創造紀エヴァンゲリオン ―外来意識の介入― 作:最上 イズモ
ネルフ本部・地下深層指令室。
重苦しい照明の下。
巨大なホログラムスクリーンが起動し、静止していた空気を切り裂いた。
第三新東京市防衛の中枢。
人類最後の砦。
そこにいる誰もが。
もう理解していた。
これは。
「来る」のではない。
すでに。
始まっている。
シゲル「第六サーチ衛星より目標映像受信!」
シゲル「モニターに回します!」
スクリーン。
地表。
巨大なクレーター。
円形。
完全に。
抉れている。
マヤ「……これ」
リツコ「着弾痕よ」
ミサト「分かってる」
ミサトの声は。
妙に。
落ち着いていた。
シゲル「第一投擲体、太平洋上へ落下」
シゲル「周辺海域への被害、現在算出中」
リツコ「威力は?」
マヤ「推定……」
数字。
表示。
マヤの指が止まる。
マヤ「N2換算で」
一瞬。
言葉。
詰まる。
マヤ「比較不能です」
冬月「比較不能?」
マヤ「衝突エネルギーだけではありません」
画面。
クレーター周囲。
異常。
境界。
リツコが見る。
リツコ「A.T.フィールド」
ミサト「……やっぱりね」
腕を組む。
ミサト「A.T.フィールドを」
一拍。
ミサト「質量兵器として使ってる」
冬月「自身を落下させているわけではないのか」
リツコ「いいえ」
映像。
拡大。
宇宙。
小さな。
影。
リツコ「使徒自身が軌道上から」
リツコ「A.T.フィールドで物質を圧縮」
リツコ「それを地表へ投げている」
ミサト「下手な爆弾より」
目。
細くなる。
ミサト「ずっと性質が悪いわ」
シゲル「初弾、太平洋」
シゲル「第二投擲体、予測落下地点」
地図。
表示。
シゲル「朝鮮半島付近」
マヤ「第三弾……」
軌道。
少し。
変わる。
リツコ「補正されてる」
ミサト「?」
リツコ「見て」
線。
一つ。
二つ。
三つ。
徐々に。
第三新東京市へ。
寄っている。
リツコ「偶然じゃない」
リツコ「距離を測ってる」
マヤ「……照準調整?」
リツコ「そう」
指令室。
静か。
ミサト「N2は?」
シゲル「既に国連軍が使用」
シゲル「N2爆雷、全弾無効化」
シゲル「効果……ゼロです」
ミサト「でしょうね」
リツコ「使徒が本気で投げてきてる」
リツコ「隕石級のA.T.投擲」
画面。
また。
巨大な爆発。
通信。
乱れる。
マヤ「衛星通信にノイズ!」
シゲル「使徒から強力なジャミング!」
マヤ「第六サーチ衛星、通信断!」
一つ。
モニター。
消える。
次。
二つ。
三つ。
シゲル「観測網が!」
リツコ「――来る」
ミサト「何?」
リツコ「観測できなくなった」
画面を睨む。
リツコ「次は」
低く。
リツコ「速い」
警報。
ミサト「エヴァは!?」
マヤ「全機、発進準備完了!」
ミサト「パイロットへ」
ミサト「即時出撃!」
第七ケージ。
初号機。
追加装甲。
装着。
背部。
大型ブースター。
肩。
増加装甲。
胸部。
補助冷却。
整備主任「F型全部積むぞ!」
整備員「固定完了!」
整備員「推進剤充填!」
整備主任「シンジ!」
シンジ(イズモ)「はい!」
整備主任「これ実戦投入初めてだぞ!」
シンジ(イズモ)「知ってます!」
整備主任「絶対無茶すんな!」
シンジ(イズモ)「相手が隕石落としてくるんですけど!」
整備主任「それでもだ!」
シンジ(イズモ)「努力します!」
整備主任「信用ならねえ!」
エントリープラグ。
閉じる。
カエデ「F型装備、全接続確認」
シンジ(イズモ)「ブースター?」
カエデ「正常」
シンジ(イズモ)「追加装甲」
カエデ「正常」
シンジ(イズモ)「A.T.増幅系」
カエデ「正常」
シンジ(イズモ)「……よし」
深呼吸。
シンジ(イズモ)「行こう」
第三新東京市。
地上。
初号機。
零号機。
弐号機。
三機。
並ぶ。
上空。
何も。
見えない。
空。
青。
雲。
それだけ。
アスカ「まったく」
弐号機。
肩を回す。
アスカ「無茶言ってくれるわね」
アスカ「正面から受け止めろって?」
レイ「他に方法がない」
アスカ「分かってるわよ」
少し。
空を見る。
アスカ「正気じゃないって言ってるだけ」
ミサト〈無線〉「私もそう思うわ」
アスカ「自覚あるの!?」
ミサト〈無線〉「あるから困ってるのよ!」
シンジ(イズモ)「カエデ」
カエデ「はい」
シンジ(イズモ)「探知モード」
初号機。
装甲。
複数のセンサー。
展開。
アスカ「またそれ?」
シンジ(イズモ)「今回は特に必要」
カエデ「コア反応スキャン」
カエデ「開始」
ミサト〈無線〉「まずは衛星復旧を――」
シンジ(イズモ)「待って」
目。
閉じる。
外部通信。
死んでいる。
なら。
内部。
初号機。
A.T.
過去の使徒データ。
軌道。
残留波。
カエデ「上空反応」
シンジ(イズモ)「距離」
カエデ「推定三万二千」
シンジ(イズモ)「ほぼ真上」
ミサト〈無線〉「待って」
ミサト〈無線〉「どうして分かるの?」
シンジ(イズモ)「前回の改修」
ミサト〈無線〉「また?」
シンジ(イズモ)「アンチジャミング入れた」
アスカ「いつの間に!」
シンジ(イズモ)「ケージ籠もってた時」
アスカ「いつもじゃない!」
シンジ(イズモ)「外部センサーに依存しない」
カエデ「既知使徒反応との相関から内部演算」
シンジ(イズモ)「A.T.フィールドの歪みだけ拾ってる」
リツコ〈無線〉「それ」
少し。
間。
リツコ〈無線〉「後で詳細見せなさい」
シンジ(イズモ)「はい」
アスカ「そこ今!?」
シゲル〈無線〉「通信一部復帰!」
ノイズ。
その後。
シゲル〈無線〉「距離二万五千!」
シゲル〈無線〉「急速接近中!」
ミサト〈無線〉「全エヴァ!」
ミサト〈無線〉「スタート!」
シンジ(イズモ)「……F型」
一拍。
シンジ(イズモ)「実地テストだ」
背部。
開く。
ブースター。
青白い。
光。
轟音。
初号機。
一歩。
踏む。
地面。
割れる。
次。
跳ぶ。
アスカ「ちょっと!」
初号機。
空へ。
飛ぶ。
シンジ(イズモ)「うわっ!」
加速。
身体。
押し付けられる。
カエデ「加速度上昇!」
シンジ(イズモ)「推力落とす!」
カエデ「推奨!」
初号機。
上昇。
シゲル〈無線〉「距離一万!」
空。
何か。
見える。
赤。
巨大。
人型とも。
塊とも。
言えない。
使徒。
シンジ(イズモ)「確認!」
ミサト〈無線〉「シンジ君!?」
シンジ(イズモ)「先に当たる!」
ミサト〈無線〉「単独で受けないで!」
シンジ(イズモ)「分かってる!」
A.T.フィールド。
最大。
空。
歪む。
シンジ(イズモ)「来い!」
衝突。
音が。
消えた。
次の瞬間。
衝撃。
シンジ(イズモ)「ぐっ……!!」
初号機。
落下。
押される。
カエデ「推進出力低下!」
シンジ(イズモ)「最大!」
ブースター。
噴射。
止まらない。
シンジ(イズモ)「重っ……!」
カエデ「敵性個体、落下エネルギー増大!」
シンジ(イズモ)「こんなの」
歯。
食いしばる。
シンジ(イズモ)「受け止めるもんじゃないだろ!」
ミサト〈無線〉「あと三秒!」
下。
弐号機。
零号機。
跳ぶ。
アスカ「遅いわよ!」
弐号機。
A.T.フィールド。
展開。
レイ「支える」
零号機。
重なる。
三つ。
フィールド。
一つ。
落下。
止まらない。
でも。
遅くなる。
シンジ(イズモ)「進路!」
カエデ「都市中央よりずれています!」
シンジ(イズモ)「もっと!」
初号機。
身体。
捻る。
無理やり。
使徒。
押す。
アスカ「何してんのよ!」
シンジ(イズモ)「市街地から外す!」
アスカ「この状況で!?」
シンジ(イズモ)「直撃したら!」
息。
詰まる。
シンジ(イズモ)「勝っても街なくなる!」
アスカ「……ほんっと!」
弐号機。
横。
押す。
アスカ「そういうとこだけは!」
さらに。
レイ。
反対。
押す。
レイ「合わせる」
三機。
軌道。
変える。
数十メートル。
数百。
少し。
でも。
意味がある。
カエデ「高度三千!」
ミサト〈無線〉「コア!」
使徒。
赤。
中心。
露出。
アスカ「見えてる!」
弐号機。
腕。
伸ばす。
アスカ「プロレッシブナイフ!」
刃。
抜く。
だが。
届かない。
シンジ(イズモ)「アスカ!」
アスカ「何!」
シンジ(イズモ)「踏んで!」
アスカ「は!?」
シンジ(イズモ)「初号機の肩!」
アスカ「……!」
一瞬。
理解。
弐号機。
脚。
初号機の肩へ。
シンジ(イズモ)「行け!」
初号機。
押す。
弐号機。
跳ぶ。
アスカ「もらったぁぁぁ!!」
刃。
コア。
突き刺す。
一撃。
足りない。
アスカ「硬っ!」
レイ「補助する」
零号機。
下から。
使徒。
固定。
シンジ(イズモ)「マスティマ!」
追加アーム。
展開。
槍形態。
シンジ(イズモ)「アスカ!」
アスカ「分かってる!」
弐号機。
ナイフ。
さらに。
初号機。
槍。
同時。
コア。
亀裂。
赤。
光。
そして。
砕けた。
使徒。
崩壊。
銀色の。
閃光。
三機。
そのまま。
落ちる。
アスカ「ちょっと待って!」
シンジ(イズモ)「ブースター!」
カエデ「再点火!」
初号機。
弐号機。
掴む。
レイ「私も」
零号機。
初号機。
腕。
掴む。
シンジ(イズモ)「重い!」
アスカ「乙女に重いって言うな!」
シンジ(イズモ)「エヴァの話!」
アスカ「分かってるわよ!」
ブースター。
全開。
減速。
地面。
着地。
ドン。
脚。
沈む。
でも。
立っている。
静寂。
数秒。
ミサト〈無線〉「……」
息。
吐く。
ミサト〈無線〉「使徒」
マヤ〈無線〉「敵性反応消失!」
マヤ〈無線〉「完全撃破です!」
歓声。
指令室。
ミサト。
椅子へ。
沈む。
ミサト「……奇跡ね」
リツコ「いいえ」
画面。
三機。
リツコ「準備」
一拍。
リツコ「訓練」
もう一拍。
リツコ「それと」
少し。
口元。
緩む。
リツコ「無茶」
ミサト「最後だけ余計」
リツコ「事実でしょう」
地上。
初号機。
立つ。
アスカ「疲れた……」
シンジ(イズモ)「同感」
レイ「……」
シンジ(イズモ)「綾波、大丈夫?」
レイ「問題ない」
アスカ「私には聞かないの?」
シンジ(イズモ)「アスカ大丈夫?」
アスカ「遅い!」
シンジ(イズモ)「ごめん」
アスカ「……まあ」
弐号機。
空。
見る。
アスカ「勝ったからいいわ」
シンジ(イズモ)「うん」
その日の夜。
第七ケージ。
初号機。
右肩。
開いている。
整備主任「お前なぁぁぁぁ!」
シンジ(イズモ)「ごめんなさい」
整備主任「F型初日に!」
指。
装甲。
歪み。
整備主任「これ!」
次。
ブースター。
整備主任「これ!」
さらに。
肩。
整備主任「弐号機踏ませただろ!」
シンジ(イズモ)「必要だったので」
整備主任「必要なら壊していいわけじゃねえ!」
アスカ「ちょっと!」
後ろ。
アスカ。
アスカ「私のせいみたいに言わないで!」
整備主任「踏んだのはお前だろ!」
アスカ「こいつが踏めって言ったのよ!」
シンジ(イズモ)「戦術的判断」
整備主任「お前ら二人とも工具持て!」
二人「はい」
レイ。
横。
立つ。
整備主任「零号機は比較的綺麗だな」
レイ「必要以上に動かなかったから」
アスカ「聞いた!?」
シンジ(イズモ)「正論」
アスカ「バカシンジ!」
整備班。
笑う。
しばらく。
作業。
ボルト。
外す。
装甲。
イズモ。
手。
動かす。
戦闘。
終わった。
使徒。
落とした。
都市。
残った。
みんな。
生きている。
奇跡。
そう。
呼ぶのは。
簡単。
でも。
シンジ(イズモ)「……奇跡って」
整備主任「ん?」
シンジ(イズモ)「何回も起こせるなら」
ボルト。
外す。
シンジ(イズモ)「準備なんじゃないですかね」
整備主任「急に何だ」
シンジ(イズモ)「ミサトさんが奇跡って言ってたから」
アスカ「奇跡でいいじゃない」
工具。
持ちながら。
アスカ「私たちがやった奇跡」
シンジ(イズモ)「……それもいいか」
レイ「価値があるの?」
二人。
見る。
レイ。
続ける。
レイ「奇跡には」
イズモ。
少し。
考える。
シンジ(イズモ)「結果だけなら」
初号機。
見上げる。
シンジ(イズモ)「今日、全員帰ってきたこと」
アスカ「……」
シンジ(イズモ)「それで十分だと思う」
静か。
整備主任「いい話してるところ悪いけど」
三人。
見る。
整備主任「その奇跡の修理、朝までかかるぞ」
シンジ(イズモ)「……」
アスカ「……」
レイ「そう」
シンジ(イズモ)「現実戻すの早くないですか」
整備主任「壊した奴が言うな」
数日後。
学校。
昼休み。
窓際。
レイ。
一人。
イズモ。
近づく。
シンジ(イズモ)「綾波」
レイ「なに」
シンジ(イズモ)「今度の日曜」
少し。
間。
シンジ(イズモ)「空いてる?」
レイ「……」
考える。
レイ「テストはないわ」
シンジ(イズモ)「じゃあ」
シンジ(イズモ)「買い物行かない?」
レイ「買い物?」
シンジ(イズモ)「うん」
レイ「今あるもので十分」
シンジ(イズモ)「そうなんだけど」
隣。
座る。
シンジ(イズモ)「必要なもの買うんじゃなくて」
レイ「?」
シンジ(イズモ)「欲しいもの探す」
レイ「……」
意味が。
分からない。
そんな顔。
レイ「必要ではないものを?」
シンジ(イズモ)「そう」
レイ「なぜ?」
シンジ(イズモ)「楽しいから」
レイ「……」
さらに。
分からない顔。
シンジ(イズモ)「まあ」
少し。
笑う。
シンジ(イズモ)「一回やってみよう」
レイ「……」
一拍。
レイ「わかったわ」
後ろ。
アスカ「…………」
シンジ(イズモ)「?」
振り返る。
アスカ。
パン。
持っている。
シンジ(イズモ)「何?」
アスカ「別に」
シンジ(イズモ)「?」
アスカ「デート?」
シンジ(イズモ)「買い物」
アスカ「男女で休日に?」
シンジ(イズモ)「カエデも来るよ」
カエデ「同行予定です」
アスカ「……あっそ」
シンジ(イズモ)「アスカも来る?」
アスカ「行かない!」
シンジ(イズモ)「了解」
アスカ「即引くな!」
シンジ(イズモ)「どうすればいいの」
レイ「来る?」
アスカ「ファーストまで誘わないで!」
レイ「そう」
アスカ「……」
少し。
パン。
噛む。
アスカ「場所だけ教えなさい」
シンジ(イズモ)「来るんじゃん」
アスカ「偶然寄るかもしれないだけよ!」
カエデ「予定へ追加しますか」
アスカ「しなくていい!」
日曜日。
ショッピングモール。
人。
音。
光。
音楽。
食品。
服。
子供。
家族。
レイ。
入口。
立つ。
シンジ(イズモ)「人多い?」
レイ「……多い」
カエデ「休日としては標準的です」
レイ「そう」
シンジ(イズモ)「疲れたら言って」
レイ「ええ」
最初。
服。
レイ「……」
シンジ(イズモ)「何か気になる?」
レイ「分からない」
シンジ(イズモ)「じゃ適当に見る」
服。
色。
素材。
レイ。
一枚。
触る。
白。
柔らかい。
シンジ(イズモ)「それ好き?」
レイ「……」
触る。
レイ「嫌いではない」
シンジ(イズモ)「じゃ試着」
レイ「必要?」
シンジ(イズモ)「必要じゃない」
レイ「……」
シンジ(イズモ)「でも見たい」
レイ「あなたが?」
シンジ(イズモ)「綾波が」
少し。
言い直す。
シンジ(イズモ)「自分で選んだ服着てるところ」
レイ「……」
服。
見る。
レイ「着る」
数分。
試着室。
カーテン。
開く。
レイ。
シンジ(イズモ)「……」
レイ「変?」
シンジ(イズモ)「いや」
少し。
笑う。
シンジ(イズモ)「似合ってる」
レイ「そう」
カエデ「色彩的にも適合率が高いです」
シンジ(イズモ)「それ褒め方?」
カエデ「はい」
レイ。
鏡。
見る。
少し。
長く。
レイ「……これ」
シンジ(イズモ)「?」
レイ「買う」
シンジ(イズモ)「うん」
次。
雑貨。
レイ。
止まる。
ぬいぐるみ。
小さい。
白い。
丸い。
シンジ(イズモ)「気になる?」
レイ「……」
手。
伸ばす。
持つ。
じっと。
見る。
レイ「……かわいい」
イズモ。
止まる。
シンジ(イズモ)「……うん」
レイ「?」
シンジ(イズモ)「いや」
シンジ(イズモ)「綾波がそういうこと言うの」
少し。
笑う。
シンジ(イズモ)「なんかいいなって」
レイ「そう?」
シンジ(イズモ)「うん」
レイ。
ぬいぐるみ。
抱える。
シンジ(イズモ)「それも買う?」
レイ「……」
少し。
迷う。
レイ「必要ない」
シンジ(イズモ)「今日のルール」
レイ「?」
シンジ(イズモ)「必要かどうかは考えない」
レイ「……」
ぬいぐるみ。
見る。
レイ「……欲しい」
シンジ(イズモ)「じゃあ決まり」
後ろ。
アスカ「…………」
イズモ。
振り返る。
シンジ(イズモ)「来てるじゃん」
アスカ「偶然よ!」
シンジ(イズモ)「三十分くらい後ろにいたよね」
アスカ「気づいてたの!?」
カエデ「十四分前から確認していました」
アスカ「早く言いなさいよ!」
レイ「アスカ」
アスカ「何よ」
レイ。
ぬいぐるみ。
見せる。
レイ「かわいい」
アスカ「……」
一瞬。
完全に。
言葉を失う。
アスカ「……まあ」
顔。
逸らす。
アスカ「悪くないじゃない」
レイ「そう」
アスカ「服も」
レイ「碇くんが似合うと言った」
アスカ「…………」
シンジ(イズモ)「?」
アスカ「次!」
シンジ(イズモ)「何?」
アスカ「私が選ぶ!」
レイ「?」
アスカ「ファースト、来なさい!」
レイ「ええ」
シンジ(イズモ)「仲良くなってる」
アスカ「なってない!」
数時間。
袋。
増える。
服。
日用品。
小物。
ぬいぐるみ。
アスカ「買いすぎじゃない?」
シンジ(イズモ)「自分もそう思う」
レイ「……」
袋。
見る。
少し。
レイ「楽しい」
二人。
止まる。
アスカ「……」
シンジ(イズモ)「そっか」
レイ「ええ」
シンジ(イズモ)「よかった」
レイ「今日は」
ほんの少し。
口元。
レイ「ありがとう」
シンジ(イズモ)「その顔見れたなら」
一拍。
シンジ(イズモ)「十分」
アスカ「……」
アスカ「私いるんだけど」
シンジ(イズモ)「知ってる」
アスカ「なんか居づらい!」
レイ「アスカもありがとう」
アスカ「……」
アスカ「ならいいわ」
帰り。
夕方。
三人。
歩く。
シンジ(イズモ)「綾波」
レイ「なに」
シンジ(イズモ)「一つ相談」
レイ「?」
シンジ(イズモ)「今の家」
少し。
慎重。
シンジ(イズモ)「住みやすい?」
レイ「問題ない」
シンジ(イズモ)「綾波の問題ないは信用できない」
レイ「なぜ?」
アスカ「それは分かる」
レイ「そう?」
シンジ(イズモ)「冷蔵庫ほぼ空」
シンジ(イズモ)「鍵開いてる」
シンジ(イズモ)「部屋寒い」
シンジ(イズモ)「生活用品最低限」
レイ「十分」
シンジ(イズモ)「十分じゃない」
レイ「……」
シンジ(イズモ)「父さんに許可取れたら」
少し。
間。
シンジ(イズモ)「うち来る?」
アスカ「はぁ!?」
レイ「……」
シンジ(イズモ)「アスカ」
アスカ「いやいやいや!」
アスカ「何さらっと同棲提案してんのよ!」
シンジ(イズモ)「同居!」
アスカ「同じよ!」
シンジ(イズモ)「カエデもいる!」
アスカ「だから何!」
レイ「理由は?」
二人。
止まる。
シンジ(イズモ)「最低限」
レイを見る。
シンジ(イズモ)「人として生活してほしい」
レイ「……」
シンジ(イズモ)「ちゃんと食べて」
シンジ(イズモ)「暖かい部屋で寝て」
シンジ(イズモ)「欲しいもの買って」
シンジ(イズモ)「エヴァ以外にも」
一拍。
シンジ(イズモ)「帰る場所あった方がいい」
レイ「……精神衛生?」
シンジ(イズモ)「そう」
レイ「今の環境は悪い?」
シンジ(イズモ)「かなり」
アスカ「同意」
レイ「そう」
シンジ(イズモ)「このままだと」
少し。
考える。
シンジ(イズモ)「ミサトさんみたいになる」
アスカ「比較対象そこ!?」
レイ「……」
少し。
想像。
したらしい。
レイ「それは」
一拍。
レイ「嫌」
アスカ「納得するの!?」
シンジ(イズモ)「じゃあ聞いてみる」
レイ「ええ」
翌日。
司令室。
ゲンドウ。
書類。
シンジ(イズモ)「父さん」
ゲンドウ「何だ」
シンジ(イズモ)「綾波」
一拍。
シンジ(イズモ)「うちで暮らしていい?」
冬月。
目。
上げる。
ゲンドウ。
止まる。
シンジ(イズモ)「本人には確認した」
ゲンドウ「理由は」
シンジ(イズモ)「生活環境」
ゲンドウ「現状で問題はない」
シンジ(イズモ)「ある」
即答。
ゲンドウ「……」
シンジ(イズモ)「冷蔵庫ほぼ空」
シンジ(イズモ)「セキュリティ最悪」
シンジ(イズモ)「部屋の温度管理も悪い」
シンジ(イズモ)「食事も不規則」
シンジ(イズモ)「パイロット管理としても駄目だと思う」
冬月「……正論だな」
ゲンドウ「冬月」
冬月「事実だ」
シンジ(イズモ)「それに」
ゲンドウを見る。
シンジ(イズモ)「最低限」
少し。
声。
落ちる。
シンジ(イズモ)「人として生活させたい」
沈黙。
長い。
ゲンドウ。
何を。
考えているのか。
分からない。
ただ。
数秒。
ゲンドウ「……よかろう」
シンジ(イズモ)「いいの?」
ゲンドウ「監視対象を集約できる」
イズモ。
眉。
寄る。
やっぱり。
管理。
それだけ。
シンジ(イズモ)「……分かった」
ゲンドウ「問題があれば戻す」
シンジ(イズモ)「問題起こさないようにする」
冬月「君が一番問題を起こしている気がするが」
シンジ(イズモ)「最近よく言われます」
数日後。
レイの部屋。
引っ越し。
シンジ(イズモ)「……」
アスカ「……」
カエデ「……」
段ボール。
一つ。
シンジ(イズモ)「これだけ?」
レイ「ええ」
アスカ「本当に?」
レイ「必要なものは入っている」
アスカ「服は?」
レイ「これ」
アスカ「日用品」
レイ「これ」
シンジ(イズモ)「思ったより」
一拍。
シンジ(イズモ)「深刻だった」
レイ「?」
アスカ「ファースト」
肩。
掴む。
アスカ「今度また買い物行くわよ」
レイ「なぜ?」
アスカ「いいから!」
レイ「分かった」
新しい家。
レイ用。
部屋。
ベッド。
机。
棚。
カーテン。
買った服。
そして。
ぬいぐるみ。
レイ。
置く。
枕元。
シンジ(イズモ)「そこなんだ」
レイ「ここがいい」
シンジ(イズモ)「うん」
カエデ「生活用品の配置完了」
アスカ「冷蔵庫もちゃんと入ってる?」
シンジ(イズモ)「入ってる」
アスカ「野菜は?」
シンジ(イズモ)「ある」
アスカ「飲み物」
シンジ(イズモ)「ある」
アスカ「ミサトのビール」
シンジ(イズモ)「ない」
アスカ「よし」
シンジ(イズモ)「なんでそこ確認したの」
玄関。
アスカ「じゃあ私は帰る」
レイ「アスカ」
アスカ「何」
レイ「ありがとう」
アスカ「……」
目。
逸らす。
アスカ「別に」
一拍。
アスカ「暇だっただけよ」
シンジ(イズモ)「朝から手伝ってたけど」
アスカ「うるさい!」
扉。
閉じる。
部屋。
静か。
三人。
イズモ。
カエデ。
レイ。
シンジ(イズモ)「改めて」
少し。
笑う。
シンジ(イズモ)「よろしく」
レイ「よろしく」
カエデ「よろしくお願いいたします」
レイ。
部屋。
見る。
テーブル。
食器。
冷蔵庫。
カーテン。
誰かの。
足音。
生活音。
シンジ(イズモ)「夕飯どうする?」
レイ「……」
少し。
考える。
レイ「味噌汁」
シンジ(イズモ)「また?」
レイ「好き」
イズモ。
一瞬。
止まる。
シンジ(イズモ)「そっか」
シンジ(イズモ)「じゃあ味噌汁」
カエデ「その他の栄養素も必要です」
シンジ(イズモ)「分かってる」
レイ「手伝う」
シンジ(イズモ)「料理?」
レイ「ええ」
シンジ(イズモ)「やったことある?」
レイ「ない」
シンジ(イズモ)「じゃ」
キッチン。
指す。
シンジ(イズモ)「一緒にやろう」
その夜。
包丁。
危なっかしい。
レイ「これくらい?」
シンジ(イズモ)「もうちょっと小さく」
レイ「こう?」
シンジ(イズモ)「そう」
カエデ「刃先へ注意してください」
レイ「ええ」
湯。
沸く。
味噌。
香り。
小さな。
食卓。
三人。
レイ。
一口。
飲む。
レイ「……」
シンジ(イズモ)「どう?」
レイ「温かい」
シンジ(イズモ)「温泉と同じ感想だ」
レイ「でも」
少し。
間。
レイ「違う」
シンジ(イズモ)「?」
レイ「こっちの方が」
言葉。
探す。
レイ「落ち着く」
イズモ。
何も。
言わなかった。
ただ。
少し。
笑った。
それは。
人類を救う奇跡でも。
使徒を倒す奇跡でも。
なかった。
誰かが。
帰ってきて。
誰かが。
夕飯を作って。
同じテーブルで。
温かいものを食べる。
それだけ。
でも。
綾波レイの世界には。
今まで。
ほとんど存在しなかったもの。
生活。
その。
小さな温度が。
確かに。
この部屋へ。
生まれ始めていた。
ダミープラグのデータ入力に襲来する使徒だがイズモは果たして使徒を壊滅することができるか?次回創造紀エヴァンゲリオン使徒侵入不可