創造紀エヴァンゲリオン ―外来意識の介入―   作:最上 イズモ

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子宮の天使

ネルフ総合病院の白い廊下は、

夜になっても眠ることはなかった。

 

照明は落とされ、

非常灯だけが床を淡く照らしている。

消毒薬の匂いが鼻を刺し、

遠くで医療機器の電子音が規則正しく響いていた。

 

シンジ(イズモ)「……アスカは」

 

リツコは足を止めない。

振り返らず、前を見たまま答えた。

 

リツコ「今は、そっとしておきなさい」

 

その一言で、

イズモの胸の奥が冷えた。

 

シンジ(イズモ)「容態は」

 

リツコ「精神汚染光線を、少し長く浴びすぎたわ」

 

シンジ(イズモ)「……回復まで」

 

一瞬の沈黙。

 

リツコ「最低でも二か月」

リツコ「場合によっては、半年以上、目を覚まさない可能性もある」

 

それ以上、言葉は続かなかった。

 

シンジ(イズモ)「……わかった」

 

喉の奥が、ひどく乾いていた。

間に合わなかった。

その事実だけが、重く残る。

 

数日後。

第3新東京市上空に、再び警報が鳴り響いた。

 

マヤ「目標、大涌谷上空で定点回転を確認」

 

巨大スクリーンに映る使徒は、

奇妙な螺旋構造を描いていた。

 

シンジ(イズモ)「……DNAの二重らせんみたいだ」

 

リツコ「ええ」

リツコ「自己再生と分裂を前提にした構造ね」

 

零号機と弐号機が射出される。

弐号機のエントリープラグには、

渚カヲルが静かに座っていた。

 

シンジ(イズモ)「……初号機の凍結、まだ解除されない?」

 

ミサト「碇司令の判断よ」

 

イズモは、言葉を飲み込んだ。

 

ミサト「レイ、まずは様子見」

 

レイ無線「……来る」

 

零号機がゼロ距離でパレットライフルを放つ。

だが弾丸は、使徒の表面で溶けるように消えた。

 

シンジ(イズモ)「マヤさん、5番兵装ビルを」

 

展開されたのは、

一見すると旧式のガトリング砲。

 

だが内部は、

完全なアンチATフィールド仕様だった。

 

シンジ(イズモ)「これ使って」

 

弾幕が叩き込まれる。

それでも使徒は脈動し、

傷口は即座に塞がっていく。

 

シンジ(イズモ)「……アメーバか」

 

6-B。

高周波ブレード。

 

切断しても、再生。

切断しても、意味がない。

 

その時だった。

 

零号機の装甲に、

黒い侵食が走る。

 

続けて、弐号機も動きを止めた。

 

ミサト「初号機、凍結解除!」

 

拘束が解けた瞬間、

紫の巨体が地上を蹴った。

 

シンジ(イズモ)「……遅い」

 

シンジ(イズモ)「カエデ、行くよ」

 

カエデ「はい」

 

レイ無線「碇君、来ないで」

 

その声には、

はっきりとした恐怖があった。

 

シンジ(イズモ)「カエデ」

シンジ(イズモ)「ダミーシステム改、起動準備」

 

カエデ「了解しました」

 

初号機は、

使徒の攻撃を紙一重で回避し続ける。

 

シンジ(イズモ)「今からダミーを使う」

シンジ(イズモ)「綾波、脱出して」

 

レイ無線「……ATフィールドが出ない」

 

シンジ(イズモ)「俺が改造した」

シンジ(イズモ)「問題ない」

 

一拍、間。

 

レイ無線「……でも私には」

レイ無線「代わりがいる」

 

その言葉が、

イズモの胸を鋭く刺した。

 

シンジ(イズモ)「違う!」

 

声が、抑えきれずに荒れる。

 

シンジ(イズモ)「肉体があっても、魂はデータじゃない!」

シンジ(イズモ)「君は一人だ!」

シンジ(イズモ)「死ぬ理由なんて、どこにもない!」

シンジ(イズモ)「君が死んだら、俺も、みんなも、ちゃんと悲しむ!」

シンジ(イズモ)「見た目が同じでも、それは君じゃない!」

 

長い沈黙。

 

やがて、静かな声。

 

レイ無線「……わかったわ」

 

零号機のダミーシステムが起動する。

自律制御に移行した零号機は、

使徒を抱え込むように接近した。

 

白光。

 

零号機は自爆し、

使徒は完全に消滅した。

 

戦闘後。

 

シンジ(イズモ)「……綾波」

 

レイ「ええ。大丈夫」

 

シンジ(イズモ)「ダミーがなかったら、危なかった」

シンジ(イズモ)「……もう、無茶はしないでくれ」

 

レイ「……わかったわ」

 

しばらく、風の音だけが流れる。

 

シンジ(イズモ)「司令は、なんで初号機を守るんだろうな」

 

レイ「初号機を守っているの」

 

シンジ(イズモ)「……母さん、か」

 

レイ「詳しくは知らない」

 

シンジ(イズモ)「……そういえば」

シンジ(イズモ)「綾波、母さんに似てる」

 

レイ「何を言うの」

 

シンジ(イズモ)「いや、ただのそっくりさんかな」

 

だがその言葉は、

確かにレイの中に残った。

 

なぜ私は、

生まれて、

彼の母に似ているのか。

 

シンジ(イズモ)「ネルフには、どれくらいいる?」

 

レイ「生まれてから、ずっと」

 

シンジ(イズモ)「……学校は」

 

レイ「行ったことはない」

 

これ以上踏み込めば、

壊れる。

 

イズモは、それを直感した。

 

シンジ(イズモ)「嫌なこと聞いたな。ごめん」

 

レイ「……別に」

 

シンジ(イズモ)「でも、話してくれてありがとう」

 

夕暮れの風が吹き抜ける。

 

瓦礫の上に、

二人の影が並び、

静かに伸びていった。




カヲルに裏切られさらに殺してくれと言われそんなつもりはないと言い放つ次回創造紀エヴァンゲリオン最終回、最後の使者そして
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