創造紀エヴァンゲリオン ―外来意識の介入― 作:最上 イズモ
ネルフ本部司令室。
地下深く、外界の音を遮断した空間に、低い駆動音が満ちていた。
壁一面のモニターが高速で切り替わり、赤い警告表示が連鎖的に点灯する。
アナウンス「警戒中の巡洋艦《はるな》より入電」
アナウンス「紀伊半島沖にて、未確認巨大生物を確認」
マヤ「パターン青。使徒です!」
司令席で冬月が静かに眼鏡を押し上げる。
冬月「第一種警戒体制。迎撃準備に入れ」
ミサト「各員、急いで。出撃よ!」
アスカ「了解!」
レイ「了解」
シンジ(イズモ)「了解」
紀伊半島沖。
鉛色の雲が低く垂れ込み、荒れた海が鈍く唸っている。
三機のエヴァンゲリオンが海面を割り、
その巨体で波を押し潰しながら前進する。
ミサト〈無線〉「前回の戦闘によるシステムダメージは一〇パーセント以下」
ミサト〈無線〉「ただし敵の詳細は不明。先手必勝、接近戦でお願い」
アスカ「任せて。私の見せ場ね」
シンジ(イズモ)「初号機、使徒探知モード起動」
シンジ(イズモ)「……近い。かなり」
作業員「アンビリカルケーブル接続!」
作業員「送電開始!」
カエデ「使徒の形状、情報不足。タイプ特定できません」
シンジ(イズモ)「嫌な感じだ」
シンジ(イズモ)「アスカ、まだ攻撃するな」
アスカ「ちゃんと援護するなら、文句は言わないわ!」
弐号機が海面を蹴り、跳躍する。
迷いのない一撃。
槍が振り抜かれ、使徒は真っ二つに裂けた。
ミサト〈無線〉「いい一撃!」
シンジ(イズモ)「……違う。終わってない」
切断された肉塊が泡を噴き、海中で蠢く。
次の瞬間、二つの個体へと分裂した。
アスカ「なによ、分裂!?」
シンジ(イズモ)「想定内だ」
シンジ(イズモ)「俺が赤。アスカは青。レイ、三点バーストで同時に撃って」
レイ「了解」
アスカ「……今日は、あんたの指示に従うわ」
その言葉は、降伏ではなかった。
選択だった。
シンジ(イズモ)「マスティマ起動。ガトリングモード」
重低音。
弾幕が海を裂く。
だが、使徒の表皮は弾かれ、傷一つつかない。
シンジ(イズモ)「効かない」
シンジ(イズモ)「ミサトさん、高周波ブレードを!」
輸送機の影が雲を横切り、
刃が海へ投下される。
シンジ(イズモ)「アスカ、離脱して!」
アスカ「了解!」
ブレードが頭部を断つ。
だが切断面が脈打ち、再生が始まる。
アスカ「きゃっ!」
シンジ(イズモ)「……捕まったか」
初号機が踏み込み、
腕ごと切り落として弐号機を引き剥がす。
それでも、再生は止まらない。
シンジ(イズモ)「ミサトさん」
シンジ(イズモ)「これ、キリがない。N2を使いたい」
一瞬の沈黙。
ミサト〈無線〉「……本当は、使いたくない」
ミサト〈無線〉「でも、許可する」
マスティマとランチャーから、N2弾が発射される。
白光。
衝撃波。
海と空が、一度裏返った。
シンジ(イズモ)「一時離脱します」
ミサト〈無線〉「了解」
ネルフ本部。
ミサトは机に突っ伏し、深く息を吐いた。
ミサト「リツコ。私の首、まだ繋がる方法ある?」
リツコは無言でSDカードを差し出す。
ミサト「……これ、誰の案?」
リツコ「発案はシンジくん」
リツコ「調整は、加持」
ミサト「……共犯者が増えたわね」
リツコ「責任は取れる案よ。使う?」
ミサト「……使うわ」
作戦用宿舎。
簡素だが機能的な室内中央に、体感型訓練装置が鎮座している。
ミサト「ここで三人、共同生活」
ミサト「文句なしね」
シンジ(イズモ)「俺の案は?」
ミサト「もちろん採用」
シンジ(イズモ)「……やっぱり、これか」
アスカ「なんであんたと一緒なのよ!」
アスカ「襲われたらどうするの!」
シンジ(イズモ)「監視カメラがある」
シンジ(イズモ)「カエデもいる」
アスカ「どこよ!」
シンジ(イズモ)「スピーカーの裏」
ミサト「……外さないでね!」
ミサト「じゃ、頑張って!」
訓練開始。
筐体が唸り、イスラフェルのデータが展開される。
シンジ(イズモ)「挙動は、ほぼ実機と同じだ」
シンジ(イズモ)「タイミングを合わせるため、音楽を流す」
《怒りの日》が鳴り響く。
アスカ「なんでこの曲なのよ!」
シンジ(イズモ)「他に、拍が合うのがない」
五時間後。
シンジ(イズモ)「……惜しい。〇・一秒ズレてる」
アスカ「分かってるわよ!」
さらに一時間。
シンジ(イズモ)「今日はここまで」
十日後。
伊豆半島沖。
ミサト「攻撃を許可します」
《怒りの日》。
二機が並ぶ。
射撃。
踏み込み。
まるで、一つの存在のように動く。
コアへの同時打撃。
使徒は砕け、
白光の中で消滅した。
シンジ(イズモ)「……成功だ」
アスカ「完璧ね」
アスカ「……悔しいけど」
波だけが、静かに広がっていた。