創造紀エヴァンゲリオン ―外来意識の介入― 作:最上 イズモ
曇天の太平洋。
重く垂れ込めた雲の下を、巨大な空母が進んでいた。
国連軍太平洋艦隊旗艦――《オーバー・ザ・レインボー》。
その甲板へ、一機のミル55D輸送ヘリがゆっくりと降下する。
ローターが海風を叩きつけるたび、甲板上の作業員たちの服が激しくはためいた。
着艦。
重い衝撃。
機体が固定される。
扉が開き。
冷たい潮風が一気に吹き込んだ。
ケンスケ「うおおお……!」
真っ先に反応したのは、当然のようにケンスケだった。
カメラを構え、甲板に並ぶ航空機へ視線を走らせる。
ケンスケ「空母だぞ! 本物の空母!」
トウジ「落ち着けや」
ケンスケ「落ち着けるか!」
シンジ(イズモ)「……」
イズモも。
実のところ。
かなり見ていた。
艦載機。
対空兵装。
レーダー。
甲板運用。
航空機用エレベーター。
細かいところまで。
ケンスケ「シンジ!」
シンジ(イズモ)「ん?」
ケンスケ「あれ何だと思う!?」
指の先。
甲板脇に固定された兵装。
シンジ(イズモ)「近接防御火器?」
ケンスケ「だよな!?」
シンジ(イズモ)「ただ配置ちょっと変わってるな……」
ケンスケ「分かる!?」
シンジ(イズモ)「射界確保かな」
二人。
自然に歩く速度が落ちる。
トウジ「お前ら置いてかれんぞ」
ミサト「シンジくーん、相田くーん!」
シンジ(イズモ)「……行こう」
ケンスケ「後で戻っていい?」
ミサト「ダメです!」
ケンスケ「そんなぁ!」
カエデ「行程に甲板自由見学は含まれていません」
ケンスケ「カエデちゃんまで!」
イズモは少し笑った。
この艦は。
国連軍の戦力であると同時に。
もう一つ。
特別な役割を持っている。
エヴァンゲリオン弐号機。
その輸送母艦。
甲板の先。
赤い少女が立っていた。
潮風に長い髪を揺らしながら。
こちらを。
真っ直ぐに見ている。
アスカ「で」
腰へ手を当てる。
アスカ「誰がサードチルドレンなわけ?」
トウジ「いきなりやな」
ケンスケ「惣流・アスカ・ラングレー……」
ケンスケの声だけ妙に小さい。
シンジ(イズモ)「俺」
一歩。
前へ。
シンジ(イズモ)「サードチルドレン」
隣を示す。
シンジ(イズモ)「こっちは支援AIのカエデ」
カエデ「最上カエデです。よろしくお願いいたします」
後ろ。
シンジ(イズモ)「トウジとケンスケ。同級生」
トウジ「鈴原トウジや。よろしく」
ケンスケ「相田ケンスケ! よろしく!」
アスカ「あっそ」
短い。
アスカの視線が。
上から下へ。
イズモをなぞる。
制服。
姿勢。
表情。
値踏み。
それから。
カエデ。
アスカ「支援AI?」
カエデ「はい」
アスカ「ロボット?」
カエデ「人工知能です」
アスカ「見た目人間じゃない」
カエデ「人型インターフェースを採用しています」
アスカ「ふーん」
今度はイズモへ。
アスカ「自分専用?」
シンジ(イズモ)「戦闘補助が主」
アスカ「そんなのに頼ってるんだ」
シンジ(イズモ)「頼ってるよ」
即答。
アスカの眉が少し動いた。
シンジ(イズモ)「一人で全部判断できると思ってないから」
アスカ「……」
一瞬。
何か言おうとして。
やめる。
アスカ「あっそ」
背を向けた。
トウジが小声。
トウジ「感じ悪ない?」
シンジ(イズモ)「まあ」
トウジ「怒らへんの?」
シンジ(イズモ)「初対面だし」
ケンスケ「でも可愛いよなぁ……」
トウジ「お前は黙っとれ」
カエデ「脈拍上昇を確認」
ケンスケ「カエデちゃん!?」
シンジ(イズモ)「やめてあげて」
アスカ「聞こえてるわよ!!」
ケンスケ「すみません!」
艦内。
鉄の壁。
狭い通路。
天井を這う配管。
独特の油と海の匂い。
イズモの視線が。
また。
配管へ。
扉へ。
設備へ。
吸い寄せられる。
ミサト「シンジ君」
シンジ(イズモ)「はい?」
ミサト「観光客みたいになってる」
シンジ(イズモ)「空母初めてなので」
ミサト「エヴァにはもう慣れたのに?」
シンジ(イズモ)「エヴァも慣れてないです」
ミサト「毎日バラしてるじゃない」
シンジ(イズモ)「それとこれは別」
カエデ「昨日の第七ケージ滞在時間は十一時間二十四分です」
ミサト「ほぼ住んでるじゃない!」
シンジ(イズモ)「学校も行ってます」
カエデ「昨日は休日です」
シンジ(イズモ)「……」
ミサト「否定材料になってないわね」
艦内食堂。
金属製のテーブル。
固定された椅子。
天井の照明は艦の揺れに合わせて微かに震える。
作戦待機中の乗員たちが。
低い声で会話していた。
その中。
一人の男が。
こちらへ近づいてくる。
加持リョウジ。
リョウジ「相変わらず凛々しいな、葛城」
ミサト「……」
ミサトの顔が。
露骨に嫌そうになった。
シンジ(イズモ)「……」
知ってる。
ものすごく知ってる。
けれど。
言わない。
リョウジ「そして」
視線が。
イズモへ。
リョウジ「君が碇シンジ――」
少し間。
リョウジ「いや」
笑う。
リョウジ「イズモ君だったね」
トウジ「イズモ?」
ケンスケ「え?」
アスカ「何それ」
シンジ(イズモ)「……」
ミサト「加持君」
リョウジ「おっと」
手を上げる。
リョウジ「秘密だったか」
シンジ(イズモ)「もういいです」
トウジ「どういうことや?」
シンジ(イズモ)「長い」
ケンスケ「聞きたい」
シンジ(イズモ)「長いって」
アスカ「名前まで偽物なわけ?」
シンジ(イズモ)「身体は碇シンジ」
アスカ「何それ」
シンジ(イズモ)「だから長い」
リョウジが笑う。
リョウジ「噂は嫌でも耳に入ってくるよ」
席へ座る。
リョウジ「初戦」
指を一本。
リョウジ「暴走なし」
もう一本。
リョウジ「単独撃破」
さらに。
リョウジ「その後、自分で初号機を改修」
アスカの目が。
一瞬だけ鋭くなる。
リョウジ「使徒との戦闘は、いずれも市街地被害をかなり抑えている」
シンジ(イズモ)「偶然も多いですよ」
リョウジ「偶然だけで三回は続かない」
アスカ「どうせエヴァの性能頼りでしょ」
シンジ(イズモ)「性能は使うためにあるからね」
アスカ「……何それ」
シンジ(イズモ)「性能がいいなら使えばいい」
アスカ「パイロットの腕の話よ」
シンジ(イズモ)「腕も必要」
アスカ「なら」
身を乗り出す。
アスカ「シンクロ率は?」
リョウジ「初搭乗時、一〇パーセント前後」
アスカ「は?」
リョウジ「現在は五〇パーセント」
アスカ「……」
少し。
安心したような。
けれど。
リョウジ「命中率は九八パーセント」
アスカ「はぁ!?」
シンジ(イズモ)「残り二パーセント、ラミエルで外した」
アスカ「そんな話聞いてないわよ!」
シンジ(イズモ)「今言った」
アスカ「そういう意味じゃない!」
ミサトが額を押さえる。
ミサト「アスカ」
アスカ「何よ!」
ミサト「シンジ君、こういう子だから」
シンジ(イズモ)「どういう意味です?」
リツコ「気にしない方がいいわ」
シンジ(イズモ)「赤木さんまで」
アスカ「五〇パーセントでその戦果?」
シンジ(イズモ)「シンクロ率だけで戦ってないから」
アスカ「……」
イズモの横。
カエデ。
そして。
初号機の改修記録。
そこまで考えたのだろう。
アスカの目が。
わずかに変わった。
アスカ「……見せなさい」
シンジ(イズモ)「何を?」
立ち上がる。
アスカ「弐号機」
シンジ(イズモ)「?」
アスカ「特別に見せてあげる」
ケンスケ「俺も!」
アスカ「駄目」
ケンスケ「即答!?」
アスカ「サードだけ」
トウジ「なんでや」
アスカ「エヴァのこと分かる人間に見せるから」
少し。
勝ち誇る。
アスカ「本物ってものをね」
シンジ(イズモ)「……呼ばれたので行ってきます」
リョウジ「気をつけて」
ミサト「ほどほどにね」
カエデが立つ。
アスカ「ちょっと」
カエデ「?」
アスカ「あんたも来るの?」
シンジ(イズモ)「カエデはセット」
アスカ「……まあいいわ」
弐号機格納庫。
赤い警戒灯。
巨大な足。
上へ。
上へ。
視線を伸ばす。
赤。
エヴァンゲリオン弐号機。
イズモが知っている。
それそのもの。
だが。
実物は。
映像より遥かに巨大だった。
シンジ(イズモ)「……」
アスカ「どう?」
少し。
誇らしげ。
アスカ「これが」
弐号機を振り返る。
アスカ「実戦用に造られた、本物のエヴァンゲリオンよ」
シンジ(イズモ)「……綺麗」
アスカ「え?」
シンジ(イズモ)「構成が」
近づく。
シンジ(イズモ)「初号機みたいに後付けが少ない」
外装。
肩。
電源。
ウェポンラック。
シンジ(イズモ)「最初から戦闘前提でまとまってる」
アスカ「でしょう?」
声が。
少し上がった。
シンジ(イズモ)「整備性も良さそう」
アスカ「そこ見る!?」
シンジ(イズモ)「重要だよ」
アスカ「もっとこう、武装とか装甲とかあるでしょ!」
シンジ(イズモ)「それも見る」
アスカ「何なのよあんた……」
カエデ「イズモは機械構造を見る際、整備性を優先する傾向があります」
アスカ「趣味が整備員じゃない!」
シンジ(イズモ)「最近ほぼ整備員だし」
アスカ「パイロットでしょ!?」
シンジ(イズモ)「両方」
アスカ「……」
呆れた。
完全に。
それでも。
アスカは。
嬉しそうだった。
自分の弐号機を。
性能だけではなく。
一つの機体として見られている。
それが。
少しだけ。
誇らしいらしい。
シンジ(イズモ)「システムは?」
アスカ「ノーマル」
シンジ(イズモ)「追加装備なし?」
アスカ「必要ないわ」
シンジ(イズモ)「なるほど」
アスカ「何」
シンジ(イズモ)「アスカは、完成された機体を使い切るタイプなんだなって」
アスカ「当然よ」
胸を張る。
アスカ「勝手な改造なんてしない」
イズモは。
少し。
考えた。
初号機。
弐号機。
思想が違う。
悪い意味ではない。
アスカは。
自分の技術で。
完成された弐号機を。
最大限に引き出す。
イズモは。
自分に足りないものを。
機体側へ追加する。
シンジ(イズモ)「面白いな」
アスカ「何が?」
シンジ(イズモ)「同じエヴァパイロットでも、考え方全然違う」
アスカ「私と一緒にしないで」
シンジ(イズモ)「分かった」
アスカ「そこは否定しなさいよ!」
警報。
空気が。
一瞬で変わった。
『未確認物体、艦隊へ接近』
アスカの顔から。
少女らしい表情が消える。
パイロット。
シンジ(イズモ)「使徒」
アスカ「チャンスね」
シンジ(イズモ)「?」
アスカは。
弐号機を見る。
アスカ「私の実力」
そして。
イズモへ。
アスカ「見せてあげる」
シンジ(イズモ)「自分が行った方がいい?」
アスカ「要らない」
即答。
シンジ(イズモ)「了解」
アスカ「……」
少し。
拍子抜けした顔。
アスカ「止めないの?」
シンジ(イズモ)「アスカの機体だし」
アスカ「そうだけど」
シンジ(イズモ)「危なくなったら止める」
アスカ「誰があんたに止められるのよ」
シンジ(イズモ)「ミサトさん?」
アスカ「自分じゃないの!?」
シンジ(イズモ)「指揮官じゃないから」
アスカ「もういい!」
走る。
シンジ(イズモ)「カエデ」
カエデ「はい」
シンジ(イズモ)「一応、戦闘記録取って」
カエデ「了解しました」
エントリープラグ。
弐号機。
アスカが前席。
イズモは補助席。
シンジ(イズモ)「自分まで乗る必要あった?」
アスカ「見せるって言ったでしょ」
シンジ(イズモ)「外からでも」
アスカ「いいから!」
接続。
弐号機。
起動。
シンジ(イズモ)「……」
初号機とは。
違う。
同じエヴァ。
それでも。
感触が。
違う。
アスカ「どう?」
シンジ(イズモ)「軽い」
アスカ「でしょう?」
シンジ(イズモ)「反応が素直」
アスカ「当然」
発進。
空母甲板。
弐号機が。
巨大な体を起こす。
艦隊の向こう。
海。
盛り上がる。
巨大な影。
使徒。
アスカ「行くわよ!」
弐号機が走る。
艦艇から艦艇へ。
跳躍。
シンジ(イズモ)「うわ」
アスカ「何よ」
シンジ(イズモ)「普通に上手い」
アスカ「普通にって何よ!!」
シンジ(イズモ)「褒めてる!」
アスカ「もっとちゃんと褒めなさい!」
シンジ(イズモ)「着地時の荷重逃がすの上手い!」
アスカ「そこ!?」
シンジ(イズモ)「機体への負担少ない!」
アスカ「整備員目線やめなさいよ!!」
カエデ「弐号機関節負荷、許容範囲」
アスカ「カエデまで!」
使徒。
海面から。
襲う。
弐号機が回避。
ナイフ。
斬撃。
だが。
深くは入らない。
アスカ「ちっ!」
シンジ(イズモ)「A.T.フィールド」
アスカ「分かってる!」
接近。
再度。
攻撃。
海へ。
使徒が潜る。
シンジ(イズモ)「水中」
アスカ「逃がさない!」
弐号機。
追う。
海中。
動きが。
急激に鈍くなる。
アスカ「動きにくい!」
シンジ(イズモ)「陸戦型だから」
アスカ「分かってるわよ!」
カエデ「敵性個体、下方」
シンジ(イズモ)「スキャン」
アスカ「誰が指揮してるのよ!」
シンジ(イズモ)「情報だけ!」
カエデ「解析開始」
使徒が。
大口を開く。
弐号機へ。
突進。
アスカ「っ!」
回避。
だが。
海中。
遅い。
シンジ(イズモ)「コア位置!」
カエデ「スキャン完了」
立体像。
使徒。
内部。
カエデ「口腔内部に高密度反応」
シンジ(イズモ)「口の中?」
カエデ「コアと推定」
アスカ「そんなところどうやって――」
一瞬。
イズモの頭に。
知っている展開。
魚雷。
艦船。
口。
シンジ(イズモ)「ミサトさん!」
ミサト『聞こえてる!』
シンジ(イズモ)「魚雷!」
ミサト『魚雷?』
シンジ(イズモ)「最大数!」
アスカ「ちょっと!」
シンジ(イズモ)「使徒の口に全部入れる!」
沈黙。
ミサト『……やる価値はある』
アスカ「なんで私に相談しないのよ!」
シンジ(イズモ)「今相談する!」
アスカ「遅い!」
シンジ(イズモ)「アスカ」
一拍。
シンジ(イズモ)「できる?」
アスカ「誰に聞いてんのよ」
笑う。
アスカ「やってやろうじゃない」
輸送。
艦隊。
魚雷。
弐号機が使徒を誘導する。
アスカ「来なさい!」
使徒。
口を開く。
突進。
弐号機。
逃げない。
シンジ(イズモ)「アスカ!」
アスカ「黙って!」
ぎりぎり。
回避。
そして。
腕。
使徒の口。
押さえる。
シンジ(イズモ)「今!」
魚雷。
一発。
二発。
五発。
十発。
次々。
口腔内部へ。
アスカ「まだ!?」
カエデ「十四」
シンジ(イズモ)「もっと!」
カエデ「十八」
アスカ「二十!」
最後。
押し込む。
シンジ(イズモ)「離脱!」
アスカ「言われなくても!」
弐号機が。
蹴る。
離れる。
次の瞬間。
海の底。
白。
爆発。
一つ。
二つ。
連鎖。
海面そのものが。
巨大に盛り上がる。
艦隊が。
大きく揺れる。
弐号機も。
波に飲まれる。
シンジ(イズモ)「っ!」
アスカ「きゃああっ!」
数秒。
荒れ狂う水。
やがて。
静かになる。
カエデ「敵性反応」
一拍。
カエデ「消失」
静寂。
ミサト『使徒、完全沈黙!』
歓声。
アスカは。
荒く息を吐く。
アスカ「……当然」
シンジ(イズモ)「すごい」
アスカ「何が」
シンジ(イズモ)「海中であれ動かせるの」
アスカ「……」
シンジ(イズモ)「自分なら最初にブースター追加したくなる」
アスカ「結局改造じゃない!」
シンジ(イズモ)「だって遅いし」
アスカ「弐号機は完成されてるの!」
シンジ(イズモ)「水中装備はあってもいいと思う」
アスカ「聞いてない!」
その声には。
もう。
最初ほどの棘はなかった。
数日後。
学校。
教室。
教師「今日は」
名簿。
教師「碇シンジ」
返事なし。
教師「碇カエデ」
返事なし。
教師は。
ため息。
教師「また二人とも欠席か」
アスカ「は?」
隣。
レイは。
静かに座っている。
アスカ「なんでファーストが来てて」
机を叩く。
アスカ「バカシンジとあのAIが来てないのよ!」
ケンスケ「シンジなら多分ネルフ」
アスカ「分かってるわよ!」
ケンスケ「昨日もケージ行くって」
アスカ「昨日も!?」
トウジ「その前もや」
アスカ「学校来なさいよ!」
トウジ「俺らに言われても」
アスカ「しかも!」
周囲を見る。
アスカ「私、転校してきたばっかなのよ!?」
ケンスケ「うん」
アスカ「知り合いが!」
ケンスケ。
アスカ「軍事オタク!」
ケンスケ「光栄です!」
トウジ。
アスカ「筋肉バカ!」
トウジ「誰がや!」
レイ。
アスカ「無口!」
レイ「……」
アスカ「否定しなさいよ!」
トウジ「無理やろ」
アスカ「なんで肝心のバカシンジがいないのよ!」
ケンスケ「……」
トウジ「……」
二人。
顔を合わせる。
ケンスケ「仲良くなった?」
アスカ「なってない!!」
教室に。
笑い声。
同時刻。
ネルフ第三ケージ。
学校とは。
全く違う光景。
初号機。
装甲。
全開。
足場。
クレーン。
ケーブル。
作業灯。
整備班。
そして。
その中央。
シンジ(イズモ)「次」
ホワイトボード。
図面。
使徒。
シンジ(イズモ)「分裂型」
線。
シンジ(イズモ)「二体同時対処が必要」
次。
シンジ(イズモ)「マグマ潜行型」
耐熱。
冷却。
水圧。
次。
シンジ(イズモ)「衛星軌道から落ちてくるタイプ」
整備主任「なんでそんな具体的なんだ」
シンジ(イズモ)「予測」
整備主任「本当か?」
シンジ(イズモ)「……かなり精度高めの」
整備主任「怪しい」
シンジ(イズモ)「でも備える分には」
整備主任「まあな」
机。
部品。
イズモが。
一つの立体図を展開する。
シンジ(イズモ)「近接」
ガトリング。
ミサイル。
槍。
一体化。
シンジ(イズモ)「《マスティマ》」
整備員「名前ついてんの?」
シンジ(イズモ)「名前ないと管理しにくいので」
整備員「絶対ちょっと格好つけただろ」
シンジ(イズモ)「……二割」
整備主任「認めた」
次。
シンジ(イズモ)「高周波ブレード」
整備員「プログレッシブナイフじゃ駄目?」
シンジ(イズモ)「長物が欲しい」
整備員「また増やすのか」
シンジ(イズモ)「選択肢」
整備主任「その言葉便利に使ってないか?」
シンジ(イズモ)「気のせい」
最後。
ホログラム。
小型砲。
シンジ(イズモ)「ヤシマ作戦のポジトロンライフル」
整備主任「無理」
シンジ(イズモ)「まだ何も言ってない」
整備主任「電力」
シンジ(イズモ)「小型化」
整備主任「無理」
シンジ(イズモ)「低出力化」
整備主任「威力足りない」
シンジ(イズモ)「A.T.フィールドを抜くんじゃなくて、局所破壊用」
整備主任「……」
シンジ(イズモ)「どう?」
整備主任「考える」
シンジ(イズモ)「やった」
カエデ「睡眠時間を考慮してください」
シンジ(イズモ)「今日は寝る」
整備主任「昨日も言ってたぞ」
シンジ(イズモ)「今日は本当に」
整備員「信用ないな」
イズモが。
少し笑う。
シンジ(イズモ)「……これでいこう」
一日。
二日。
三日。
学校。
欠席。
第七ケージ。
第三ケージ。
研究室。
ケージ。
食事。
ケージ。
睡眠。
少し。
またケージ。
三日後。
学校。
廊下。
イズモが。
久しぶりに。
普通に歩いていた。
シンジ(イズモ)「眠い」
カエデ「睡眠時間は五時間四十一分です」
シンジ(イズモ)「寝た方」
カエデ「不足です」
シンジ(イズモ)「学校終わったら寝る」
カエデ「第七ケージで兵装テスト予定があります」
シンジ(イズモ)「……」
カエデ「キャンセルしますか」
シンジ(イズモ)「しない」
カエデ「予測済みです」
曲がり角。
そこに。
いた。
腕を組んで。
壁へ寄りかかる。
アスカ。
シンジ(イズモ)「……」
アスカ「遅い」
シンジ(イズモ)「何が?」
アスカ「学校!」
シンジ(イズモ)「始業には間に合ってる」
アスカ「三日!」
指。
三本。
アスカ「三日も来なかった!」
シンジ(イズモ)「ケージにいた」
アスカ「知ってる!」
シンジ(イズモ)「なら」
アスカ「そういう問題じゃない!」
廊下に。
声が響く。
シンジ(イズモ)「……何で怒ってるの?」
アスカ「怒ってない!」
シンジ(イズモ)「怒ってる」
アスカ「怒ってない!」
カエデ「声量および表情筋から、怒りの可能性は八十――」
アスカ「黙りなさい!」
カエデ「発言を中止します」
イズモは。
少し考える。
シンジ(イズモ)「使徒対策してた」
アスカ「何を」
シンジ(イズモ)「三種類」
アスカ「三種類?」
シンジ(イズモ)「分裂型」
アスカの眉が動く。
シンジ(イズモ)「高温環境用」
さらに。
シンジ(イズモ)「長距離迎撃用」
アスカ「……」
シンジ(イズモ)「兵器三つ作った」
アスカ「三日で?」
シンジ(イズモ)「整備班込み」
アスカ「……」
シンジ(イズモ)「だから学校休んだ」
アスカ「あっそ」
顔を逸らす。
歩き出す。
イズモも。
隣。
アスカ「……どんな兵器?」
シンジ(イズモ)「興味ある?」
アスカ「ない」
シンジ(イズモ)「じゃあ言わない」
アスカ「言いなさいよ!」
シンジ(イズモ)「興味ないんでしょ?」
アスカ「性能確認よ!」
シンジ(イズモ)「マスティマっていう複合兵装」
アスカ「名前ダサかったら笑うつもりだったのに微妙に格好いいの腹立つ」
シンジ(イズモ)「ありがとう」
アスカ「褒めてない」
少し。
歩く。
アスカ「……弐号機にも付けられる?」
イズモが。
見る。
アスカ「何よ」
シンジ(イズモ)「勝手な改造しないんじゃ?」
アスカ「しないわよ!」
シンジ(イズモ)「じゃあ」
アスカ「聞いただけ!」
シンジ(イズモ)「互換性は持たせてる」
アスカ「……」
シンジ(イズモ)「ネルフのエヴァ全部で使えるようにするつもり」
アスカ「なんで?」
シンジ(イズモ)「自分だけ助かっても意味ないから」
アスカは。
返事をしなかった。
そのまま。
前を見る。
ただ。
ほんの少しだけ。
歩く速度が。
イズモに合った。
教室。
ケンスケ「シンジ!」
シンジ(イズモ)「おはよう」
ケンスケ「三日前の話の続き!」
シンジ(イズモ)「何だっけ」
ケンスケ「空母のCIWS!」
シンジ(イズモ)「ああ」
アスカ「……」
ケンスケ「配置の話!」
シンジ(イズモ)「艦橋周りの死角考えると――」
二人。
そのまま。
普通に話し始める。
アスカ「ちょっと」
シンジ(イズモ)「?」
アスカ「私には三日間連絡なしで」
指を。
ケンスケへ。
アスカ「登校したらいきなり軍事オタクと盛り上がるわけ?」
シンジ(イズモ)「約束してたから」
ケンスケ「そう!」
アスカ「…………」
トウジ「アスカ」
アスカ「何よ」
トウジ「めんどくさ」
アスカ「何ですってぇ!!」
教師「そこ、静かに!」
教室が。
笑い声に包まれた。
イズモは。
その中で。
ふと。
周囲を見る。
アスカ。
トウジ。
ケンスケ。
レイ。
カエデ。
学校。
第七ケージ。
初号機。
使徒。
この世界へ来た時。
全部。
作品だった。
知識だった。
次に何が起きるか。
誰が何をするか。
知っているつもりだった。
けれど。
ケンスケと。
空母の兵装について話すことも。
整備班に。
寝ろと怒られることも。
アスカが。
弐号機の整備性を褒められて嬉しそうにすることも。
知らなかった。
シンジ(イズモ)「……」
カエデ「どうしました?」
シンジ(イズモ)「いや」
窓の外。
第三新東京市。
シンジ(イズモ)「原作って、短いなと思って」
カエデ「?」
シンジ(イズモ)「こっちの話」
説明する気はなかった。
知っている未来は。
使える。
備えることもできる。
けれど。
それだけを見ていれば。
今ここにいる人間を。
見落とす。
シンジ(イズモ)「……次の使徒も来る」
カエデ「はい」
シンジ(イズモ)「準備しよう」
アスカ「またケージ行く気!?」
シンジ(イズモ)「放課後だけ」
アスカ「私も行く」
シンジ(イズモ)「え?」
アスカ「マスティマ」
頬杖。
こちらを見ない。
アスカ「どんなものか確認するだけ」
シンジ(イズモ)「いいよ」
アスカ「あと!」
シンジ(イズモ)「?」
アスカ「弐号機に勝手に穴開けたら殺す」
シンジ(イズモ)「開けないよ」
アスカ「絶対よ!」
シンジ(イズモ)「整備班の許可なしにやらない」
アスカ「私の許可も!」
シンジ(イズモ)「もちろん」
アスカ「……ならいいわ」
少しだけ。
満足そうに。
前を向く。
この世界で。
生き残る。
それだけだった目的に。
少しずつ。
別のものが混ざり始めていた。
自分だけではない。
目の前にいる人間たちも。
なるべく。
そのまま。
次の日へ連れていく。
そのためなら。
また。
ケージに籠もればいい。
カエデ「睡眠も必要です」
シンジ(イズモ)「……はい」
アスカ「何その返事」
シンジ(イズモ)「最近みんなに同じこと言われる」
ケンスケ「そりゃ三日学校消えるからだろ」
トウジ「もうケージに机置いて授業受けたらええんちゃうか」
シンジ(イズモ)「それいいな」
アスカ「よくない!!」
教室に。
また。
笑い声が響いた。
使徒襲来するがイズモの指示を無視して攻撃するアスカ、アスカを抑えながら使徒を壊滅することはできるか?次回創造紀エヴァンゲリオン瞬間心重ねて次回もサービスサービス