザー線の通りにアイゼンのヘルメットに目掛けて飛んで行く。

 

「フンッー!」

 

アイゼンは引き金が引かれる直前でデスクの下に滑り込んで的確に弾かれる弾丸を防ぐ。

 

「うっ………」

(防がれた……!!)

 

刹那、重苦しい轟音と共にティナの左脚のふくらはぎに大きな弾痕を残して肉が弾け飛ぶ。

 

「イぃっ…ぎぁぁぁぁぁぁぁァァアア!?!?!?!?」

 

「……致命傷を狙ったつもりだったが………」

 

デスク越しに撃たれたウィングマンエリートの弾丸がティナの脚を貫いた。

 

「う………あぁ………痛い………………痛い………血が………」

 

耳鳴りが止まらない、全てが重く、鈍く感じるのに、痛みだけは鋭くなる一方。

スマートピストルは?手放してしまった?敵は?誰か………誰か………助けて………脚が………痛い………。

 

≪クソッ!!!ティナぁ!!!!≫

 

無線越しにケイドの叫び声が聞こえる、だがそれも鈍く歪む。

 

≪ケイド、アールの援護に行け、オレは一人でここを抑える≫

 

様々な音声が響く中で、彼の声だけが鮮明に、何の雑音も歪みも無く耳に入り込む。

 

≪ッッ………グレイー≫

 

≪ケイド………命令だ、従え≫

 

≪うぅぅ………クソッ!!!≫

 

左脚の激痛から生じる熱が消えて全身が凍り付く程の悪寒を感じる。

彼の冷たく突き刺すような声が、ティナの五感を取り戻す。

 

「ッ………フゥゥゥゥゥゥゥウ!!!!!」

 

涙で淀む眼を見開き、歯を食いしばって出血の激しい左足を地に踏み込ませて起き上がる。

それと同時にデスクの下からスラスターを噴出させながら飛び出してきたアイゼンに向けてスマートピストルの引き金を引く。

 

「ッッ、厄介な………!」

 

的確にアイゼンの頭部目掛けて曲がってくるスマートピストルの弾丸を遮蔽物を挟むことで躱す。

 

「………………」(この壁じゃこいつの弾丸も貫通しない、次のデスクの下に潜るか、どんなに素早く動いてもしてもスマートピストルの弾は避けられないからな………)

 

アイゼンは腕だけを外に出してウィングマンエリートを発砲しながら駆け出し、スライディングしながらデスクの下に潜り込む。

そして身体を仰向けに倒したままパルスブレードを地面に突き立て、波紋の流れを見る。

 

「………………なんッー!?!?」

 

波紋が敵を検知する前に、アイゼンはティナの姿を目視する。

目の前にあったデスクは蹴り飛ばされ、 右手に握り締めたスマートピストルを構えるティナがそこに居た。

 

「ッッッ!!」(あの脚で!?ここまで走ってきたのか!?あり得ん!!!)

 

「フゥゥゥっ!!!」

 

ティナは激しくい息を吐き出しながら殆どゼロ距離でスマートピストルを連撃する、が。

 

「ッッあっー」

 

「ぬぅぅ!!」

 

間一髪でアイゼンは頭部を左腕でガード、スマートピストルの弾を全て受け止める。

 

「………………っ」

 

「………………っ」

 

一瞬の静寂の中でカチッというスマートピストルから発された枯れた音が鳴り響く。

閃光、ウィングマンエリートをティナの顔に向けて大口径弾を撃ち込むが、極限まで集中していたティナは首を振って弾丸を躱す。

そして更に血が噴き出す左足を浮かせて思い切りアイゼンの右腕の関節を踏み抜いて潰す、パイロットスーツによって強力に筋力補助された肉体はそのものが凶器と化してい

る。

 

「ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!!!!!!!!」

 

「フゥーッッ!降参して下さい!!!!貴方はもうー」

 

「殺してやるッッナイトフォールッッハイドォォォォォオ!!!!!!」

 

「ッッ!!」

 

≪………パイロット………ア、ア、ア、アア、アイゼン………≫

 

≪この音は………不味いぞグレイブス!!!≫

 

≪あのアイゼンのタイタン、強化ニュークリアか≫

 

≪ティナが爆発半径に入ってるぞ!≫

 

≪ティナ、アイゼンに止めを刺せ、タイタンのニュークリアはオレが止めよう≫

 

「で、でももう彼は戦えません!!」

 

「嘗めるなよ……女ぁ!!」

 

アイゼンはズタズタになった左手でパルスブレード抜いて自分の右腕を踏みつけるティナの左足を狙って突き立てる。

ティナは反射的に左足を動かしてパルスブレードを躱し、今度は右足を曲げてアイゼンの左腕を狙って踏み抜いた。

 

 

 

つもりであった。

 

 

 

 

「………あ、あ、あの………わ、私………………わたし………」

 

「こりゃひでぇな、本人確認は不可能、トマトプレスだな……」

 

「………………」

 

「……ティナちゃん…」(これが最初の………処女喪失かよ)

 

四人の後ろからグレイブスが歩いてくる。

 

「敵は完全に沈黙、周囲は確保してある、設営隊もすぐに到着する」

 

グレイブスはティナの足元に倒れる人間の頭部であろう潰れたそれを見つける。

 

「アイゼンはミリシアのネームドクラスのパイロットだ、それを処理できたのは上出来だティナ、よくやった」

 

「よ………よく………やった………………?これが……?褒められることなのですか………こんな事が………?」

 

「……?なにを言ってる?これは戦争で、殺し合いだ、お前が何を感じているのか知らんが、下らない事に思考を割いてる暇があったら生き残る事を考えろ、でなければ………死ぬぞ」

 

「おい………グレイブス…!」

 

「いいやケイド、グレイブスが正しいぞ」

 

食い付こうとしたケイドの肩をアールが握り絞める。

 

「ティナ、君は反射的に生き残るための最善の策を繰り出したまで、グレイブスの言うとおり、何も間違っちゃいないし、それについて深く考える必要もない」

 

「その通りだな、いずれ慣れるさ、ここで、ナイトフォールで生きていく以上、切っても切れない物さ」

 

「イグニスまで……………クソ………」

 

その時、グレイブスだけの固定無線に司令部からの通信が入る。

 

「……こちらグレイブス、どうぞ」

 

≪グレイブスか?ちょいと報告がある、ナイトフォールにとってはかなりの朗報だが……お前にとっては悲報過ぎる事だ≫

 

「……まさかとは思うが」

 

≪ああ、『彼女』が帰ってくるぞ≫

 

「………そうか………………………」

 

通信を終了し、グレイブスはゴースト部隊に目線を移す。

 

「作戦は終了した、ここは設営隊と護衛に任せてゴーストはこれより帰還する、準備しろ」

 

そして、ティナに繋がれたゴースト専用回線は切断され、別の周波数に切り替わった事でティナはゴーストの回線から決別された。

 

「………これが………戦…争………?」

 

「ティナちゃん………」

 

「行くぞケイド、彼女には、時間が必要だ」

 

「アール……分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………どう思う?」

 

「どうもこうもないよぉ♪やっぱり彼は強かった、それだけさぁ♪……」

 

「あのミリシアの優秀なネームド率いるタイタン部隊とその増援を壊滅させるとはな、奴が率いているあのゴースト分隊の隊員も厄介な敵になりそうだ」

 

「えへ、君はバカだねぇ、アハ!、グレイブスならあの程度のゴミなら一人でも楽勝だよぅ♪」

 

「ん、ならなんでー」

 

「分からない?分からない?死んできたら?あの雑魚共はグレイブスの足枷……いいや、ある意味、楔と言った方が良いかな?理由は私にも分からないけどぉ、彼の何かを制限してるのさ、さっきの戦闘だって、わざと隊員一人々に役目を与えていた、全部自分一人で解決するのに、わざわざ集団で行動させてる」

 

「つまりナイトフォールは何らかの理由で奴を単独行動させず、枷を着けてる訳か」

 

「君って人が言った事を復唱するしか脳が無いんだね死んだら?、それにしても気に入らないなぁ………私は本気の彼と戦いたいのに……彼を手に入れて置きながら、屈辱的に使役しながら………操りながら……その能力をひた隠しにするなんて……許せない………許せないなぁ………どうすれば彼に………………あぁそうかぁ、ゴースト分隊を全員殺せばいいんだよねぇ……♪」

 

「ならどうする?まずは誰から狙う?」

 

「そうだよねぇ……ソコだよねぇ………とりあえずぅ……ぽっと出で調子に乗ってるあの新入りの女にしようかなぁ………実力も、覚悟も、実現性も、何一つ無いくせにグレイブスと対話してるんだから、死ねばいいんだよ♪」

 

「………………なぜお前はそこまでグレイブス・フェニックスに固執する?」

 

「そりゃあ……彼が好きだからさぁ………♪彼の全てが、私を動かすのさ『お姉ちゃん』だってそうだよ?君は怪物だのなんだの言うけど………考え方が違うだけで、グレイブス・フェニックスに啓蒙しているのは同じだよぉ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん………久しぶりだなぁ………僕の事をまだ覚えてくれてるかなぁ………♪でも、何だか不穏な匂いもするなぁ………グレイブス……僕は君の最果ての末まで一緒に居るからね♪」

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