創造紀エヴァンゲリオン ―外来意識の介入― 作:最上 イズモ
薄暗い居室に、端末の青白い光だけが浮かんでいた。
ネルフ本部。
パイロット用として割り当てられた私室。
必要な家具は揃っている。
ベッド。
机。
小さな冷蔵庫。
それ以外は、妙に余白が多い。
床の隅には工具箱。
机には学校の教科書よりも整備資料の方が多く積まれていた。
シンジ――イズモは椅子へ深く腰掛け、指先だけで画面をスクロールする。
表示されているのは、ネルフ内部の資料だった。
シンジ(イズモ)「……綾波レイ。ファーストチルドレン」
写真。
医療記録。
零号機との適合データ。
定期的に繰り返される身体検査。
更新履歴。
どれも正確だった。
正確で、簡潔で。
人ひとりを説明するには、致命的に情報が足りない。
シンジ(イズモ)「……原作通り、か」
小さく息を吐く。
魂の構造。
碇ユイ。
初号機。
ゲンドウ。
使徒。
知識としてなら整理できる。
画面の向こう側にいた頃なら。
設定資料として。
世界観として。
物語を構成する要素として。
シンジ(イズモ)「……使徒由来の魂と、母親のクローン」
言葉にして。
眉を寄せた。
シンジ(イズモ)「……いや」
それで説明していい人間ではない。
少なくとも。
今はもう。
同じ施設に存在している。
食事をする。
眠る。
エヴァへ乗る。
怪我をする。
呼吸している。
シンジ(イズモ)「知ってるって……面倒だな」
カエデ「何がでしょうか」
部屋の反対側。
椅子に腰掛けたカエデが顔を上げた。
外見だけなら、人間の少女にしか見えない。
だが視線の奥では、複数の情報処理が並行して走っている。
シンジ(イズモ)「相手より先に事情を知ってると」
画面を見る。
シンジ(イズモ)「本人を見る前に、答えを決めそうになる」
カエデ「既知情報による認知バイアスですね」
シンジ(イズモ)「そんな綺麗な話かな」
カエデ「では、どうしますか」
しばらく考える。
シンジ(イズモ)「本人を見る」
カエデ「了解しました」
シンジ(イズモ)「データはデータ」
画面を閉じる。
シンジ(イズモ)「綾波は綾波」
カエデ「区別を推奨します」
シンジ(イズモ)「うん」
端末を机へ置く。
そこで。
別の通知が表示された。
《第七ケージ 右肩部ユニット調整完了》
シンジ(イズモ)「…………」
カエデ「確認へ向かいますか」
シンジ(イズモ)「行きたい」
カエデ「明日は学校です」
シンジ(イズモ)「知ってる」
カエデ「現在時刻、二十三時四十一分」
シンジ(イズモ)「…………」
カエデ「睡眠を推奨します」
シンジ(イズモ)「はい」
端末を閉じた。
翌日。
学校。
昼休み。
イズモは屋上のフェンスへ背中を預けていた。
端末には、昨夜見ていた資料の一部。
綾波レイ。
今度は個人情報ではなく、零号機の公開範囲の運用ログだけを見ている。
フェンスの向こうから。
プールの水音。
運動部の掛け声。
セミ。
世界が滅亡しかけているとは思えないくらい、普通の学校の音が聞こえてくる。
ケンスケ「おーい、シンジ」
シンジ(イズモ)「ん?」
振り返る。
ケンスケとトウジ。
ケンスケの手には、何かの雑誌。
トウジ「また機械見とるんか」
シンジ(イズモ)「ちょっと調べもの」
ケンスケ「エヴァ?」
シンジ(イズモ)「今日は違う」
ケンスケ「なんだ」
明らかに残念そうな顔。
シンジ(イズモ)「そんなにエヴァ好き?」
ケンスケ「そりゃそうだろ! あんなもん普通見られへんぞ!」
トウジ「お前の場合なんでもええやろ、戦車でも戦闘機でも」
ケンスケ「違う! カテゴリーごとに良さが――」
シンジ(イズモ)「分かる」
ケンスケが止まった。
ケンスケ「……分かる?」
シンジ(イズモ)「戦闘機なら、設計思想見るだけでも面白い」
ケンスケ「お前、そっち側!?」
シンジ(イズモ)「どっち側?」
ケンスケ「こっち側!」
トウジ「どっちでもええわ」
ケンスケは勢いよく隣へ座った。
ケンスケ「じゃあさ、国連軍のVTOL知ってる?」
シンジ(イズモ)「初日に目の前で落ちたやつ?」
ケンスケ「言い方!」
シンジ(イズモ)「機体としては面白いよ」
ケンスケ「だよな!?」
話が始まりそうになる。
その瞬間。
端末が振動した。
《第七ケージ:午後整備予定変更》
シンジ(イズモ)「…………」
ケンスケ「どうした?」
シンジ(イズモ)「放課後、ケージ」
ケンスケ「またかよ!」
シンジ(イズモ)「ごめん」
ケンスケ「最近ずっとじゃねえか!」
トウジ「ほんまに学校来とる意味あるんか、お前」
シンジ(イズモ)「義務教育」
トウジ「そういう意味ちゃうわ」
ケンスケ「じゃあ明日!」
シンジ(イズモ)「たぶん」
ケンスケ「たぶん!?」
シンジ(イズモ)「使徒が来なかったら」
ケンスケ「予定の組み方が軍人なんだよ!」
シンジ(イズモ)「自分でもそう思う」
トウジが肩をすくめた。
トウジ「……先生も罪やなぁ」
シンジ(イズモ)「お前と一緒にするな」
校舎側の扉が開く。
教師「鈴原! 相田!」
トウジ「なんで俺まで!?」
ケンスケ「逃げるぞ!」
二人が走る。
教師「待て!」
シンジ(イズモ)「…………」
カエデ〈端末〉「同行しますか?」
シンジ(イズモ)「しない」
カエデ「賢明です」
シンジ(イズモ)「だろうね」
放課後。
ネルフ本部、第六ケージ。
巨大な整備アームが天井から何本も垂れ下がっていた。
第七ケージとは違う。
こちらに固定されているのは零号機。
黄色い装甲。
まだ初号機ほど多数の追加機構はない。
その足元で。
二人。
綾波レイ。
碇ゲンドウ。
イズモは通路の途中で足を止めた。
シンジ(イズモ)「……」
聞き取れる距離ではない。
ゲンドウが何かを言う。
レイが短く返す。
それだけ。
知識が頭の中で勝手に意味を付けようとする。
――ゲンドウへの依存。
――ユイ。
――人形。
シンジ(イズモ)「……やめよう」
カエデ「何をでしょう」
シンジ(イズモ)「勝手に答えを決めるの」
カエデ「了解しました」
レイがふとこちらを見る。
視線が合った。
数秒。
イズモは軽く頭を下げた。
レイも。
ほんの少しだけ。
返した。
胸の奥がざわつく。
理由は分からない。
知識の中の綾波レイと。
今、目の前にいる少女が。
少しずつ別の存在になっていく。
ミサト「シンジくーん」
後ろから声。
シンジ(イズモ)「はい?」
ミサトがこちらへ歩いてくる。
手には資料。
ミサト「今夜って暇?」
シンジ(イズモ)「ケージ以外なら」
ミサト「それ暇って言わないんじゃない?」
シンジ(イズモ)「夕飯くらいなら」
ミサト「じゃ、リツコと一緒にお邪魔していい?」
シンジ(イズモ)「構いませんけど」
ミサト「やった」
リツコ「私はまだ行くと言ってないわよ」
少し離れたところから声。
ミサト「来るでしょ?」
リツコ「……夕食が出るなら」
シンジ(イズモ)「出しますよ」
リツコ「行くわ」
ミサト「即決!?」
夜。
シンジの家。
ミサトは玄関を入った瞬間、少しだけ立ち止まった。
簡素な部屋。
必要最低限の家具。
ただ。
至るところに工具。
電子部品。
エヴァの整備資料。
学校の教科書。
ミサト「……なんか」
シンジ(イズモ)「はい?」
ミサト「十四歳の部屋じゃない」
シンジ(イズモ)「よく言われます」
リツコ「学校の教科書はあるわね」
シンジ(イズモ)「一応」
リツコ「一応?」
カエデ「提出課題の消化率は現在八十四パーセントです」
シンジ(イズモ)「言わなくていい」
ミサト「ちゃんと学生してるじゃない」
シンジ(イズモ)「カエデに管理されてるだけです」
カエデ「生活管理は支援範囲に含まれます」
リツコ「いいAIね」
シンジ(イズモ)「でしょう」
少しだけ。
誇らしそうな声になった。
ミサトがそれに気づいて笑う。
ミサト「カエデのことになると顔変わるのね」
シンジ(イズモ)「作ったので」
カエデ「私は所有物ではありません」
シンジ(イズモ)「分かってるよ」
リツコが一瞬だけ二人を見る。
その言葉を。
何か考えるように。
シンジ(イズモ)「せっかく来たなら、食べていきます?」
ミサト「え、いいの?」
目が輝く。
ミサト「手料理?」
シンジ(イズモ)「……まあ」
掌を上へ向ける。
光が集まり始める。
ミサト「待って」
シンジ(イズモ)「はい?」
ミサト「それ手料理って言う?」
シンジ(イズモ)「設計は自分です」
ミサト「料理を設計って言う人初めて見た」
リツコ「食べられるなら問題ないわ」
ミサト「リツコ適応早すぎ!」
皿。
米。
味噌汁。
焼き魚。
野菜。
光が消える。
リツコ「……普通ね」
シンジ(イズモ)「普通のご飯食べたい時もあります」
ミサト「いただきます!」
リツコ「いただくわ」
カエデ「私は摂食を必要としません」
シンジ(イズモ)「座ってればいいよ」
カエデ「了解しました」
四人。
食卓を囲む。
しばらくは。
ただ食器の音だけ。
ミサト「……おいしい」
シンジ(イズモ)「よかった」
リツコ「栄養バランスも悪くないわね」
シンジ(イズモ)「自分が適当になるので、最初から調整しました」
ミサト「そういうところだけ妙に現実的ねぇ」
シンジ(イズモ)「食事忘れることあるので」
リツコ「忘れないで」
シンジ(イズモ)「努力します」
リツコ「努力じゃなくて食べなさい」
カエデ「記録しました」
シンジ(イズモ)「味方がいない」
ミサトが笑った。
そのあと。
ビールを取り出そうと冷蔵庫を開ける。
ミサト「……ない」
シンジ(イズモ)「未成年の家なので」
ミサト「そんな……」
リツコ「当然でしょう」
シンジ(イズモ)「水なら」
ミサト「いただきます……」
肩を落とす。
その時。
リツコが箸を止めた。
リツコ「そういえば」
シンジ(イズモ)「はい」
リツコ「レイの更新カード」
ポケットを探る。
カードを一枚取り出した。
リツコ「渡しそびれたの」
シンジ(イズモ)「更新カード?」
リツコ「IDの。明日、持っていってくれない?」
イズモはカードを見る。
一瞬だけ。
知っている場面が頭をよぎった。
綾波の部屋。
裸。
ゲンドウの眼鏡。
シンジ(イズモ)「…………」
カエデ「どうしました?」
シンジ(イズモ)「いや」
カードを受け取る。
シンジ(イズモ)「分かりました」
一拍。
シンジ(イズモ)「カエデも一緒に来て」
カエデ「理由を聞いても?」
シンジ(イズモ)「二人きりだと誤解を生みそうだから」
ミサト「誰に?」
シンジ(イズモ)「色々」
リツコがイズモをじっと見る。
リツコ「あなた……」
シンジ(イズモ)「何も知らないです」
リツコ「まだ何も言ってないわ」
シンジ(イズモ)「…………」
ミサト「怪しい」
カエデ「発言失敗を確認しました」
シンジ(イズモ)「黙って」
翌日。
古いアパート。
外廊下を吹く風が、錆びた手すりをわずかに鳴らしている。
シンジ(イズモ)「ここだ」
カエデ「住所一致」
インターフォンを押す。
反応なし。
もう一度。
ない。
シンジ(イズモ)「……綾波?」
ドアノブへ手をかける。
軽く回った。
シンジ(イズモ)「開いてる」
カエデ「侵入しますか?」
シンジ(イズモ)「カード置くだけ」
ドアを開ける。
室内。
生活感がほとんどない。
必要なものだけ。
ベッド。
棚。
冷蔵庫。
ゴミ箱。
シンジ(イズモ)「……」
知っていた。
映像では。
でも。
匂い。
空気。
温度。
それらまで知っていたわけではない。
シンジ(イズモ)「綾波。碇だけど」
返事なし。
湯気。
風呂。
シンジ(イズモ)「……あ」
カエデ「後ろを向いてください」
シンジ(イズモ)「分かってる」
即座にドア側へ向く。
カエデも視線を逸らす。
数秒。
足音。
レイ「……碇くん」
シンジ(イズモ)「更新カード」
振り返る。
制服姿のレイが立っている。
シンジ(イズモ)「赤木さんから」
カードを差し出す。
レイ「そう」
受け取る。
それだけ。
シンジ(イズモ)「今日、本部?」
レイ「ええ」
シンジ(イズモ)「一緒に行こう」
レイが少しだけ首を傾ける。
レイ「なぜ?」
シンジ(イズモ)「同じところ行くから」
レイ「……そう」
拒否はしなかった。
電車。
二人並んで座る。
カエデは向かい。
車内は静かだった。
流れる街並み。
時折、工事中の区画。
使徒戦で壊れた場所。
レイは窓を見ている。
イズモは何度か話しかけようとして。
やめた。
何を言えばいい。
原作の話?
できるわけがない。
出生?
最悪だ。
エヴァ?
シンジ(イズモ)「今日、零号機の起動実験だよね」
レイ「ええ」
無難。
シンジ(イズモ)「怖くない?」
レイ「命令だから」
シンジ(イズモ)「……そっか」
短い。
でも。
終わらせたくなかった。
シンジ(イズモ)「綾波」
レイ「なに」
シンジ(イズモ)「エヴァに乗ることが」
言葉を選ぶ。
シンジ(イズモ)「君の居場所になってる?」
レイは答えない。
電車が鉄橋へ入る。
音が大きくなる。
その中で。
レイ「……そうかもしれない」
シンジ(イズモ)「そっか」
否定はしない。
イズモは窓の外を見る。
シンジ(イズモ)「でも」
レイを見る。
シンジ(イズモ)「乗らなくても、友達ではいられる」
レイ「…………」
初めて。
少し長く。
レイがイズモを見る。
レイ「変なことを言うのね」
シンジ(イズモ)「よく言われる」
カエデ「事実です」
シンジ(イズモ)「カエデ」
レイの口元が。
ほんのわずかに。
動いた気がした。
ネルフ本部。
実験区画。
零号機。
拘束具。
起動準備。
イズモは観測区画から、その様子を見ていた。
マヤ「神経接続開始」
リツコ「シンクロ率上昇」
モニター。
レイの波形。
安定。
シンジ(イズモ)「……」
カエデ「緊張していますか」
シンジ(イズモ)「少し」
カエデ「理由は?」
シンジ(イズモ)「知ってる展開と違うから」
カエデ「違いは問題ですか」
シンジ(イズモ)「違う」
視線を零号機へ戻す。
シンジ(イズモ)「むしろ、違ってほしい」
アナウンス「零号機、起動確認」
安堵。
その直後。
警報。
空気が変わった。
マヤ「未確認物体、出現!」
ミサト「位置は!?」
青葉「第三新東京市、上空!」
イズモはモニターを見る。
幾何学的な形。
青い正八面体。
シンジ(イズモ)「……来た」
第六使徒。
ラミエル。
光。
次の瞬間。
地上設備が消し飛んだ。
ミサト「全員退避!」
臨時作戦会議室。
モニターには、使徒の解析結果。
遠距離攻撃。
高出力A.T.フィールド。
自動迎撃。
攻撃と防御。
隙がない。
ミサト「完璧な攻防力ね」
リツコ「現在のエヴァ装備では接近不能」
マヤ「狙撃も、A.T.フィールドに阻害されます」
沈黙。
イズモは画面を見る。
知っている。
ポジトロンライフル。
日本中の電力。
ヤシマ作戦。
それだけでいいのか。
シンジ(イズモ)「補助案があります」
ミサト「聞かせて」
シンジ(イズモ)「ポジトロンライフルは使う」
ミサト「ええ」
シンジ(イズモ)「でも一発に全部賭けない」
資料を表示する。
衛星軌道。
ネルフ管理下の観測衛星。
シンジ(イズモ)「衛星レーザーを同期」
リツコ「出力が足りないわ」
シンジ(イズモ)「倒す必要はないです」
指で一点を示す。
シンジ(イズモ)「照射タイミングを合わせて、A.T.フィールドの一部へ負荷を集中させる」
マヤ「局所的にフィールドを薄くする……?」
シンジ(イズモ)「その瞬間にポジトロンライフル」
リツコ「再照射は?」
シンジ(イズモ)「衛星側は四十八時間」
ミサト「一回きり?」
シンジ(イズモ)「ほぼ」
ミサト「外したら?」
シンジ(イズモ)「逃げます」
ミサト「潔いわね」
シンジ(イズモ)「外したあと同じ場所にいる理由がないので」
リツコは計算を見る。
マヤも。
数秒。
リツコ「理論上は可能」
ミサト「……なるほど」
腕を組む。
そして。
ミサト「採用するわ」
双子山。
夜。
巨大なポジトロンライフル。
送電設備。
無数のケーブル。
作業員。
初号機。
零号機。
空気が冷たい。
シンジ(イズモ)はエントリープラグの中で息を整える。
カエデ「全系統正常」
シンジ(イズモ)「衛星は?」
カエデ「軌道同期完了」
シンジ(イズモ)「零号機」
通信を開く。
シンジ(イズモ)「綾波」
レイ『なに』
シンジ(イズモ)「盾役、無理しないで」
レイ『あなたを守る』
シンジ(イズモ)「違う」
少し強く言う。
レイ『……』
シンジ(イズモ)「自分も綾波を守る」
盾の向こう。
零号機。
レイは答えない。
シンジ(イズモ)「片方だけ守る作戦にはしない」
数秒。
レイ『……わかった』
カエデ「充電完了」
ミサト『作戦開始!』
照準。
ラミエル。
シンジ(イズモ)「衛星同期」
カエデ「三」
シンジ(イズモ)「二」
カエデ「一」
衛星レーザー。
同時。
ポジトロンライフル。
夜が裂ける。
だが。
ラミエルの光線。
互いに干渉。
初弾。
逸れた。
シンジ(イズモ)「っ!」
カエデ「命中せず!」
ミサト『次弾急いで!』
シンジ(イズモ)「衛星は!?」
カエデ「再照射不能!」
分かっている。
だから。
二発目は。
自力。
ラミエルが変形する。
光が集まる。
レイ『来る』
零号機が前へ出る。
シンジ(イズモ)「綾波!」
盾。
光。
直撃。
レイ『……っ!』
シンジ(イズモ)「カエデ! 零号機の耐久!」
カエデ「急速低下!」
シンジ(イズモ)「照準!」
カエデ「補正!」
シンジ(イズモ)「撃て!」
二発目。
ポジトロンライフル。
ラミエル。
同時発射。
光と光がぶつかる。
数秒。
一秒にも満たないのかもしれない。
それでも。
長い。
そして。
敵の光が途切れた。
ポジトロンの光が。
中心を貫く。
夜が白く裂けた。
静寂。
数秒遅れて。
歓声。
だが。
イズモは聞いていなかった。
シンジ(イズモ)「零号機!」
初号機を立たせる。
走る。
盾が焼け落ちている。
装甲。
融解。
エントリープラグ。
シンジ(イズモ)「綾波!」
非常解除。
ハッチ。
熱気。
LCL。
中へ手を伸ばす。
シンジ(イズモ)「綾波!」
微かな呼吸。
生きている。
シンジ(イズモ)「……よかった」
レイがゆっくり目を開く。
焦点が合う。
レイ「……司令?」
胸が少しだけ痛む。
それでも。
シンジ(イズモ)「違う」
声を柔らかくする。
シンジ(イズモ)「自分だ」
レイ「……碇くん」
シンジ(イズモ)「うん」
レイはしばらくこちらを見る。
やがて。
レイ「……こんな時」
呼吸を挟む。
レイ「どんな顔をすればいいの?」
知っている台詞。
その瞬間。
原作の映像が頭へ浮かんだ。
けれど。
今。
目の前にいるのは映像ではない。
生きている。
傷ついている。
自分を見ている。
シンジ(イズモ)「……笑えばいい」
声は。
思ったより小さかった。
レイは少しだけ迷った。
そして。
本当に少しだけ。
口元を緩めた。
ほんのわずかな笑顔。
それだけ。
それは救済ではない。
理解でもない。
何も解決していない。
でも。
昨日。
電車の中で言った。
エヴァに乗らなくても。
友達ではいられる。
その言葉が。
初めて。
こちらへ返ってきたように思えた。
シンジ(イズモ)「……帰ろう」
レイ「どこへ?」
イズモは一瞬、言葉に詰まる。
ネルフ。
病院。
家。
どれを“帰る”と呼べばいい。
シンジ(イズモ)「とりあえず」
少し笑う。
シンジ(イズモ)「治療室」
レイ「……そう」
遠くで。
作戦終了を告げる声。
焼けた装甲から煙が上がる。
夜空には。
まだ消えきらない光の残滓が残っていた。
その日。
綾波レイという名前は。
イズモの中で。
設定資料の一行ではなくなった。
なお、衛星使用許可については後で揉めた
突然ミサトから民間企業が作ったロボットの見学に誘われ行くことになるがそのロボットが暴走果たして止めることができるか?次回創造紀エヴァンゲリオン人のてで壊すもの