創造紀エヴァンゲリオン ―外来意識の介入―   作:最上 イズモ

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子宮の天使

 

 

ネルフ総合病院。

 

夜。

 

昼夜を問わず人が行き交うはずの廊下も、この時間だけは少し静かだった。

 

照明は落とされ。

 

床を照らす非常灯だけが、長い廊下を青白く伸ばしている。

 

消毒薬の匂い。

 

遠く。

 

一定の間隔で鳴る医療機器。

 

イズモは。

 

リツコの少し後ろを歩いていた。

 

シンジ(イズモ)「……アスカは」

 

リツコ「今は」

 

歩みを止めない。

 

リツコ「そっとしておきなさい」

 

それだけ。

 

イズモの胸の奥が。

 

冷える。

 

シンジ(イズモ)「容態は」

 

リツコ「身体に大きな損傷はない」

 

シンジ(イズモ)「精神は」

 

リツコ「……」

 

一拍。

 

リツコ「精神汚染光線を」

 

声が少し低くなる。

 

リツコ「長く浴びすぎたわ」

 

シンジ(イズモ)「どれくらいで」

 

リツコ「分からない」

 

シンジ(イズモ)「……」

 

リツコ「最低でも二か月」

 

足。

 

止まる。

 

リツコ「長ければ半年」

 

さらに。

 

リツコ「それ以上」

 

シンジ(イズモ)「……目を」

 

リツコ「覚まさない可能性もある」

 

静か。

 

電子音だけ。

 

一定。

 

シンジ(イズモ)「……そう」

 

喉が。

 

乾く。

 

あの時。

 

兵装ビルへ。

 

もっと早く誘導できていれば。

 

最初から。

 

アスカを出さなければ。

 

自分が。

 

初号機で出ていれば。

 

一つずつ。

 

頭の中。

 

並ぶ。

 

カエデ『イズモ』

 

小さな端末。

 

シンジ(イズモ)「分かってる」

 

カエデ『まだ何も言っていません』

 

シンジ(イズモ)「……」

 

リツコが。

 

振り返る。

 

リツコ「あなた」

 

少し。

 

目を細める。

 

リツコ「自分のせいだと思ってる?」

 

シンジ(イズモ)「もっと早く」

 

リツコ「それを言い始めたら」

 

遮る。

 

リツコ「私も」

 

一拍。

 

リツコ「葛城も」

 

リツコ「司令も」

 

リツコ「全員よ」

 

シンジ(イズモ)「でも」

 

リツコ「あなた一人で」

 

声。

 

少し強く。

 

リツコ「全部の未来を知って」

 

リツコ「全部防げると思わないことね」

 

イズモ。

 

何も。

 

言えない。

 

リツコ「……それに」

 

病室。

 

扉。

 

見る。

 

リツコ「まだ死んでない」

 

シンジ(イズモ)「うん」

 

リツコ「なら」

 

歩き出す。

 

リツコ「勝手に終わらせない」

 

シンジ(イズモ)「……はい」

 

アスカの病室。

 

ガラス越し。

 

ベッド。

 

眠っている。

 

いつも。

 

怒鳴る。

 

文句を言う。

 

何かにつけて張り合う。

 

その少女が。

 

何も。

 

言わない。

 

シンジ(イズモ)「……」

 

少し。

 

長く。

 

見る。

 

シンジ(イズモ)「帰ってきたら」

 

小さい。

 

声。

 

シンジ(イズモ)「ゲームの感想」

 

一拍。

 

シンジ(イズモ)「まだ聞いてないからな」

 

反応。

 

ない。

 

シンジ(イズモ)「……また来る」

 

廊下へ。

 

戻る。

 

その夜。

 

家。

 

扉。

 

シンジ(イズモ)「ただいま」

 

レイ「おかえり」

 

食卓。

 

二人分。

 

カエデ「夕食の準備は完了しています」

 

シンジ(イズモ)「ありがとう」

 

レイ「アスカは?」

 

手。

 

止まる。

 

シンジ(イズモ)「……しばらく」

 

一拍。

 

シンジ(イズモ)「起きないかもしれない」

 

レイ「そう」

 

それだけ。

 

でも。

 

味噌汁を持つ手が。

 

ほんの少し。

 

止まっている。

 

シンジ(イズモ)「綾波?」

 

レイ「なに」

 

シンジ(イズモ)「心配?」

 

レイ「……」

 

考える。

 

以前なら。

 

命令。

 

任務。

 

機体。

 

そんな言葉で。

 

答えたかもしれない。

 

レイ「ええ」

 

短い。

 

シンジ(イズモ)「そっか」

 

レイ「アスカがいないと」

 

部屋。

 

見る。

 

レイ「静か」

 

シンジ(イズモ)「普段住んでないけどね」

 

レイ「よく来る」

 

シンジ(イズモ)「確かに」

 

レイ「だから」

 

一拍。

 

レイ「静か」

 

イズモ。

 

少し。

 

笑う。

 

シンジ(イズモ)「早くうるさくなってほしいな」

 

レイ「ええ」

 

それだけ。

 

でも。

 

二人とも。

 

同じことを。

 

思っていた。

 

数日後。

 

警報。

 

第3新東京市。

 

マヤ「目標確認!」

 

巨大スクリーン。

 

空。

 

大涌谷上空。

 

一つの。

 

異様な。

 

形。

 

輪。

 

いや。

 

螺旋。

 

二本の線が。

 

絡み合い。

 

回転し続けている。

 

マヤ「目標、大涌谷上空で定点回転!」

 

リツコ「……」

 

拡大。

 

シンジ(イズモ)「DNA」

 

ミサト「何?」

 

シンジ(イズモ)「二重らせんみたいだ」

 

リツコ「ええ」

 

解析。

 

数値。

 

リツコ「自己複製」

 

リツコ「再生」

 

リツコ「融合」

 

目。

 

細くなる。

 

リツコ「そういう性質を前提にした構造かもしれない」

 

シンジ(イズモ)「……アーミサエル」

 

カヲル「知っているのかい?」

 

横。

 

白い少年。

 

イズモ。

 

一瞬。

 

見る。

 

シンジ(イズモ)「多分」

 

カヲル「また随分と便利な“多分”だね」

 

シンジ(イズモ)「最近みんなに言われる」

 

ミサト「初号機は?」

 

マヤ「凍結継続!」

 

シンジ(イズモ)「まだ?」

 

リツコ「ゼルエル戦時の」

 

画面。

 

白化した初号機。

 

リツコ「原因不明現象」

 

リツコ「解析が終わっていない」

 

シンジ(イズモ)「戦力必要なんだけど」

 

ミサト「碇司令の判断よ」

 

シンジ(イズモ)「……」

 

ゲンドウ。

 

見る。

 

何も。

 

言わない。

 

初号機。

 

守る。

 

いや。

 

中にいる。

 

ユイを。

 

守っているのか。

 

シンジ(イズモ)「……分かった」

 

ミサト「零号機」

 

レイ「はい」

 

ミサト「先行」

 

レイ「了解」

 

ミサト「弐号機」

 

カヲル「了解したよ」

 

アスカの。

 

座るはずだった。

 

エントリープラグ。

 

そこに。

 

カヲル。

 

シンジ(イズモ)「カヲル」

 

カヲル「何かな」

 

シンジ(イズモ)「弐号機」

 

一拍。

 

シンジ(イズモ)「壊さないでね」

 

カヲル「アスカの機体だから?」

 

シンジ(イズモ)「整備班に怒られる」

 

カヲル「……」

 

少し。

 

笑う。

 

カヲル「君らしいね」

 

シンジ(イズモ)「半分冗談」

 

カヲル「半分は本気?」

 

シンジ(イズモ)「うん」

 

零号機。

 

射出。

 

弐号機。

 

続く。

 

地上。

 

使徒。

 

回転。

 

ゆっくり。

 

レイ『接触距離へ入る』

 

ミサト「まず様子を見る!」

 

レイ『了解』

 

零号機。

 

パレットライフル。

 

構える。

 

距離。

 

詰める。

 

レイ『撃つ』

 

ゼロ距離。

 

発砲。

 

轟音。

 

弾丸。

 

命中。

 

そのはず。

 

なのに。

 

消える。

 

マヤ「え?」

 

表面。

 

触れた瞬間。

 

弾丸が。

 

溶けるように。

 

飲み込まれる。

 

リツコ「取り込んでる……?」

 

シンジ(イズモ)「五番兵装ビル」

 

マヤ「え?」

 

シンジ(イズモ)「展開してください!」

 

ミサト「五番!」

 

マヤ「了解!」

 

地上。

 

ビル。

 

割れる。

 

巨大な。

 

ガトリング砲。

 

レイ『これは』

 

シンジ(イズモ)「前作ったやつ」

 

レイ『A.T.フィールド用?』

 

シンジ(イズモ)「うん」

 

シンジ(イズモ)「通常弾じゃない」

 

シンジ(イズモ)「フィールド干渉パルス付き」

 

レイ『使う』

 

シンジ(イズモ)「お願い」

 

回転。

 

発射。

 

弾幕。

 

使徒。

 

表面。

 

爆ぜる。

 

マヤ「損傷確認!」

 

ミサト「効いた!」

 

シンジ(イズモ)「いや」

 

再生。

 

速い。

 

傷。

 

塞がる。

 

数秒。

 

元通り。

 

シンジ(イズモ)「……アメーバかよ」

 

リツコ「再生速度が異常ね」

 

シンジ(イズモ)「六-B」

 

マヤ「高周波ブレード!」

 

地面。

 

開く。

 

レイ。

 

掴む。

 

切断。

 

使徒。

 

二つ。

 

マヤ「分断成功!」

 

シンジ(イズモ)「まだ!」

 

二つ。

 

蠢く。

 

伸びる。

 

再び。

 

一つ。

 

シンジ(イズモ)「やっぱり」

 

ミサト「どう倒すのよ、これ」

 

リツコ「核になる部位を」

 

シンジ(イズモ)「その前に」

 

使徒。

 

形。

 

変わる。

 

細い。

 

一本。

 

紐。

 

まるで。

 

臍帯。

 

レイ『……来る』

 

伸びる。

 

零号機。

 

触れる。

 

レイ「っ……!」

 

黒。

 

侵食。

 

指。

 

腕。

 

肩。

 

装甲。

 

一瞬。

 

広がる。

 

マヤ「零号機へ侵入!」

 

ミサト「レイ!」

 

シンジ(イズモ)「離れて!」

 

レイ『動かない』

 

侵食。

 

さらに。

 

カヲル「……」

 

弐号機。

 

前。

 

出る。

 

シンジ(イズモ)「カヲル、待って!」

 

遅い。

 

使徒。

 

分岐。

 

弐号機。

 

触れる。

 

カヲル「これは……」

 

弐号機。

 

停止。

 

侵食。

 

マヤ「弐号機にも!」

 

ミサト「初号機!」

 

ゲンドウ「……」

 

ミサト「司令!」

 

ゲンドウ「凍結解除」

 

シンジ(イズモ)「遅い!」

 

自分でも。

 

驚くほど。

 

強い。

 

声。

 

ゲンドウ。

 

こちら。

 

見る。

 

シンジ(イズモ)「二人とももう侵食されてる!」

 

リツコ「シンジ君!」

 

シンジ(イズモ)「……」

 

息。

 

整える。

 

シンジ(イズモ)「すみません」

 

ゲンドウ「初号機を出せ」

 

マヤ「凍結解除!」

 

第七ケージ。

 

拘束。

 

外れる。

 

整備主任『シンジ!』

 

シンジ(イズモ)「乗ります!」

 

整備主任『解析終わってないぞ!』

 

シンジ(イズモ)「二人待ってる!」

 

一瞬。

 

整備主任。

 

黙る。

 

整備主任『……行け!』

 

初号機。

 

射出。

 

地上。

 

紫。

 

巨体。

 

走る。

 

シンジ(イズモ)「カエデ」

 

カエデ「はい」

 

シンジ(イズモ)「侵食速度」

 

カエデ「零号機四二パーセント」

 

シンジ(イズモ)「弐号機」

 

カエデ「二一」

 

シンジ(イズモ)「零号機優先」

 

カエデ「了解」

 

レイ『碇君』

 

シンジ(イズモ)「綾波!」

 

レイ『来ないで』

 

声。

 

違う。

 

いつもの。

 

静かな。

 

声。

 

でも。

 

そこに。

 

恐怖。

 

ある。

 

シンジ(イズモ)「行くよ」

 

レイ『侵食される』

 

シンジ(イズモ)「分かってる」

 

レイ『来ないで』

 

シンジ(イズモ)「嫌だ」

 

即答。

 

使徒。

 

伸びる。

 

初号機。

 

回避。

 

紙一重。

 

シンジ(イズモ)「カエデ!」

 

カエデ「ダミーシステム改」

 

シンジ(イズモ)「起動準備!」

 

カエデ「了解」

 

ミサト『ダミー!?』

 

リツコ『あなた、いつ改造したの!?』

 

シンジ(イズモ)「前!」

 

リツコ『前っていつ!?』

 

シンジ(イズモ)「今説明してる時間ない!」

 

リツコ『あなた最近そればっかり!』

 

初号機。

 

使徒の攻撃。

 

かわす。

 

一撃。

 

二撃。

 

地面。

 

裂ける。

 

シンジ(イズモ)「綾波!」

 

レイ『……』

 

シンジ(イズモ)「今から零号機をダミーへ移す」

 

レイ『……』

 

シンジ(イズモ)「脱出して!」

 

レイ『できない』

 

シンジ(イズモ)「できる」

 

レイ『A.T.フィールドが』

 

シンジ(イズモ)「出ないようにした!」

 

レイ『……え?』

 

シンジ(イズモ)「ダミーが起動した瞬間」

 

シンジ(イズモ)「パイロット優先でエントリープラグを強制排出する!」

 

リツコ『そんな仕様――』

 

シンジ(イズモ)「自分が変えました!」

 

リツコ『でしょうね!!』

 

レイ。

 

沈黙。

 

シンジ(イズモ)「綾波」

 

レイ『でも』

 

一拍。

 

レイ『私には』

 

イズモ。

 

嫌な。

 

予感。

 

レイ『代わりがいるから』

 

時間。

 

止まる。

 

シンジ(イズモ)「……」

 

あの。

 

部屋。

 

空の。

 

冷蔵庫。

 

壊れた。

 

眼鏡。

 

白い。

 

壁。

 

そして。

 

今。

 

家。

 

カーテン。

 

味噌汁。

 

一緒に。

 

切った。

 

野菜。

 

ショッピングモール。

 

白い。

 

服。

 

ぬいぐるみ。

 

枕元。

 

「かわいい」

 

「欲しい」

 

「楽しい」

 

「好き」

 

全部。

 

頭。

 

一気に。

 

浮かぶ。

 

シンジ(イズモ)「違う」

 

レイ『……』

 

シンジ(イズモ)「違う!」

 

声。

 

抑えられない。

 

シンジ(イズモ)「肉体が!」

 

初号機。

 

攻撃。

 

回避。

 

シンジ(イズモ)「同じでも!」

 

使徒。

 

掴む。

 

振り払う。

 

シンジ(イズモ)「魂はデータじゃない!」

 

レイ『……』

 

シンジ(イズモ)「買い物行って!」

 

シンジ(イズモ)「ぬいぐるみ見て!」

 

シンジ(イズモ)「かわいいって言って!」

 

シンジ(イズモ)「味噌汁が好きって言って!」

 

レイ『……』

 

シンジ(イズモ)「アスカがいないと静かだって!」

 

シンジ(イズモ)「心配だって言った!」

 

声。

 

震える。

 

シンジ(イズモ)「それ全部!」

 

シンジ(イズモ)「今ここにいる綾波がやったことだ!」

 

零号機。

 

侵食。

 

五七。

 

シンジ(イズモ)「見た目が同じでも!」

 

シンジ(イズモ)「記憶をコピーしても!」

 

シンジ(イズモ)「それは!」

 

一拍。

 

シンジ(イズモ)「今の君じゃない!」

 

レイ。

 

息。

 

小さい。

 

レイ『……』

 

シンジ(イズモ)「君は一人だ」

 

シンジ(イズモ)「だから」

 

少し。

 

声。

 

落とす。

 

シンジ(イズモ)「死なないでくれ」

 

レイ『……でも』

 

シンジ(イズモ)「君が死んだら!」

 

止まらない。

 

シンジ(イズモ)「自分が悲しむ!」

 

シンジ(イズモ)「アスカも!」

 

シンジ(イズモ)「ミサトさんも!」

 

シンジ(イズモ)「カエデも!」

 

シンジ(イズモ)「たぶんケンスケもトウジも!」

 

シンジ(イズモ)「みんな!」

 

一拍。

 

シンジ(イズモ)「ちゃんと悲しむんだよ!」

 

指令室。

 

静か。

 

誰も。

 

何も。

 

言わない。

 

レイ『……』

 

長い。

 

間。

 

レイ『碇君』

 

シンジ(イズモ)「何」

 

レイ『私』

 

少し。

 

呼吸。

 

レイ『帰ってもいいの?』

 

イズモ。

 

目。

 

熱い。

 

シンジ(イズモ)「帰ってきて」

 

即答。

 

シンジ(イズモ)「家に」

 

レイ『……』

 

ほんの。

 

小さく。

 

レイ『わかったわ』

 

シンジ(イズモ)「カエデ!」

 

カエデ「ダミーシステム改!」

 

カエデ「起動!」

 

零号機。

 

内部。

 

制御。

 

切替。

 

《PILOT PRIORITY》

 

《ENTRY PLUG EJECTION》

 

レイ『……!』

 

爆発ボルト。

 

作動。

 

エントリープラグ。

 

射出。

 

使徒。

 

反応。

 

追う。

 

シンジ(イズモ)「させるか!」

 

初号機。

 

間。

 

入る。

 

A.T.フィールド。

 

展開。

 

使徒。

 

弾く。

 

シンジ(イズモ)「綾波!」

 

カエデ「プラグ射出成功!」

 

カエデ「生命反応確認!」

 

イズモ。

 

息。

 

吐く。

 

シンジ(イズモ)「よし!」

 

零号機。

 

残る。

 

無人。

 

ダミー。

 

動く。

 

使徒。

 

侵食。

 

続く。

 

シンジ(イズモ)「カヲル!」

 

カヲル『聞こえているよ』

 

シンジ(イズモ)「弐号機脱出できる?」

 

カヲル『僕なら』

 

少し。

 

笑う。

 

カヲル『問題ない』

 

シンジ(イズモ)「なら離脱!」

 

カヲル『了解した』

 

弐号機。

 

A.T.フィールド。

 

急激に。

 

展開。

 

使徒。

 

一瞬。

 

弾く。

 

エントリープラグ。

 

射出。

 

シンジ(イズモ)「……」

 

カヲル。

 

やっぱり。

 

普通では。

 

ない。

 

でも。

 

今は。

 

いい。

 

シンジ(イズモ)「零号機!」

 

ダミー。

 

使徒。

 

抱く。

 

まるで。

 

自ら。

 

取り込む。

 

ように。

 

使徒の。

 

螺旋。

 

零号機。

 

巻きつく。

 

カエデ「敵性個体、零号機へ集中!」

 

シンジ(イズモ)「自爆シーケンス!」

 

ミサト『シンジ君!』

 

シンジ(イズモ)「無人です!」

 

ミサト『……』

 

レイの。

 

エントリープラグ。

 

遠く。

 

落下傘。

 

開く。

 

ミサト『許可する!』

 

シンジ(イズモ)「零号機」

 

一拍。

 

シンジ(イズモ)「ありがとう」

 

ダミー。

 

反応なし。

 

当然。

 

人格。

 

ない。

 

命令。

 

実行。

 

コア。

 

過負荷。

 

使徒。

 

気づく。

 

遅い。

 

白。

 

光。

 

街。

 

覆う。

 

初号機。

 

A.T.フィールド。

 

最大。

 

レイのプラグ。

 

守る。

 

爆発。

 

轟音。

 

零号機。

 

使徒。

 

光の中。

 

消える。

 

マヤ『使徒反応急低下!』

 

リツコ『残存は!』

 

マヤ『……』

 

解析。

 

一秒。

 

二秒。

 

マヤ『敵性反応』

 

息。

 

吸う。

 

マヤ『消失!』

 

静寂。

 

シンジ(イズモ)「綾波」

 

カエデ「エントリープラグ回収位置確認」

 

シンジ(イズモ)「行く」

 

初号機。

 

走る。

 

---

 

戦闘後。

 

地上。

 

エントリープラグ。

 

開く。

 

レイ。

 

外へ。

 

出る。

 

シンジ(イズモ)「綾波!」

 

レイ「……」

 

少し。

 

よろける。

 

イズモ。

 

支える。

 

シンジ(イズモ)「大丈夫?」

 

レイ「ええ」

 

シンジ(イズモ)「ほんと?」

 

レイ「少し」

 

一拍。

 

レイ「怖かった」

 

イズモ。

 

止まる。

 

以前の。

 

レイなら。

 

言わなかったかもしれない。

 

シンジ(イズモ)「……うん」

 

シンジ(イズモ)「怖いよな」

 

レイ「でも」

 

イズモ。

 

見る。

 

レイ「帰ってきた」

 

シンジ(イズモ)「うん」

 

レイ「家に」

 

シンジ(イズモ)「……うん」

 

少し。

 

笑う。

 

シンジ(イズモ)「おかえり」

 

レイ「ただいま」

 

その言葉。

 

戦場で。

 

交わすには。

 

妙に。

 

普通。

 

でも。

 

だから。

 

よかった。

 

---

 

その夜。

 

家。

 

玄関。

 

扉。

 

開く。

 

シンジ(イズモ)「ただいま」

 

レイ「ただいま」

 

カエデ「おかえりなさい」

 

レイ。

 

靴。

 

脱ぐ。

 

部屋。

 

見る。

 

テーブル。

 

椅子。

 

冷蔵庫。

 

カーテン。

 

自分の。

 

部屋。

 

入る。

 

枕元。

 

小さな。

 

ぬいぐるみ。

 

レイ。

 

それを。

 

手に取る。

 

少し。

 

抱く。

 

シンジ(イズモ)「……」

 

入り口。

 

立つ。

 

レイ「これ」

 

シンジ(イズモ)「うん」

 

レイ「もし」

 

一拍。

 

レイ「同じものを」

 

レイ「もう一つ買ったら」

 

シンジ(イズモ)「?」

 

レイ「これは」

 

ぬいぐるみ。

 

見る。

 

レイ「要らなくなる?」

 

シンジ(イズモ)「ならない」

 

レイ「同じものでも?」

 

シンジ(イズモ)「同じ商品でも」

 

近づく。

 

シンジ(イズモ)「それは綾波が」

 

一拍。

 

シンジ(イズモ)「初めて欲しいって言って買ったやつだから」

 

レイ「……」

 

シンジ(イズモ)「別物」

 

レイ「そう」

 

ぬいぐるみ。

 

もう一度。

 

見る。

 

レイ「私も?」

 

イズモ。

 

少し。

 

苦しくなる。

 

シンジ(イズモ)「もちろん」

 

レイ「……そう」

 

小さい。

 

でも。

 

確かに。

 

笑う。

 

レイ「よかった」

 

---

 

翌日。

 

ネルフ。

 

廃墟。

 

零号機の。

 

残骸。

 

回収。

 

イズモ。

 

レイ。

 

少し離れた場所。

 

立つ。

 

シンジ(イズモ)「……零号機」

 

レイ「もうない」

 

シンジ(イズモ)「うん」

 

レイ「悲しい?」

 

シンジ(イズモ)「少し」

 

レイ「機械なのに?」

 

シンジ(イズモ)「何回も一緒に戦ったし」

 

レイ「……」

 

シンジ(イズモ)「綾波は?」

 

レイ「分からない」

 

しばらく。

 

残骸。

 

見る。

 

レイ「でも」

 

一拍。

 

レイ「ありがとうと」

 

レイ「思う」

 

シンジ(イズモ)「それでいいんじゃない?」

 

風。

 

吹く。

 

シンジ(イズモ)「そういえば」

 

レイ「なに」

 

イズモ。

 

横顔。

 

見る。

 

今まで。

 

思っていた。

 

でも。

 

現実に。

 

並んで。

 

改めて。

 

シンジ(イズモ)「綾波って」

 

シンジ(イズモ)「母さんに似てる」

 

レイ「……」

 

視線。

 

こちら。

 

レイ「何を言うの」

 

シンジ(イズモ)「顔」

 

レイ「そう」

 

シンジ(イズモ)「かなり」

 

レイ「会ったことがあるの?」

 

イズモ。

 

一瞬。

 

止まる。

 

ユイ。

 

白い。

 

空間。

 

シンジ(イズモ)「……ある」

 

レイ「いつ?」

 

シンジ(イズモ)「レリエルの中」

 

レイ「……」

 

レイ「普通ではないわね」

 

シンジ(イズモ)「自分もそう思う」

 

レイ「似ていた?」

 

シンジ(イズモ)「うん」

 

少し。

 

見比べる。

 

シンジ(イズモ)「でも」

 

レイ「?」

 

シンジ(イズモ)「そっくりさん」

 

レイ「……」

 

シンジ(イズモ)「似てるだけ」

 

レイ「そう」

 

でも。

 

その言葉。

 

消えない。

 

母。

 

似ている。

 

なぜ。

 

自分は。

 

その人に。

 

似ている。

 

レイ「碇君」

 

シンジ(イズモ)「ん?」

 

レイ「私は」

 

少し。

 

間。

 

レイ「いつからネルフにいるのか」

 

シンジ(イズモ)「……」

 

レイ「よく分からない」

 

イズモ。

 

表情。

 

変えない。

 

レイ「生まれてから」

 

レイ「ずっと」

 

シンジ(イズモ)「学校は?」

 

レイ「ネルフに来るまでは」

 

一拍。

 

レイ「行ったことがない」

 

シンジ(イズモ)「……友達」

 

レイ「いなかった」

 

そこ。

 

イズモ。

 

止める。

 

知っている。

 

続きを。

 

知っている。

 

だからこそ。

 

聞いてはいけない。

 

今。

 

本人が。

 

自分から。

 

辿るべき。

 

ところ。

 

シンジ(イズモ)「……ごめん」

 

レイ「なぜ謝るの?」

 

シンジ(イズモ)「嫌なこと」

 

一拍。

 

シンジ(イズモ)「聞いてる気がした」

 

レイ「別に」

 

シンジ(イズモ)「そっか」

 

シンジ(イズモ)「でも」

 

レイ。

 

見る。

 

シンジ(イズモ)「話してくれてありがとう」

 

レイ「……」

 

少し。

 

考える。

 

レイ「碇君には」

 

一拍。

 

レイ「話してもいいと思った」

 

イズモ。

 

言葉。

 

止まる。

 

シンジ(イズモ)「……そっか」

 

レイ「ええ」

 

夕暮れ。

 

瓦礫。

 

影。

 

二人。

 

長く。

 

伸びる。

 

レイ「碇君」

 

シンジ(イズモ)「何?」

 

レイ「もし」

 

少し。

 

迷う。

 

レイ「私と同じ顔の人が」

 

シンジ(イズモ)「うん」

 

レイ「同じ声で」

 

シンジ(イズモ)「うん」

 

レイ「同じ名前を名乗ったら」

 

一拍。

 

レイ「分かる?」

 

イズモ。

 

即答しそうになって。

 

やめる。

 

ちゃんと。

 

考える。

 

シンジ(イズモ)「多分」

 

レイ「多分?」

 

シンジ(イズモ)「最初はびっくりすると思う」

 

レイ「そう」

 

シンジ(イズモ)「でも」

 

少し。

 

笑う。

 

シンジ(イズモ)「分かると思う」

 

レイ「なぜ?」

 

シンジ(イズモ)「今の綾波」

 

指。

 

一つ。

 

シンジ(イズモ)「味噌汁好きで」

 

二つ。

 

シンジ(イズモ)「あのぬいぐるみ好きで」

 

三つ。

 

シンジ(イズモ)「最近アスカのこと心配してて」

 

レイ「……」

 

シンジ(イズモ)「しりとりで元素使うし」

 

レイ「碇君も使う」

 

シンジ(イズモ)「そうだけど」

 

少し。

 

笑う。

 

シンジ(イズモ)「そういうの」

 

一拍。

 

シンジ(イズモ)「全部合わせて」

 

シンジ(イズモ)「綾波だから」

 

レイ「……」

 

シンジ(イズモ)「顔だけじゃないよ」

 

風。

 

レイの。

 

髪。

 

揺れる。

 

レイ「そう」

 

それだけ。

 

でも。

 

その声は。

 

ほんの少し。

 

軽かった。

 

人は。

 

生まれた場所だけで。

 

決まらない。

 

身体だけでも。

 

名前だけでも。

 

決まらない。

 

誰と会って。

 

何を選んで。

 

何を好きだと言って。

 

どこへ帰るのか。

 

その積み重ねが。

 

少しずつ。

 

一人の人間を。

 

作っていく。

 

イズモは。

 

創造する力を。

 

持っている。

 

機械も。

 

武器も。

 

生命に近いものさえ。

 

作れる。

 

でも。

 

目の前の少女を。

 

同じように。

 

作ることは。

 

できない。

 

作ってはいけない。

 

綾波レイは。

 

ここにいる。

 

一人だけ。

 

それで。

 

十分だった。

 




カヲルに裏切られさらに殺してくれと言われそんなつもりはないと言い放つ次回創造紀エヴァンゲリオン最終回、最後の使者そして
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