足も治ったために学園の中を見て回る。一応、これでもこいつらは仲間だったはずなのだから。とはいえ、歩いている中でその感情も消えてきたのだが。
何せ、こいつらはそのほとんどがあの化け物たちを受け入れている。例えば、あの化け物たちが恐ろしくて、殺されるかもしれないから従っているとか、そういうものではなくて、本心からあいつらは味方だと信じている連中の方が圧倒的だ。
もしかしたらあいつらが存在していたせいでこの学園が狙われたのかもしれないというのに呑気なことだ。
しかも、俺が横になっている間にこの世界の戦争とやらに参戦することになったらしい。ちらほらと学校にはふさわしくない、鎧を身につけた兵士たちの姿が見える。正直、こういうところばかりを見せられているとあの女に対しての不信感が高まるだけだ。
この世界のことをよくわからない俺たちのことを助けてくれた相手がいて。それが都合よくレジスタンスの勢力で。しかも相手がこの世界から出られなくしているかもしれない張本人? なんだそれは。あまりも都合が良すぎるだろう。そんな言葉を信用できるはずがない。
ここが戦場そのものではないから、と言われても戦士を入れている時点で同じだろう。こいつらが本当は敵の可能性なんてものをあいつらは考えられないのか。
……ああ、それともこの学園の連中は死ぬかもしれない現実から目を背けたいから、あいつらに唯々諾々と従うだけのことをしているのだろうか。
正直、何をすればいいのかはまるでわからない。今の俺にできることなんて何もない。俺に自分一人でも戻れるだけの力があれば行動を起こせたが、そんなものを持っているわけがないので、この学園にまで攻め込まれた時に隠れる場所を探す程度が関の山だ。
あの謎の手が何かわからないし、どういう条件で俺の肉体を貫くのかもわかっていない。けれど同時に、俺はそのための条件を何度でも探ることができる。俺はこれから、あの謎の手によって殺されないように、そして戦いに巻き込まれないようにしながら生き残ることが重要となってくる。だって、何度も何度もミニオンとかいう化け物を相手にして生き残れるって、それだけでもおかしなことなんだから。
そうして隠れる場所を探していると、人気の少ない場所から何かの声が聞こえてくる。もしかしたら俺と同じように永遠神剣を持ってる連中相手に何かを思っている奴らが集まっているのかもしれない。
そう思ってそちらに向かってみれば、いたのは女子生徒一人と鎧を着た兵士が一人。一体どういうことなのか。女子生徒がこちらの姿を認めて救いが来たかのような顔をして、それによって俺の存在を認めた兵士。
そいつは焦ったかのように俺に対して何かをわめき立てて、そして腰にある剣を引き抜いて──
………………
…………
……
どうやら、死ぬたびに一日の始まりに戻るというのは間違いだったようだ。今、まさにそのことを実感している。
目覚めたのは学内の探索を開始したと思しきタイミング。この状況なら色々と落ち着いて考えることができる。
死に戻りの地点は自分では選べないことはわかっていたが、毎朝の起床タイミングに戻るのではなく、どうやら最低でも一日に一回死に戻りの地点は更新……俗な言い方をするのであればセーブされる、というだけなのだろう。
さっきのあれは落ち着きを得られた今になって考えてみると、死の危険にさらされたことで生存本能が刺激された兵士が生徒を襲おうとしていた、ということなのだろう。実際、なぜか理解できた喚いている内容はそんな感じのことを口にしていた。バレれば命が危険だから、人気の少ないところでやっていた、というところか。
つまり、現状で隠れやすい場所を探すのは不可能。
あの生徒を助ければ周囲に伝達されることになってそういう行為は行われないのかもしれないが、そうなると今度はそんな場所にも監視の目が割かれることになる。メリット、デメリットを考えれば別に助けるほどの仲でもない。
ま、間に合うかどうかは別としてあの兵士さんの上司には伝えておくとしよう。
「あんたのところの兵士、この学園の女を襲ってたよ」
二回目。
どうやら、彼にそれを伝えるだけではダメのようだ。今回の死因は自分の仲間がそんなことをするはずがない、なんて信じていた上司さんに斬り殺されたこと。ならば今度は全てを知らなかったことにして学内の探索を辞めてしまおう。
三回目。
「ちょっといいっすか」
伝えずに部屋にこもっていたら心臓を抜き取られた。これはあれだろうか。俺が止めないといけないということだろうか。面倒だ。
とりあえず、どういう伝え方をすれば激昂させずに済ませることができるのか、そこからまずは確かめよう。
二十五回目。
どうにか形になってきた。彼は普通の騎士として扱えばいいんだな。ただ、それがわかっても今度はたどり着いた先でその女を人質に取られた。さて、どうするべきなのか。
………………
…………
……
「ちょっといいっすか」
「はい?」
「さっき、あっちの方から女子生徒の叫び声っぽいのが聞こえてきたんですけど……」
一人で行くのが怖いから一緒に行ってくれませんか。
そんな、思ってもないことを口にしてみる。とりあえず、彼……クロムウェイを動かすにはこれが一番だ。誰かを助けようとする好漢を演じれば、自分一人で向かう必要はない。逃げればいいのに女子を助けるために逃げない、という形にすれば騎士っぽい彼は俺のことを連れて行ってくれる。
「わかりました、行きましょう」
頷いた彼。これでどうにかなるだろう。
彼の後を追いかける形で走る。さすがは戦士というべきか、俺の全力程度では決して追いつけない。場所についてはすでに教えているので、彼が一人で向かってくれてもいいのだが、彼一人に任せると俺が心臓を抜き取られることはすでにわかっている。
そのため、怒号が聞こえてくる人気がなかったはずの場所に俺も向かえば、さっき俺を殺してくれたはずの兵士が女子生徒を人質にとっている姿が見えた。もう必死の形相で、自分が罰則を受けないならばそれでいいと言わんばかりの表情だ。これもすでに見てはいたが、さすがに何度見ても慣れそうにもない。
前回は彼女を傷つけないためには俺も彼も動くことができず、そのまま逃してなぜか心臓を抜き取られることになったのだが、今回は異世界であるのになぜか電波が存在するこの学園内部にいるあの永遠神剣を持ってる連中、その中でも赤髪の女に関しては連絡網に番号が記載されていたために電話でこの状況を伝えている。
じりじりと逃げ出そうとする兵士に、屋上かどこかから飛び降りてきたことで全くの予想外の不意打ちを入れてくれたことによってこの事件は解決した。
どんどん文字数減ってくー